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胎児尿路拡張(胎児水腎症)

胎児尿路拡張(胎児水腎症)

尿路拡張

軽度(grade1)の胎児尿路拡張(urinary tract dilation; UTD-A1)は通常、妊娠16週から27週における腎盂前後径4~7mm未満の腎盂拡張と定義される。腎盂最大前後径は、胎児の背骨を6時または12時の位置に置いて測定する必要がある。

尿路拡張症のグレードは以下のとおりである。

  1. Grade 0 : 腎盂の拡張がなく、正常な検査結果
  2. Grade 1:腎盂の拡張が軽度である
  3. Grade 2 : 腎盂に中等度の拡張があり、膀胱も小さいが確認できる。
  4. grade 3: 腎盂の拡張とすべての腎杯の拡張があるが腎実質は正常。
  5. grade 4:腎盂・すべての腎杯の拡張に加えて腎実質の菲薄化を認める

軽度(grade1)の胎児尿路拡張UTD-A1は、全体として胎児の1~2%に見られるが、21トリソミーを持つ胎児では11~17%で認める。

胎児尿路拡張の原因

一過性水腎症

胎児一過性水腎症の定義は、出生前の腎盂の拡張であり、時間とともに消失し、臨床的に重要ではない。一過性水腎症は胎児水腎症の最も一般的な原因であり、4~8割を占めると報告されている。これは発育初期の尿管骨盤接合部の一過性の狭窄に関係すると考えられ、胎児が成熟するにつれて臨床的な意味を持たずに消失するか安定した状態を保つとされている。妊娠第2三半期における腎盂径(RPD)<6mmの軽度の水腎症は、通常、一過性の水腎症に関連している。

先天性腎尿路異常(congenital anomalies of the kidney and urinary tract:CAKUT)

先天性腎尿路異常(CAKUT)は、尿管骨盤接合部閉塞のような上部/下部尿路閉塞疾患や、膀胱尿管逆流などの非閉塞性疾患の両方を含む胎児水腎症の一般的原因である。これらの疾患は、尿路感染症および慢性腎疾患の潜在的な危険因子であるため、出生後すぐに特定することが重要である。

先天性腎尿路異常(CAKUT)は胎児水腎症の出生後の評価のメタアナリシスにおいて約1/3を占めると報告されている。CAKUTによる胎児水腎症の原因には以下のようなものがある。

尿管骨盤接合部閉塞UPJO
最も多く、水腎症が重度なるとより頻度が増加する。
膀胱尿管逆流VUR
2番目に多い。
少ないながらも原因となるもの
メガウレター、多嚢胞性異形成腎、尿管瘤、後尿道弁、異所性尿管、プルーンベリー症候群、尿路嚢胞、重複腎盂尿管、尿道閉鎖症など
遺伝・奇形症候群
軽度の水腎症はダウン症候群の胎児によくみられる所見である。水腎症を第2期におけるRPD≧4mmと定義すると、水腎症は正常対照胎児(0~3%)と比較してダウン症候群(18%)でより多く認められる。水腎症単独ではなく、さらなる異常が認められた場合、スクリーニング検査ではなく、染色体異常のための確定的診断検査を選択するのが適切である。
その他、水腎症は、60以上の遺伝的および散発的な奇形症候群において、多発性奇形症候群の一部として報告されている。他の胎児構造異常が確認された場合、胎児は染色体異常を有する危険性があるため、羊水検査などで確定的な遺伝学的診断を行うのが妥当である。

軽度の胎児尿路拡張が見つかった場合の対処法

胎児尿路拡張UTD-A1を有するほとんどの胎児において、この所見は生理的かつ一過性であり、妊娠期間中または出生後に解消される。軽度の胎児尿路拡張UTD-A1を有する胎児の約12%は、出生後に泌尿器系疾患を有するため、妊娠32週頃にフォローアップの画像診断が推奨される。それでも解決しない場合は、出生後のフォローアップが推奨される。

染色体異数性スクリーニングを受けていない場合

NIPTなどの異数性スクリーニングの経験がなく、軽度の胎児尿路拡張UTD-A1が認められるしている妊婦に対して、SMFMは、トリソミー21の確率を推定するためのカウンセリングと、セルフリーDNAによる非侵襲的異数性スクリーニング(NIPT)、またはセルフリーDNAがコスト面等から難しい場合はクアトロテストの選択肢について話し合うことを推奨している。胎児尿路拡張UTDの精査のみを目的とした羊水検査などの診断的遺伝学的検査は推奨されていない

染色体異数性スクリーニングが陰性だった場合

母体血清スクリーニングまたはセルフリーDNAスクリーニング(NIPT)の結果が陰性で、胎児尿路拡張UTDの場合、それ以上異数性評価を行わないことを推奨している。

 

この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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