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1q43-44微小欠失症候群
1q43-44の欠失と関連する症状
この領域の欠失は
- 中等度から重度の知的障害
- 小頭症
- 頭蓋顔面形成異常
- 脳梁の無形成
と関連していると報告されています。(文献はこちらをクリック)
頭蓋顔面の特徴
頭蓋顔面の特徴としては、丸顔で額が突出している、多弁、平らな鼻梁、耳が低い位置にあるなどが挙げられます。
その他の臨床的特徴
その他の臨床的特徴には、低出生体重、痙攣、低身長、摂食障害などがあります。
1q43-44に含まれる遺伝子
この領域に含まれる遺伝子には、以下のようなものがあります。
ZBTB18遺伝子
常染色体精神遅滞22(MRD22; MIM #612337)でZinc finger and BTB domain-containing 18(ZBTB18)遺伝子が変異していることが報告されています。
ヘテロ核リボヌクレオタンパク質U (HNRNPU)遺伝子
Xist RNAがX染色体へ局在化させる機序としてRNA結合タンパクであるhnRNP Uが必須であることがわかってきました。hnRNP UがないとX染色体の不活性化が正常に起こりません。Xist RNAはノンコーディングRNAのひとつで、X染色体を不活性化するのに必須となっています。通常、mRNAは核で作られて細胞質へと輸送され、タンパクに翻訳されるという過程を経ます(セントラルドグマ)。Xist RNAは核内にとどまり、X染色体の全体を覆うように張り付いてクロマチン制御因子であるPRC2の足場としてはたらくと考えられています。
developmental and epileptic encephalopathy-54 (DEE54; 617391)発達性てんかん脳症-54においてHNRNPU遺伝子の変異が報告されています。(文献)
AKTセリン/スレオニンキナーゼ3(AKT3)遺伝子
AKT3遺伝子は、当初、脳梁の無形成の原因と考えられていたのですがその後関係ないことがわかり、除外されました。この遺伝子の機能獲得変異は、巨脳症-多嚢胞性-水頭症症候群を引き起こします。
巨脳症-毛細血管奇形(MCAP)および巨脳-多小脳回-多指-水頭症候群Megalencephaly-polymicrogyria-polydactyly-hydrocephalus syndrome (MPPH)症候群は、脳のサイズが著しく拡大するなどの特徴を伴う散発性の過成長障害です。ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)-AKT経路を構成する3つのコアコンポーネントに、生殖細胞または接合後に生じた新生突然変異が見つかっています。これらには、MPPHの血縁関係のない11家族におけるAKT3の2つの突然変異、PIK3R2の1つの再発性突然変異、MCAPの23人とMPPHの1人におけるPIK3CAの15の主に接合後の突然変異が含まれており、これらのデータは、血管、四肢、脳の発達においてPI3K-AKTシグナルが中心的な役割を果たしていることを明らかにするものです。(文献)
CEP170遺伝子
染色体1q43-q44に関わる微小な欠失は、認知障害、小頭症、成長制限、異形性、他の器官系への様々な影響をもたらします。この染色体欠失の患者に一貫して見られる特徴は、薄い低形成から完全な無形成までの脳梁異常(CCA)ですが、CCAの重要な領域を明らかにしようとしたこれまでの研究では、一貫した結果が得られていませんでした。1q43-q44染色体の欠失を持つ7人の患者の臨床的および分子的特徴を詳細に調べ、アレイによる比較ゲノムハイブリダイゼーションを用いて、これらの欠失の大きさ、範囲、ゲノムの内容をマッピングしたところ、4人の患者はCCAを有し、CEP170、SDCCAG8、ZNF238の3つのタンパク質をコードする遺伝子のみを含む最小のオーバーラップ領域を共有していました。SDCCAG8とAKT3が関与する小さな欠失を持つ1人の患者と、AKT3の遺伝子内欠失を持つもう1人の患者はCCAを発症しておらず、これら2つの遺伝子の喪失がCCAの原因となる可能性は低いことが示唆されています。CEP170は、脳に広く発現しており、セントロソーム複合体の構成要素であるタンパク質をコードしている。ZNF238は、神経前駆細胞の制御や皮質神経細胞の生存に関与しています。この結果は脳梁低形成とAKT3の関与を否定するもので、CEP170およびZNF238は、末端1q欠失患者のCCAの原因となる新規遺伝子であると考えられます。
まとめ
1q44微小欠失症候群はサブテロメア微細構造異常症の一つで、染色体末端部に存在するテロメアの中枢側であるサブテロメア領域の小さなゲノム構造異常(欠失または重複)が原因です。一般的に多発奇形・精神遅滞の5~10%はサブテロメア微細構造異常に起因すると言われています。全体としても3000人に一人の頻度とされる比較的高い発生頻度でありながらも、研究があまりすすんでいない疾患です。
この領域の微小欠失はNIPTで検出可能です
ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号