胎児高輝度腸管
胎児高輝度腸管は、妊娠第2三半期(中期)の超音波検査で認められた胎児腸のエコー強度(明るさ)の増加を指す。高エコー(高輝度)とは、周波数5MHz以下の経腹トランスデューサーを用い、高周波帯をオフにし、ゲインを低くして、腸が骨と同じくらい明るく見えることをさす。周波数が高いトランスデューサや高周波によって、腸が高エコーではないにもかかわらず、高輝度に見えることがあるため、重要である。
胎児高輝度腸管は、21トリソミー(ダウン症候群)の胎児の13~21%で認められるのに対して、正常核型胎児では1~2%で認められる所見である。胎児高輝度腸管を有する胎児において最も一般的な染色体異数性は21トリソミーである。孤立性胎児高輝度腸管(他に何の異常所見もない胎児高輝度腸管)は、性染色体異数性で報告されており、セルフリーDNAによるスクリーニング(NIPT)で検出できる可能性がある。
それまでに異数性スクリーニングを受けたことがなく、孤立性胎児高輝度腸管が認められた妊婦に対しては、母体胎児学会SMFMは、トリソミー21の確率を推定するためのカウンセリングと、NIPT、またはコスト等でNIPTを受けられない場合はクアトロテストの選択肢について話し合うことを推奨している。
それまでに受けたNIPTで陰性だった場合、それ以上異数性評価を行わないことも推奨している。
胎児高輝度腸管は一過性で、7割程度の胎児で薄くなったり消えたりするが、嚢胞性線維症、先天性感染、羊膜内出血、胎児発育不全、消化管疾患など、さまざまな胎児および妊娠合併症と関連している可能性もある。胎児発育不全との関係性もあるため、胎児の成長を評価するために妊娠第3期(後期)のフォローアップ超音波検査が推奨される。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号