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チアノーゼ

チアノーゼ

赤ちゃんのチアノーゼ

チアノーゼとは、皮膚や粘膜が異常に青く変色する病気です。dark blueを意味するギリシア語のキュアノスkyanosが語源となっています。

チアノーゼはくちびる、口腔粘膜、指先や爪でみられますが、こうした部位はメラニン色素が少なくて表皮が薄く、毛細血管が多い、ということから毛細血管血液の色をよく反映するためです。

チアノーゼの原因

ヘモグロビンの分子構造

チアノーゼは、皮膚・粘膜の青紫色変化のことをいい、毛細血管内を流れる血液の脱酸素化された還元ヘモグロビン濃度が5g/dL以上に上昇することで起こります。

ヘモグロビンが正常な成人(男性:14~18g/dL、女性:11~16g/dL)では、酸素飽和度が80~87%に低下すると中心性チアノーゼが見られます。

ヘモグロビン値が低い場合や貧血の場合は、ヘモグロビン値が6g/dLの場合、酸素飽和度が60%程度まで低下しないとチアノーゼは臨床的には認められないと言われています。

貧血や大量出血で急に体内のヘモグロビンがうしなわれた患者さんでは、もともとのヘモグロビン量が少ないので、ヘモグロビンが酸素を組織に手放してできる還元型ヘモグロビンの産生自体が少なくなりますから、チアノーゼが出現しにくくなっています。

逆に、もともと血色素(ヘモグロビン)量の多い多血症の患者さんでは、ちょっとの酸素飽和度の低下でも脱酸素された還元型ヘモグロビン濃度が5g/dL以上となってしまい、チアノーゼを認めることがあります。

また、一酸化炭素は酸素の200倍以上もヘモグロビンとの親和性が高いため、酸素が一酸化炭素を押しのけてヘモグロビンに結合することができません。このため、赤血球が酸素を運べなくなってしまい、一酸化炭素中毒では低酸素血症となります。しかし、一酸化たんと週毒時の低酸素血症では還元型ヘモグロビンが増えるわけではないので、チアノーゼはみられません。ですので、チアノーゼは低酸素血症に特有の症状というわけではありません。

末梢性チアノーゼの原因

末梢性チアノーゼは、局所的な血液循環が低下し、末梢組織での酸素の負荷が増大することにより生じます。これは、末梢で血液が滞留している場合によく起こります。一般的には、足指や指の患部が青みがかったり、紫色に変色したりします。手や足を触ると冷たいことが多いです。爪の生え際(爪床)は、末梢性チアノーゼをみるのに最適な場所です。末梢性チアノーゼの一般的な例は以下の通りです。

  • 心血管性ショック(血圧の著しい低下を伴う血液循環障害)
  • うっ血性心不全
  • 寒冷地での生活
  • 血液循環に関するいくつかの疾患

中枢性チアノーゼの原因

中枢性チアノーゼは、心臓や肺の病気、あるいはメトヘモグロビン血症やスルホヘモグロビン血症と呼ばれるヘモグロビンの異常が原因で起こります。舌、唇、口の内側の粘膜などにチアノーゼが見られます。中心性チアノーゼでは、末梢性チアノーゼを併発します。

呼吸器系の原因によるチアノーゼ

呼吸器系の基礎疾患がある場合、血液中に酸素が入りにくくなり、チアノーゼになることがあります。息苦しさ、速い呼吸、手足や口の粘膜の青みがかった、または紫色の変色が見られます。手足は通常、常温または温かくなります。チアノーゼの原因となる肺の異常の例としては、以下のようなものがあります。

  • 吸い込める酸素の量が制限される状態
  • 気道の閉塞により、肺に入る酸素の量が制限される場合
  • ぜんそく、肺炎、気管支炎などの原発性肺疾患

心臓・血管系の原因によるチアノーゼ

心臓・血管系の原因によるチアノーゼは、乳児のチアノーゼ型心疾患が代表的です。チアノーゼは、先天性心疾患と呼ばれる心臓の欠陥を持つ乳児によく見られます。乳幼児のチアノーゼは、血液中の酸素濃度が低く、重度の中枢性チアノーゼを引き起こします。

通常、酸素を含んだ血液は心臓から各臓器に送られます。末梢からは、酸素を含んだ血液が肺を経由して心臓に戻ってきますが、チアノーゼ型心疾患では、酸素を十分に含んでいない血液が心臓から流れ出ています。心臓の左右の部屋を隔てる壁に穴が開いていたり、肺に行くはずの動脈と体に血液を送り出すための動脈とが入れ替わっていたりで、心臓と肺を流れる血液の流れが変わってしまっています。

チアノーゼが出る酸素飽和度

正常な人では動脈血酸素飽和度100%、毛細血管内は85%、静脈では70%となっています。動脈から毛細血管に入り静脈へと流れていくので、静脈内を流れる血液の酸素飽和度が最も低いのは当然です。

還元ヘモグロビン濃度が5g/dl以上になるのは、毛細血管血酸素飽和度は67%以下になった時です。

毛細血管血酸素飽和度は67%以下になってチアノーゼが出るとき、抹消型チアノーゼでは動脈血酸素飽和度100%であるのに対し、中枢型ではヘモグロビン15と仮定すると動脈血酸素飽和度82%以下となっています。

ヘモグロビン

ヘモグロビンが酸素を運び放出する

正常な人の場合、ヘモグロビンと呼ばれる血液タンパク質は、動脈で酸素を各臓器に運ぶ役割を果たしています。ヘモグロビン1gあたり、1.34mLの酸素と結合することができるとされています。血液中の酸素のほぼすべてがヘモグロビンによって運ばれるのですが、一部は、血液中に溶け込んだ形で運ばれます。

酸素を含んだヘモグロビンは鮮やかな赤色をしていますが、還元されたヘモグロビンは濃い青や紫の色をしています。静脈血ではヘモグロビンは多くが酸素を放出して還元型となっているため、色が濃くなります。そのため、皮膚や粘膜の色がくすんだり、青くなったりします。

チアノーゼの症状

先天性チアノーゼ型心疾患の患者の右手。バチ指の典型的な特徴。指が特徴的。

チアノーゼでは皮膚、爪の生え際(爪床)、粘膜などが青紫色になります。チアノーゼにより影響を受ける可能性のある主な臓器には、呼吸器系、血液、心臓または循環器系、および中枢神経系があります。

末梢チアノーゼ

チアノーゼが手足だけに見られる場合は、先端チアノーゼまたは末梢チアノーゼと呼ばれます。これは幼い乳児によく見られるもので、正常な生理現象の一部です。ヘモグロビン濃度15g/dLと仮定すると、チアノーゼ出現時の血液中酸素飽和度は、毛細血管内血液酸素飽和度が67%以下ですが、動脈血酸素飽和度は100%ですので前身としては問題はなく、治療も必要ありません。

中枢性チアノーゼ

中枢性チアノーゼとは、口や頭、胴体など、体の「中心部」に見られるチアノーゼのことです。中枢性チアノーゼは、新生児期には決して正常ではなく、ほとんどの場合、血液中の酸素量の低下と関連しています。心臓、肺、血液のいずれかに問題がある場合に起こります。

ヘモグロビン濃度15g/dLと仮定すると、中枢性チアノーゼ出現時の血液中酸素飽和度は、毛細血管内血液酸素飽和度が67%以下ですが、動脈血酸素飽和度は100%です。中枢性チアノーゼは全身に影響を及ぼします。粘膜や舌などでチアノーゼが見られます。通常、生命を脅かすような重篤な病気が潜んでいることを意味しており、早急な評価が必要です。

 

この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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