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卵子の質

卵子の質

精子と卵子の受精

多くの女性は、残っている卵子の数(卵子数)が妊孕性の主要な指標であると考えています。しかし、卵子の数は妊娠する能力の要素ではありますが、妊孕性の真の原動力は卵子の質であり、卵子の質の低下は加齢による自然で避けられないものです。ここでは、妊活と卵子の質について知っておくべきことをご紹介します。

加齢に伴う妊孕性の低下

妊孕性(にんようせい)は妊娠する能力のことを指しますが、女性の妊孕性は、年齢の影響があることが今までに多くの研究によって明確に証明されてきました。母体の年齢が上がるにつれて妊娠率が低下することがどの研究でも一貫して示されています。
妊孕性の低下は低下は早ければ32歳から始まり、45歳になると99%の女性が不妊となります。
さらに、高齢の女性では、染色体異数性(染色体の数に異常がある)、流産、死産の割合が高いため、妊娠しても生児を出産する可能性は低くなります。これらの関係は、体外受精を行っているクリニックのデータによっても示されています。

女性の年齢 35歳未満 35~37 38~40 41~42 42歳以上
体外受精の周期数 44191 25876 24503 12258 8675
1周期当たりの生産率
(生きた赤ちゃんが生まれる率)
54.7% 40.6% 25.6% 12.8% 4.4%

卵子の質と生殖能力の低下は年齢とともに自然に起こる

加齢による女性の生殖能力の低下は、卵子の数の減少と卵子の質の低下に起因します。

年齢とともに卵子が減少する

胎児期から閉経までの間に起こる卵子の減少は、加齢に伴って女性の生殖能力が低下する理由の一つとなっています。卵子プールは、女性の胎児が母親の子宮内にいる間にピークとなり、妊娠20週目には約600万〜700万個に達します。その後、減少に転じ、残存する卵子の数は、出生時には約100~200万個、思春期の開始時には約20万個となります。女性は毎月卵子を失います。思春期以降は毎月約1000個の卵子が失われ、35歳になると残りの卵子の数は約6%になります。正常な女性では37歳以降に加速して減少していきます。枯渇すると閉経となりますが、閉経の平均年齢は約51歳です。

年齢とともに卵子の質が低下する

卵子の数が時間とともに減少すると、卵子の質も低下し、最終的には妊娠が不可能になる時点に到達します。

それでは、卵子の質の低下とは、一体何を意味しているのでしょうか?

ちょっと難しい話になりますが、卵子の質の低下は主に減数分裂という細胞分裂の際に染色体をコピーした娘細胞に分ける為に必要な紡錘体という細胞内の小さな部品が機能不全に陥ることに原因があります。それが染色体をきちんと分けることができないことにつながり、染色体の本数の数が正常ではない、つまり異数性のある胚を産む卵子が増える原因となるのです。

減数分裂のエラーは、染色体異常の胚の発生率を高め、流産の発生率や妊娠の可能性を低下させます。すべての女性は、何割かの割合で異常な卵子を持っています。年齢の異なる卵子から胚を作った研究によると、20代前半の女性は約20%、40代の女性は約80%の異常卵子を持っていると言われています。異数性のある卵母細胞の率は、45歳以降では99%に達すると推定されています。このような卵子の質と生殖能力の低下は、国、人種を超えてあらゆる集団で見られます。

異数性と呼ばれる異常な染色体数を持つ卵子のほとんどは受精しないため、生殖能力と卵子の質は関係があります。また、受精しても流産してしまう場合もありますし、ダウン症などの遺伝的障害を持つ赤ちゃんが生まれる場合もあります。このように、卵子の質が低下しているからこそ、35歳以上の女性で流産やダウン症の発生率が高くなるのです。

妊孕性は卵子の質で決まる

妊活には卵子の数と質の両方が影響します。

不妊治療を行う場合でも、年齢と妊娠力、卵子の質の関係は、妊娠の可能性を左右します。体外受精などの不妊治療では、ホルモン剤を使って卵巣に働きかけ、1回の生理で複数の卵を作らせますが、その中には異常な卵も含まれます(異常な卵が何個あるかは年齢によって異なります)。体外受精は、健康な卵子が見つかる可能性を高めることはできますが、健康な卵子を増やすことはできません。40代の女性が1回の体外受精サイクルでで採卵した場合、採取できたうち10~20%の卵が正常である可能性があります。2回の体外受精で20個の卵を採取したとしても、正常な卵は10~20%に過ぎませんが、より多くの卵を採取することで、より多くの正常な卵を得るチャンスがうまれます。これが過剰に刺激を行い、一度にたくさんの卵を採取しようとする考えの基礎となっています。

体外受精のような高度な生殖技術を用いても、年齢とともに成功率が低下するのはこのためです。健康な卵子が少なければ、成功の可能性は低くなります。

卵子の質を調べる不妊検査はありません

卵巣予備能検査と呼ばれる不妊検査は、卵子の質ではなく、卵子の数を示すマーカーを検査するものです。不妊検査では、抗ミューラーホルモン値(AMH)のように、残っている卵子の数を知ることができ、卵子凍結や体外受精の際に回収できる卵子の数を予測することができます。これは重要な情報ですが、あくまでも全体像の一部に過ぎません。

卵子の染色体が正常かどうかを確かめる唯一の方法は、受精を試み、受精が成功した場合、受精胚の遺伝子検査を行うことです。未受精卵の卵子の質は、単一の細胞であるため、現在の医療技術では検査することができません。しかし、卵子のDNAのエラーは時間の経過とともに自然に必然的に起こるものであり、また、年齢が卵子の質に与える影響は一貫して普遍的なものであるため、ご自身の卵子のうち何パーセントが正常であるかを受精胚の正常率から正確に知ることができます。

卵子の質を向上させるためにできること

卵子の質を向上させるためにできることは多くありません。

卵子の質は、健康なものから不健康なものまでの尺度ではなく、正常か異常かの二元的な状態です。しかし、一度、異常なDNAを持った卵子であってもトリソミーレスキューといって分裂するときに1本外れてしまうことで正常になることもあります。このときに、あやまって父親側からもらった1本が外れてしまうと、常染色体なら母親側からだけで2本あるという片親性ダイソミー(かたおやせいダイソミー)という状態になることもあります。

食生活やハーブ、鍼灸、ヨガ、マッサージなどの代替療法が妊娠力や卵子の質を向上させるという証拠はありません。葉酸など、生殖能力に関連する栄養素の多くは、胎児の成長をサポートするため、現在妊娠を希望している女性にのみ有効ですが、卵巣内の卵子には影響を与えません。

マッサージやヨガなどの代替療法は、体外受精(IVF)や卵子凍結の際にリラックスするのに役立ちますが、これらの療法に頼って妊娠成功率を上げることはできませんし、これらの療法を自然な不妊治療と称するマーケティングも世の中には存在します。人は簡単な治療方法を望みますが、科学的な裏付けはありません。卵子のアンチエイジング治療は現在のところ存在しません。

加齢以外に卵子の質の低下を招くもの

卵子の質の低下は、基本的には年齢のみによって引き起こされますが、いくつかの例外もあります。

タバコ

たばこを吸う女性は、たばこを吸わない女性に比べて、卵子の数が少なく、健康な卵子の割合が低いため、閉経が平均4年早くなると報告されています。

抗がん剤

卵子の質は、がん治療に使われる化学療法薬のような、全身に作用する毒性のある薬による影響も受けます。喫煙は完全に防ぐことができますが、がん治療は卵子のために諦めることはできません。そのため、凍結保存が可能となった現在では、多くの女性たちががん治療前に卵子を凍結しています。

子宮内膜症など

卵子の質や生殖能力は、子宮内膜症などの他の生殖器系の病気によって影響を受けることがあります。子宮内膜症の女性が、子宮内膜症ではない女性から提供された卵子を使って体外受精を行った場合、かなり高い妊娠率が得られるという研究がありますが、逆に子宮内膜症のない女性が子宮内膜症のある女性から提供された卵子を使って体外受精を行うと、成功率が著しく低下することから、子宮内膜症が卵子の質に影響を与えているのではないかと考える専門家もいます。

卵子の質と生殖能力を維持するには

卵子の質と生殖能力を維持するためには、卵子を凍結保存するしかありません。卵子凍結などの凍結保存は、現在のところ妊孕性を保つための唯一の手段です。凍結保存された卵子は、眠りにつき、「時を刻まない」ことで加齢によるダメージを受けることがありません。32歳の時に凍結した卵子は、あなたが45歳になっても32歳のままです。ご自身の自然な生殖能力や現在の卵巣に存在する卵子の質が低下した後でも、凍結卵子があれば健康な卵子を使って妊娠することができます。

この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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