目次
動作性IQ(PIQ:performance IQ)とは、ウェクスラー式知能検査で、絵や積木など、ことばをほとんど使わない課題の成績から出していた知能指数です。「目で見て、考えて、手を動かす」力をまとめた数字で、ことばの課題から出す言語性IQ(VIQ)と対になります。ただし、今の子ども用・大人用の検査では動作性IQという数字は出さず、知覚推理や処理速度などの指標に分かれています。この記事では、動作性IQの意味と中身、今の検査での読み替え方、低い・高いときの考え方、そして「動作性IQで診断できるのか」という疑問に答えます。最後に、視空間の力が弱いことが特徴の遺伝性の病気との関係も解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧩 Q. 動作性IQ(PIQ)とは何ですか?
ウェクスラー式知能検査で、絵を見て足りない部分を探す・積木で模様を作る・記号を書き写すなど、ことばをほとんど使わない課題から出していた知能指数です。平均は100です。
🧩 Q. 今の知能検査にも動作性IQはありますか?
ありません。WISC-IV・WAIS-IVから言語性IQと動作性IQは廃止され、知覚推理・処理速度などの指標に分かれました。WISC-Vでは視空間と流動性推理に分かれています。
🧩 Q. 動作性IQの値で発達障害は診断できますか?
動作性IQの値だけでは診断しません。言語性IQとの差もよく見られるもので、診断は医師が発達の経過や今の困りごとなどとあわせて判断します。
🧩 Q. 遺伝の病気と関係がありますか?
ウィリアムズ症候群やターナー症候群のように、ことばの力に比べて視空間の力が弱いことが特徴とされる遺伝性の病気があります。
- ➤動作性IQとは → ことばをほとんど使わない課題から出した知能指数(英語でperformance IQ)
- ➤今の検査 → WISC-IV・WAIS-IVから廃止。知覚推理(WISC-Vでは視空間・流動性推理)や処理速度で読む
- ➤低い・高いとき → 数字そのものより、どの課題でつまずいたか、生活で何に困っているかを見る
- ➤診断との関係 → 動作性IQや言語性IQとの差だけでは、発達障害も知的障害も診断しない
- ➤遺伝とのつながり → 視空間の力が弱いことが特徴の遺伝性の病気(ウィリアムズ症候群・ターナー症候群など)

1. 動作性IQ(PIQ)とは?意味と測り方
動作性IQ(PIQ)とは、ウェクスラー式知能検査の古い版(子ども用のWISC-III、大人用のWAIS-IIIまで)で、ことばをほとんど使わない課題の成績から出していた知能指数です。英語ではperformance IQといい、「動作性知能」と呼ばれることもあります。ウェクスラー式の子ども用検査は、これまで言語性IQ・動作性IQ・全検査IQを出してきた歴史があります[1]。
「動作性」という名前から運動神経の良さを想像する人がいますが、走る・投げるといった体の動きを測るものではありません。動作性IQの課題は、検査者が見せた絵やカード、積木、記号の表を見て、何が足りないかを考えたり、模様を組み立てたり、決まりに沿って書き写したりするものです。目で見た情報を頭の中で整理し、手を使って答える力、とまとめるのが実態に近い説明です。
知能指数の物差しは、同じ年齢の人の平均が100になるように作られています。動作性IQも同じで、100が平均です[1]。なお、知的障害の診断では、全般的な知的機能が平均よりおよそ2標準偏差以上低いことに加え、適応機能の制約と発達期からの症状を評価します。測定誤差も考慮されるため、動作性IQだけで知的障害を判断することはできません[2]。つまり、動作性IQの数字は「同じ年齢の人たちの中で、この種類の課題がどのくらいの位置にあるか」を表しています。
動作性IQで使われていた課題(WISC-IIIの例)
WISC-IIIの動作性IQは、絵画完成・符号・絵画配列・積木模様・組合せの5つの下位検査から出していました。英国の大規模な子どもの追跡調査(ALSPAC)で8歳半の子どもに行ったWISC-IIIでも、動作性IQはこの5つ、言語性IQは単語・類似・算数・知識・理解の5つで構成されています[3]。
🧩 WISC-IIIで動作性IQを作っていた5つの課題
| 下位検査(英語) | 何をする課題か | 主に使う力 |
|---|---|---|
| 絵画完成(Picture Completion) | 絵を見て、欠けている部分を見つけて答える | 細かいところに気づく力、視覚的な知識 |
| 符号(Coding) | 数字と記号の対応表を見ながら、決められた時間内に記号を書き写す | 見て写す速さ、正確さ |
| 絵画配列(Picture Arrangement) | ばらばらに置かれた絵カードを、話の筋が通る順番に並べる | 場面の流れや出来事の前後関係をつかむ力 |
| 積木模様(Block Design) | 色の塗り分けられた積木を組み合わせて、見本の模様を作る | 形を分解して組み立てる力(視空間の力) |
| 組合せ(Object Assembly) | ばらばらのピースを組み合わせて、ひとつの形を完成させる | 部分から全体を組み立てる力 |
※下位検査の構成はALSPACのWISC-III(8歳半)の記載[3]による。「主に使う力」は課題の内容からの一般的な説明で、検査者の解釈は課題全体の結果と行動の観察をあわせて行われます。
この表を見ると、動作性IQがひとつの能力ではなく、性質の違う課題の寄せ集めだったことがわかります。積木模様のように形を組み立てる課題と、符号のように速く正確に書き写す課題では、つまずく理由がまったく違います。同じ動作性IQ85でも、積木模様が苦手な人と、符号の速さで点を落とした人とでは、日常生活で困る場面も違ってきます。この「中身が混ざっている」という問題が、のちに動作性IQが廃止される理由のひとつになりました。
言語性IQ・全検査IQとの関係
古い版のウェクスラー式検査では、ことばの課題から言語性IQ、ことばをほとんど使わない課題から動作性IQを出し、両方を合わせて全検査IQを出していました。言語性IQの課題は、単語の意味を説明する、2つのものの共通点を答える、一般的な知識を答えるといった、ことばで考えて答えるものです[3]。
2つの指数を並べると、「ことばで考えるのは得意だが、目で見て組み立てるのは苦手」といった得意・不得意の傾向が見えてきます。この差をどう読むかは、このあと3章と4章で詳しく解説します。言語性IQそのものの意味や課題については、言語性IQ(VIQ)とはのページで解説しています。
2. 今の検査(WISC-IV・WISC-V・WAIS-IV)で動作性IQはどうなった?
今のウェクスラー式検査では、動作性IQという数字は出しません。子ども用のWISC-IV(米国で2003年)では、言語性IQと動作性IQがなくなり、言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度の4つの指標に置き換わりました[4]。大人用のWAIS-IV(米国で2008年、16歳0か月〜90歳11か月が対象)でも、言語性IQと動作性IQは出さなくなっています[5]。
さらに子ども用のWISC-V(米国で2014年)では、WISC-IVの知覚推理が「視空間」と「流動性推理」の2つに分けられ、言語理解・視空間・流動性推理・ワーキングメモリー・処理速度の5つの主要指標になりました[6][1]。日本版は、WISC-IVが2010年、WISC-Vが2022年2月に刊行されています[7]。
📋 ウェクスラー式検査の版ごとの指標
| 検査 | 米国での刊行 | 出す指数・指標 | 動作性IQ |
|---|---|---|---|
| WISC-III(子ども用) | 1991年 | 言語性IQ・動作性IQ・全検査IQ | あり |
| WISC-IV(子ども用) | 2003年(日本版2010年) | 言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度・全検査IQ | なし |
| WISC-V(子ども用) | 2014年(日本版2022年) | 言語理解・視空間・流動性推理・ワーキングメモリー・処理速度・全検査IQ | なし |
| WAIS-IV(大人用) | 2008年 | 言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度・全検査IQ | なし |
※WISC-IIIは1991年(ALSPACの記載[3])、WISC-IVは[4]、WAIS-IVは[5]、WISC-Vは[6]、日本版の刊行年は[7]による。
昔の結果を今の指標でどう読むか
昔の検査で動作性IQに含まれていた能力の一部は、現在の検査では知覚推理、視空間、流動性推理、処理速度などの指標で評価されます。ただし、各版で下位検査の構成や測定する能力が異なるため、動作性IQを現在の指標にそのまま換算することはできません。
知覚推理は、見た情報から規則を見つけたり、形を組み立てたりする力です。WISC-Vでは、これが形を頭の中で操作する「視空間」と、見たことのない問題の規則を見つける「流動性推理」に分けられました[6]。処理速度は、簡単な課題を速く正確にこなす力です。昔の動作性IQでは、積木模様の結果も符号の速さも同じひとつの数字に入っていましたが、今の検査ではこれを別々に見ることができます。
お子さんの検査結果に動作性IQが書かれていないのは、検査が新しい版で行われたためです。学校や医療機関から受け取った結果を読むときは、どの版の検査なのかを最初に確かめると、数字の意味を取り違えずにすみます。
💡 用語解説:ワーキングメモリーと処理速度
ワーキングメモリーは、聞いたり見たりした情報を頭の中に少しのあいだ置いておき、それを使って作業する力です(例:言われた数字を逆の順番で言う)。処理速度は、簡単な課題を速く正確に続ける力です(例:記号を見比べて同じものに印をつける)。どちらも、ことばの力や形を組み立てる力とは別の力として測られます。
3. 動作性IQが低い・高いとき、どう考える?
動作性IQが低い・高いときは、数字そのものより「どの課題でどうつまずいたか」と「生活で何に困っているか」を見ることが大切です。動作性IQは性質の違う課題をまとめた数字なので、同じ値でも中身が違うことがあるからです(1章の表を参照)。
動作性IQが低いとき
動作性IQが低いときは、まず下位検査のどれで点を落としたかを確かめます。積木模様や組合せで点が低ければ、形を分解したり組み立てたりする視空間の力が関係しているかもしれません。符号で点が低ければ、書き写す速さや手先の動き、注意の続き方が影響している可能性があります。視力の問題や、検査の日の体調、緊張でも点は下がります。
「動作性IQが低い 特徴」と調べる人は多いのですが、低い人に共通する性格や向いている仕事が決まっているわけではありません。図や地図を読むのが苦手、手先の作業に時間がかかる、といった困りごとがあるかどうかは人によって違います。逆に、言語性IQが高ければ、ことばで手順を確かめることで、苦手な作業を補える場合もあります。数字から性格や将来を決めつけないことが大切です。
動作性IQが高いとき
動作性IQが高いときは、見た情報を整理して組み立てる力や、作業を速く正確にこなす力が、同じ年齢の人の中で高いことを示しています。図や形、物を扱う学び方が合う人もいます。
一方で、動作性IQが高くても、言語性IQとの差が大きければ、ことばの説明だけで学ぶ場面で困ることもあります。高い・低いのどちらであっても、1つの数字で人の能力を言い切ることはできません。検査の目的は、得意なことと苦手なことを知り、学び方や支援の工夫に役立てることにあります。
言語性IQとの差(ディスクレパンシー)はよくあること
言語性IQと動作性IQに差があること自体は、珍しいことではありません。米国の医学研究所(IOM)の報告書は、課題ごとに成績がばらつくのはもともとよく見られることで、行う課題が多いほどばらつきは出やすくなると指摘しています[8]。そのうえで、ばらつきが大きく、その形がある病気でよく知られた形に合うときに、特定の障害を考える手がかりになるとしています[8]。
つまり、差が「ある」ことよりも、その差がどんな形で、生活の困りごととどうつながっているかのほうが大切です。「言語性IQと動作性IQの差が20ある」「30ある」といった数字だけで、発達障害かどうかを決めることはできません。
🩺 院長コラム【数字の凸凹は「病名」ではなく「手がかり」】
知能検査の結果に凸凹があると、それだけで何かの病気ではないかと心配になるのは自然なことです。けれども、凸凹そのものは多くの人にあり、それだけで病名がつくものではありません。
凸凹は「その人をどう支えればよいかの手がかり」として読むことが大切だと考えています。そのうえで、凸凹の形が特定の遺伝性の病気でよく知られた形と重なり、ほかの身体の特徴もそろうときには、原因を調べる意味が出てきます。この記事の5章で、その例を紹介します。
4. 動作性IQで診断できる?「動作性IQ 診断」への答え
動作性IQの値だけで、発達障害や知的障害を診断することはありません。知能検査は診断のための材料のひとつで、診断は医師が、生まれてからの発達の経過、今の生活での困りごと、行動の観察、ほかの検査の結果などをあわせて判断します。
自閉スペクトラム症(ASD)と動作性IQ
「自閉スペクトラム症は動作性IQのほうが高い」という説がありますが、研究の結果はそろっていません。自閉症の子どもの知能検査の成績をまとめた研究では、言語性IQが動作性IQより低いという形は、研究によって見られたり見られなかったりすると整理されています[9]。積木模様は自閉症の子どもで比較的成績が高く出やすい課題とされる一方、絵画配列は低く出やすいとされ、同じ動作性の課題の中でも差があります[9]。
また、52の研究をまとめたメタ解析では、アスペルガー障害と診断された人では言語性IQが動作性IQより有意に高く、高機能自閉症と診断された人では2つに大きな差がなかったと報告されています[10]。つまり、同じ自閉スペクトラム症の中でも、どちらが高いかは一定しません。「動作性IQが言語性IQより6以上高ければ自閉症の特徴」といった決まった数字の基準はなく、差の向きや大きさで自閉スペクトラム症かどうかを見分けることはできません。
自閉スペクトラム症の原因の一部には、遺伝子や染色体の変化がかかわることがあります。原因を調べる検査については、自閉症の遺伝子検査のページで解説しています。
知的障害の診断は「IQだけ」で決めない
知的障害は、知能検査の数字だけでなく、日常生活を送る力(適応機能)とあわせて判断します。知的障害の目安は、平均より標準偏差2つ分ほど低いこと(測定の誤差を含めておよそ65〜75)とされています[2]。そのうえで、米国の全米アカデミーズの報告書によると、DSM-5は日常の生活技能(適応機能)をより重視するようになり、重さも適応機能をもとに分けています[1]。
適応機能には、ことばや読み書き・数・お金の扱いなどの概念的技能、人とのかかわりの技能、身の回りのことや仕事などの実用的な技能が含まれます。動作性IQが低くても、生活の中で困りごとが少なければ、知的障害とは言いません。昔の「精神遅滞」という言葉と、今の知的障害・知的発達症の違いは、精神遅滞と知的障害の違いで解説しています。
5. 遺伝・医療とのつながり:視空間の力が弱いことが特徴の遺伝性の病気
遺伝性の病気の中には、ことばの力に比べて、形を組み立てるなどの視空間の力が特に弱いことが特徴として知られているものがあります。動作性IQや今の視空間・知覚推理の指標が、こうした病気の特徴を説明する手がかりになることがあります。ただし、知能検査の形だけで病名がつくことはなく、診断には体の特徴や遺伝学的検査が必要です。
ウィリアムズ症候群:ことばの力と視空間の力の差が大きい
ウィリアムズ症候群では、視空間構成能力が大きく低下する一方、言語の一部の能力や言語性短期記憶が相対的に保たれるという特徴的な認知プロフィールが報告されています。ただし、言語能力全般が正常という意味ではなく、認知特性には個人差があります。遺伝性疾患の総説であるGeneReviewsは、この認知の形を特徴として挙げ、視空間の構成の強い障害はウィリアムズ症候群の人の95%にみられるとしています[11]。知的障害は約75%にみられ、多くは軽度です[11]。
ウィリアムズ症候群は、7番染色体の一部(7q11.23)が欠けることで起こり、心臓・血管の病気をともなうことがあります[11]。積木模様のような課題がとても苦手で、ことばのやりとりは比較的得意という凸凹がはっきりしているため、知能検査の結果が診断のきっかけを考える材料のひとつになることがあります。詳しくはウィリアムズ症候群のページで解説しています。
ターナー症候群:言語性IQは保たれ、動作性IQが低め
ターナー症候群では、言語性IQは保たれる一方で、動作性IQが低めに出やすいことが報告されています。ターナー症候群の成人女性を調べた研究では、ウェクスラー式検査の言語性IQは比較群と差がなかったのに対し、動作性IQは有意に低く、積木模様の正確さも低かったと報告されています[12]。同じ研究は、ターナー症候群では視空間の処理の弱さが広く記録されてきたとしています[12]。
ターナー症候群は、X染色体の全部または一部の欠失などによって生じる染色体疾患です。45,Xのほか、モザイクやX染色体の構造異常など、さまざまな核型がみられます。言語性IQが保たれていても、視空間の課題だけが苦手という形があるため、全検査IQの数字だけを見ると、本人の得意・不得意を見落とすことがあります。指標ごとの結果を見て、学び方を工夫することが役に立ちます。詳しくはターナー症候群のページで解説しています。性染色体の数の違いが妊娠中の検査でどう扱われるかは、性染色体の数の異常のページをご覧ください。
🩺 院長コラム【検査の凸凹が、体の診断と出会うとき】
知能検査は心理の検査、遺伝学的検査は体の検査と、別々に考えられがちです。けれども、ウィリアムズ症候群やターナー症候群のように、知能検査の凸凹の形と染色体の変化が結びついている病気があります。
臨床遺伝専門医としては、検査の凸凹に加えて、心臓の病気や低身長、顔つきの特徴などがそろうときには、原因を調べることがご本人の健康管理や将来の見通しに役立つと考えています。原因がわかれば、合併しやすい病気を前もって調べるなど、具体的な対応につなげることができます。
発達の遅れの原因を調べる遺伝学的検査
知能検査で凸凹や遅れがあり、その原因を知りたいときには、遺伝子や染色体を調べる検査が選択肢になります。知能検査は「どの力が得意・苦手か」を表すもので、「なぜそうなったのか」は教えてくれません。原因が遺伝子や染色体の変化にある場合、それがわかると、合併しやすい病気への備えや、きょうだいや次の子どもへの影響を考える材料になります。
ウィリアムズ症候群のような染色体の一部の欠失、脆弱X症候群のような1つの遺伝子の変化など、知的障害や発達の遅れの原因になる遺伝性の病気は数多くあります。当院では、知的障害・発達障害の原因を調べる遺伝子検査を行っています。どの検査で何が調べられるかは、知的障害・発達障害の遺伝子検査のページで詳しく説明しています。
妊娠中に赤ちゃんの染色体を調べる検査としては、NIPT(新型出生前診断)があります。自閉症や発達障害の原因のうち、どの部分がNIPTでわかり、どの部分がわからないかは、一部の自閉症・発達障害の原因はNIPTでわかるで解説しています。検査の意味や結果の受け止め方は、検査の前後に臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで確かめることが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 動作性IQの平均はいくつですか?
ウェクスラー式知能検査の動作性IQは、同じ年齢の人の平均が100、標準偏差が15になるように標準化されています。ただし、動作性IQだけで知的障害を診断することはできません。診断には全般的な知的機能と適応機能などの評価が必要です。
Q2. 動作性IQと言語性IQの違いは何ですか?
言語性IQは、ことばの知識や、ことばで考えて答える課題から出した指数です。動作性IQは、絵を見て足りない部分を見つける、積木で模様を作る、記号を書き写すといった、ことばをほとんど使わない課題から出した指数です。2つを合わせたものが全検査IQです。
Q3. 今の知能検査の結果に動作性IQがないのはなぜですか?
子ども用のWISC-IV(米国2003年、日本版2010年)と成人用のWAIS-IV(米国2008年)から、言語性IQと動作性IQは出さなくなり、言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度の4つの指標に変わりました。WISC-Vではさらに知覚推理が視空間と流動性推理に分かれ、5つの主要指標になっています。
Q4. 言語性IQと動作性IQの差が大きいと発達障害ですか?
差の大きさだけでは発達障害とは言えません。検査の課題ごとに成績がばらつくことは、もともとよく見られることです。発達障害の診断は、医師が生育歴や今の困りごと、行動の観察などとあわせて判断します。
Q5. 自閉スペクトラム症(ASD)は動作性IQが高いのですか?
そうとは限りません。自閉スペクトラム症で動作性IQが言語性IQより高いという報告はありますが、研究によって結果がそろっていません。アスペルガー障害と診断された人では、逆に言語性IQのほうが高かったとするメタ解析もあります。
Q6. 動作性IQはネットの無料テストで測れますか?
測れません。ウェクスラー式の動作性の課題は、訓練を受けた検査者が積木やカードを使い、1対1で時間を計りながら行う検査です。ネット上のテストは、課題も得点の物差しも別のものなので、結果を動作性IQとして読み替えることはできません。
まとめ
動作性IQ(PIQ)とは、ウェクスラー式知能検査の古い版で、絵画完成・符号・絵画配列・積木模様・組合せなど、ことばをほとんど使わない課題から出していた知能指数です[3]。WISC-IV・WAIS-IVからは廃止され、今は知覚推理(WISC-Vでは視空間と流動性推理)や処理速度などの指標に分かれています[4][5][6]。
動作性IQや言語性IQとの差は、得意・不得意を知る手がかりですが、それだけで発達障害や知的障害を診断することはありません[1][8]。一方で、ウィリアムズ症候群やターナー症候群のように、視空間の力が弱いことが特徴の遺伝性の病気もあり[11][12]、体の特徴とあわせて原因を調べることが役立つ場合があります。言語性IQについては言語性IQ(VIQ)とはもあわせてご覧ください。
🧬 発達の遅れや凸凹の原因を調べたい方へ
知能検査は得意・不得意を表すもので、原因までは教えてくれません。原因が遺伝子や染色体の変化にあるかどうかを調べる検査については、検査ページで内容をご確認ください。検査を受けるかどうかまだ決めていない方は、遺伝カウンセリングとはで、検査で何がわかり、結果をどう受け止めればよいかを先にご覧ください。
参考文献
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