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BLOC1S6遺伝子と関連疾患:ヘルマンスキー・パドラック症候群9型

BLOC1S6遺伝子(BLOC1S6 gene)は、リソソーム関連オルガネラ複合体1のサブユニット6をコードする遺伝子です。この遺伝子の変異は、ヘルマンスキー・パドラック症候群9型(Hermansky-Pudlak syndrome 9, HPS9)という常染色体劣性(潜性)遺伝疾患を引き起こします。本記事では、BLOC1S6遺伝子の機能と、関連する疾患について詳しく解説します。

専門家によるサポートが必要ですか?
遺伝性疾患に関する不安や疑問をお持ちの方は、遺伝カウンセリングをご検討ください。ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が丁寧にご説明いたします。

BLOC1S6遺伝子とは

BLOC1S6遺伝子(別名:PLDN、パリディン)は、染色体15q21.1に位置し、リソソーム関連オルガネラの生合成に関わる重要なタンパク質をコードしています。この遺伝子は以下のような別名でも知られています:

  • BLOC1, SUBUNIT 6(BLOS6)
  • PALLIDIN(PLDN)
  • PALLID, MOUSE, HOMOLOG OF
  • HPS9 GENE

BLOC1S6遺伝子によってコードされるパリディンタンパク質は、172アミノ酸からなる高度に荷電した分子で、生体内のほとんどの細胞で発現しています。特に、このタンパク質は細胞内の小胞輸送やオルガネラの生合成において重要な役割を果たしています。

BLOC1S6遺伝子の機能

BLOC1S6遺伝子がコードするパリディンタンパク質は、BLOC1(Biogenesis of Lysosome-related Organelles Complex-1)と呼ばれる複合体の重要な構成要素です。この複合体は、以下のような重要な生理学的プロセスに関与しています:

  • メラノソーム(色素細胞内の色素を含む構造)の形成
  • 血小板濃染顆粒の生合成
  • リソソーム関連オルガネラの形成と機能
  • 細胞内小胞の輸送とドッキング

研究によると、パリディンはシンタキシン-13(STX12)と相互作用し、小胞のドッキングや融合を仲介する重要な役割を担っています。また、パリディン自身も自己会合し、アクチンフィラメントとも相互作用することが確認されています。

ご存知ですか?
BLOC1S6遺伝子の変異による疾患は非常にまれですが、保因者検査で検出可能です。ミネルバクリニックの拡大版保因者検査では、このような稀な遺伝性疾患の保因者状態を確認できます。

ヘルマンスキー・パドラック症候群9型(HPS9)

ヘルマンスキー・パドラック症候群9型(HPS9)は、BLOC1S6遺伝子の変異によって引き起こされる常染色体劣性(潜性)遺伝性疾患です。この症候群は以下のような臨床症状を特徴とします:

  • 眼皮膚白皮症(OCA):皮膚や髪の色素減少、虹彩の色素減少
  • 眼振(目が不随意に動く)
  • 血小板機能障害:出血時間の延長、紫斑形成のしやすさ
  • 免疫機能障害(一部の患者で報告)

ヘルマンスキー・パドラック症候群はいくつかのタイプに分類され、それぞれ異なる遺伝子の変異によって引き起こされます。HPS9型は特にBLOC1S6遺伝子の変異に関連しています。

BLOC1S6遺伝子の病的バリアント

これまでに報告されているBLOC1S6遺伝子の主な病的バリアント(変異)には以下のようなものがあります:

  • c.232C>T(Q78X):78番目のグルタミンが終止コドンに変化する無意味変異
  • c.285_286dupTC:2塩基の重複によるフレームシフト変異(His96LeufsTer22)
  • c.200C>G(S67X):67番目のセリンが終止コドンに変化する無意味変異
  • c.319_320delGAinsAT(E107M):107番目のグルタミン酸がメチオニンに置換されるミスセンス変異
  • c.148G>T(E50X):50番目のグルタミン酸が終止コドンに変化する無意味変異
  • c.351dupT(Ile118TyrfsTer10):1塩基の重複によるフレームシフト変異

これらの変異は、パリディンタンパク質の機能を損なうことで、リソソーム関連オルガネラの形成障害を引き起こし、ヘルマンスキー・パドラック症候群9型の症状につながります。

遺伝形式について
ヘルマンスキー・パドラック症候群9型は常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとります。これは、両親からそれぞれ変異した遺伝子を1つずつ受け継いだ場合(ホモ接合体または複合ヘテロ接合体)にのみ発症します。片方の親からのみ変異遺伝子を受け継いだ場合(ヘテロ接合体)は、通常は症状が現れず、保因者となります。

BLOC1S6遺伝子の保因者検査

ミネルバクリニックでは、BLOC1S6遺伝子を含む拡大版保因者検査を提供しています。この検査は、将来お子さまを持つことを考えているカップルや個人の方に適しており、重篤な遺伝性疾患の保因者であるかどうかを調べることができます。

遺伝子 疾患 遺伝形式 対象人口 保因者頻度 検出率
BLOC1S6 ヘルマンスキー・パドラック症候群9型 常染色体劣性(潜性) 一般集団 500人に1人未満 99%

保因者検査により、BLOC1S6遺伝子の変異を持つ保因者であるかどうかを確認することで、将来のお子さまがヘルマンスキー・パドラック症候群9型を発症するリスクを評価することができます。

保因者検査が重要な理由
ヘルマンスキー・パドラック症候群9型のような稀な遺伝性疾患は、両親がともに保因者である場合、子どもが発症するリスクが25%になります。事前に保因者状態を知ることで、適切な家族計画や遺伝カウンセリングを受けることができます。

まとめ

BLOC1S6遺伝子は、リソソーム関連オルガネラの生合成に重要な役割を果たすタンパク質をコードしています。この遺伝子の変異は、眼皮膚白皮症や血小板機能障害を特徴とするヘルマンスキー・パドラック症候群9型を引き起こします。

ミネルバクリニックでは、拡大版保因者検査を通じて、BLOC1S6遺伝子を含む多くの遺伝子の変異を検出し、遺伝性疾患のリスク評価を行うことができます。将来お子さまを持つことを考えているカップルや個人の方は、保因者検査を受けることで、適切な家族計画や医療的対応を検討することができます。

参考文献

  1. Huang L, et al. (1999). The mouse pallid gene encodes a novel protein associated with the lysosomal biogenesis and platelet storage pool deficiency. Nature Genetics, 23(3), 329-332.
  2. Cullinane AR, et al. (2011). Molecular investigations to determine the functional role of pallidin. Blood Cells Mol Dis, 46(3), 186-194.
  3. Badolato R, et al. (2012). Congenital HPS9 as a novel manifestation of Hermansky-Pudlak syndrome, with immunodeficiency. Blood, 120(11), 2096-2100.
  4. Yousaf S, et al. (2016). Recessive BLOC1S6 mutations cause Hermansky-Pudlak syndrome (HPS). J Invest Dermatol, 136(6), 1237-1240.
  5. Okamura K, et al. (2018). A novel homozygous mutation in BLOC1S6 causes Hermansky-Pudlak syndrome. Br J Dermatol, 179(3), 786-788.
  6. Michaud V, et al. (2021). Novel compound heterozygous mutations in BLOC1S6 cause Hermansky-Pudlak syndrome. Pigment Cell Melanoma Res, 34(3), 617-621.
  7. Liu B, et al. (2021). Compound heterozygous mutations in BLOC1S6 underlie Hermansky-Pudlak syndrome in a Chinese boy. Mol Genet Genomic Med, 9(7), e1721.
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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