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トリソミー21のためのメチル化ベースのNIPT開発のための概念実証研究

仲田洋美 医師

研究責任者:仲田洋美(ミネルバクリニック院長・臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

📢 本研究は終了しています

本研究は2022年6月30日をもって終了しました。現在、この研究への参加者の募集は行っていません。このページは、当院で実施した臨床研究の記録として概要を掲載しています。

ミネルバクリニックでは、2021年5月から2022年6月まで、ドロップレット・デジタルPCR(ddPCR)という高精度の測定技術を用いて、トリソミー21(ダウン症候群)を調べるメチル化ベースのNIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)を開発するための概念実証研究を行いました。このページでは、研究の目的、参加の対象となった方の条件、倫理審査と研究資金など、研究の概要をまとめています。

このページでわかること
📄 臨床研究の概要(終了)
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. どのような研究だったのですか?

A. お母さんの血液を使うNIPTについて、胎盤由来のDNAとお母さん由来のDNAの「メチル化」の違いに着目し、ddPCRでトリソミー21を検出できるかを確かめる概念実証研究です。研究は2022年6月30日に終了しており、現在は参加者を募集していません。

  • ➤研究期間 → 2021年5月13日〜2022年6月30日(終了)
  • ➤対象 → 妊娠9週以降の単胎妊娠の方(トリソミー21の胎児を妊娠している方を含む)
  • ➤倫理審査 → ミネルバクリニック倫理審査委員会で採択、UMIN臨床試験登録システムに登録済み
  • ➤研究資金 → 欧州研究会議(ERC)Proof of Concept Grant
  • ➤研究の結果 → DNAメチル化領域を用いた検証で感度100%・特異度91.4%(ERCへの最終報告)

1. 研究の概要

🔬 研究の基本情報

項目 内容
研究名称 トリソミー21のためのメチル化ベースのNIPT開発のための概念実証研究
英文名称 Proof-of-concept study for the development of methylation-based NIPT for trisomy 21 using droplet digital PCR
研究機関 ミネルバクリニック(東京都港区北青山2-7-25 神宮外苑ビル1号館2階)
研究責任者 仲田洋美(臨床遺伝専門医)
プロジェクト取りまとめ NIPD Genetics社(キプロス/現・Medicover Genetics)
研究期間 2021年5月13日から2022年6月30日
状況 終了(参加者の募集は行っていません)
研究資金 欧州研究会議(ERC)Proof of Concept Grant(助成番号957444)
倫理審査 ミネルバクリニック倫理審査委員会(第20210401回・通常審査)にて採択
臨床試験登録 UMIN臨床試験登録システムに登録済み

💡 用語解説:ERC Proof of Concept Grant

ERC(European Research Council:欧州研究会議)は、EUの研究助成機関です。Proof of Concept Grantは、すでにERCの助成を受けている研究者だけが申請できる助成で、ERCの研究で得られた成果を実用化に近づけるための検証に充てられます。本研究は、胎児に特有のDNAメチル化領域を見いだしたERC Advanced Grantのプロジェクト(2013〜2019年)[2]と、それに続くProof of Concept Grantの成果を発展させたもので、EU拠出額は15万ユーロでした[1]。

2. 研究の目的

この研究の目的は、妊娠中の方に、トリソミー21(ダウン症候群)を調べるための、より安全で正確な非侵襲的な検査の選択肢を届けることでした。そのための第一歩として、メチル化の違いに着目した方法とddPCRを組み合わせてトリソミー21を検出できるかどうかを確かめる、概念実証(Proof of Concept)を行いました。

💡 用語解説:概念実証(Proof of Concept)

新しい検査法や治療法のアイデアが、実際に原理どおり機能するかを小規模に確かめる段階の研究を「概念実証」といいます。実用化に向けた最初の関門にあたり、ここで手応えが得られた方法が、より大規模な検証へと進みます。

メチル化ベースNIPTの考え方

NIPTは、妊娠中のお母さんの血液に含まれる、胎盤由来のごく短いDNA断片(セルフリーDNA)を調べる検査です。血液中にはお母さん自身のDNAも多く含まれているため、胎盤由来のDNAの情報をいかに正確に取り出すかが、検査の精度を左右します。

DNAには、メチル化と呼ばれる化学的な目印がつくことがあります。胎盤由来のDNAとお母さんの血液細胞由来のDNAとでは、このメチル化のパターンが異なる領域があることが知られています。メチル化ベースのNIPTは、この違いを手がかりに胎盤由来のDNAを区別して測ろうとする方法です。

そしてddPCR(ドロップレット・デジタルPCR)は、検体を数万個の微小な油滴に分け、目的のDNAを含む油滴の数を数えることで、DNAの量を絶対的に測定する技術です。21番染色体に由来するDNAがわずかに多いかどうかといった、小さな量の差をとらえることが期待されます。

ERCへの最終報告[1]に記載された方法の流れを、簡単に図にすると次のようになります。

お母さんの血液を採取採血のみ
▶
セルフリーDNAを取り出す
▶
メチル化DNAを濃縮MeDIP法
▶
多重ddPCRで測定胎児特有の領域を定量

3. 研究の対象となった方と除外基準

研究期間中、参加の対象となったのは次の方です。

👤 対象と除外基準

区分 条件
対象 染色体に異常のない胎児を妊娠している、妊娠9週以降の方
対象 21番染色体トリソミーの胎児を妊娠している、妊娠9週以降の方
除外 妊娠9週未満の方
除外 多胎妊娠の方
除外 バニシングツイン(双胎の一方が妊娠初期に育たなくなった状態)の方

※本研究は終了しており、現在は参加者を募集していません。

多胎妊娠やバニシングツインの方が除外されたのは、血液中に複数の胎児・胎盤に由来するDNAが混ざり、結果の解釈が難しくなるためです。

4. 研究の結果(ERCへの最終報告)

本研究は、キプロスのNIPD Genetics社(現・Medicover Genetics)が取りまとめたERCのプロジェクト「Methyl-ddPCR NIPT」(助成番号957444)として実施されました。欧州委員会の研究成果データベースCORDISに掲載された最終報告の概要は、次のとおりです[1]。

📊 最終報告の概要

項目 内容
方法 妊娠中の方の血漿からセルフリーDNAとセルフリーRNAを取り出し、メチル化されたDNA・RNAをそれぞれ免疫沈降法(MeDIP・MeRIP)で濃縮したうえで、胎児に特有の領域を多重ddPCRで測定
開発段階 RNAのメチル化領域は、生物学的・技術的な制約から期待どおりに機能しなかったため、最終的な検証はDNAのメチル化領域のみで実施
感度 100%(トリソミー21を見逃さずに検出できた割合)
特異度 91.4%(95%信頼区間 82.4〜100%)(トリソミー21でない妊娠を正しく陰性と判定できた割合)

※助成機関への最終報告の要約に基づく記載です。報告の要約には、検証に用いた検体数は記載されていません。

報告書は、この成果を、迅速で正確かつ低コストなトリソミー21のNIPTに向けた最初の一歩と位置づけています[1]。検査費用が下がれば、経済的な事情にかかわらず、より多くの妊婦さんがNIPTを利用できるようになることが期待されます。

一方で、特異度91.4%という結果は、染色体に異常のない妊娠の一部が陽性と判定されうることを意味します。次世代シーケンサーを用いる現在主流のNIPTと比べると、偽陽性をさらに減らす改良が必要な段階であり、この方法がそのまま日常の検査として使われているわけではありません。

5. 倫理審査と説明・同意

本研究は、実施に先立ってミネルバクリニック倫理審査委員会で審査を受けて採択され、UMIN臨床試験登録システムに登録したうえで開始しました。

研究への参加にあたっては、倫理審査委員会で承認された情報提供文書を用いて研究の内容を説明し、ご本人に同意書へ署名していただいたうえで参加していただきました。参加者の方の個人情報は、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」および当院の規程に従って厳重に管理しています。

6. NIPTをお考えの方へ

この研究は終了していますが、ミネルバクリニックでは現在もNIPTを実施しています。NIPTはお母さんの採血だけで行える、流産のリスクのない検査です。一方で、NIPTは結果を確定させる検査ではない非確定的検査であり、陽性の結果が出た場合には、羊水検査などの確定的検査で確認する必要があります。

検査で何がわかり何がわからないのか、結果をどう受け止め、どのような選択肢があるのかは、検査を受ける前に整理しておくことが大切です。ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、中立の立場で判断材料を整理するお手伝いをしています。

🏥 NIPT・出生前検査のご相談

NIPT(新型出生前診断)や出生前検査について
お悩みの方は、臨床遺伝専門医が在籍する
ミネルバクリニックにご相談ください。

参考文献

  • [1] Proof of Concept study for the development of methylation based NIPT for trisomy 21 using droplet digital PCR (Methyl-ddPCR NIPT). Grant agreement ID: 957444. CORDIS, European Commission. [CORDIS 957444]
  • [2] A Novel Non-Invasive Prenatal Diagnosis for Genetic Disorders (NIPD). Grant agreement ID: 322953. CORDIS, European Commission. [CORDIS 322953]

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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