アニーリングとは
PCRにおけるアニーリングとは、熱変性によって一本鎖になったDNAに対して、プライマーと呼ばれる短いDNA分子が結合する工程のことです[1][2][3][4][6][7][8]。このプロセスは、PCR(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)の3つの基本ステップのうちの1つであり、変性(denaturation)、アニーリング(annealing)、伸長(extension)の順に行われます。
具体的には、アニーリングの段階では、PCRの反応液の温度を下げることで、プライマーが一本鎖DNAの相補的な配列に特異的に結合します。このプライマーは、DNAポリメラーゼが新しいDNA鎖を合成するための開始点となります。アニーリングの温度は、プライマーのTm値(melting temperature、融解温度)に基づいて設定され、通常はTm値よりも5℃程度低い温度で行われます[4]。適切なアニーリング温度は、プライマーが目的のDNA領域に特異的に結合し、非特異的な結合を最小限に抑えるために重要です[7][8]。
アニーリングの後、伸長反応が行われ、DNAポリメラーゼがプライマーを起点として新しいDNA鎖を合成します。これらのステップを繰り返すことで、目的のDNA領域が指数関数的に増幅されます[1][2][5]。
- 参照・引用
-
[1] easy-bio-blog.com/analytical-technique-pcr/
[2] www.thermofisher.com/us/en/home/life-science/cloning/cloning-learning-center/invitrogen-school-of-molecular-biology/pcr-education/pcr-reagents-enzymes/pcr-basics.html
[3] www.takara-bio.co.jp/research/kensa/pdfs/kensa_40.pdf
[4] www.nippongene.com/siyaku/product/pcr/cat_pcr.pdf
[5] m-hub.jp/biology/1898/105
[6] www.sigmaaldrich.com/US/en/technical-documents/protocol/genomics/pcr/annealing-oligos
[7] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/pcr-basic2/
[8] www.aandt.co.jp/jpn/medical/tree/vol_12/
1本鎖DNAとなったDNAを冷却していくと、相補的なDNAが互いに結合し再び2本鎖となります。
相補的なDNAが結合することをアニーリングといいます。
アニーリングは、相補的な配列を持つ2本の一本鎖オリゴヌクレオチド(おおよそ20塩基対かそれ以下の長さの短いヌクレオチドの配列)を加熱し、冷却するプロセスです。
熱はすべての水素結合を破壊し、冷却は配列間に新しい結合を形成することを可能にします。
オリゴヌクレオチドのアニーリングは、通常、DNAのアニーリングと呼ばれていますが、このプロセスはRNAにも使用されています。最も効率的なアニーリングは、変性後に温度をゆっくりと低下させるときに発生します。
このプロトコルは、相補的な配列を持つ2つの一本鎖オリゴヌクレオチドをアニーリングするためのものです。加熱した後に冷却するとハイブリダイゼーションが容易になります。
関連記事:ハイブリダイゼーション
PCRの変性、アニーリングの温度の決め方
PCR(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)において、変性(Denaturation)とアニーリング(Annealing)の温度設定は、PCRの成功において非常に重要な要素です。これらの温度設定は、PCR反応の効率と特異性に直接影響を与えます。
● 変性温度の決め方
変性ステップでは、二本鎖のDNAを加熱して一本鎖に分離します。このプロセスは、プライマーがテンプレートDNAに結合するための準備段階です。一般的に、変性温度は94~98°Cの範囲で設定されます[2]。この温度範囲は、ほとんどのDNAが一本鎖に分離するのに十分な高さです。しかし、特定のポリメラーゼの耐熱性や反応の特性に応じて、変性温度を微調整することがあります。例えば、TaKaRa Taq HS Perfect Mixの場合、変性温度は必ず94°Cに設定することが推奨されています。95°C以上の設定では、酵素の失活による反応性の低下が起こる可能性があるためです[3]。
● アニーリング温度の決め方
アニーリングステップでは、プライマーがテンプレートDNAに特異的に結合します。アニーリング温度の設定は、プライマーの融解温度(Tm値)に基づいて行います。Tm値は、プライマーの50%がテンプレートDNAに結合している状態の温度です。一般的に、アニーリング温度はプライマーのTm値から5℃程度低い温度に設定されます[8]。この設定により、プライマーがテンプレートDNAに特異的に結合することが促進され、非特異的な結合が減少します。
プライマーのTm値は、プライマーの長さ、GC含量、塩濃度などによって変動します。Tm値の計算には、最近接塩基対法などの計算式が用いられます[8]。また、アニーリング温度は、プライマーの特性や目的のPCR産物に応じて、さらに微調整することがあります。例えば、GCリッチなターゲットの場合、Tm値が60℃を超えるプライマーを推奨することがあります[3]。
変性とアニーリングの温度設定は、PCRの最適化の過程で重要な役割を果たします。これらの温度を適切に設定することで、PCRの効率と特異性を向上させることができます。
- 参照・引用
-
[1] www.sigmaaldrich.com/US/en/technical-documents/technical-article/genomics/pcr/working-with-pcr
[2] www.thermofisher.com/us/en/home/life-science/cloning/cloning-learning-center/invitrogen-school-of-molecular-biology/pcr-education/pcr-reagents-enzymes/pcr-cycling-considerations.html
[3] catalog.takara-bio.co.jp/com/tech_info_detail.php?masterid=M100005115&mode=1
[4] www.nippongene.com/siyaku/product/pcr/cat_pcr.pdf
[5] www.rikelab.jp/post/3200.html
[6] www.naro.affrc.go.jp/org/karc/VM/PCR.html
[7] m-hub.jp/biology/124/general-pcr-and-hot-start-pcr
[8] olvtools.com/tmvalue
[9] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/pcr-basic2/
[10] nria.fra.affrc.go.jp/sindan/pcr/case.html
[11] www.aandt.co.jp/jpn/medical/tree/vol_12/