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単一臍帯動脈(たんいつさいたいどうみゃく、SUA)とは、へその緒(臍帯)の中に本来2本ある動脈が1本しかない状態のことです。エコーで「へその緒の血管が3本ではなく2本」と説明されることもあります。報告によって差はありますが、およそ200人に1人から100人に1人(0.5〜1%程度)にみられる所見です[1][2]。ほかに異常が見つからない「孤立性」の単一臍帯動脈では、染色体異常のリスクが上がるという証拠はなく、多くは経過が良好です。評価の分かれ目になるのは合併する異常があるかどうかで、妊娠後期には赤ちゃんの発育を確認することが推奨されています。この記事では、原因、ダウン症・18トリソミーとの関係、妊娠中に気をつけること、出生後の予後を、臨床遺伝専門医の立場から解説します。
Q. 単一臍帯動脈と言われました。赤ちゃんは大丈夫でしょうか?
A. ほかに異常がない孤立性の単一臍帯動脈であれば、多くの赤ちゃんは問題なく生まれてきます。大切なのは、詳しい超音波検査で心臓・腎臓・消化管などに合併する異常がないかを確認することと、妊娠後期に赤ちゃんの発育を確認することです。孤立性の場合、米国母体胎児医学会(SMFM)は染色体の追加検査を推奨していません[3]。
- ➤頻度 → 約0.5%(200人に1人前後)、報告により約1%
- ➤孤立性SUA → 染色体異常のリスク上昇の証拠はない。妊娠後期の発育評価が推奨される
- ➤合併異常あり → 18トリソミー・13トリソミーなどのリスクが上がり、確定検査を検討する
- ➤出生後 → 孤立性では、長期の発育・神経発達に臨床的に意味のある差は認められていない

1. 単一臍帯動脈(SUA)とは
単一臍帯動脈(Single umbilical artery; SUA)とは、臍帯動脈が1本しかない臍帯の解剖学的な変異のことです。英語では two-vessel cord(2血管臍帯)と呼ばれることもあります。単一臍帯動脈はそれ自体が病気の名前ではなく、超音波検査で見つかる「所見」のひとつです。ほかに何の異常もない孤立した所見である場合もあれば、胎児のほかの異常と一緒に見つかる場合もあり、この違いによって意味が大きく変わります。

へその緒の動脈が1本しかない状態
正常な臍帯には、動脈2本と静脈1本の合計3本の血管が通っています。単一臍帯動脈は、このうち動脈の1本がもともと作られなかったか、途中で細くなって消えてしまった状態です[3]。残った1本の動脈が2本分の役割を担うことになりますが、多くの場合、赤ちゃんへの血液の流れは保たれています。
欠けている動脈は、右より左のほうが多いことが報告されています。一方で、染色体異常との関連は左右で差がないとされており[4]、欠けているのが左右どちらかは臨床的にはあまり重要ではないと考えられています。検査報告書に「左臍帯動脈欠損」などと書かれていても、左か右かで今後の方針が変わることは通常ありません。
何人に1人?単一臍帯動脈の頻度
単一臍帯動脈は、おおむね200人に1人(約0.5%)、報告によっては100人に1人(約1%)程度にみられます。カナダの約20万件の出生を調べた集団研究では、単一臍帯動脈は0.44%、ほかに異常のない孤立性の単一臍帯動脈は0.37%でした[1]。ノルウェーの約92万件の妊娠を対象にした登録研究でも0.46%と、ほぼ同じ値が出ています[2]。胎児医学の研究では「分娩のおよそ200に1例」と紹介されています[5]。
一方、日本産婦人科医会の研修資料では「全分娩の約1%」とされています[6]。数字に幅があるのは、どの時点で、どの方法で数えたかによって頻度が変わるためです。流産した胎児や病理解剖では高く(0.34〜7%)、生まれた赤ちゃんでは低い(0.2〜1.5%)と報告されています[7]。いずれにしても、臍帯の異常のなかでは比較的よく見られる所見です。
正常な臍帯は「動脈2本+静脈1本」
臍帯は、赤ちゃんとお母さんをつなぐ胎盤との間の通り道です。臍帯動脈は、赤ちゃんのお腹の中で内腸骨動脈(骨盤の中を通る動脈)から枝分かれし、膀胱の両脇を通ってへそから臍帯に入り、胎盤へ向かいます。赤ちゃんの体をめぐって酸素が少なくなった血液や老廃物は、この2本の臍帯動脈を通って胎盤へ運ばれます。
胎盤で酸素と栄養を受け取った血液は、1本の臍帯静脈を通って赤ちゃんに戻ります。つまり、名前とは逆に、臍帯では「動脈」に酸素の少ない血液が、「静脈」に酸素の多い血液が流れています。これは、血管の名前が「心臓から出ていくか、心臓に戻るか」で決まっているためです。臍帯の3本の血管は、ワルトンゼリーと呼ばれるゼリー状の組織に包まれ、圧迫から守られています。

臍帯動脈と臍帯静脈の違い・見分け方
臍帯動脈と臍帯静脈は、太さと本数で見分けます。臍帯を輪切りにした断面をエコーで見ると、太い1本の臍帯静脈と、それより細い2本の臍帯動脈が並んで見えます。正常では、この断面が「ミッキーマウスの顔」のように見えることがあり、単一臍帯動脈では細い血管が1本しか見えません。
もうひとつの確認方法が、赤ちゃんの骨盤の中を見る方法です。カラードプラ(血液の流れを色で表示する超音波)で赤ちゃんの膀胱のあたりを映すと、正常では膀胱の左右両側に臍帯動脈の血流が1本ずつ見えます。単一臍帯動脈では片側にしか血流が見えないため、臍帯の断面と合わせて診断します[3]。なお、「臍動脈」と「臍帯動脈」はほぼ同じ意味で使われ、赤ちゃんの体内の部分を含めて臍動脈と呼ぶことが多い言葉です。
2. なぜ起こる?原因と2つのタイプ
単一臍帯動脈ができる仕組みには、最初から1本しか作られない「無形成型」と、途中で1本が閉塞する「閉塞型」の2つがあると考えられています。どちらのタイプかは妊娠中にはっきり区別できないことが多く、見つかった時期や、ほかの所見を手がかりに推測します[6]。単一臍帯動脈は、妊娠中のお母さんの行動や食事が原因で起こるものではありません。
最初から1本しか作られない「無形成型」
無形成型は、赤ちゃんの体ができていく早い時期に、2本あるはずの臍帯動脈の一方が形成されなかったタイプです。臍帯や血管が作られる時期は、心臓・腎臓・消化管などの臓器が作られる時期と重なっています。そのため、無形成型は先天異常と関連することがあり、染色体異常やある種の症候群の特徴のひとつとして現れる場合があります[6]。
ただし、無形成型であっても、ほかに異常がない孤立性の単一臍帯動脈は、染色体異常のリスクを上げないとされています[6]。無形成型の多くは妊娠中期の胎児スクリーニングで見つかり、その時点でほかの臓器の異常がないかを詳しく確認することが、次の判断につながります。
途中で1本が閉塞する「閉塞型」
閉塞型は、はじめは2本あった臍帯動脈のうち1本が、血栓などによって二次的に詰まり、細くなって消えたタイプです。妊娠中の何らかの胎盤や臍帯の異常によって起こると考えられており、その他の胎盤・臍帯の所見に注意することが勧められています[6]。妊娠中期には2本見えていた動脈が、妊娠後期に1本しか見えなくなるのは、主にこのタイプです。
妊娠後期に「単一臍帯動脈」と言われた場合、閉塞型の可能性を考えて、赤ちゃんの発育や胎盤の状態を確認していきます。日本産婦人科医会の資料では、無形成型と閉塞型のいずれのタイプも胎児発育不全と関連するため、発育の評価に注意を払う必要があるとされています[6]。
遺伝する?2人目でも起こる?
単一臍帯動脈は、次の妊娠で繰り返す確率がやや高くなることが報告されていますが、次の妊娠でも大半は3本の血管をもつ臍帯になります。ノルウェーの登録研究では、単一臍帯動脈があった女性は、次の妊娠で単一臍帯動脈になるリスクが約2倍でした。最初の妊娠で単一臍帯動脈にほかの奇形を伴っていた場合は、約4倍でした[2]。著者らは、遺伝的な要因や、持続する環境要因が関わっている可能性を示唆しています。
ここでの「2倍」は、もとの頻度(約0.5%)に対する相対的な数字です。もとの頻度が低いため、2倍になっても次の妊娠の多くは単一臍帯動脈にはなりません。同じ研究では、単一臍帯動脈に関連する因子として、多産(4回以上の出産)、喫煙、妊娠前からの糖尿病、てんかん、慢性高血圧などが挙げられています[2]。これらは統計上の関連であり、該当する人に起こると決まっているわけではありません。単一臍帯動脈そのものについて、特定の遺伝子や遺伝形式は確立していません。
3. いつ・どうやってわかる?
単一臍帯動脈の多くは、妊娠中期(おおむね妊娠18〜22週ごろ)の胎児超音波検査で見つかります。臍帯の断面と、骨盤内の臍帯動脈の血流を確認して診断します[3]。妊娠初期に疑われることや、妊娠後期に初めて指摘されることもあります。
妊娠中期の胎児超音波で見つかることが多い
SMFMの指針では、単一臍帯動脈は妊娠中期の通常の超音波検査で臍帯の断面を見ることで発見でき、骨盤内の臍帯動脈をカラードプラで確認する方法でも見つけられるとされています[3]。胎児超音波検査では、臍帯の血管の本数は確認項目のひとつとして扱われています。
妊娠11〜14週の初期の超音波で単一臍帯動脈を調べた研究では、5.9%という高い頻度が報告されています[7]。この時期は血管が細く、見え方が不安定なため、初期に「1本に見える」と言われても、中期に改めて確認するのが一般的です。逆に、妊娠中期に正常だった臍帯が、後期に閉塞して1本になることもあります。
💡 用語解説:カラードプラ
カラードプラとは、超音波を使って血液の流れる方向と速さを色で表示する検査法です。一般に、探触子(プローブ)に近づく流れが赤、遠ざかる流れが青で表示されます。臍帯動脈は赤ちゃんの膀胱の左右を通るため、膀胱の周りをカラードプラで映すと、血管が2本あるか1本かを確認しやすくなります。お母さんにも赤ちゃんにも、通常のエコーと同じく負担のない検査です。
診断されたら行う詳しい超音波検査
単一臍帯動脈が見つかったときに最初に行うのは、ほかに合併している異常がないかを詳しく調べる超音波検査です。心臓、腎臓と尿路、消化管、手足、脳などを系統的に確認します。これは、単一臍帯動脈の意味が、合併異常の有無によって大きく変わるためです。心臓の詳しい評価として、胎児心エコーが行われることもあります。
詳しい超音波検査は、かかりつけの産婦人科で行われるほか、周産期センターや、胎児の形態を詳しく評価する胎児ドックで行われることもあります。ただし、超音波検査ですべての異常がわかるわけではなく、赤ちゃんの向きや週数、お母さんの体格によって見えにくい部分もあります。
4. 最大の分かれ目は「孤立性」か「合併異常あり」か
単一臍帯動脈の意味は、ほかの異常を伴わない「孤立性」か、ほかの異常を伴う「合併異常あり」かで大きく変わります。単一臍帯動脈がある胎児の約11%に、大きな奇形が合併すると報告されています[8]。言い換えると、多くは孤立性の単一臍帯動脈です。
孤立性単一臍帯動脈とは
孤立性単一臍帯動脈(isolated SUA、iSUA)とは、詳しい超音波検査でほかの形態異常が見つからない単一臍帯動脈のことです。ソフトマーカー(それ自体は病気ではないが、染色体異常との関連が調べられてきた軽微な超音波所見)のひとつとして扱われています[3]。
日本の周産期センターで単一臍帯動脈と診断された単胎妊娠199例を検討した報告では、単一臍帯動脈と胎児発育不全以外に異常所見のない孤発性の例が127例(63.8%)でした。孤発性の例の分娩経過は良好で、合併異常がなければ予後は良好と結論されています[9]。ただし、この報告は精密検査のために紹介されてきた妊婦さんを多く含む施設のデータです。一般の妊婦さん全体の割合とは異なる点に注意が必要です。
合併しやすい異常:心臓・腎尿路・消化管
単一臍帯動脈に合併しやすいのは、心臓の異常(先天性心疾患)、腎臓や尿路の異常、消化管の異常です。ノルウェーの登録研究では、消化管の閉鎖や狭窄との関連が特に強く、共通の発生の仕組みがある可能性が示唆されています[2]。腎尿路の異常としては、腎臓の形の異常や、尿の通り道が広がる胎児水腎症(胎児尿路拡張)などがあります。
前述の日本の報告では、先天性心疾患が19.6%、羊水量の異常が16.1%、消化管閉鎖が9.0%にみられました。先天性心疾患や腎形態異常を合併する場合は染色体異常を伴う可能性が高く、羊水の量が多い(羊水過多)例では消化管閉鎖を伴う可能性が高かったと報告されています[9]。また、脊椎・肛門・心臓・気管食道・腎臓・四肢の異常が組み合わさるVACTERL連合のように、複数の異常の一部として単一臍帯動脈が見つかることもあります。
📘 孤立性と合併異常ありの違い
| 項目 | 孤立性単一臍帯動脈 | 合併異常を伴う単一臍帯動脈 |
|---|---|---|
| 定義 | 詳しい超音波でほかの形態異常がない | 心臓・腎尿路・消化管などの異常を伴う |
| 染色体異常 | リスク上昇の証拠なし | 異常の数が多いほどリスクが上がる |
| 染色体の追加検査 | SMFMは推奨していない | 確定検査(羊水検査など)を検討 |
| 妊娠中のフォロー | 妊娠後期の発育評価 | 合併異常に応じた管理 |
5. 単一臍帯動脈と染色体異常:ダウン症・18トリソミーの確率
孤立性の単一臍帯動脈では、染色体異常のリスクが上がるという証拠はありません。一方、ほかの異常を伴う場合は、主に18トリソミーや13トリソミーのリスクが上がります。ダウン症(21トリソミー)との関連は、18トリソミーや13トリソミーに比べてずっと弱いものです[2][5]。
孤立性SUAでは染色体異常のリスクは上がるのか
英国の胎児医学センターで単一臍帯動脈643例を調べた研究では、孤立性の単一臍帯動脈(424例)に染色体の数の異常(異数性)を含む染色体異常は1例もなく(0%)、見かけ上孤立性の単一臍帯動脈では染色体異常のリスクが上がる証拠はないと結論されました[5]。別の研究でも、染色体異常が見つかった胎児には全例、超音波で確認できる奇形が合併していました[4]。
このため、孤立性の単一臍帯動脈を理由に、羊水検査のような侵襲的な検査を勧めることは一般的ではありません。ただし、「孤立性」という判断は超音波検査の精度に左右されます。妊娠週数や赤ちゃんの向きによっては小さな異常が見えにくいこともあり、孤立性と判断された後も、妊娠経過の中で改めて確認されることがあります。
他の異常を伴う場合:異常の数でリスクが変わる
同じ643例の研究で、単一臍帯動脈に大きな異常が1つ合併していた例では染色体異常が3.7%、複数の異常が合併していた例では50.7%にみられました[5]。見つかった染色体異常で多かったのは18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)、三倍体(染色体が1組多い状態)で、この3つで全体の82.9%を占めていました[5]。
18トリソミーや13トリソミーでは、単一臍帯動脈のほかに、心臓の異常や手の握り方の特徴など、複数の超音波所見が同時に見られることが多くあります(18トリソミーのエコー所見)。ノルウェーの研究でも、単一臍帯動脈と18トリソミー・13トリソミーの関連は同程度に強いことが示されています[2]。こうした場合は、単一臍帯動脈だけでなく、見つかった所見全体から染色体異常の可能性を判断し、必要に応じて核型を調べる検査が検討されます。
ダウン症(21トリソミー)との関係
単一臍帯動脈とダウン症の関連は、18トリソミーや13トリソミーと比べて弱いものです。ノルウェーの約92万件の研究では、単一臍帯動脈全体(孤立性と合併異常ありの両方を含む)で、ダウン症(21トリソミー)のリスクが約2倍でした。これに対し、18トリソミーは約14倍、13トリソミーも約14倍でした[2]。
「単一臍帯動脈だとダウン症の確率は何%ですか」という質問に、個人の数字でお答えすることはできません。ダウン症の確率は、お母さんの年齢、これまでのスクリーニング検査の結果、ほかの超音波所見などによって大きく変わるためです。ダウン症では単一臍帯動脈以外にもさまざまな超音波所見が知られており(ダウン症でみられるエコー所見)、孤立性の単一臍帯動脈だけでダウン症を心配する必要性は低いと考えられます。
SMFMの推奨と、NIPTなどスクリーニングの位置づけ
米国母体胎児医学会(SMFM)の指針(2021年、2025年に再承認)は、孤立性の単一臍帯動脈がある胎児については、これまでの染色体のスクリーニングが低リスクだった場合も、スクリーニングを受けていなかった場合も、染色体の追加評価を推奨しないとしています[3]。スクリーニングが陰性であれば、孤立したソフトマーカーだけを理由に確定検査を行うことも推奨されていません[3]。
そのうえで、染色体について知りたいと希望する方が、NIPT(母体の血液で胎児の染色体の数を調べる非確定検査)などのスクリーニングを選ぶことはできます。これは医学的に必要だから受けるものではなく、ご本人の希望に基づく選択です。NIPTは確定検査ではなく、陽性の場合には羊水検査などで確かめる必要があります(NIPTの精度)。検査を受けるかどうかは、検査でわかることとわからないことを理解したうえで決めることが大切です。
🩺 院長コラム【「単一臍帯動脈=染色体異常」ではありません】
単一臍帯動脈という言葉を聞くと、染色体異常やダウン症を心配されるのは自然なことです。ただ、医学的に意味があるのは「単一臍帯動脈そのもの」より「ほかに異常があるかどうか」です。孤立性の単一臍帯動脈で染色体異常の追加検査を勧めないという方針は、ガイドラインにも明記されています。
一方で、ほかの所見が重なっている場合は話が変わります。そのときは、見つかった所見をすべて並べて、どの染色体異常の可能性があるのか、どの検査で何がわかるのかを整理することが大切だと考えています。所見の組み合わせを正確に読むことが、次の判断の土台になります。
羊水検査・マイクロアレイを検討するとき
単一臍帯動脈にほかの異常が合併している場合は、確定検査として羊水検査が検討されます。羊水検査では、羊水中の赤ちゃんの細胞から染色体を調べ、18トリソミーや13トリソミーなどを確定することができます。羊水検査にはわずかながら流産などのリスクがあるため、検査の目的と得られる情報を確認したうえで判断します。
心臓や腎臓などに形態異常がある場合は、染色体の数の異常だけでなく、顕微鏡では見えない小さな欠失や重複が原因になっていることもあります。こうした微細な変化は、染色体マイクロアレイで調べることができます。どの検査が適しているかは、合併している異常の種類によって変わります。
6. 赤ちゃんの発育と妊娠中に気をつけること
孤立性の単一臍帯動脈では、赤ちゃんが小さめになる(胎児発育不全)リスクとの関連が報告されているため、妊娠後期に発育を確認することが推奨されています。SMFMは、妊娠後期に発育を評価する超音波検査を行い、妊娠36週0日から週1回の胎児の状態の評価を検討することを推奨しています[3]。お母さんが日常生活で特別に制限しなければならないことはありません。
胎児発育不全・低出生体重との関係
孤立性の単一臍帯動脈と胎児発育不全(FGR)との関係は、研究によって結果が一致していません。2つのメタ解析(複数の研究をまとめて解析する方法)では、在胎週数に比べて小さく生まれる(SGA)リスクのオッズ比が約1.6(統計的に有意ではない)から約2.8と、幅のある結果が出ています[10][11]。
大規模な研究では関連がより明確です。ノルウェーの登録研究では、孤立性の単一臍帯動脈がある妊娠で、早産が73%、SGAが55%増えていました[12]。日本の周産期センターの報告でも、孤発性の例の19%が低出生体重児でした[9]。これらは「単一臍帯動脈があると全員が小さくなる」という意味ではなく、集団で見ると小さめの赤ちゃんの割合がやや高いという意味です。そのため、発育を確認しながら妊娠を見守る方針がとられています。
💡 用語解説:SGA(small for gestational age)
SGAとは、生まれたときの体重が、同じ在胎週数の赤ちゃんの標準と比べて小さい状態のことです。一般的には、標準の体重分布で下から10%未満の場合を指します。胎児発育不全(FGR)が「お腹の中での発育が十分でない状態」を指すのに対し、SGAは出生時の体重で判断する言葉です。SGAの赤ちゃんの多くは元気に育ちますが、出生直後は血糖や体温の管理に注意が必要なことがあります。
妊娠中の経過観察
孤立性の単一臍帯動脈と診断された場合、妊娠中の管理は通常の妊婦健診に、妊娠後期の発育評価を加える形が一般的です。超音波で赤ちゃんの推定体重や羊水の量を確認し、必要に応じて胎児心拍数モニタリングなどで赤ちゃんの状態を評価します[3]。
ノルウェーの研究では、孤立性の単一臍帯動脈がある妊娠で、周産期死亡・子宮内胎児死亡のオッズ比が5.62と報告されました[12]。一方、メタ解析では周産期死亡との関連ははっきりしていません[10]。数字だけを見ると不安になりますが、もとの頻度は低く、単一臍帯動脈がある妊娠の大多数は問題なく出産を迎えています。妊娠後期の評価が推奨されているのは、まれな問題を早めに見つけるためです。胎動がいつもより少ないと感じたときは、単一臍帯動脈の有無にかかわらず、かかりつけの産婦人科に連絡してください。
分娩の時期と方法(帝王切開・無痛分娩)
単一臍帯動脈があるというだけで、帝王切開が必要になるわけではありません。分娩の時期や方法は、赤ちゃんの発育、胎児の状態、胎盤の位置、お母さんの状態など、通常の産科的な判断で決まります。赤ちゃんの発育が良好で、ほかに問題がなければ、経腟分娩が選ばれることが一般的です。
ノルウェーの研究では、孤立性の単一臍帯動脈がある妊娠で、胎盤が小さい、臍帯の付着部の異常、胎盤の娩出期(分娩第3期)の合併症などが多く、著者らは妊娠後期の評価、分娩中の監視、分娩第3期の合併症への備えが望ましいとしています[12]。こうした点から、発育不全や合併異常がある場合は、新生児の対応ができる施設での分娩が勧められることがあります[9]。無痛分娩については、単一臍帯動脈を理由に行えないとする指針は確認されていません。可否は分娩施設の方針と、お母さん・赤ちゃんの状態によって判断されます。
7. 予後と出生後の経過
孤立性の単一臍帯動脈で生まれた赤ちゃんは、長期的な体の発育や神経発達に、臨床的に意味のある差は認められていません。生まれた後の赤ちゃんの体には、臍帯動脈が1本だったことによる特別な影響は通常残りません。臍帯動脈は出生後に閉じて靭帯になる血管であり、生後の血液の流れには使われないためです。
孤立性SUAの予後
米国の大規模コホート研究では、ほかに先天異常のない孤立性単一臍帯動脈の赤ちゃん263人と、3本の血管の臍帯をもつ赤ちゃん41,415人を比較しました。交絡因子を調整した解析で、身体の発育と神経発達の指標に臨床的に意味のある差はなく、2血管臍帯と3血管臍帯の子どもで長期的な発育や神経学的な経過に違いがある証拠はないと結論されています[13]。
前述のとおり、孤立性の単一臍帯動脈は低出生体重や早産とやや関連するため、生まれた直後に小さめの赤ちゃんとしての管理が必要になることはあります[12]。ただしそれは単一臍帯動脈そのものの病気ではなく、体重や在胎週数に応じた一般的な新生児の管理です。合併異常がある場合の予後は、単一臍帯動脈ではなく、合併している異常の種類と重さによって決まります。
生まれてから確認されること
出生後には、小児科医が新生児の診察で、心臓、腎臓、外性器、肛門などに異常がないかを確認します。妊娠中に見つからなかった異常が、生まれてからの診察で見つかることもあります。妊娠中に尿路の拡張を指摘されていた場合は、SMFMの指針でも、出生後の小児泌尿器科・腎臓内科のフォローの要否を判断するための評価が推奨されています[3]。
一方、孤立性の単一臍帯動脈の赤ちゃん全員に腎臓の超音波検査を行うべきかについては、考え方が分かれています。孤立性単一臍帯動脈の新生児112人のうち7.1%に持続する腎臓の異常、4.5%に膀胱尿管逆流(尿が膀胱から腎臓側へ逆流する状態)が見つかり、全員に腎臓の超音波検査を推奨した研究があります[14]。一方で、腎臓の異常は2%と少なく、全例の検査は必要ないとする研究もあります[15]。実際に検査を行うかどうかは、出生した施設の小児科の方針によります。
💡 用語解説:膀胱尿管逆流(VUR)
膀胱尿管逆流とは、本来は腎臓から膀胱へ一方通行で流れる尿が、膀胱から尿管・腎臓の方向へ逆流してしまう状態です。尿路感染症を繰り返す原因になることがあり、程度によっては腎臓の働きに影響します。軽いものは成長とともに自然に改善することも多く、治療が必要かどうかは逆流の程度や感染の有無によって判断されます。
発達障害・知的障害との関係
孤立性の単一臍帯動脈と発達障害・知的障害との関連は、あっても弱く、臨床的に意味のある関連ではないと報告されています。ノルウェーの85万人を超える出生を追跡した研究(孤立性単一臍帯動脈3,532人)では、知的障害やADHDとの関連は弱く、臨床的に意味のあるものではありませんでした。自閉スペクトラム症、てんかん、聴覚・視覚障害など、ほかの神経発達症との関連は認められませんでした[8]。
この研究の著者らは、ほかの神経発達症との関連が認められなかったことは、孤立性単一臍帯動脈と診断された赤ちゃんのご家族への説明に役立つ結果だとしています[8]。前述の米国のコホート研究でも、神経発達に臨床的に意味のある差はありませんでした[13]。ただし、これらは集団での統計であり、個々のお子さんの発達を予測するものではありません。
🩺 院長コラム【相対リスクの数字をどう読むか】
単一臍帯動脈の研究には、「2倍」「5倍」といった数字がよく出てきます。これは、もとの頻度に対して何倍かを表す相対的な数字で、実際に起こる割合そのものではありません。もとの頻度が低ければ、何倍かになっても、起こらない人のほうがずっと多いことに変わりはありません。
孤立性の単一臍帯動脈では、染色体異常の追加検査は推奨されず、妊娠後期に発育を確認するという方針が示されています。数字の大きさに引きずられず、「何を確認すればよいか」が明確になっている所見だと考えています。
8. 単一臍帯動脈と言われたら
単一臍帯動脈と言われたら、まず「ほかに異常が見つかっているか」を確認してください。それによって、その後の検査や妊娠中の管理が変わります。かかりつけの産婦人科で、詳しい超音波検査の結果と、今後の発育評価の予定を確認しておくと、次に何が行われるのかがわかりやすくなります。
確認しておきたいこと
確認しておきたいのは、心臓・腎臓・消化管などに合併する異常があるかどうか、これまでに受けた染色体のスクリーニング検査の結果、妊娠後期の発育評価の予定の3点です。孤立性であれば、染色体の追加検査は医学的には推奨されていません[3]。合併異常がある場合は、確定検査を行うかどうか、どの検査で何がわかるのかを検討することになります。
染色体の検査を受けるかどうかは、医学的な必要性とご本人の希望の両方を踏まえて決めるものです。確定検査やNIPTの結果が出た後に、その結果がご本人やご家族にとってどういう意味を持つのかを臨床遺伝専門医と整理する場として、遺伝カウンセリングがあります。
まとめ
単一臍帯動脈(SUA)は、へその緒の動脈が1本しかない状態で、およそ200人に1人から100人に1人にみられます[1][6]。ほかに異常のない孤立性の単一臍帯動脈では、染色体異常のリスクが上がる証拠はなく、SMFMは染色体の追加評価を推奨していません[5][3]。一方、ほかの異常を伴う場合は、18トリソミーや13トリソミーなどのリスクが上がり、確定検査が検討されます。
孤立性の単一臍帯動脈では、胎児発育不全や早産との関連が報告されているため、妊娠後期に発育を確認することが推奨されています[3][12]。出生後の長期的な発育や神経発達には、臨床的に意味のある差は認められていません[8][13]。所見の意味を正確に理解し、合併異常の有無と発育の確認という2つのポイントを押さえておくことが、妊娠経過を見守るうえでの基本になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 単一臍帯動脈は何人に1人ですか?
報告によって差がありますが、およそ200人に1人(約0.5%)、資料によっては100人に1人(約1%)程度とされています。数え方(妊娠中の超音波か、出生後の臍帯の確認か)や妊娠週数によって頻度が変わります。
Q2. 単一臍帯動脈だとダウン症の確率は上がりますか?
ほかに異常がない孤立性の単一臍帯動脈では、ダウン症を含む染色体異常のリスクが上がる証拠はありません。単一臍帯動脈全体ではダウン症との関連が報告されていますが、18トリソミーや13トリソミーとの関連に比べて弱いものです。個人のダウン症の確率は、年齢やスクリーニングの結果などによって変わります。
Q3. 残った1本の動脈が詰まることはありますか?
残った1本の臍帯動脈が詰まることを予測する方法や、その頻度を示した明確なデータは示されていません。妊娠後期に赤ちゃんの発育や状態を確認することが推奨されているのは、胎盤や臍帯に関連するまれな問題を早めに見つけるためです。胎動が少ないと感じたときは、かかりつけの産婦人科に連絡してください。
Q4. 帝王切開になりますか?無痛分娩はできますか?
単一臍帯動脈があるというだけで帝王切開になるわけではなく、分娩方法は赤ちゃんの発育や状態など通常の産科的な判断で決まります。無痛分娩についても、単一臍帯動脈を理由に行えないとする指針は確認されておらず、可否は分娩施設の方針とお母さん・赤ちゃんの状態で判断されます。
Q5. 2人目でも起こりますか?遺伝しますか?
ノルウェーの研究では、次の妊娠で単一臍帯動脈になるリスクが約2倍と報告されています。ただし、もとの頻度が約0.5%と低いため、次の妊娠の多くは3本の血管の臍帯になります。単一臍帯動脈について、特定の遺伝子や遺伝形式は確立していません。
Q6. 双子では単一臍帯動脈が多いのですか?
双胎妊娠の1.5%に単一臍帯動脈がみられ、双胎で単一臍帯動脈がある場合は胎児の異常を伴う割合が高かったという報告があります[16]。双胎では単胎以上に、詳しい超音波検査と発育の確認が重要になります。
Q7. NIPTは受けたほうがよいですか?
孤立性の単一臍帯動脈については、米国母体胎児医学会(SMFM)は染色体の追加評価を推奨していません。NIPTは医学的に必要だから受けるものではなく、染色体について知りたいというご本人の希望に基づいて選ぶ検査です。NIPTは確定検査ではないため、陽性の場合は羊水検査などで確かめる必要があります。
Q8. 生まれた後に検査は必要ですか?
出生後は、小児科医が新生児の診察で心臓や腎臓などに異常がないかを確認します。孤立性の単一臍帯動脈の赤ちゃん全員に腎臓の超音波検査を行うかどうかは研究によって見解が分かれており、実際の対応は出生した施設の小児科の方針によります。妊娠中に尿路の拡張を指摘されていた場合は、出生後の評価が勧められます。
🏥 出生前検査・遺伝カウンセリングをご検討の方へ
ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医がNIPT・羊水検査などの出生前検査と遺伝カウンセリングを行っています。超音波で指摘された所見と検査の結果をもとに、検査でわかること・わからないことを整理し、正確な診断に基づいて次の選択ができるよう説明します。
参考文献
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- [16] Congenital Malformations Associated With a Single Umbilical Artery in Twin Pregnancies. Twin Res Hum Genet. 2015. [Cambridge Core]



