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ACSF3遺伝子とは?関連疾患と保因者検査の重要性について

ACSF3遺伝子は、ミトコンドリア内で脂肪酸代謝に関わる重要な酵素をコードしており、この遺伝子の変異は合併性マロン酸・メチルマロン酸尿症(CMAMMA)を引き起こします。この記事では、ACSF3遺伝子の機能、関連疾患、そして保因者検査の重要性について解説します。当院では臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングと拡大版保因者検査を通じて、ACSF3遺伝子変異に関する情報提供と支援を行っています。

ACSF3遺伝子とは

ACSF3遺伝子(Acyl-CoA Synthetase Family Member 3)は、ヒトの16番染色体長腕の24.3領域(16q24.3)に位置している遺伝子です。ゲノム座標(GRCh38参照配列)では、16番染色体の89,093,852から89,156,233の位置に存在しています。この遺伝子は11個のエクソンから構成され、576個のアミノ酸からなるタンパク質をコードしています。

ACSF3遺伝子は、肝臓、腎臓、褐色脂肪組織などの代謝が活発な組織で特に多く発現しています。マウスを用いた研究では、褐色脂肪組織で最も高い発現が見られ、次いで腎臓、肝臓の順に発現が確認されています。脳、骨格筋、心臓では比較的低い発現が報告されています。これらの発現パターンは、ACSF3タンパク質が代謝において重要な役割を担っていることを示唆しています。

ACSF3遺伝子がコードするタンパク質は、アシルCoA合成酵素ファミリーに属しています。アシルCoA合成酵素は、脂肪酸とCoA(コエンザイムA)の間でチオエステル結合を形成する活性化反応を触媒します。この反応は、脂肪酸が以下のような重要な機能を果たすために不可欠です:

  • 細胞膜の構成成分となる
  • シグナル伝達分子として機能する
  • エネルギー源として貯蔵・利用される
  • 様々な代謝経路の中間体となる

ACSF3タンパク質には、アシルCoA合成酵素に特徴的な5つのモチーフ(I〜V)が存在します。これらのモチーフはそれぞれ、AMP結合(モチーフI)、構造変化と触媒機能(モチーフII)、基質結合(モチーフIIIとIV)、触媒作用(モチーフV)などの重要な機能を担っています。ACSF3遺伝子変異によるCMAMMA患者の多くでは、これらの保存されたモチーフ領域に変異が見られ、酵素機能に重大な影響を与えることが分かっています。

ACSF3タンパク質の最初の59アミノ酸はミトコンドリアへの移行シグナル配列と予測されています。実際に、ACSF3を過剰発現させた線維芽細胞を用いた免疫染色実験では、ACSF3タンパク質がミトコンドリアに局在することが確認されています。また、C末端にGFPを融合させたACSF3タンパク質を用いた実験でも、ミトコンドリアへの局在が示されています。このことから、ACSF3はミトコンドリア内で機能するタンパク質であり、ミトコンドリア内での脂肪酸代謝において重要な役割を担っていると考えられています。

系統学的解析によると、ヒトのACSF3タンパク質は、他のヒトACSファミリーメンバーよりも、Bradyrhizobium japonicum(根粒菌の一種)のマロニルCoA合成酵素に構造的に近いことが示されています。このことは、ACSF3がマロニルCoA合成酵素(MCS)酵素群に分類されることを支持しています。

ACSF3遺伝子の働き

ACSF3タンパク質は、主に以下の2つの基質に対して活性を示すことが研究により明らかになっています:

  1. マロン酸:ACSF3はマロン酸をマロニルCoAに変換します。この反応はATP、Mg2+、CoAの存在下で進行します。
  2. メチルマロン酸:ACSF3はメチルマロン酸をメチルマロニルCoAに変換しますが、マロン酸に比べると活性は低いことが報告されています。

これらの研究結果から、ACSF3はミトコンドリア内のメチルマロニルCoAおよびマロニルCoA合成酵素として機能し、ミトコンドリア内脂肪酸合成の最初のステップを触媒する酵素であると考えられています。

ACSF3遺伝子がコードする酵素の活性が失われると、マロン酸とメチルマロン酸が代謝されずに体内に蓄積し、尿中に排泄されるようになります。この状態が合併性マロン酸・メチルマロン酸尿症(CMAMMA)と呼ばれる代謝異常症を引き起こします。

ACSF3遺伝子の変異による疾患

合併性マロン酸・メチルマロン酸尿症(CMAMMA)

合併性マロン酸・メチルマロン酸尿症(Combined Malonic and Methylmalonic Aciduria; CMAMMA)は、ACSF3遺伝子の両アレルの変異によって引き起こされる常染色体劣性遺伝形式の代謝疾患です。

CMAMMAの臨床症状は非常に多様で、患者によって大きく異なります:

  • 無症状の場合(新生児スクリーニングでのみ発見される)
  • 成長障害、発達遅延
  • てんかん発作
  • 脳症
  • 再発性ケトアシドーシス
  • 低血糖
  • 精神症状(成人発症例)
  • 記憶障害(成人発症例)

症状の発症年齢も幅広く、乳幼児期から成人期(40〜50代)まで様々です。また、症状の重症度も軽度から重度まで様々です。このような症状の多様性は、ACSF3遺伝子変異の種類や残存酵素活性の程度によって説明される可能性があります。

代表的なACSF3遺伝子変異

CMAMMAを引き起こすACSF3遺伝子変異として、以下のものが代表的です:

  • R558W変異(アルギニンからトリプトファンへの置換、614245.0001):カナダのケベック州での研究では、遺伝子型が判明したCMAMMA家系の約20.6%のアレルで見られました。
  • E359K変異(グルタミン酸からリジンへの置換、614245.0003):最も一般的な変異で、ケベック州での研究では約38.2%のアレルで確認されています。
  • R471W変異(アルギニンからトリプトファンへの置換、614245.0004):アシュケナージユダヤ人に見られた変異です。

他にも多数のミスセンス変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、スプライス部位変異などが報告されています。これらの変異はACSF3タンパク質の保存された機能ドメイン(AMP結合、基質結合、触媒機能など)に影響を与えることが多く、これによって酵素活性が低下または喪失します。

ACSF3遺伝子変異の診断

CMAMMAの診断には以下の方法が用いられます:

新生児スクリーニング

カナダのケベック州では、新生児尿スクリーニングプログラムによってCMAMMAが発見されることがあります。しかし、日本では現在、ACSF3遺伝子変異によるCMAMMAを対象とした新生児スクリーニングは一般的に実施されていません。

生化学的検査

尿中有機酸分析によって、マロン酸とメチルマロン酸の排泄増加が確認されます。これはCMAMMAを疑う重要な手がかりとなります。

遺伝子検査

ACSF3遺伝子のシーケンシングにより、病因となる変異を特定することができます。これは確定診断のために重要です。当院では、臨床遺伝専門医による適切な評価と遺伝カウンセリングを経て、必要に応じて遺伝子検査をご案内しています。

早期診断は適切な管理と治療方針の決定に重要です。特に家族歴がある場合や、原因不明の代謝性アシドーシス、発達遅延、神経学的症状などが見られる場合には、ACSF3遺伝子変異の可能性を考慮する必要があります。

保因者検査の重要性

ACSF3遺伝子変異の保因者とは、1つのアレルに変異を持つものの、自身はCMAMMAを発症しない方を指します。CMAMMAは常染色体劣性遺伝形式をとるため、両親がともに保因者である場合、その子どもがCMAMMAを発症するリスクは25%(1/4)となります。

保因者検査は以下のような方に特に重要です:

  • CMAMMA患者の血縁者
  • 家族計画を考えているカップルで、一方または両方にCMAMMAの家族歴がある場合
  • 近親婚の場合(遺伝子変異を共有するリスクが高まるため)
  • 遺伝性疾患のリスクを包括的に評価したいカップル

当院では、拡大版保因者検査を通じて、ACSF3遺伝子を含む多数の遺伝子変異の保因者状態を調べることができます。この検査は、将来の家族計画に関する情報を提供し、リスクを理解した上で妊娠や出産に関する選択肢を検討するのに役立ちます。

保因者であることが判明した場合でも、パートナーも保因者でない限り、お子さんが疾患を発症するリスクは非常に低いことをご理解いただくことが重要です。また、保因者検査の結果に基づいて、出生前診断や着床前診断などの選択肢についても検討することができます。

遺伝カウンセリングの役割

ACSF3遺伝子変異に関連する疾患リスクを理解し、適切な意思決定を行うには、専門的な遺伝カウンセリングが重要です。遺伝カウンセリングでは以下のようなサポートを受けることができます:

  • ACSF3遺伝子とCMAMMAに関する正確な医学的情報の提供
  • 遺伝形式と再発リスクの説明
  • 遺伝子検査の種類と意義についての解説
  • 検査結果の解釈と今後の対応についての相談
  • 家族計画に関する選択肢(出生前診断、着床前診断など)の説明
  • 心理的・社会的サポート

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が常駐しており、遺伝カウンセリングを通じて患者様とご家族に寄り添ったサポートを提供しています。遺伝カウンセリングは、遺伝情報に基づく医療において中心的な役割を果たし、患者様が自分自身の状況を理解し、自律的な意思決定ができるよう支援します。

遺伝カウンセリングについて詳しく知りたい方は、遺伝カウンセリングとはのページをご覧ください。

まとめ

ACSF3遺伝子は、ミトコンドリア内でマロン酸とメチルマロン酸の代謝に関わる重要な酵素をコードしています。この遺伝子の両アレルに変異が生じると、合併性マロン酸・メチルマロン酸尿症(CMAMMA)という代謝疾患を引き起こします。CMAMMAの症状は多様で、無症状から重度の神経学的症状まで幅広く、発症年齢も乳幼児期から成人期まで様々です。

ACSF3遺伝子変異の保因者検査は、特に家族歴がある方や家族計画を考えているカップルにとって重要です。当院の拡大版保因者検査では、ACSF3遺伝子を含む多数の遺伝子変異を調べることができ、将来の家族計画に役立つ情報を提供しています。

また、遺伝情報の理解と意思決定をサポートするため、当院では臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを提供しています。遺伝カウンセリングでは、医学的情報の提供だけでなく、心理的・社会的なサポートも行い、患者様とご家族が最適な選択ができるよう支援しています。

ACSF3遺伝子変異やCMAMMAについて不安や疑問がある方、保因者検査や遺伝カウンセリングをご希望の方は、ぜひミネルバクリニックまでご相談ください。臨床遺伝専門医が丁寧にサポートいたします。

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ミネルバクリニックでは、「未来のお子さまの健康を考えるすべての方へ」という想いのもと、東京都港区青山にて保因者検査を提供しています。遺伝性疾患のリスクを事前に把握し、より安心して妊娠・出産に臨めるよう、当院では世界最先端の特許技術を活用した高精度な検査を採用しています。これにより、幅広い遺伝性疾患のリスクを確認し、ご家族の将来に向けた適切な選択をサポートします。

保因者検査は唾液または口腔粘膜の採取で行えるため、採血は不要です。 検体の採取はご自宅で簡単に行え、検査の全過程がミネルバクリニックとのオンラインでのやり取りのみで完結します。全国どこからでもご利用いただけるため、遠方にお住まいの方でも安心して検査を受けられます。

まずは、保因者検査について詳しく知りたい方のために、遺伝専門医が分かりやすく説明いたします。ぜひ一度ご相談ください。カウンセリング料金は30分16500円です。
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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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