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NIPTを受けようか迷っている方の中には、検査結果はどれくらい当たるのだろうと疑問に思う方もいらっしゃるのではないのでしょうか。NIPTは精度が高いことで知られているものの、確定検査ではないため誤った結果がでることも否定できません。また、的中率は母体年齢も関連しているといわれます。
本記事ではNIPTの精度、母体年齢と的中率の関係について解説します。
NIPTとは?
NIPTは新型出生前診断のことで、妊娠中に21トリソミー(ダウン症)などの胎児の染色体異常を調べる検査です。NIPTは非確定的検査の1つで誤った結果が出ることも否定できませんが、確率は極めて低く高精度です。母親の血液を採取すれば実施可能で、妊娠の早期から検査することができます。
NIPTの検査法
NIPTは母体の採血だけで検査ができます。
母体血液中のDNA断片には胎児由来のものと母体のものの2種類が存在しています。すべてのDNA断片の3~10%が胎児由来で、NIPTは胎児由来のものを検査して判定します。胎児のDNA断片は胎児細胞、Fetal RNA、cell-free fetal DNAの3種類があり、NIPTではcell-free fetal DNAを検査します。
胎児細胞は出産後数年経過しても母体血液中に存在していますが、cell-free fetal DNAは存在する期間が短く、今回の妊娠に特異的です。
妊娠5週、遅くても9週までには母体血液中に存在するため、妊娠の早い時期から検査が可能です。
NIPTの検査時期
NIPTは他の胎児検査に比べて妊娠の早期より検査できます。NIPTのおすすめの週数は、通常妊娠10週目以降です。この時期に胎児のDNAが母親の血液中に十分に検出可能になり、高い精度で遺伝的情報を提供できるためです。
ただし、具体的な受診時期は個々の妊娠状況や医療機関によって異なることがあり、一部の施設では妊娠9週目、妊娠6週目からNIPTを提供しています。そのため、受検を希望される医療機関の医師と相談し、NIPTの受検時期を決定する必要があります。NIPTで妊娠早期に結果が分かると、陽性となった場合でもその後の計画にゆとりをもつことができます。
NIPTの検査精度とは?
NIPTの精度は非常に高いことが特徴的です。検査精度を表す指標に感度、特異度、的中率の3つがあります。感度は陽性、特異度は陰性が正しく判定される確率です。的中率は検査後の事後確率の1つで、検査結果をあとで確認して正しかった確率です。NIPTはこれらの指標がいずれも高いことが知られています。
感度
感度とは、染色体異常を持っている赤ちゃんが正しく陽性と判定される確率です。例えば、染色体異常を持つ赤ちゃん100人に検査をして70人が陽性となった場合、その検査の感度は70%と表現されます。
2013年4月~2019年3月まで行われたNIPTの追跡調査では、NIPTの21トリソミー(ダウン症)の感度は99.7%でした。これは、21トリソミーの赤ちゃん100人中99.7人は陽性と判定されたことを意味しています。NIPTは従来の非確定検査であるクアトロ検査より精度が高く、クアトロ検査は感度約83〜87%に対し、NIPTは99%です。
特異度
特異度とは、染色体異常がない赤ちゃんが正しく陰性と判定される確率です。
例えば、染色体異常を持たない赤ちゃん100人に検査をして80人が陰性となった場合、その検査の特異度は80%と表現されます。
2013年4月~2019年3月まで行われたNIPTの追跡調査では、NIPTの21トリソミーの特異度は99.9%以上と高く、21トリソミーでない赤ちゃん100人中99.9人以上が陰性と判定されたことを意味します。このようにNIPTは感度と特異度が非常に高い検査です。
的中率
的中率は検査結果をあとで確認して正しかった確率で、陽性的中率と陰性的中率があります。陽性的中率は陽性と判定された結果をあとから確認して真の陽性であった確率、陰性的中率は陰性と判定された結果を確認して真の陰性だった確率です。
出生前検査認証制度等運営委員会は2013年~2019年3月まで行われたNIPTの追跡調査から陽性的中率の推定値を算出しており、35歳の21トリソミーの陽性的中率は93.58%でした。NIPTは感度と特異度が高い検査ですが、精度がいくら高くても陽性的中率は100%とはならないため、陽性と出た場合は確定検査で確認することが一般的です。
NIPTの的中率とお母さんの年齢
母体の年齢が上がるとNIPTの的中率も高くなります。それは年齢が上がると疾患頻度も高くなるためです。
母体の年齢にかかわらず、生まれてくる赤ちゃんは一定数、染色体異常が起こります。母親の年齢が上がるとその確率は高くなり、特に40代では飛躍的に増加。これは卵子の老化によるもので、厚生労働省からは21トリソミーの割合は35歳で385人に1人、40歳では106人と報告されました。
NIPTの陽性的中率は疾患の頻度に左右され、頻度が低くなると低下、逆に高くなると上昇します。
出生前検査認証制度等運営員会の調査によると、21トリソミーの陽性的中率は30歳で85.28%ですが、35歳で93.58%、40歳で98.20%と徐々に高くなっています。
偽陽性と偽陰性
NIPTは検査精度が高いことで知られていますが、確定検査ではないため誤った結果が出る可能性もあります。誤った結果として偽陽性、偽陰性という言葉をお聞きになったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。それぞれどのような事象か解説します。
偽陽性とは
偽陽性とは、病気がないにもかかわらず陽性と判定が出てしまうことです。NIPTの場合、陽性と判定されたのに実際はダウン症ではなかったケースがこれに当たります。
2013年4月~2019年3月までNIPTを受けた方の追跡調査では、21トリソミーが陽性であった782人のうち、確定的検査を受けた696人の中で偽陽性と発覚したのは23人(3.3%)でした。
偽陽性の原因には、胎盤性モザイクやバニシングツインが挙げられます。胎盤性モザイクは、胎盤と赤ちゃんがそれぞれ異なる染色体を持っていること、バニッシングツインは多胎妊娠の赤ちゃんが子宮内で自然吸収されていなくなってしまうことです。いずれも胎盤のDNAや、自然吸収された胎児のDNAに反応し陽性が出てしまい、確定検査で陰性となることがあります。
参照:「第1回 母体血を用いた出生前遺伝学的検査 (NIPT)の調査等に関するワーキンググループ」(厚生労働省)(www.mhlw.go.jp/content/11908000/000559098.pdf)
偽陰性とは
偽陰性は、本当は異常があるのにもかかわらず、検査で陰性が出てしまうことです。NIPTの場合、検査で陰性と判定されたのに実際にはダウン症だったケースがこれに当たります。
偽陰性は、胎児分画の割合が低い、胎盤性モザイク、depthの回数が少ないことがあげられます。胎児分画とは妊婦さんの血液中に含まれる胎児のDNA断片の割合のことで、これが低いと陽性であっても陰性と判定されることも。胎盤性モザイクは胎盤と赤ちゃんがそれぞれ異なる染色体を持っている現象で、胎盤のDNAは陰性でも胎児のDNAが陽性となる場合があります。
また、depth回数は遺伝子情報を何回読み込んだのかという指標で、一般的には数字が高いほど多くの回数を読み込んでおり精度が高いです。この回数が少ないと偽陰性の可能性が上がります。
NIPTで調べられる染色体異常の内容
NIPTでは基本検査として21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーを調べることができます。いずれも通常は2本の染色体のところ3本になるトリソミーで、胎児に起こる染色体異常の中では頻度が高い傾向にあります。症状や合併症の種類と程度は人それぞれ異なります。根本的に治す方法はありませんが、合併症の治療や症状緩和、身体と精神の発達をうながすための療育などを行うことが一般的です。
ダウン症候群(21トリソミー)
ダウン症候群(21トリソミー)は21番染色体が1本多いことで起こり、知的障害や身体的な発達の遅れがあらわれます。知的障害の幅はとても広く、自分で生活したり、車の運転ができたり、大学を卒業する人も。600〜800人に1人の割合で生まれ、日本のダウン症の患者数は推定8万人といわれています。少し離れていてつりあがっている目、低い位置の短い耳、小さい鼻など、顔の見た目が特徴的です。
合併症として筋緊張低下、関節弛緩、心内膜欠損症や心室中隔欠損症などの先天性心疾患、十二指腸閉鎖や鎖肛などの消化器疾患等があらわれることがあります。ダウン症の子どもの大半は亡くなることなく成人にいたり、推定の平均寿命は60歳前後と考えられています。
エドワーズ症候群(18トリソミー)
エドワーズ症候群(18トリソミー)は18番染色体が1本多いことで起こり、知的障害や身体的な成長・発達の遅れ、臓器障害などがあらわれます。ダウン症に次いで2番目に多い染色体異常で、3,500〜8,500人に1人の頻度で生まれます。男女比は1:3と、女児に多いのも特徴的です。
1500~2000g程度と生まれつき体が小さく、成長・発達もとてもゆっくりです。重度の心臓病などの循環器系、無呼吸発作などの呼吸器系合併症や、泌尿器、生殖器、筋骨格、中枢神経などにあらゆる合併症をおこす可能性があります。流産にいたる場合も多く、生まれても約50%が生後1週間以内に亡くなり、1歳になるまで生きられる子どもは5〜10%ほどといわれていました。
近年では積極的な治療介入により生存期間が延びています。
パトー症候群(13トリソミー)
13番染色体が1本多いことで起こり、知的障害や身体的な成長・発達の遅れ、臓器障害などがあらわれます。染色体異常の中では発症率は高いですが、21トリソミーや18トリソミーよりは低く、5,000〜12,000人に1人の割合で生まれます。
身体的な異常はさまざまで、小頭症、重度の心疾患、眼や顔面、精巣、子宮の異常、手指の縮こまりなどが見られます。生後1ヶ月以内に亡くなることも多く、1年以上生存できる子どもはめずらしいと言われてきました。近年では積極的な治療を行うことで長く生きる例も増えており、10年以上生存している方もいらっしゃいます。
NIPTを受検したら…
NIPTの結果で慌てないために、受検すると結果がどのように出てくるのか、その結果はどのように受け止め、どう行動したらよいかあらかじめ知り心構えをしておくことは大切です。NIPTの結果は陽性、陰性、判定保留のいずれかで判定されます。
それぞれの結果が出たときにどのように受け止め、対処したらよいかを解説します。
陽性だった場合
NIPTは非確定検査のため、結果が陽性だった場合は陽性を確定するために確定検査を受けることが推奨されます。
確定検査には、羊水検査と絨毛検査があります。羊水検査は母親のお腹に直接針を刺し、羊水内の胎児の細胞から染色体を調べる検査です。羊水が増えてくる15〜18週頃に受けることが推奨されます。絨毛検査は胎児の絨毛にある細胞から染色体を調べます。検査時期は第11週〜第14週までと、羊水検査より早く受けられますが、胎盤からの細胞は、胎児の細胞と遺伝子が異なる場合があり注意が必要です。
いずれの検査もお腹に針を刺すため流産などの合併症のリスクがあり、リスクを知った上で受検することが大切です。そのリスクは絨毛検査で1%程度、羊水検査で0.2〜0.3%程度です。
陰性だった場合
NIPTは高精度であるため、NIPTが陰性の場合は赤ちゃんが検査対象の染色体異常を持っている可能性は極めて低いと考えられます。しかし、NIPTは確定検査ではないため、偽陰性が存在する可能性も否定できません。2013年4月〜2019年9月に行われたNIPTの追跡調査では、NIPTで陰性と判定された58893例中、実際は3例が21トリソミー、3例が18トリソミーと偽陰性(0.01%)でした。
偽陰性の確率は極めて低いので、陰性が出た場合の再検査は不要と考えてよいでしょう。しかし、偽陰性が存在することは頭の片隅に置いておく必要があります。
判定保留の場合
NIPTは結果が出ずに判定保留となることがあり、母の血液に占める胎児の遺伝子の割合が少ないこと、母への投薬、母の疾患や肥満などさまざまな原因が考えられます。
胎児の遺伝子の割合が少ないのは、胎盤が小さいことや、母体の肥満により相対的に母体の遺伝子の割合が高くなることなどで起こります。
また、陽性と判定するには低いが、陰性と判定するには高い値が結果として出た場合、いわゆるグレーな判定として出ることも。判定保留だった場合は時間をあけて再検査を行ったり、確定検査を行ったりする場合があります。
NIPTの検査をあきらめる場合もあり、どうしたらよいかの判断は難しいため、遺伝カウンセリングで専門家に相談するとよいでしょう。
NIPTを受けるミネルバクリニックで
NIPTを受けるなら、臨床遺伝専門医のいるミネルバクリニックがおすすめです。
ミネルバクリニックはNIPTの中でも最新のスーパーNIPTを取り扱っており、21トリソミーと18トリソミーの陽性的中率は100%です。妊娠9週から、希望があれば6週から受けられるNIPTを業界随一の対象疾患の広さで実施しています。
また、検査を受けるだけでなく妊婦さんが安心して受検できるさまざまなサポートをご用意。臨床遺伝専門医にいつでも相談できる体制はとても心強いです。
ミネルバクリニックは患者さんに寄り添い、笑顔になれる出産を多く導いてきました。安心してNIPTを受検できるミネルバクリニックをぜひご検討されてはいかがでしょうか。
まとめ
今回はNIPTの精度について解説しました。NIPTは精度が高い検査ですが、確定検査ではないため誤った結果が出る可能性も否定できません。偽陽性、偽陰性となってしまう場合もあります。また、的中率は母体年齢に関連していることも明らかになっています。
NIPTは母体の採血のみで行える負担の少ない検査で、妊娠早期から受検することができるメリットの多い検査です。ミネルバクリニックでは臨床遺伝専門医である院長が女性のライフケアをトータルでサポートしたいという想いを持って、手厚い患者サポートを多数ご用意しています。妊婦さんのさまざまな疑問にも丁寧に対応しており、不安や疑問点はぜひミネルバクリニックへご相談ください。



