目次
AMH遺伝子(抗ミュラー管ホルモン遺伝子)は、男性の性分化において重要な役割を果たす遺伝子です。この遺伝子の変異は、ミュラー管遺残症候群(PMDS)タイプIを引き起こすことがあります。本記事では、AMH遺伝子の機能、関連疾患、および遺伝子検査の重要性について詳しく解説します。
AMH遺伝子の基本情報
AMH遺伝子(Anti-Mullerian Hormone)は、別名MIS(Mullerian-Inhibiting Substance)またはMIF(Mullerian-Inhibiting Factor)とも呼ばれ、染色体19p13.3に位置しています。
この遺伝子は以下の特徴を持っています:
- 5つのエクソン(遺伝子の発現部分)から構成
- 560アミノ酸のポリペプチドをコード
- C末端ドメインはヒトの形質転換成長因子β(TGF-β)と高い相同性を示す
AMH遺伝子の機能と役割
AMH遺伝子は、男性の性分化において極めて重要な役割を担っています。胎児期の精巣から分泌される抗ミュラー管ホルモンは、ミュラー管(女性の内生殖器に発達する構造)の退縮を促します。
男性の性分化には主に2つのホルモンが関与しています:
- テストステロン:ライディッヒ細胞から分泌され、外性器の男性化や前立腺の成長を促進
- 抗ミュラー管ホルモン(AMH):セルトリ細胞から分泌され、ミュラー管の退縮を引き起こす
AMHは出生後の生物学的作用についてはあまり明らかになっていませんが、最近の研究では、運動ニューロンの生存をサポートする可能性や、卵巣機能にも影響を与えることが示唆されています。
AMH遺伝子の主な変異(バリアント)
PMDS タイプIを引き起こすAMH遺伝子の変異は非常に多様で、特にエクソン1とエクソン5の3’側半分に好発します。主な変異として以下が報告されています:
- Glu358Ter(E358X):エクソン5の2096G-T変換によるナンセンス変異
- エクソン2の14bp欠失:オープンリーディングフレームを破壊する
- Arg191Ter(R191X):1345C-T変異によるナンセンス変異
- エクソン5の23bp重複:ヌクレオチド2349から始まる
これらの変異は、AMHタンパク質の産生低下または機能喪失を引き起こし、結果としてミュラー管の退縮が起こらず、PMDSの症状が現れます。
AMH遺伝子の臨床的意義
性分化疾患の診断
血清AMHレベルの測定は、以下のような状況で重要な診断的価値を持ちます:
- 触知不能な性腺を持つ思春期前の子どもの精巣状態を判断
- 両側停留精巣を持つ男児の無精巣症と停留精巣を区別
- 性分化障害(インターセックス)の診断と病因鑑別
女性の卵巣機能と閉経予測
AMHは、卵巣機能の指標として女性医療でも重要です:
- 卵巣予備能の評価
- 閉経年齢の予測(AMHレベルの低下パターンが閉経年齢と相関)
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など、卵巣関連疾患のフェノタイプ評価
AMH遺伝子のI49S多型が、PCOSの重症度に影響を与える可能性も示唆されています。
AMH遺伝子検査の重要性
AMH遺伝子検査は、以下のような状況で重要な役割を果たします:
- PMDSが疑われる男児の確定診断
- 停留精巣や鼠径ヘルニアを持つ男児の精査
- 性分化障害の原因解明
- 家族計画のための保因者検査
拡大版保因者検査で早期に知ることができます
ミネルバクリニックでは、AMH遺伝子を含む拡大版保因者検査を提供しています。この検査は、将来のお子さまの健康に関わる遺伝的リスクを事前に知るための貴重な情報を提供します。
AMH遺伝子と遺伝カウンセリング
AMH遺伝子の変異に関連する遺伝的リスクを理解するためには、専門的な遺伝カウンセリングが重要です。ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が常駐し、以下のようなサポートを提供しています:
- AMH遺伝子変異に関する詳細な情報提供
- 遺伝子検査の適応と限界についての説明
- 検査結果の解釈と今後の対応についてのアドバイス
- 家族への影響や家族計画についての相談
専門的な遺伝カウンセリングを受けましょう
遺伝子検査の結果を正しく理解し、適切な医療決定を行うためには、専門家による遺伝カウンセリングが重要です。ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医による丁寧な遺伝カウンセリングを提供しています。
AMH遺伝子についてのまとめ
AMH遺伝子は男性の性分化において重要な役割を担い、その変異はミュラー管遺残症候群(PMDS)タイプIを引き起こします。また、AMHの測定は性分化疾患の診断や女性の卵巣機能評価にも有用です。
遺伝子検査を通じてAMH遺伝子の変異を特定することで、正確な診断や適切な治療計画、そして将来の家族計画に関する重要な情報を得ることができます。
ミネルバクリニックでは、拡大版保因者検査でAMH遺伝子を含む多数の遺伝子を検査し、臨床遺伝専門医による専門的な遺伝カウンセリングを提供しています。遺伝的なリスクや不安がある方は、ぜひご相談ください。
参考文献
- Online Mendelian Inheritance in Man, OMIM®. Johns Hopkins University, Baltimore, MD. MIM Number: 600957. Available at: www.omim.org/
- Picard JY, et al. (1986). Cloning and expression of cDNA for anti-müllerian hormone. Proc Natl Acad Sci USA. 83(15):5464-5468.
- Rey R, et al. (1999). Anti-Müllerian hormone in children with various types of intersexuality. J Clin Endocrinol Metab. 84(2):627-631.
- Imbeaud S, et al. (1994). Molecular genetics of persistent müllerian duct syndrome: a study of 19 families. Hum Mol Genet. 3(1):125-131.
- Imbeaud S, et al. (1996). Diversity of genes causing male pseudohermaphroditism with mullerian duct persistence. Hum Reprod. 11(Suppl 1):1-3.

ミネルバクリニックでは、「未来のお子さまの健康を考えるすべての方へ」という想いのもと、東京都港区青山にて保因者検査を提供しています。遺伝性疾患のリスクを事前に把握し、より安心して妊娠・出産に臨めるよう、当院では世界最先端の特許技術を活用した高精度な検査を採用しています。これにより、幅広い遺伝性疾患のリスクを確認し、ご家族の将来に向けた適切な選択をサポートします。
保因者検査は唾液または口腔粘膜の採取で行えるため、採血は不要です。 検体の採取はご自宅で簡単に行え、検査の全過程がミネルバクリニックとのオンラインでのやり取りのみで完結します。全国どこからでもご利用いただけるため、遠方にお住まいの方でも安心して検査を受けられます。
まずは、保因者検査について詳しく知りたい方のために、遺伝専門医が分かりやすく説明いたします。ぜひ一度ご相談ください。カウンセリング料金は30分16500円です。
遺伝カウンセリングを予約する



