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おたふくかぜによる精巣萎縮を乗り越えて父親に ─ 胎児への影響は?

おたふくかぜによる精巣萎縮を乗り越えて父親に ─ 胎児への影響は? | ミネルバクリニック

この記事の要点
  • おたふくかぜによる精巣萎縮を経験した男性でも、健康な子どもを持つことは十分可能です
  • 現在の医学研究では、父親の過去の精巣炎が胎児の先天異常を増やすという証拠はありません
  • 片側の精巣萎縮であれば、もう一方の精巣が正常に機能することで自然妊娠が可能です
  • 不安がある場合は専門医による遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします

はじめに

30代の男性が20代前半でおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)にかかり、ムンプス精巣炎により右側の精巣が萎縮した後、10年経って父親になろうとする際に抱く不安について、最新の医学知見に基づいて詳しく解説いたします。

このような状況にある男性やご夫婦にとって、胎児への影響妊娠の安全性は大きな関心事です。

重要なポイント

結論から申し上げますと、おたふくかぜによる精巣萎縮を経験した男性でも、健康な子どもを持つことは十分可能であり、過去の感染歴が胎児の健康に直接影響する可能性は極めて低いというのが現在の医学的見解です。

妊娠についてご相談したい方へ

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が常駐し、おたふくかぜやその他の感染症の既往歴をお持ちのご夫婦の妊娠計画について専門的な遺伝カウンセリングを提供しています。

2025年6月よりNIPT陽性後の確定検査(絨毛検査・羊水検査)を自院で実施できるようになり、より安心して検査を受けていただけるようになりました。

おたふくかぜと精巣萎縮の関係

ムンプス精巣炎の発症率と症状

おたふくかぜ(ムンプスウイルス感染症)は、耳の下の唾液腺が腫れることで知られるウイルス感染症です。しかし思春期以降の男性が感染すると、約3割の割合で精巣炎(ムンプス精巣炎)を合併します。

30%
思春期以降男性の精巣炎発症率
60-83%
片側性精巣炎の割合
30-50%
精巣萎縮発症率
特徴的な症状
  • 典型的には一側(片方)の精巣のみが腫れる(60~83%が片側性)
  • 陰嚢(睾丸)の強い痛みと腫れ
  • 発熱や全身倦怠感
  • 炎症後の精巣萎縮(約30~50%で発症)

精巣萎縮のメカニズム

精巣萎縮が起こるのは、ウイルスによる炎症で精巣の組織がダメージを受け、精子を作る細胞(精巣の生殖上皮)が破壊されてしまうためです。特に両側の精巣炎だった場合、精巣組織へのダメージは深刻で、不妊になるリスクが30~80%とも言われています。

一方、片側だけの精巣萎縮であれば、もう一方の精巣が正常に機能することで、多くの場合は回復が期待できます。

精巣萎縮が精子の質に与える影響

精子への具体的な影響

精巣萎縮が起きると、以下のような精子への影響が考えられます:

影響の種類 具体的な変化 メカニズム
精子数の減少 産生される精子の総数が減少 精巣の生殖細胞がダメージを受ける
精子運動率の低下 精子の泳ぐ力が弱まる 炎症による影響
精子の奇形率上昇 形態異常な精子が増加 精巣環境の悪化
DNAへのダメージ 遺伝情報の一部切断(断片化) 強い酸化ストレス

血液-精巣関門への影響

炎症性サイトカインが血液-精巣関門を破壊し、抗精子抗体が生成されることがあります。これが免疫的に精子を攻撃し、精子機能をさらに低下させる要因となる場合があります。

男性不妊への影響と現実

不妊リスクの実際

おたふくかぜによる精巣炎は、男性不妊の一因として古くから知られています。しかし、完全に子どもが持てなくなる(永久不妊になる)ケースはまれとされています。

統計データ
  • 成人男性がムンプス精巣炎になると約10~30%に妊娠しづらさが生じる
  • 片側性の場合:多くが自然妊娠可能
  • 両側性の場合:不妊率30~87%

現代医療による対応

自然妊娠が困難な場合でも、現代の医学では以下の選択肢があります:

  • 体外受精
  • 顕微授精
  • その他の補助生殖医療

実際、ムンプス精巣炎後に精子数が大幅に減った男性でも、顕微授精によって父親になった例が数多く報告されています。

胎児への遺伝的リスクは?

医学的見解

結論

現時点で医学的にそのような遺伝的リスクは確認されていません。

根拠となる研究

  • アメリカ・ミネソタ州ロチェスターで1935年から40年間にわたって行われた大規模調査
  • ムンプス精巣炎を患った男性の子ども(特に男児)に生殖器や尿路の先天奇形が増える傾向は見られなかった

なぜ遺伝的影響が少ないのか

自然選択のメカニズム
  1. 精子の質が悪い場合、受精能力が低下
  2. 受精しても発育が途中で止まる可能性が高い
  3. 最終的に出生に至るのは、競争を勝ち抜いた健康な精子由来の胚

重要なポイント:

  • 精子の質低下 ≠ 胎児の先天異常
  • 自然妊娠が成立した場合、胎児への直接的悪影響の証拠はない

健康な妊娠・出産への影響

妊娠経過への影響

父親の過去のおたふくかぜによる精巣萎縮は、妊娠そのものの経過や赤ちゃんの健康に特別な悪影響を及ぼすとは考えにくいです。

妊娠中の赤ちゃんの発育や出産の安全性に影響する主な要因
  • 母体の健康状態
  • 胎児自身の遺伝的要因
  • 妊娠中の感染症予防
  • 適切な妊婦健診

注意すべき点

むしろ重要なのは以下の点です:

  • 母体が妊娠中に感染症にかからないよう注意する
  • 定期的な妊婦健診を受けて胎児の発育を確認する

よくある質問(FAQ)

Q1. おたふくかぜで精巣萎縮になった後、自然妊娠は可能ですか?

はい、多くの場合可能です。

片側の精巣萎縮であれば、もう一方の精巣が正常に機能することで自然妊娠が期待できます。両側の場合でも、完全に不妊になるケースは少なく、現代の補助生殖医療技術により多くの方が父親になっています。

Q2. 父親の精巣萎縮が赤ちゃんの健康に影響しますか?

現在の医学的見解では、直接的な影響はないとされています。

大規模な長期研究により、父親の過去のムンプス精巣炎が胎児の先天異常を増やすという証拠は見つかっていません。自然選択のメカニズムにより、健康な精子が受精に成功するため、生まれてくる赤ちゃんへの影響は極めて少ないと考えられています。

Q3. 妊娠を希望する前に検査は必要ですか?

心配な場合は精液検査をお勧めします。

現在の精子の状態を確認することで、自然妊娠の可能性や必要に応じた治療法の選択ができます。また、専門医による遺伝カウンセリングを受けることで、より安心して妊娠計画を立てることができます。

Q4. 何年経っていても精子への影響は続きますか?

精巣萎縮自体は不可逆的ですが、影響は様々です。

萎縮した精巣の機能は回復しませんが、片側萎縮の場合、もう一方の精巣が代償的に機能することがあります。また、時間の経過と共に精子の質が改善される場合もあります。重要なのは現在の状態を正確に把握することです。

Q5. 自然妊娠が難しい場合の治療選択肢は?

複数の効果的な治療法があります。

  • 人工授精
  • 体外受精
  • 顕微授精(ICSI)
  • 精巣内精子回収術(TESE)との組み合わせ

精子の状態に応じて最適な方法を選択できます。

Q6. パートナーが妊娠中に気をつけることはありますか?

感染症予防が最も重要です。

  • 家族や妊婦がおたふくかぜやその他の感染症にかからないよう注意する
  • 母体の免疫状態を確認し、必要に応じて予防接種を検討する
  • 定期的な妊婦健診を受ける
  • 必要に応じて出生前診断を検討する

Q7. ミネルバクリニックではどのようなサポートが受けられますか?

臨床遺伝専門医による包括的なサポートを提供しています。

  • 専門的な遺伝カウンセリング
  • 最新NIPT検査(COATE法)
  • 確定検査(絨毛検査・羊水検査)の自院実施
  • オンライン対応による全国サポート
  • 個別の状況に応じたリスク評価と説明

ミネルバクリニックでのサポート

ミネルバクリニックの特徴

ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が常駐する非認証施設として、感染症の既往歴がある方の妊娠に関する専門的な遺伝カウンセリングを提供しています。

1

COATE法採用:最新の次世代NIPT技術により自院採用検査の中で最高精度を実現(微細欠失症候群従来検査の陽性的中率70%台→99.9%)

2

臨床遺伝専門医常駐:専門医による遺伝カウンセリング。日本で唯一の非認証施設での臨床遺伝専門医による対応

3

確定検査を自院で対応:2025年6月より産婦人科を併設し、NIPT検査から陽性時の確定検査までワンストップで対応

4

オンライン対応:全国どこからでも受検可能

当院での検査・相談

当院では、以下のような不安をお持ちの方のサポートを行っております:

遺伝カウンセリング
  • 過去の病歴と胎児への影響に関する詳細な説明
  • 最新の医学的知見に基づいた情報提供
  • 個別の状況に応じたリスク評価

出生前診断

  • 必要に応じた各種検査のご提案
  • 検査結果の詳細な説明とカウンセリング


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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