目次
📍 クイックナビゲーション
アセチル基とは、酢酸(CH3COOH)からOH(ヒドロキシ基)を取り除いた形の原子団で、構造式は CH3CO− と書きます。このアセチル基をほかの分子に付ける反応をアセチル化、外す反応を脱アセチル化といいます。高校化学ではアスピリンの合成で出てくる反応ですが、体の中でもヒストン(DNAを巻き取るタンパク質)や薬の分解でアセチル化が起きています。アセチル化を担う酵素の遺伝子が変わると起こる病気や、薬の分解の速さが人によって違う体質もあります。この記事では、アセチル基の構造式から、アセチル化と遺伝の関係までを順に解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧪 Q. アセチル基とは何ですか?構造式は?
アセチル基は酢酸からOHを取り除いた形の原子団(CH3CO−)です。炭素2個のうち1個に酸素が二重結合でつながり、残りの1本の手でほかの分子と結合します。
🧪 Q. アセチル化・脱アセチル化とは?簡単に言うと?
アセチル化は分子にアセチル基を付けること、脱アセチル化はそれを外すことです。アルコールのOHに付けばエステル、アミンのNH2に付けばアミドができます。
🧬 Q. 体の中ではどこでアセチル化が起きていますか?
代表的なのはヒストンです。ヒストンがアセチル化されるとDNAの巻き付きがゆるみ、遺伝子が読まれやすくなります。薬の分解(NAT2という酵素)でもアセチル化が使われています。
🧬 Q. 遺伝とはどう関係しますか?
ヒストンをアセチル化する酵素の遺伝子CREBBP・EP300の変化はルビンシュタイン・テイビ症候群の原因になります。NAT2の遺伝子の違いで、薬をアセチル化する速さに個人差が出ます。
- ➤アセチル基 → CH3CO−。酢酸からOHを除いた形で、アシル基の一つ
- ➤アセチル化と脱アセチル化 → 付ける反応と外す反応。エステル化・アセタール化との違いも表で整理
- ➤ヒストンのアセチル化 → クロマチンがゆるみ、遺伝子のスイッチが入りやすくなる
- ➤遺伝とのつながり → ルビンシュタイン・テイビ症候群、KAT6B・HDAC8の病気、NAT2と薬の体質

1. アセチル基とは?構造式(CH3CO−)と読み方
アセチル基とは、酢酸 CH3COOH からヒドロキシ基(−OH)を取り除いた形の原子団で、CH3CO− と表します。略号は Ac で、英語では acetyl group と書き、「アセチルき」と読みます。化学式で数えると炭素2個・水素3個・酸素1個(C2H3O)からなり、炭素の手が1本余っているので、その手でほかの原子とつながります。
国際純正・応用化学連合(IUPAC)は、カルボン酸などの酸からヒドロキシ基を取り除いてできる原子団を「アシル基」と定義しています[1]。アセチル基は、そのアシル基のうち酢酸からできるもので、最も身近な例です。名前の「アセ(acet-)」は酢酸(acetic acid)に由来し、アセトアルデヒドやアセトンなど、酢酸と関係のある物質の名前にも同じ語が入っています。
アセチル基の構造式はどう書く?
アセチル基の構造式は、メチル基(CH3−)とカルボニル基(C=O)がつながった形で、カルボニル炭素の残りの手がほかの分子に結合します。下の模式図のように、酢酸と並べると「OHが取れたところに相手が入る」と考えると覚えやすくなります。
模式図:左が酢酸、右がアセチル基(Rは結合する相手の分子)。酢酸からOHを除いた部分がアセチル基です。
アセチル基が付いた化合物は、相手の原子によって呼び名が変わります。酸素に付くと酢酸エステル(例:酢酸エチル)、窒素に付くとアセトアミド類(例:アセトアミノフェン)、水素に付くとアセトアルデヒド、メチル基に付くとアセトンです。どれも CH3CO− という同じ部品を持っています。
アセチル基・アシル基・カルボキシ基の違いは?
アシル基は「酸からOHを除いた原子団」の総称で、アセチル基はその一つです。カルボキシ基(−COOH)はOHが付いたままの形なので、別の官能基です。名前がよく似ていて混同されやすいため、表で比べます。
📘 アセチル基と似た名前の原子団
| 名前 | 書き方 | 関係 |
|---|---|---|
| アセチル基 | CH3CO−(Ac) | 酢酸からOHを除いた形。アシル基の一つ |
| アシル基 | R−CO− | 酸からOHを除いた原子団の総称[1] |
| カルボキシ基 | −COOH | OHが付いたままの酸の部分。カルボン酸の目印 |
| メチル基 | CH3− | アセチル基の一部。メチル化で付く原子団 |
官能基全体の見取り図は官能基とは、カルボキシ基についてはカルボキシル基のページで解説しています。
2. アセチル化・脱アセチル化とは?簡単に
アセチル化とは?
アセチル化とは、分子の中の水素をアセチル基(CH3CO−)に置き換える反応、簡単にいえば「分子にアセチル基を付けること」です。付く場所は、アルコールやフェノールのOH、アミンのNH2、タンパク質のアミノ酸の側鎖などです。
実験室では、アセチル基を渡す試薬として無水酢酸がよく使われます。有機化学の教科書は、無水酢酸がアルコールから酢酸エステルを、アミンからアセトアミド類(アミド)をつくる一般的な試薬であると説明しています[2]。同じアセチル化でも、OHに付けばエステル、NH2に付けばアミドができる、という点が大切です。
脱アセチル化とは?
脱アセチル化とは、付いていたアセチル基を外して元の形に戻す反応です。化学の実験では、アセチル基を一時的な「保護」に使い、目的の反応が終わったあとで加水分解などにより外すことがあります。
体の中では、アセチル化と脱アセチル化はそれぞれ別の酵素が担当しています。ヒストンの場合は、付ける酵素がヒストンアセチル基転移酵素(HAT)、外す酵素がヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)です。付けたり外したりできるので、細胞は状況に合わせて遺伝子の働きを切り替えられます[6]。
アセチル化とエステル化・アセタール化の違いは?
アルコールのOHをアセチル化すると酢酸エステルができるので、この場合のアセチル化はエステル化の一種です。一方、アセタール化はアルデヒドやケトンにアルコール2分子が付く反応で、アセチル化とは別のものです。名前が似ているため、試験で取り違えやすいところです。
📘 アセチル化・エステル化・アセタール化の比較
※アセチル化とエステル化は重なる部分があります(アルコールのアセチル化=酢酸エステルをつくるエステル化)。NH2のアセチル化はアミドができるので、エステル化ではありません。
無水酢酸によるアセチル化:アスピリンとアセトアミノフェン
サリチル酸を無水酢酸でアセチル化すると、解熱鎮痛薬のアスピリン(アセチルサリチル酸)ができます。教科書では、アスピリンはサリチル酸を無水酢酸でアセチル化して工業的につくられると説明されています[2]。アセチル基はサリチル酸のフェノール性OHに付くので、アスピリンはエステルです。
解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンも、p-ヒドロキシアニリンを無水酢酸と反応させてつくります。この分子にはOHとNH2の両方がありますが、より反応しやすいNH2のほうがアセチル化され、アミドができます[2]。高校化学のアニリンのアセチル化(アセトアニリドができる反応)も、同じ「NH2がアセチル化されてアミドになる」型です。
アスピリンは、体の中でさらに別のタンパク質をアセチル化します。アスピリンはシクロオキシゲナーゼ1(COX-1)とCOX-2の両方をアセチル化します。COX-1はこれで働きを失い、血小板ではトロンボキサンA2がつくられなくなります。血小板は新しいCOXをつくれないため、血小板が固まる働きを抑える効果は、血小板の寿命にあたる7〜10日ほど続きます[4]。手術や抜歯の前にアスピリンを飲んでいるかを聞かれるのは、このためです。
3. 体の中のアセチル化:ヒストン・タンパク質・薬
体の中でアセチル基を運ぶのは何?
体の中でアセチル基の運び役になるのは、アセチルCoA(アセチル補酵素A)です。ブドウ糖の分解でできたピルビン酸は、ミトコンドリアの中でアセチル基に変えられ、補酵素A(CoA)に渡されてアセチルCoAになります。CoAはアセチル基を運ぶ役目をもち、アセチルCoAはクエン酸回路に入ってエネルギーづくりに使われます[5]。
つまり、食べた糖や脂肪から生まれるアセチル基は、エネルギーをつくる材料であると同時に、タンパク質に付けて働きを変える「目印」の材料にもなります。アセチル化は、代謝と遺伝子の働きをつなぐ反応だといえます。
ヒストンがアセチル化されるとどうなる?
ヒストンがアセチル化されると、ヒストンのプラスの電荷が弱まり、マイナスの電荷をもつDNAの巻き付きがゆるみます。その結果、転写因子がDNAに近づけるようになり、遺伝子が読まれやすくなります。教科書でも、ヒストンの尾部へのアセチル化でヌクレオソームの詰まり方がゆるみ、転写因子がDNAに結合できるようになると説明されています[6]。
DNAの塩基配列は変わらないまま、ヒストンの目印によって「どの遺伝子を使うか」が変わるしくみは、エピジェネティクスと呼ばれる仕組みの一つです。目印は付けたり外したりでき、細胞の必要に応じて変えられます[6]。ヒストンの構造やほかの修飾はヒストンとは、エピジェネティクスの全体像はエピジェネティックで解説しています。メチル基を付けるヒストンのメチル化はヒストンメチル化のページで扱っています。
💡 用語解説:HATとHDAC
HAT(ヒストンアセチル基転移酵素)はヒストンにアセチル基を付ける酵素、HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)はそれを外す酵素です。アクセルとブレーキのように両方がそろって、遺伝子の働きが調節されています。どちらの側の遺伝子に変化があっても病気の原因になりうることを、第4章で説明します。
ヒストン以外のタンパク質もアセチル化される?
はい。アセチル化は、タンパク質がつくられたあとに付く「翻訳後修飾」の一つで、ヒストン以外のタンパク質にも起こります。先に紹介したアスピリンによるCOXのアセチル化も、薬がタンパク質をアセチル化して働きを変える例です[4]。
ヒストンアセチル化酵素として知られるCREB結合タンパク質(遺伝子名CREBBP)は、ヒストンにアセチル基を付けて遺伝子の転写を活性化する働きをもちます[7]。タンパク質がつくられたあとに付く目印の全体像は翻訳後修飾で解説しています。
薬のアセチル化:NAT2という酵素
肝臓などで薬をアセチル化して分解する酵素の一つが、N-アセチル基転移酵素2(NAT2)です。NAT2は、結核の第一選択薬イソニアジドをアセチル化してN-アセチルイソニアジドに変えます[8]。
NAT2の遺伝子には働きの強さが違う型がいくつもあり、受け継いだ型の組み合わせによって、薬を速くアセチル化する人(迅速型)、中間の人(中間型)、ゆっくりの人(遅延型)に分かれます[8]。この「体質による薬の効き方・副作用の違い」を遺伝子から調べる分野がファーマコゲノミクスです。詳しくは第4章で説明します。
4. 遺伝・医療とのつながり:アセチル化の遺伝子が変わると
アセチル化を担う酵素も遺伝子からつくられるため、その遺伝子が変わると病気や体質の違いとして表に出ます。ここでは、ヒストンに「付ける側」の病気、「外す側」の病気、薬の体質の3つを紹介します。化学の用語として学んだアセチル化が、遺伝医療の現場でどう使われているかを知っていただくための章です。
付ける側の病気:ルビンシュタイン・テイビ症候群(CREBBP・EP300)
ルビンシュタイン・テイビ症候群は、ヒストンアセチル化酵素の遺伝子CREBBPまたはEP300の変化で起こる先天性の病気です。GeneReviewsによると、CREBBPの病的バリアントが患者さんの約55〜60%、EP300の病的バリアントが約8〜10%を占め、残りの約30%は原因遺伝子がわかっていません。2つの遺伝子には、どちらにもヒストンアセチル基転移酵素(HAT)の領域があります。病的バリアントはHAT領域に限らず遺伝子のさまざまな場所に見つかり、タンパク質の働きを弱めたり失わせたりします[9]。
遺伝形式は常染色体顕性(優性)遺伝で、多くは両親から受け継いだものではない新生突然変異(de novo)によって起こります。オランダでの出生頻度は、10万〜12万5千人に1人と推定されています[9]。CREBBPがヒストンにアセチル基を付けて遺伝子の転写を活性化する働きをもつことを考えると[7]、「アセチル基を付ける力が足りなくなる」ことが体の発達に影響する病気だと理解できます。
詳しくはルビンシュタイン・テイビ症候群1型(CREBBP)とルビンシュタイン・テイビ症候群2型(EP300)、遺伝子そのものについてはCREBBP遺伝子・EP300遺伝子のページをご覧ください。
ヒストンにアセチル基を付ける酵素の遺伝子には、KAT6Bもあります。KAT6Bはヒストンアセチル基転移酵素をつくる遺伝子で、その病的バリアントは、膝蓋骨(ひざのお皿)の低形成や欠損・関節の拘縮・外性器の異常などを特徴とするゲニトパテラー症候群と、長い親指と足の親指・まぶたの開きが狭く下がった仮面様の顔つきなどを特徴とするSBBYSS症候群(オード症候群のSay-Barber-Biesecker-Young-Simpson型)の原因になります。どちらも常染色体顕性(優性)遺伝で、多くは新生突然変異で起こり、発達の遅れや知的障害をともなうことが多いとされています[10]。KAT6Bは、当院のNIPTのダイヤモンドプラン・インペリアルプランの対象遺伝子です。詳しくはKAT6B遺伝子、ゲニトパテラー症候群、SBBYSS症候群のページで解説しています。
🩺 院長コラム【化学の「アセチル化」と遺伝の病気はつながっている】
アセチル化は、多くの人にとって高校化学のアスピリン合成で出会う言葉だと思います。けれども同じ CH3CO− という小さな部品が、体の中ではヒストンに付いたり外れたりして、どの遺伝子を使うかを決めています。
ルビンシュタイン・テイビ症候群は、DNAの文字そのものではなく「遺伝子のスイッチを入れる道具」の遺伝子が変わる病気です。化学の基礎を押さえておくと、こうした病気のしくみがぐっと理解しやすくなると考えています。
外す側の病気:HDAC8とコルネリア・デ・ランゲ症候群5型
脱アセチル化を担う酵素の遺伝子にも病気があります。ヒストン脱アセチル化酵素8の遺伝子HDAC8は、コルネリア・デ・ランゲ症候群の原因遺伝子の一つです。GeneReviewsでは、コルネリア・デ・ランゲ症候群の原因の約80%がNIPBL、約5%がSMC1A、約4%がHDAC8、1〜2%がSMC3とされています[11]。
HDAC8が原因の場合はX連鎖性の遺伝形式で、多くは新生突然変異によって起こります。男性は症状が重くなりやすく、女性はX染色体の不活化の影響で症状の出方に幅があります[11]。HDAC8は当院のNIPTのダイヤモンドプラン・インペリアルプランの対象遺伝子です。HDAC8の病型はコルネリア・デ・ランゲ症候群5型、遺伝子はHDAC8遺伝子のページで解説しています。
付ける側(CREBBP・EP300)にも外す側(HDAC8)にも病気があることは、アセチル化が「多ければよい」「少なければよい」ではなく、付け外しのバランスで成り立っていることを示しています。このようにクロマチンを調節する遺伝子の変化で起こる病気をまとめて、クロマチノパチーと呼ぶことがあります(クロマチノパチーとは)。
NAT2の体質と薬:日本人に多いのは迅速型
NAT2の遅延型の人では、イソニアジドとその分解物のヒドラジンが体にたまりやすく、肝障害のリスクが高くなるとされています。このため、結核の治療ではNAT2の型が薬の副作用と関係する例として知られています[8]。
NAT2の型の分布は、人種・地域によって大きく違います。日本の研究グループが8種類の薬でNAT2の型ごとのアセチル化能を調べた研究では、迅速型の頻度は日本人で48.48〜62.02%、ヨーロッパの集団で6.76〜7.95%でした(どの薬を基準にするかで値が変わるため幅があります)[8]。ヨーロッパの研究データだけを見て「遅延型が多い」と考えると、日本人には当てはまらないことがあります。
芳香族アミンのアセチル化とNAT2の型、膀胱がんとの関係は芳香族のページで扱っています。遺伝子の型から薬の選び方や量を考える分野についてはファーマコゲノミクスをご覧ください。
⚠️ 注意
NAT2の型がわかっても、自己判断で薬の量を変えたり服用をやめたりしないでください。薬の量は、体重・腎臓や肝臓の働き・ほかの薬など多くの条件を合わせて主治医が決めます。
ルビンシュタイン・テイビ症候群は検査で調べられる?
当院では、CREBBP・EP300・SRCAPの3遺伝子を調べるルビンシュタイン・テイビ症候群のNGS遺伝子検査を行っています。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、結果は2〜3週間で出ます。検査の前後には、臨床遺伝専門医が結果の意味やご家族への影響を説明します。
妊娠中に調べたい場合は、当院のNIPT(新型出生前診断)のインペリアルプランの対象疾患に、ルビンシュタイン・テイビ症候群が含まれています。
ヒストンのアセチル化に関わる遺伝子では、アセチル基を外す酵素の遺伝子HDAC8と、アセチル基を付ける酵素の遺伝子KAT6Bが、単一遺伝子56遺伝子を調べるダイヤモンドプランの対象に含まれています。インペリアルプランはダイヤモンドプランの範囲を含むので、HDAC8・KAT6Bも調べられます。NIPTは採血で調べるスクリーニング検査なので、結果が陽性の場合は確定検査で確かめます。
🩺 院長コラム【薬の体質は「集団の数字」をそのまま当てはめない】
NAT2の型の分布は、ヨーロッパと日本でまったく違います。海外の教科書や論文の「遅延型が多い」という記述をそのまま日本の方に当てはめると、判断を誤ることがあります。
遺伝子の型と薬の関係を考えるときには、その研究がどの集団で行われたのかを必ず確かめる。これは臨床遺伝専門医として大切にしている考え方です。
よくある質問(FAQ)
Q1. アセチル基の化学式・構造式は?
アセチル基は CH3CO− と書き、炭素2個・水素3個・酸素1個からなります。構造式では、メチル基(CH3−)にカルボニル基(C=O)がつながり、カルボニル炭素の残りの手でほかの分子と結合します。酢酸 CH3COOH からOHを除いた形です。
Q2. アセチル化とエステル化の違いは?
アルコールのOHをアセチル化すると酢酸エステルができるので、その場合はエステル化の一種です。ただし、アミンのNH2をアセチル化するとアミドができるため、エステル化ではありません。アセチル化は「付ける原子団」で、エステル化は「できる結合」で名前が付いている点が違います。
Q3. アセチル化とアセタール化の違いは?
アセチル化はアセチル基(CH3CO−)を付ける反応です。アセタール化は、アルデヒドやケトンに酸触媒のもとでアルコール2分子が付き、アセタールができる反応です。名前は似ていますが、まったく別の反応です。
Q4. ヒストンがアセチル化されるとどうなる?
ヒストンのプラスの電荷が弱まり、DNAの巻き付きがゆるみます。転写因子がDNAに近づけるようになるため、その部分の遺伝子が読まれやすくなります。アセチル基はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)によって外され、元に戻ります。
Q5. アスピリンとアセチル化の関係は?
アスピリン(アセチルサリチル酸)は、サリチル酸を無水酢酸でアセチル化してつくられます。体の中では、アスピリンがシクロオキシゲナーゼ1(COX-1)とCOX-2の両方をアセチル化します。血小板ではCOX-1が働きを失い、トロンボキサンA2がつくられなくなります。血小板は新しいCOXをつくれないため、血小板への効果は7〜10日ほど続きます。
Q6. アセチル化の速さには個人差がありますか?
あります。薬をアセチル化する酵素NAT2の遺伝子の型によって、迅速型・中間型・遅延型に分かれます。遅延型では結核の薬イソニアジドによる肝障害のリスクが高くなるとされています。迅速型の頻度は日本人とヨーロッパの集団で大きく異なります。
まとめ
アセチル基(CH3CO−)は、酢酸からOHを除いた形のアシル基です[1]。分子にアセチル基を付けるのがアセチル化、外すのが脱アセチル化で、OHに付けばエステル、NH2に付けばアミドができます[2]。
体の中では、アセチルCoAが運んできたアセチル基がヒストンに付くと、DNAの巻き付きがゆるみ遺伝子が読まれやすくなります[5][6]。付ける側の遺伝子CREBBP・EP300の変化はルビンシュタイン・テイビ症候群[9]、KAT6Bの変化はゲニトパテラー症候群やSBBYSS症候群[10]、外す側のHDAC8の変化はコルネリア・デ・ランゲ症候群の原因になり[11]、薬をアセチル化するNAT2の型は薬の副作用の起こりやすさに関わります[8]。
🧬 アセチル化に関わる遺伝子の検査について
ルビンシュタイン・テイビ症候群の遺伝子検査(CREBBP・EP300・SRCAP)は、血液・唾液・頬の粘膜の検体で受けられます。妊娠中の方は、NIPTのインペリアルプランで調べることができます(HDAC8・KAT6Bはダイヤモンドプランでも対象です)。検査を受けるかどうかまだ決めていない方は、検査で何がわかり、結果をどう受け止めればよいかを遺伝カウンセリングとはで先にご覧ください。妊娠中に調べられる検査の全体像はNIPT(新型出生前診断)のページにまとめています。
参考文献
- [1] acyl groups. IUPAC Compendium of Chemical Terminology (Gold Book). International Union of Pure and Applied Chemistry. [IUPAC]
- [2] McMurry J. 21.5 Chemistry of Acid Anhydrides. Organic Chemistry. OpenStax. [OpenStax]
- [3] McMurry J. 19.10 Nucleophilic Addition of Alcohols: Acetal Formation. Organic Chemistry. OpenStax. [OpenStax]
- [4] Arif H, Patel P. Salicylic Acid (Aspirin). StatPearls. StatPearls Publishing. [NCBI Bookshelf NBK519032]
- [5] 7.3 Oxidation of Pyruvate and the Citric Acid Cycle. Biology 2e. OpenStax. [OpenStax]
- [6] 16.3 Eukaryotic Epigenetic Gene Regulation. Biology 2e. OpenStax. [OpenStax]
- [7] CREBBP gene. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
- [8] Fukunaga K, Kato K, Okusaka T, et al. Functional Characterization of the Effects of N-acetyltransferase 2 Alleles on N-acetylation of Eight Drugs and Worldwide Distribution of Substrate-Specific Diversity. Front Genet. 2021;12:652704. [DOI 10.3389/fgene.2021.652704]
- [9] Stevens CA. Rubinstein-Taybi Syndrome. GeneReviews. 2002 [updated 2023 Nov 9]. [NCBI Bookshelf NBK1526]
- [10] Lemire G, Campeau PM, Lee BH. KAT6B Disorders. GeneReviews. 2012 [updated 2020 Jan 2]. [NCBI Bookshelf NBK114806]
- [11] Deardorff MA, Raible SE, Krantz ID. Cornelia de Lange Syndrome. GeneReviews. 2005 [updated 2026 Jun 16]. [NCBI Bookshelf NBK1104]



