動原体 kinetochore
動原体とは
動原体は真核細胞有糸分裂の前中期prometaphaseに細胞の端部の中心体から伸びる微小管が結合する染色体部位(セントロメア)に形成され、細胞分裂期の際に染色体と紡錘体の微小管とを連結する役割をはたします。細胞分裂において正常な染色体分配seggregationが起こるには、複製した姉妹染色体が両極の紡錘体微小管から正しく引っ張られた安定的な状態が必要です。これを、2方向性の結合と言います。
下の画像で染色体は青、微小管は緑、ピンクで染色されているのが動原体で、動原体を介して微小管が染色体のセントロメアに付着します。緑色の微小管が集合している両端部分が中心体です。
動原体の形成
染色体のセントロメアに特異的なヌクレオソームによって動原体の位置が決まり、セントロメア特異的タンパク(centromere-specific proteins, CENPs)が会合し、動原体形成が始まります。
動原体は約40種類のタンパクから構成されます。
さらに、動原体のはたらきを制御するタンパクが20種類以上あります。
細胞が有糸分裂期に入ると、動原体の微小管結合に必要なタンパクがセントロメアに集まってきます。動原体と微小管結合の鍵を握っているのが紡錘体形成チェックポイント機構をつくるKnl1タンパクとNdc80複合体です。
動原体の微小管結合の時期と場所をコントロールするのは、MIS12複合体で4つの分子が会合した四量体です。
セントロメアではヒストンH3バリアントであるCENP-AがセントロメアDNAに結合して特異的なクロマチン構造を形成しています。微小管はチューブリンサブユニットから構成されるポリマーで、プラス端とマイナス端において重合と脱重合を繰り返し、伸長と短縮をくり返しすことができるダイナミックな高分子です。分裂期において動原体は紡錘体微小管のプラス端に結合します。
このような正常な細胞分裂に必要なタンパクに変異がおこり機能不全を起こすと、染色体不分離がおこりやすくなると考えられます。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号