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ADGRG1遺伝子と脳発達:大脳皮質形成異常との関連性について

ADGRG1遺伝子(別名GPR56)は、大脳皮質の発達において重要な役割を果たす接着型Gタンパク質共役受容体をコードしています。この遺伝子の変異は、両側前頭頭頂多小脳回(BFPP)や両側シルビウス裂周囲多小脳回などの脳形成異常を引き起こすことが知られています。本記事では、ADGRG1遺伝子の機能、関連疾患、および遺伝子検査の重要性について詳しく解説します。

ADGRG1遺伝子の基本情報と構造

ADGRG1遺伝子(Adhesion G Protein-Coupled Receptor G1)は、染色体16q21に位置し、複雑な遺伝子構造を持っています。この遺伝子は以前GPR56(G Protein-Coupled Receptor 56)やTM7XN1(7-Transmembrane Protein with No EGF-like N-Terminal Domains 1)としても知られていました。ゲノム座標(GRCh38)では16:57,619,738-57,665,567に位置しています。

ADGRG1遺伝子は17の異なる転写開始部位を持ち、それぞれが異なるノンコーディング第1エクソンから始まります。これらの第1エクソン(1aから1m)は以前から報告されていたノンコーディングエクソン1の5’側に位置し、別の第1エクソン(1nから1p)はノンコーディングエクソン2とエクソン3の間に位置しています。エクソン3には翻訳開始部位があり、終止コドンはエクソン15に存在します。各代替第1エクソンの上流には調節エレメントが存在することが示唆されています。

遺伝子構造の研究により、ADGRG1遺伝子の複雑さが明らかになっています。全体として14のエクソンを含み、15kbの領域をカバーし、3kbのオープンリーディングフレームを持つことが報告されています。第2コーディングエクソンと第10コーディングエクソンは選択的スプライシングを受け、第3コーディングエクソンには代替翻訳開始部位が含まれています。

この遺伝子からは693アミノ酸のタンパク質が主に生成されますが、選択的スプライシングによって少なくとも4つのバリアントが生じることが知られています。バリアント1は第1膜貫通ドメイン後の細胞内ループ内の6アミノ酸を欠く687アミノ酸のタンパク質をコードします。バリアント2は第1細胞内ループの6アミノ酸欠失に加えて、シグナルペプチド切断部位周辺の領域に5つの追加アミノ酸を含む692アミノ酸のタンパク質をコードします。バリアント3は細胞外ドメインの170アミノ酸を欠く523アミノ酸のタンパク質をコードし、バリアント4はフレームシフトを含み、第3コーディングエクソンの新しい翻訳開始部位を使用して518アミノ酸のタンパク質をコードします。

これらのバリアントの発現パターンは組織によって異なることが報告されています。例えば、12週齢のヒト胎児脳では、エクソン1m(e1m)が全ADGRG1転写物の半分以上を占めるのに対し、成人脳ではエクソン1h(e1h)が主要な転写物となります。このような発現パターンの違いが脳の発達や機能に重要な役割を果たしていると考えられています。

ADGRG1遺伝子の機能と発現

ADGRG1タンパク質は、造血幹細胞や神経前駆細胞で発現しており、多能性細胞の同一性や組織発達、特に大脳皮質の発達において重要な役割を果たしています。ADGRG1は接着型Gタンパク質共役受容体(GPCRs)ファミリーに属し、そのメンバーは接着タンパク質との相同性を共有する非常に大きなN末端領域を特徴としています。

胎児期の脳発達において、ADGRG1は大脳皮質の脳室帯および脳室下帯の神経前駆細胞で優先的に発現しています。マウスの研究では、胚発生12日目、14日目、16日目の内側および外側神経節隆起の増殖領域でも発現が観察されています。これらの領域では、大脳皮質ニューロンの最大3分の1、主に介在ニューロンが形成され、その後大脳皮質やその他の脳領域へと非放射状に移動します。

成体マウスの脳では、ADGRG1の発現は灰白質よりも白質に多く見られる散在した細胞に限定されていますが、歯状回や嗅球へつながる吻側移動流の脳室下帯など、成体脳の神経新生を示す領域ではより強い発現が観察されています。これらの発現パターンは、ADGRG1が神経前駆細胞の維持や分化、そして神経細胞の移動において重要な役割を果たしていることを示唆しています。

ヒトのADGRG1は心臓、腎臓、精巣、膵臓、甲状腺、骨格筋など様々な組織で発現していることが報告されています。この広範な発現パターンは、ADGRG1が複数の組織系で多様な機能を持つことを示唆しています。

細胞レベルでは、ADGRG1タンパク質は小胞体で重要な翻訳後修飾を受けます。GPCR切断部位(GPS)を介して自己タンパク質分解を起こし、N末端の接着エクトドメイン(ECDフラグメント、アルファサブユニットと呼ばれる)とC末端のシグナル伝達7回膜貫通(7TM)部分(ベータサブユニットと呼ばれる)に分割されます。この分割後、アルファサブユニットとベータサブユニットは細胞表面で非共有結合的に会合します。

この自己タンパク質分解過程はADGRG1の適切な細胞内輸送と機能に不可欠です。アルファサブユニットには多くのN結合型およびO結合型糖鎖修飾部位が存在し、二次的な切断イベントによって膜から放出されることがありますが、膜結合型アルファサブユニットもリガンドと相互作用して細胞接着を促進します。また、各サブユニットの膜局在は若干異なり、アルファサブユニットは非ラフト画分に局在するのに対し、ベータサブユニットは脂質ラフトと非ラフト画分の両方に局在することが報告されています。

機能的研究により、ADGRG1のN末端はレセプターの活性を制約し、N末端と細胞外リガンドとの相互作用や、N末端の同種性トランス-トランス会合がこの抑制的影響を取り除き、レセプターシグナル伝達を活性化する可能性があるというモデルが提案されています。これらの複雑な分子メカニズムは、大脳皮質のパターン形成においてADGRG1が果たす重要な役割に不可欠であると考えられています。

ADGRG1遺伝子の主要なバリアント

ADGRG1遺伝子には多くの病原性バリアントが報告されています。これらのバリアントには、ミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライシング変異、フレームシフト変異などが含まれます。主要なバリアントとしては、R38W、Y88C、C91S、C346S、R565W、E496Kなどが挙げられます。

これらの変異は異なるメカニズムを通じて疾患を引き起こします。例えば、細胞表面受容体の発現低下、自己タンパク質分解の障害、受容体分泌の減少、リガンドとの相互作用不全、膜脂質ラフトにおけるベータサブユニットの異常分布などが報告されています。

ADGRG1遺伝子と遺伝子検査

ADGRG1遺伝子の変異が疑われる場合、遺伝子検査が診断の確定に役立ちます。特に発達遅滞、てんかん、脳形成異常が認められる場合は、ADGRG1を含む遺伝子パネル検査や全エクソーム解析が推奨されます。

ミネルバクリニックでは、拡大版保因者検査においてADGRG1遺伝子を含む多数の遺伝子を検査しています。この検査は、将来子どもを持つ可能性のあるカップルが、自分たちが保因者であるかどうかを知るのに役立ちます。

ADGRG1遺伝子に関する遺伝カウンセリング

ADGRG1遺伝子の変異に関連する疾患は常染色体劣性遺伝形式をとるため、両親がともに保因者である場合、子どもが疾患を発症するリスクは25%となります。そのため、家族計画を考えている方や、家族に疾患既往がある方には、専門的な遺伝カウンセリングが推奨されます。

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が常駐しており、遺伝カウンセリングを通じて個々の状況に合わせた情報提供や支援を行っています。

まとめ

ADGRG1遺伝子は大脳皮質の発達において重要な役割を果たしており、その変異は複合性大脳皮質形成異常を引き起こします。このような遺伝子の理解が進むことで、関連疾患の診断や治療法の開発に貢献することが期待されています。

遺伝子検査に関するご質問や遺伝性疾患についてのご相談は、ミネルバクリニックの臨床遺伝専門医にお気軽にご連絡ください。専門的な知識と経験に基づいた適切なアドバイスを提供いたします。

ADGRG1遺伝子を含む遺伝子検査や遺伝カウンセリングについてのご相談は、ミネルバクリニックまでお問い合わせください。

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保因者検査は唾液または口腔粘膜の採取で行えるため、採血は不要です。 検体の採取はご自宅で簡単に行え、検査の全過程がミネルバクリニックとのオンラインでのやり取りのみで完結します。全国どこからでもご利用いただけるため、遠方にお住まいの方でも安心して検査を受けられます。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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