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CADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)NOTCH3遺伝子検査|ミネルバクリニック

CADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)NOTCH3遺伝子検査|ミネルバクリニック

CADASILとは

CADASIL(Cerebral Autosomal Dominant Arteriopathy with Subcortical Infarcts and Leukoencephalopathy:皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)は、NOTCH3遺伝子の変異により引き起こされる遺伝性の脳小血管病です。主に脳の細い血管が障害されることにより、様々な神経症状が現れます。

本疾患は常染色体優性遺伝形式をとり、親が病気の場合、子どもに病気が引き継がれる確率は50%です。脳梗塞や脳出血を繰り返すことによって体が動きにくくなったり、血管性認知症を発症します。また、多くの患者さんは頭部MRI画像で白質病変と呼ばれる異常所見が認められます。

CADASILは指定難病(難病指定124)に認定されており、適切な遺伝学的検査により原因を特定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。典型例では20~30歳頃に片頭痛を、30~40歳頃に脳卒中を、40~50歳頃に認知症を発症しますが、症状が始まる年齢や重症度は個人によって大きく異なります。

症状と病態

CADASILでは、脳の細い血管の平滑筋が変性し、血管壁にGOM(オスミウムに濃染する顆粒)と呼ばれる特徴的な物質が蓄積します。これにより脳小血管病変・脳血流低下が起こり、大脳白質病変が出現します。

主要症状

  • 片頭痛(20~30代):約半数の患者さんで最初に現れる症状。頭の片側または両側でズキンズキンと波打つような頭痛が4~72時間続く。目の前がチカチカ光る閃輝暗点という視覚前兆を伴うこともある
  • 脳梗塞(30~40代以降):特にラクナ梗塞という脳の細い血管が詰まるタイプの脳梗塞を発症しやすい。歩きにくい、しゃべりにくい、手が動かしにくいなどの症状が出現
  • 脳出血:日本では脳梗塞よりも脳出血が目立つタイプも存在
  • 認知症(40~50代):脳梗塞や脳出血の再発により、血管性認知症・皮質下性認知症が進行。ものが覚えられない、考えるスピードが落ちる、注意力が低下
  • 抑うつ症状:気分が落ち込む、眠れない、食欲がない、感情が鈍くなる、何に対しても興味を示さない
  • 大脳白質病変:MRI検査で特徴的な白質病変を認める。特に側頭極(側頭葉の先端部分)の病変が診断上重要

病態の進行

30歳以降に大脳白質病変が出現し始め、その後脳梗塞を繰り返すことで症状が進行します。脳梗塞の再発により歩行困難やしゃべりにくさが悪化し、最終的には寝たきりとなる患者さんもいます。

ただし、病気の進行には個人差が大きく、10歳代で脳卒中を発症する方もいれば、80歳代でも認知症を発症していない方も報告されています。NOTCH3遺伝子の変異の種類によって経過が異なる可能性も指摘されています。

ミネルバクリニックのCADASIL遺伝子検査の特徴

「CADASIL NOTCH3遺伝子検査」は、CADASILの原因遺伝子であるNOTCH3遺伝子に変異があるかどうかを調べる検査です。次世代シーケンシング(NGS)技術を用いて、高精度な遺伝子解析を行います。

この検査により、CADASILの確定診断が可能となり、適切な治療方針の決定や家族への遺伝リスクの評価が可能になります。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でCADASILの遺伝子検査を行う場合、高額な費用がかかることが多くあります。

当院では、NOTCH3遺伝子検査をリーズナブルな価格で受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。

当院で行う「CADASIL NOTCH3遺伝子検査」の場合、2~3週間程度で結果を得ることが可能です。

3.高精度な検査

次世代シーケンシング(NGS)技術により、NOTCH3遺伝子の塩基配列変異および欠失・重複を高感度(>99%)で検出します。病的意義不明(VUS)、病原性の可能性が高い、または病原性と分類される変異を報告します。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「CADASIL NOTCH3遺伝子検査」では、CADASILの原因遺伝子であるNOTCH3遺伝子を検査します。NOTCH3遺伝子は染色体19q12に位置し、細胞表面受容体であるNotch3タンパク質をコードしています。

この検査では、主にシステイン残基に関連する変異を検出します。現在までに世界中で300種類以上のNOTCH3遺伝子の病原性変異が報告されています。

どんな人が受けたらいいの?

【CADASILの個人歴または家族歴のある方】に
「CADASIL NOTCH3遺伝子検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・若年期から繰り返す片頭痛がある方(特に閃輝暗点を伴う場合)
・若年で脳梗塞(特にラクナ梗塞)を発症した方
・脳卒中の危険因子(高血圧、糖尿病、高脂血症など)がないのに脳梗塞を起こした方
・MRI検査で大脳白質病変(特に側頭極の病変)を認める方
・一過性脳虚血発作を繰り返す方
・若年性の血管性認知症がある方
・抑うつ症状が続いている方
・CADASILの家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えており、遺伝リスクの評価を希望される方

この検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、CADASILの診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・脳梗塞再発予防のための管理(血圧管理、脱水予防など)
・脳梗塞危険因子の適切な管理
・片頭痛に対する適切な治療
・認知症の進行予防
・不適切な治療(一部の血管拡張薬など)の回避
・臨床試験や新しい治療法への参加機会
・より個別化された治療と症状管理
・家族の遺伝リスクに関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・遺伝カウンセリングの機会
・患者会(CADASIL友の会)などのサポートへのアクセス

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体優性遺伝形式のため、お子さんが同じ変異を受け継ぐ確率は50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

NOTCH3 ( 1遺伝子 )

NOTCH3遺伝子について:
NOTCH3遺伝子は染色体19q12に位置し、2321個のアミノ酸からなる一回膜貫通型受容体Notch3タンパク質をコードしています。Notch3は血管壁細胞(血管平滑筋細胞やペリサイト)に特異的に発現し、血管の発達と維持に重要な役割を果たしています。

NOTCH3遺伝子の細胞外ドメインには34個のEGF様リピートがあり、CADASILの原因となる変異の多くは、これらのリピート領域におけるシステイン残基の変化を伴います。変異によりNotch3タンパク質の細胞外部分が凝集し、血管壁にGOM(オスミウムに濃染する顆粒)として蓄積します。

これまでに世界中で300種類以上のNOTCH3遺伝子の病原性変異が報告されており、変異の種類によって病気の経過が異なる可能性も指摘されています。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み220,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
若年期から繰り返す片頭痛(特に閃輝暗点を伴う場合)、若年で脳梗塞(特にラクナ梗塞)を発症した方、脳卒中の危険因子がないのに脳梗塞を起こした方、MRI検査で大脳白質病変(特に側頭極の病変)を認める方、若年性の血管性認知症がある方におすすめします。また、CADASILの家族歴がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
CADASILは常染色体優性遺伝形式をとるため、患者さんのお子さんが同じ変異を受け継ぐ確率は50%です。ご家族の検査により、発症リスクの評価や将来の家族計画に重要な情報を提供できます。遺伝カウンセリングを通じて、ご家族の検査についてもご相談いただけます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査でNOTCH3遺伝子の病原性変異が検出されなくても、臨床症状からCADASILが強く疑われる場合は、皮膚生検による電子顕微鏡検査でGOMの検索を行うことがあります。また、他の遺伝性脳小血管病の可能性も考慮する必要があります。主治医と相談して、必要に応じて追加の検査を受けることが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み220,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後は指定難病制度により医療費助成を受けられる可能性があります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
CADASILは常染色体優性遺伝形式をとるため、病原性変異をお持ちの方のお子さんが同じ変異を受け継ぐ確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
CADASILの治療はどのように行われますか?
現在、根本的な治療法はありませんが、脳梗塞再発予防のための管理(血圧管理、脱水予防、抗血小板薬の使用)や、片頭痛に対する治療、認知症の進行予防などが行われます。また、アドレノメデュリン(AM)を用いた新しい治療法の臨床試験も進行中です。
予後はどうですか?
CADASILの経過は個人によって大きく異なります。典型例では30~40歳頃に脳卒中を、40~50歳頃に認知症を発症し、脳梗塞を繰り返すと60歳前後で寝たきりとなることがありますが、80歳代でも認知症を発症していない方も報告されています。早期診断と適切な管理により、症状の進行を遅らせることが期待されます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院ではNOTCH3遺伝子検査を次世代シーケンシング技術により高精度に実施し、従来の検査と比べて費用・時間を短縮できます。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。また、専門的な遺伝カウンセリングにより、検査結果の解釈や今後の対応について丁寧にサポートいたします。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら