リンカー配列
リンカーは、タンパク質のドメイン間に存在する短いペプチド配列である。リンカーは、隣接するタンパク質ドメインが互いに自由に動けるように、グリシンやセリンのような柔軟性のある残基で構成されることが多い。隣接する2つのドメインが立体的に干渉しないようにする必要がある場合は、長いリンカーが使用される。
リンカーは、機能ドメインを連結したり(フレキシブルリンカーやリジッドリンカー)、生体内で遊離した機能ドメインを放出したり(in vivo cleavable linkers)するという基本的な役割の他に、生物活性の向上、発現量の増加、望ましい薬物動態プロファイルの達成など、融合タンパク質の生産に多くの利点をもたらす可能性がある。
リンカーやスペーサーは、1つのタンパク質の複数のドメインを分離するために自然界で作られた短いアミノ酸配列である。
ほとんどのリンカーは、独立したドメイン間の不要な相互作用を禁止するために機能している。しかし、Glyリッチリンカーは、柔軟性があり、1つのタンパク質の中の様々なドメインを、それぞれのドメインの機能を妨げることなく接続することができる。組換えDNA技術の出現により、人工的なリンカーを導入することで、相互作用する2つのパートナーを融合させることが可能になった。独立したタンパク質は、結合相手と相互作用するまでは、安定した構造のタンパク質として存在しないことが多い。糖鎖リンカーは、このような不安定な相互作用、特に相互作用が弱く一過性のものである場合、タンパク質間に共有結合を形成し、安定したタンパク質-タンパク質複合体を形成することで、その有用性が証明されている。また、糖鎖を多く含むリンカーは、共有結合した安定な二量体を形成したり、リガンド結合部位や認識配列を形成する2つの独立したドメインを連結するためにも用いられる。リンカーの長さは2~31アミノ酸と様々で、リンカーが結合相手の構造や相互作用に制約を与えないように、それぞれの条件に合わせて最適化されている。共有結合したタンパク質複合体のさまざまな構造が、X線結晶構造解析、核磁気共鳴、低温電子顕微鏡の技術を用いて記述されている。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号