テロメア
テロメアとは?
遺伝情報を担うDNAは,ヒストンなどの様々な物質と結合することによって,染色体を形成します.
一般的には真核生物は線状の染色体を持っていて,最末端にはテロメアと呼ばれる特殊な繰り返し配列からなる部分が存在します.
テロメアはテロメアDNA,それに結合する多くのタンパクなどで構成される。
テロメアと細胞寿命との関係は最も興味深いものです.
生殖細胞(卵子,精子)では、テロメアDNAを伸長する酵素であるテロメラーゼの活性が高く維持されているのですが,テロメアDNAは各生物種で決められたほぼ一定の長さに永続的に保たれています.
要するに、私たちは非常に遠い祖先から代々ほぼ同じ長さのテロメアDNAを受け継いでおり、これによって種の保存がなされています.
一方,体細胞ではテロメアを伸長するテロメラーゼの活性は抑えられていますが,テロメラーゼ以外のDNA合成酵素だけでは染色体最末端部分まで完全にDNAを複製できないため,体細胞では細胞分裂の都度,正確にはDNA複製の度に、テロメアDNAは少しずつ短くなっていきます。そして,ある一定の長さまでテロメアDNAが短くなると細胞は細胞分裂を不可逆的に停止してしまい,老化して二度と分裂できない細胞となるのです。
つまり,テロメアDNAは細胞寿命をカウントする時計のようなもので,がん細胞ではテロメア―ゼが活性化されていたりして,がん細胞の不死性に貢献しています.
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号