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SWI/SNF複合体

SWI/SNF複合体(SWItch/Sucrose Non-Fermentable complex)は、細胞内のクロマチン構造を変化させることによって、遺伝子の発現を制御する重要な役割を果たすタンパク質複合体です。この複合体は、DNA依存性のATPase活性を持つタンパク質、例えばSwi2/Snf2ファミリーに属するSMARCA4などを含みます。クロマチンリモデリングとは、ヌクレオソーム(DNAとヒストンタンパク質から成る構造)の位置や構成を変化させることで、特定の遺伝子領域へのアクセスを調節するプロセスです。

SWI/SNF複合体は、細胞の種類や発達段階に応じてさまざまな機能を果たし、正常な細胞機能の維持に不可欠です。不具合や変異があると、発癌などの様々な疾患の原因になることが知られています。また、複合体の構成要素の一つであるARID1Bは、特定の条件下でのみSWI/SNF複合体に存在することが報告されています。これらの知見は、クロマチンリモデリングが細胞の遺伝的制御においていかに重要かを示しています。

SWI/SNF複合体の構造


SWI/SNF複合体は、最初に同定されたATP依存型クロマチンリモデリング複合体で、4から17のサブユニットから構成されています。この複合体は、酵母の約5%の遺伝子の発現を制御し、転写、DNAの複製、修復において重要な役割を果たしています。SWI/SNF複合体には、中心となる触媒サブユニットであるSMARCA4(BRG1)またはSMARCA2(BRM)と、10から13の関連サブユニットが含まれています。

SWI/SNF複合体の構造は複雑で、複数のサブユニットで構成されています。この複合体は、細胞内でのクロマチンリモデリングにおいて重要な役割を果たします。以下は、SWI/SNF複合体の一般的な構造的特徴です。

コアATPaseサブユニット: SWI/SNF複合体の中心となるのは、DNA依存性のATPase活性を持つSwi2/Snf2ファミリーのメンバーです。このファミリーには、ヒトではSMARCA4(BRG1)やSMARCA2(BRM)などが含まれます。

アクセサリーサブユニット: ATPaseサブユニットの周囲には、多数のアクセサリーサブユニットが存在します。これらはクロマチンリモデリングのプロセスを支援し、複合体の特異性と機能を調節します。例えば、ARID1A、ARID1B、SMARCB1、SMARCE1などが含まれます。

モジュラー構造: SWI/SNF複合体は、異なるサブユニットの組み合わせによって複数の異なるバリアントを形成することができます。これにより、細胞のタイプや発達段階に応じて、特異的な機能を果たすことが可能になります。

ダイナミックな組み換え: 複合体のサブユニットは、環境や細胞の状態に応じて組み換えられることがあります。これにより、複合体の活性や特異性が変化し、遺伝子発現の調節に影響を与えます。

相互作用と調節: SWI/SNF複合体は、他のタンパク質や転写因子と相互作用し、遺伝子発現の調節における複雑なネットワークに組み込まれています。

このように、SWI/SNF複合体はその構造と機能の両面で、細胞内の遺伝子発現調節の重要な要素となっています。

SWI/SNF複合体の構造

SWI/SNF複合体は主にクロマチンリモデリングに関わるタンパク質複合体で、細胞内の遺伝子発現の調節に重要な役割を果たします。この複合体の主な機能は以下の通りです:

クロマチン構造の変更: SWI/SNF複合体は、クロマチンのヌクレオソーム(DNAとヒストンタンパク質の複合体)の位置を動かすことで、DNAのアクセス可能性を変化させます。これにより、特定の遺伝子領域が転写因子や他の調節タンパク質により容易にアクセスされるようになります。

遺伝子発現の調節: クロマチンの再配置により、遺伝子の発現が促進されたり抑制されたりします。これは、遺伝子のオン/オフの切り替えとして機能し、細胞の特性や反応を調節します。

細胞分化と発達: SWI/SNF複合体は、細胞の分化過程や発達段階において特定の遺伝子の発現パターンを調節することで、細胞の運命を決定します。

DNA修復と安定性の維持: この複合体はDNA修復プロセスにも関与しており、遺伝的安定性の維持に寄与します。

疾患との関連: SWI/SNF複合体の異常や変異は、がんを含む多くの疾患の発生に関与していることが知られています。特にがん細胞においては、この複合体の異常が遺伝子の不適切な発現や細胞の異常な成長につながることがあります。

このように、SWI/SNF複合体は細胞の遺伝子発現、分化、発達、そして遺伝的安定性の維持において中心的な役割を担っています。その機能の異常は、さまざまな生物学的プロセスや疾患の理解において重要です。

SWI/SNF複合体の作用機序

SWI/SNF複合体の作用機序は、クロマチンリモデリングにおけるその核心的な役割に関連しています。この複合体は、クロマチンの構造を変化させることによって、DNAへのアクセスと遺伝子発現を調節します。以下に、SWI/SNF複合体の作用機序を詳細に説明します。

クロマチン構造への結合: SWI/SNF複合体は、クロマチンに結合します。クロマチンはDNAとヒストンタンパク質からなる複合体で、遺伝子のアクセス可能性を調節するヌクレオソームという単位で構成されています。

ATP依存性のリモデリング活性: SWI/SNF複合体には、ATPをエネルギー源とするDNA依存性のATPase活性を持つサブユニットが含まれています。この活性により、クロマチン構造の変化が促進されます。

ヌクレオソームの再配置: 複合体はATPを利用して、ヌクレオソームの位置を動かします。これにより、通常はヌクレオソームによって隠されているDNA領域が露出し、転写因子や他の調節タンパク質がアクセスできるようになります。

遺伝子発現の調節: ヌクレオソームの再配置によって、特定の遺伝子の転写が促進されたり抑制されたりします。これは、遺伝子のオン/オフの切り替えとして機能し、細胞の特性や反応を調節します。

相互作用と協調: SWI/SNF複合体は、他の転写因子やクロマチン調節因子と相互作用します。これにより、特定の遺伝子や遺伝子群の発現パターンが細かく調節されます。

多様な生物学的プロセスへの関与: この複合体は、細胞分化、発達、DNA修復、細胞周期制御など、多様な生物学的プロセスに関与しています。

SWI/SNF複合体の作用機序は、その構成成分の多様性とダイナミックな組み換え能力により、非常に複雑で柔軟です。そのため、細胞の種類や状態に応じて異なる遺伝子発現の調節が可能になります。また、この複合体の異常や変異は、癌を含む多くの疾患の発生に関わっているとされています。

この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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