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Nucleotide excision repair

ヌクレオチド除去修復(Nucleotide Excision Repair, NER) は、DNAに生じた大きな損傷を修復する重要なDNA修復機構の一つです。特に、紫外線(UV)や化学物質などによるDNA損傷、例えばピリミジンダイマー(隣接するピリミジン塩基の異常な結合)や、バルキーアダクト(化学的に大きな付加体)の除去に特化しています。この修復機構は、DNAの一本鎖に生じた損傷を切り取り、その損傷部分を正しい配列で置き換えるプロセスを通じて機能します。

NERは、複雑で多段階にわたるプロセスで、いくつかの遺伝子群が協力してDNA修復を行います。主に次のステップで構成されています。

●ヌクレオチド除去修復のステップ
1.DNA損傷の認識
最初のステップでは、DNAの異常が検出されます。
グローバルゲノム修復(Global Genome Repair, GGR) と転写共役修復(Transcription-Coupled Repair, TCR) という2つのサブパスウェイがあります。
GGRは、全ゲノム中の損傷をスキャンし、損傷箇所を認識する役割を果たします。主に、XPC-RAD23B 複合体や**DDB2(XPE)**が関与します。
TCRは、転写中に損傷を検知し、転写が止まった際に即座に修復が行われる経路です。この場合、CSA(ERCC8)やCSB(ERCC6)が修復を開始する信号を伝えます。
2.DNAのほどき(ヘリカーゼ活性)
DNAの損傷が認識された後、修復するためにその部分のDNA二重らせんをほどく必要があります。
TFIIH複合体の一部であるXPBとXPD(それぞれERCC3とERCC2遺伝子にコードされる)は、ヘリカーゼとして機能し、DNA二重らせんを解いて修復が行えるようにします。
3.損傷部位の切除
損傷した領域がほどかれると、異常なDNA部分がエンドヌクレアーゼによって切除されます。この過程では、損傷部分を含む20~30塩基対程度のDNAが取り除かれます。
XPF-ERCC1複合体とXPG(ERCC5)は、損傷部分の切断に関与します。これらはDNAの片方の鎖を正確に切り取り、異常な部分を除去します。
4.新しいDNAの合成と置換
損傷部分が切り取られた後、残されたギャップ(隙間)はDNAポリメラーゼによって新しいヌクレオチドで埋められます。
DNAポリメラーゼδ/εが正しい塩基を合成し、DNAリガーゼがDNA鎖をつなぎ合わせて最終的な修復を完了させます。

●ヌクレオチド除去修復に関与する主要な遺伝子群
XPC: 損傷DNAの認識に重要な役割を果たします。特に、GGR経路で初期の損傷感知を行い、他の修復因子をリクルートします。
XPA: DNA損傷部位を確認し、修復因子を正確に配置する重要な調整役。
XPB(ERCC3)とXPD(ERCC2): ヘリカーゼとして働き、DNAのほどきに関与します。TFIIH複合体の一部として機能します。
XPF(ERCC4)とERCC1: エンドヌクレアーゼとしてDNAの損傷部分を切除します。
XPG(ERCC5): XPFとともにDNAの切断を行う重要なエンドヌクレアーゼ。
DDB2(XPE): 損傷認識に関与し、特にUV損傷に対応します。
CSA(ERCC8)とCSB(ERCC6): 転写中のDNA損傷の認識と修復に関与し、TCR経路で活躍します。
●POLH(ポリメラーゼη)の役割
POLH(ポリメラーゼη)は、NERには直接関与しませんが、紫外線による損傷をバイパスする特殊な役割を持ちます。特に、ポリメラーゼηは、DNAの損傷部位で複製が止まるのを防ぎ、正確に損傷部分を超えてDNA合成を進めることができます。これにより、突然変異が蓄積するリスクを軽減します。

●まとめ
NERは、特に紫外線や環境化学物質によって引き起こされる大きなDNA損傷を修復するための重要なプロセスです。さまざまな遺伝子が協力し合い、DNA損傷の認識から修復までを行います。これらの遺伝子の変異は、色素性乾皮症(XP)やコケイン症候群(CS)などの病気を引き起こし、DNA修復がうまくいかないことで皮膚がんなどのリスクが高まります。

Nucleotide excision repairに属するサブグループ

ERCC excision repair associated (ERCC)
Xeroderma pigmentosum complementation groups (XP)

Nucleotide excision repairに属する遺伝子

CETN2
DDB1
DDB2
GTF2H1
GTF2H2
GTF2H3
GTF2H4
GTF2H5
LIG1
MMS19
MNAT1
RAD23A
RAD23B
RPA1
RPA2
RPA3
RPA4
XAB2

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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