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DUOXA2

承認済シンボル:DUOXA2
遺伝子名:dual oxidase maturation factor 2
参照:
HGNC: 32698
NCBI405753
遺伝子OMIM番号612772
Ensembl :ENSG00000140274
UCSC : uc001zuo.4
AllianceGenome : HGNC : 32698
遺伝子のlocus type :タンパク質をコードする
遺伝子のグループ:
遺伝子座: 15q21.1

遺伝子の概要

DUOX1(606758)およびDUOX2(606759)は、甲状腺濾胞細胞の細胞膜に位置し、甲状腺ホルモン合成に必要な過酸化水素(H₂O₂)の発生を担う触媒コアを構成しています【188450】。過酸化水素は、甲状腺ホルモンの生成に不可欠な役割を果たしており、この触媒コアはその供給源です。

DUOXA2は、常在小胞体(ER)タンパク質であり、DUOX2の成熟および細胞膜への局在に必要不可欠です【Grasberger & Refetoff, 2006】。この補助因子がなければ、DUOX2は適切に機能せず、甲状腺ホルモンの合成が妨げられる可能性があります。

遺伝子と関係のある疾患

Thyroid dyshormonogenesis 5 甲状腺ホルモン合成障害5  274900 AR 3 

遺伝子の発現とクローニング

DUOXA2遺伝子は、デュアルオキシダーゼアクセサリータンパク質2(dual oxidase maturation factor 2)をコードしており、甲状腺ホルモンの合成において重要な役割を果たしています。DUOXA2は、過酸化水素(H₂O₂)を生成する酵素であるDUOX2の補助因子として機能し、甲状腺ホルモンの生合成を助けます。

● DUOXA2の主な特徴
1. タンパク質の役割:
– DUOXA2は、DUOX2と相互作用し、DUOX2が正しく小胞体から細胞膜に移行するために必要なシャペロンタンパク質のように働きます。DUOX2は、甲状腺ホルモン合成に必要な過酸化水素を生成する重要な酵素ですが、その適切な機能にはDUOXA2の支援が不可欠です。
– DUOXA2が不足していたり、変異があったりすると、DUOX2が正しく機能できず、過酸化水素の生成が不十分になり、甲状腺ホルモンの合成が妨げられる可能性があります。

2. 構造:
– DUOXA2は5つの膜貫通領域を持ち、細胞膜や小胞体に局在します。
– N末端が細胞外に位置する逆シグナルアンカー型タンパク質であり、これは細胞内での特定の輸送や局在に関与していることを示唆しています。
– また、3つのN-グリコシル化部位を持っており、これらはタンパク質の安定性や機能に関与している可能性があります。

3. 発現部位:
– DUOXA2は主に甲状腺で高く発現していますが、唾液腺などでも低レベルで発現することがあります。
– ノーザンブロット解析によると、DUOXA2の転写物は約1.5 kbの長さを持ち、甲状腺で最も強く発現しています。他の多くの組織では発現がほとんど見られません。

4. 関連疾患:
– DUOXA2遺伝子の変異は、甲状腺ホルモンの合成に必要な過酸化水素の生成を妨げ、先天性甲状腺機能低下症や甲状腺ホルモン合成障害に関連しています。
– 特に、一過性の先天性甲状腺機能低下症や、DUOX2機能不全に関連する軽度の甲状腺機能低下症などが報告されています。

● DUOXA2の機能と甲状腺ホルモン合成
– 甲状腺ホルモン合成には、ヨウ素の取り込み、活性化、および甲状腺ホルモンの生成が関わりますが、その過程でDUOX2が生成する過酸化水素が重要な役割を果たします。DUOXA2はこのDUOX2の機能を補助するため、DUOXA2の異常があると甲状腺ホルモン合成が正常に行われず、甲状腺機能低下症を引き起こします。

このように、DUOXA2遺伝子は、甲状腺ホルモン合成に不可欠なタンパク質をコードしており、甲状腺の健康に深く関わる重要な遺伝子です。

遺伝子の構造

GGrasbergerとRefetoff(2006年)の研究によると、DUOXA2遺伝子には6つのエクソンが存在することが明らかにされました。エクソンは、遺伝子の中で実際にコードされる部分であり、最終的なタンパク質合成に重要な役割を果たします。

● 研究の詳細
1. 6つのエクソンの存在:
– DUOXA2遺伝子には6つのエクソンが含まれており、これらのエクソンが正しくスプライシングされて、最終的にDUOXA2タンパク質をコードする転写物が形成されます。このタンパク質は、甲状腺ホルモン合成におけるDUOX2の補助因子として重要な役割を果たします。

2. 転写開始部位の特徴:
– DUOXA2の推定される転写開始部位は、GCに富む領域に位置しています。GCに富むプロモーター領域は、一般的に遺伝子の転写を効率的に行うために重要です。このようなGCリッチ領域は、特にハウスキーピング遺伝子や調節が厳密にコントロールされている遺伝子でよく見られ、DUOXA2遺伝子の転写が調整されていることを示唆します。

● まとめ
DUOXA2遺伝子は、6つのエクソンを持つ構造をしており、その転写開始部位はGCに富んだ領域に位置しています。これらの特徴は、DUOXA2が甲状腺機能において重要な役割を果たすタンパク質であることを示しており、特にDUOX2との相互作用によって甲状腺ホルモン合成を助ける機能を持っています。

マッピング

GrasbergerとRefetoff(2006年)の研究では、DUOXA2遺伝子が15q15染色体上の重要な位置にあることが明らかにされました。この遺伝子は、DUOX1およびDUOX2遺伝子の間に位置しており、これらの遺伝子の関係性や機能において興味深い配置を示しています。

● 研究の主な発見
1. 染色体上の位置:
– DUOXA2遺伝子は、15番染色体の15q15領域に存在し、16kbの領域に位置しています。この領域は、DUOX1およびDUOX2という2つのデュアルオキシダーゼ遺伝子の間に挟まれています。

2. DUOXA2とDUOX2の配置:
– DUOXA2遺伝子とDUOX2遺伝子は、逆方向の鎖に位置し、互いに135bpという非常に近い距離で向かい合わせに配置されています。これは、転写の方向が異なるにもかかわらず、これらの遺伝子が密接に関連して機能する可能性を示唆しています。

● 配置の意義
– 密接な遺伝子配置: DUOXA2とDUOX2のように、近接して逆方向に配置される遺伝子ペアは、しばしば相互に関連した機能を持つことがあります。DUOXA2は、DUOX2の補助因子として機能し、DUOX2が過酸化水素を生成して甲状腺ホルモン合成を助けるのに対し、DUOXA2はDUOX2の適切な細胞内輸送や活性化に寄与します。

– 遺伝的調節: 2つの遺伝子が物理的に近接していることは、同じ調節機構やシグナルによってその発現が制御される可能性が高いことを意味します。つまり、DUOXA2とDUOX2は一緒に発現し、甲状腺機能における協調的な役割を果たす可能性が高いです。

この研究により、DUOXA2遺伝子の染色体上の位置とDUOX2遺伝子との密接な関係が明らかにされ、甲状腺ホルモン合成におけるこれらの遺伝子の協調的な役割がさらに深く理解されました。

進化

GrasbergerとRefetoff(2006年)の研究は、DUOX(デュアルオキシダーゼ)およびその補助因子であるDUOXAの進化的関連性を示したもので、これらの遺伝子が動物の進化において早い段階で出現したことを明らかにしました。

● DUOX/DUOXAの進化的関連性
– DUOXとDUOXAの関連性: 研究によると、DUOX(DUOX1およびDUOX2)とその補助因子DUOXA(DUOXA1およびDUOXA2)は、甲状腺ホルモンの合成における過酸化水素の生成に関与する重要なタンパク質群です。DUOXAは、DUOXタンパク質の適切なフォールディングや細胞膜への輸送を助けるシャペロン的な役割を果たします。

– 進化的起源: 棘皮動物(ウニやヒトデなど)が分岐する前に、DUOXとDUOXAの双方向の関連性がすでに確立していたことが示されています。これは、これらの遺伝子の機能が非常に古くから存在しており、進化的に保存されてきたことを示唆しています。この関連性は、動物の進化において初期の段階で、過酸化水素を生成する酵素系が特定の機能を持つために進化したと考えられます。

● 棘皮動物の分岐以前の出現
– 棘皮動物の分岐: 棘皮動物は、脊椎動物や他の動物群との分岐が約5億年前に起こったとされています。この分岐以前に、DUOXとDUOXAが既に機能的に結びついていたことは、これらの遺伝子が進化の非常に古い段階で重要な役割を果たしていたことを示します。

– 保存された機能: 進化の過程で、DUOX/DUOXAの相互作用がさまざまな動物群で保存され続け、特に甲状腺機能においてはその役割が重要です。この関連性が長い間進化的に維持されてきたことは、DUOX/DUOXA系が生物の生命活動に不可欠であることを意味します。

この研究は、DUOX/DUOXA系の古代の起源を明らかにし、これらの遺伝子が動物の進化において果たしてきた重要な役割を示しています。

遺伝子の機能

GrasbergerとRefetoff(2006年)の研究では、DUOX2とその補助因子であるDUOXA2が、過酸化水素(H₂O₂)生成においてどのように相互作用しているかについて明らかにされています。この研究は、DUOX2の機能的発現と過酸化水素生成にはDUOXA2の共発現が不可欠であることを示しています。

● 研究の主な発見
1. DUOX2とDUOXA2の共発現の必要性:
– GrasbergerとRefetoffは、ヒトのHeLa細胞にDUOX2とDUOXA2をそれぞれトランスフェクションして発現させた実験を行いました。この実験で明らかになったのは、DUOX2が単独で発現しても過酸化水素の生成や細胞膜への局在が起こらないということです。
– 一方で、DUOX2とDUOXA2の共発現が行われた場合、過酸化水素の生成が確認され、DUOX2が正しく細胞膜に局在することが示されました。これは、DUOXA2がDUOX2の適切なフォールディングや細胞内輸送を補助し、最終的にDUOX2が膜上で機能を発揮するために必要であることを示しています。

2. DUOXA2の役割:
– DUOXA2は、DUOX2が正しく細胞膜に組み込まれるために必要なシャペロンタンパク質として機能します。DUOXA2がないと、DUOX2は適切に細胞膜まで輸送されず、機能的に活性化されません。その結果、甲状腺ホルモンの合成に必要な過酸化水素も生成されません。

● 重要性
この研究は、DUOX2が甲状腺ホルモンの合成において単独で機能するわけではなく、DUOXA2との相互作用が不可欠であることを明らかにしました。この知見は、甲状腺ホルモン合成に関連する疾患(特にDUOX2やDUOXA2の遺伝的変異に関連する甲状腺機能低下症など)の理解を深め、将来的な治療法の開発に役立つ可能性があります。

分子遺伝学

Zamproni ら(2008年)の研究では、先天性甲状腺機能低下症および部分的なヨウ素有機化障害(274900)を患う患者において、DUOXA2遺伝子に関連する遺伝的異常が発見されました。この研究で、特にDUOXA2遺伝子(612772.0001)におけるナンセンス変異のホモ接合性が確認されました。

● 主な発見
1. ナンセンス変異のホモ接合性:
– Zamproniらは、DUOXA2遺伝子の特定のナンセンス変異(612772.0001)を持つ患者で、ホモ接合性(両親から変異遺伝子をそれぞれ受け継ぎ、両方のアレルが変異を持っている状態)を発見しました。
– ナンセンス変異は、遺伝子の読み取り過程を途中で終了させるタイプの変異で、タンパク質の合成が不完全なまま終わり、機能的に完全なタンパク質が生成されない原因となります。この場合、DUOXA2タンパク質の正常な機能が失われます。

2. DUOXA2の機能喪失:
– DUOXA2の機能が失われると、DUOX2の正しい細胞内輸送や活性化が妨げられ、過酸化水素(H₂O₂)の生成が正常に行われません。この過酸化水素は甲状腺ホルモンの合成に必要な物質であるため、DUOXA2の欠損により、甲状腺ホルモンの合成が阻害されます。
– これにより、患者は先天性甲状腺機能低下症を発症し、部分的なヨウ素有機化障害も生じます。甲状腺ホルモンの不足は、発育や代謝に影響を与えます。

3. 先天性甲状腺機能低下症の発症:
– DUOXA2遺伝子におけるナンセンス変異による機能不全は、甲状腺ホルモン合成に深刻な影響を及ぼします。この結果、先天性甲状腺機能低下症を引き起こし、適切な治療がなければ発育や知的発達に影響を与える可能性があります。

● まとめ
Zamproniら(2008年)の研究は、DUOXA2遺伝子のナンセンス変異(612772.0001)のホモ接合性が、先天性甲状腺機能低下症と部分的なヨウ素有機化障害に関連していることを明らかにしました。この発見は、甲状腺ホルモン合成におけるDUOXA2の重要性を示しており、遺伝的要因が甲状腺疾患の発症にどのように関与しているかを理解する上で重要です。

アレリックバリアント

.0001 甲状腺ホルモン合成障害 5
DUOXA2、TYR246TER
Zamproni ら(2008年)は、非近親者間の両親から生まれた先天性甲状腺機能低下症および部分的なヨード有機化障害(TDH5; 274900)の中国人患者について報告しています。DUOXA2遺伝子のヌクレオチド738におけるC-to-G転換がホモ接合型であり、その結果、タンパク質の246番目のコドンでチロシンがテルルに置換(Y246X)していました。膜貫通ヘリックス5およびC末端細胞質ドメインを欠く短縮型DUOXA2タンパク質は、in vitroではDUOX2(606759)を再構成する活性がありませんでした。ヘテロ接合体の変異キャリアは、新生児TSHスクリーニングで陰性結果が得られたことなど、甲状腺機能は正常でした。

参考文献

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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