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18p欠失症候群とは?症状・原因・予後を解説|東京・ミネルバクリニック

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。2025年国際誌『Global Woman Leader』表紙抜擢など、世界基準の出生前診断と遺伝カウンセリングを提供。

この記事でわかること
📖 読了時間:約20分
🧬 染色体欠失症候群
臨床遺伝専門医監修

Q. 18p欠失症候群とはどのような病気ですか?

A. 18p欠失症候群(モノソミー18p)は、第18染色体短腕(18p)の一部または全部が欠失することで生じる染色体異常です。
欠失の範囲や切断点により症状は幅広く、発達遅滞・低身長・筋緊張低下・言語障害がみられることがあります。約10〜15%全前脳胞症(HPE)などの脳形成異常を合併します。


  • 原因第18染色体短腕(18p)の欠失

  • 頻度 → 出生児約1/50,000(女性に多い傾向)

  • 主要症状 → 低身長(約80%)、筋緊張低下、言語発達遅延、知的発達の遅れ

  • 遺伝形式多くは新生突然変異、一部で転座やリング18など

  • 診断核型検査+CMA(染色体マイクロアレイ)

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1. 18p欠失症候群とは|基本情報

【結論】 18p欠失症候群(モノソミー18p)は、第18染色体短腕(18p)の欠失により生じる染色体疾患です。欠失の範囲が広いほど症状が重くなる傾向がありますが、同じ欠失でも症状の程度は大きく異なることが特徴です。

💡 用語解説:「モノソミー18p」とは?

「モノソミー」は本来2本ある染色体の一部(または全部)が1本分だけ失われる状態を指します。18p欠失症候群では、18番染色体の短腕(p腕)にある複数遺伝子が片方しかなくなるため、遺伝子量(コピー数)の不足が症状につながります。

18p欠失症候群の概要

項目 内容
疾患名 18p欠失症候群(Monosomy 18p / 18p-)
別名 de Grouchy症候群1型(de Grouchy syndrome type 1)
頻度 出生児約1/50,000
原因 18pの末端欠失・間質欠失(欠失サイズは多様)
遺伝形式 多くは新生突然変異、一部で転座・リング18など
重要遺伝子 TGIF1(全前脳胞症)、GNAL(ジストニア)など

2. 18p欠失症候群の主な症状

【結論】 18p欠失症候群では、低身長・筋緊張低下・言語発達遅延が比較的よくみられます。重症例では全前脳胞症(HPE)などの脳形成異常や、内分泌異常(下垂体機能低下症)を伴うことがあります。

発達・神経の特徴

🧠 発達・神経のポイント
  • 筋緊張低下:乳幼児期に多く、哺乳・摂食の困難や運動発達遅延につながることがあります
  • 言語発達:「話す力」の遅れが目立ち、コミュニケーション支援が重要です
  • てんかん:頻度は高くありませんが、焦点性発作・全般発作が報告されています
  • 行動特性:注意欠如・多動傾向、こだわり行動がみられることがあります

身体的特徴と合併症

👤 身体・臓器のポイント
  • 低身長:約80%でみられ、成長ホルモン分泌不全が関与することがあります
  • 眼:眼瞼下垂、斜視などがみられることがあります
  • 心臓:先天性心疾患(ASD/VSDなど)を合併する例があります
  • 歯科:う蝕(虫歯)リスクが高く、定期的ケアが推奨されます
仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「予後を断定できない」ことが重要】

18p欠失症候群で最も大切なのは、「欠失が見つかった=将来が決まる」ではないという点です。欠失の場所や大きさ、そして他の遺伝要因や環境要因によって、症状の出方は大きく異なります。

出生前診断で見つかった場合も同様で、出生前に予後を確定することは困難です。遺伝カウンセリングでは、不確実性を正直に伝えた上で、ご家族が納得して意思決定できるよう支援します。

3. 原因と遺伝的背景|重要遺伝子

【結論】 18p欠失症候群は、18pにある複数遺伝子が欠失してハプロ不全となることで症状が生じます。代表的な遺伝子としてTGIF1(脳の正中形成に関連)が知られています。

💡 用語解説:「全前脳胞症(HPE)」とは?

胎児期の脳形成で前脳が左右に分かれる過程がうまくいかず、脳や顔の正中(真ん中)の形成異常が起こる状態です。18p欠失ではTGIF1欠失が関連しますが、TGIF1が欠失しても必ずHPEになるわけではありません(不完全浸透)。

欠失が起こるしくみ

新生突然変異(多く)

多くの症例では両親の染色体は正常で、受精の前後に偶発的に欠失が生じます。両親の行動や環境要因が原因ではありません。

家族性(少数)

一部では、親の均衡転座などの染色体構造異常を背景に、子どもに18p欠失が生じることがあります。再発リスク評価には両親検査が重要です。

4. 診断方法

【結論】 18p欠失症候群の確定診断は、染色体検査で欠失を確認することが必須です。欠失の範囲を詳細に評価するには染色体マイクロアレイ検査(CMA)が有用です。

検査の種類

検査方法 特徴 18p欠失の評価
核型検査(G分染) 大きな欠失・転座などの構造異常を確認 ◎ 大きな欠失で有用
染色体マイクロアレイ(CMA) 欠失サイズ・遺伝子範囲を詳細に特定。微細欠失も評価 ◎ 詳細評価に最適
FISH法 特定領域の欠失を迅速確認 △ 対象領域次第

💡 用語解説:CMA(染色体マイクロアレイ)とは?

CMAは、G分染では検出できない微小欠失・微小重複(CNV)まで評価できる検査です。欠失の「場所」と「大きさ」を把握することで、予測される合併症リスクの説明がより具体的になります。

5. 治療と長期管理

【結論】 18p欠失症候群に根本的治療はありません。症状に応じた対症療法と、早期からの発達支援が中心です。

6. 遺伝カウンセリング

【結論】 18p欠失症候群は表現型の幅が広く、「予後を一言で言えない」ことが特徴です。遺伝カウンセリングでは、欠失の意味、不確実性、家族への影響を整理し、ご家族の意思決定を支援します。

📋 カウンセリングの要点
  • 欠失の範囲:CMA結果から欠失サイズと含まれる遺伝子を整理
  • 不確実性:出生前・出生後ともに予後は個人差が大きいことを説明
  • 両親の検査:転座など構造異常の有無を確認し、再発リスクを評価
  • 支援の道筋:医療・療育・教育につなぐ具体的な計画を立てる
仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「決める場」ではなく「整理する場」】

遺伝カウンセリングは、「結論を出す場」ではありません。情報を整理し、ご家族の価値観や不安を言語化し、選択肢を理解していただく場です。18p欠失のように表現型が広い疾患では、「わからないこと」を含めて正直に伝えることが信頼につながると考えています。

7. 出生前診断について|NIPTと羊水検査

【結論】 18p欠失は出生前検査で見つかることがありますが、出生前に予後を確定することは困難です。NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断には侵襲的検査が必要です。

出生前検査での位置づけ

検査 検出可能性 備考
NIPT △ 限定的 検査方式・欠失サイズにより検出限界があります(スクリーニング)
羊水検査+CMA ◎ 確定診断 Gバンド法では検出できない微小欠失を確定診断可能。
※学会指針では、原則として超音波での構造異常がある場合などが対象とされています。
絨毛検査+CMA ◎ 確定診断 妊娠初期(11〜14週)に実施可能。結果解釈は遺伝カウンセリングが重要です。

⚠️ 重要:出生前に18p欠失が見つかった場合、「異常所見がないから大丈夫」とも「欠失があるから重篤」とも断定できません。不確実性を含め、非指示的(中立)な遺伝カウンセリングが必要です。

8. 当院のNIPTでみられる微小欠失(12箇所)

当院のNIPTでは、微小欠失(del=欠失)を中心に設計されており、以下の12箇所が対象に含まれます。

🧬 微小欠失(12箇所)
  • 1p36 欠失
  • 2q33 欠失
  • 4p16 欠失
  • 5p15 欠失
  • 8q23q24 欠失
  • 9p 欠失
  • 11q23q25 欠失
  • 15q11.2-q13 欠失
  • 17p11.2 欠失
  • 18p 欠失
  • 18q22q23 欠失
  • 22q11.2 欠失

当院のNIPTは微小欠失を中心に設計されていますが、同じ領域でコピー数が増える「重複」も検出されることがあります。その場合、結果の意味づけは専門的な判断が必要となるため、遺伝カウンセリングで詳しくご説明します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 18p欠失症候群の頻度はどのくらいですか?

推定頻度は出生児約1/50,000とされます。男女比は女性にやや多い傾向が報告されています。

Q2. 欠失が見つかったら必ず重い症状が出ますか?

いいえ、症状の程度は個人差が大きいのが特徴です。欠失の範囲や他の遺伝要因・環境要因により、軽症から重症まで幅があります。出生前に予後を断定することはできません。

Q3. 原因は遺伝ですか?再発しますか?

多くは新生突然変異ですが、一部で親の均衡転座などが背景にある場合があります。再発リスク評価のため、両親の検査が重要です。詳しくは遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q4. どんな検査で診断しますか?

核型検査で大きな欠失・転座を確認し、欠失範囲を詳しく調べるには染色体マイクロアレイ(CMA)が有用です。

Q5. 治療法はありますか?

根本的な治療法は現時点でありません。発達支援(PT/OT/ST)、てんかん治療、内分泌異常の治療(甲状腺、成長ホルモンなど)など、症状に応じた医療・療育が中心です。

Q6. 出生前に見つかった場合、どう考えればいいですか?

出生前に18p欠失が見つかっても、症状の有無や程度を出生前に断定することはできません。まずは遺伝カウンセリングで情報を整理し、ご家族の意思決定を支援します。

Q7. 性分化疾患(DSD)との関係はありますか?

18p欠失では、生殖器や性分化の異常が報告されることがあります。表現型の幅が大きいため、個別の状況に応じて専門科で評価します。

🧬 その他の染色体異常(トリソミー・部分モノソミー)について

各染色体の異数性や微小欠失・重複による特徴的な疾患、および予後については以下のリンクから詳細をご確認いただけます。

参考文献

  • [1] Turleau C. Monosomy 18p. Orphanet Journal of Rare Diseases. 2008;3:4. [PubMed]
  • [2] Goyal M, Jain S. 18p Deletion Syndrome: Case Report with Clinical Consideration and Management. Case Reports in Genetics. 2017. [PMC]
  • [3] Eleftheriades M, et al. Prenatal diagnosis of 18p deletion and 8p trisomy syndrome: literature review and report of a novel case. BMC Pregnancy and Childbirth. 2024. [PMC]
  • [4] Unique. 18p deletions (FTNW). Rare Chromosome Disorder Support Group. [RareChromo]
  • [5] Orphanet. Monosomy 18p syndrome (ORPHA:1598). [Orphanet]
  • [6] Chromosome 18 Clinical Research Center. 18p- resources. [Chromosome18]

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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