デオキシリボース
DNAを作るのに、デオキシリボースは重要な骨格をなす五炭糖で、細胞の複製をするのに必要です。デオキシリボースの定義、DNA中の構造、重要性についてご紹介します。
デオキシリボースとは?
デオキシリボースは糖の一種ですが、甘味を加えるときに使う糖とは異なります。デオキシリボースは単糖類です。単糖類monosaccharideは、加水分解によって単純な糖に分解できない糖で、アルドースまたはケトースに分類され、1分子あたり1つ以上のヒドロキシル基を含むものをいいます。「モノ」は「1つ」、「サッカライド」は「糖」を意味しています。
アルドース
アルドースは、カルボニル基(−C(=O)− )が最末端の炭素原子にある炭素骨格鎖を持つ単糖(単純な糖)で、アルデヒドRCHOとなり、他のすべての炭素原子に水酸基が結合しているものです。
ケトース
ケトースは糖質の鎖状構造の内部にケト基(ケトン性カルボニル基)を1つ含む単糖類の総称です。分子式はCnH2nOnで、nは3以上となります。
デオキシリボース
デオキシリボースは、正確には2-デオキシリボースとして知られており、DNAの構成要素となっています。-oseで終わる分子はすべて糖類です。デオキシリボースの化学式はC5H10O4です。複雑に見えるかもしれませんが、文字は周期表の元素名を表し、下付きの数字は特定の化合物を構成する各元素の数を表しています。つまり、デオキシリボースは、炭素原子5個、水素原子10個、酸素原子4個からできているということです。
デオキシリボースの構造
デオキシリボースは、5つの炭素原子が五角形を形成しています。名前からわかるように、デオキシリボースは5つの炭素原子を含むペントース単糖(ペンタは5をあらわします)と呼ばれる特殊な糖です。名前に含まれているリボースも五炭糖の一種です。リボースは、炭素原子に酸素原子が1つずつ結合した通常の糖です。化学的にリボースとデオキシリボースを分けるのは、リボースがさらに酸素原子を含んでいることです。
デオキシリボースは、他の分子や原子団がくっついてデオキシリボ核酸(DNA)の配列を完成させることができるように、特別な構造になっています。リボースとデオキシリボースは、DNAとリボ核酸(RNA)の生成に関わります。リボヌクレオチド還元酵素と呼ばれる酵素が、リボース糖の炭素の1つから酸素分子を取り除きます。その結果、DNAの塩基であるデオキシリボースができます。この単純な変化が、RNAとDNAの唯一の違いであり、長い時間をかけてDNAとRNAという異なる機能を進化させてきたました。
デオキシリボースは環の炭素の1つから酸素分子を失っていて、一見単純な変化のように見えるのですが、加水分解によるDNAの耐性に大きな影響を与えます。RNAは、酸素が増えることで、水分子との相互作用が大きくなります。これにより、リボース分子をつなぐホスホジエステル結合が加水分解されてしまいやすくなります。それに比べて、デオキシリボース分子をつなぐホスホジエステル結合は、当然ながら水分との相互作用が少なく、加水分解による破壊も少ないからRNAよりもDNAのほうがはるかに安定しています。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号