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MHC Major histocompatibility complex 主要組織適合性複合体

抗原提示細胞とT細胞の相互作用を通じて免疫系の活性化と阻害に関与する膜タンパク質。3Dレンダリング

主要組織適合性複合体(MHC)は、免疫反応に重要な役割を果たす細胞表面のタンパク質をコードする遺伝子群です。主な役割は抗原提示で、MHC分子がペプチド断片を表示し、適切なT細胞に認識させます。

主要組織適合性複合体(MHC; Major Histocompatibility Complex)とは?

主要組織適合性複合体(MHC; Major Histocompatibility Complex)は、免疫系において非常に重要な役割を果たすタンパク質の複合体です。この複合体は、細胞がどのように自己と非自己を識別し、免疫反応を調節するかに関与しています[1][2][3][4][5][6][7][8].

MHCは、主に細胞表面に存在し、細胞内で生成されたペプチド(タンパク質の断片)を細胞外に提示する役割を持っています。このペプチド提示機能により、T細胞(特定の免疫細胞)は、細胞が正常か、あるいはウイルスやがんなどに感染しているかを識別できます[1][3].

MHCは、ヒトではHLA(Human Leukocyte Antigen)とも呼ばれ、マウスではH-2と呼ばれています。これらは、個体間で非常に多様な形で存在し、その多様性が個体の免疫反応の差異を生み出します[2][3].

MHCは大きく二つのクラスに分けられます:
– MHCクラスI: すべての有核細胞に存在し、主に細胞内で生成されたペプチドを提示します。これにより、主にウイルス感染細胞やがん細胞を識別し、殺す役割を持つCD8+ T細胞(サイトトキシックT細胞)に情報を提供します[3][7].
– MHCクラスII: 主に免疫系の細胞(例えば樹状細胞、マクロファージ、B細胞など)に存在し、これらの細胞が摂取した外来の抗原を提示します。これにより、CD4+ T細胞(ヘルパーT細胞)が活性化され、抗体産生や他の免疫応答を促進します[3][7].

MHCの遺伝子は、ヒトでは第6番染色体に位置し、その領域は約4Mbに及びます。この領域には、MHCクラスI、クラスII、およびクラスIIIの遺伝子が含まれており、これらは免疫応答に必要な多くの他のタンパク質もコードしています[2][3].

MHCの多様性は、個体がさまざまな病原体に対して適切に反応できるようにするために重要であり、また、臓器移植時の拒絶反応の原因ともなります。そのため、移植医療においては、ドナーとレシピエントのMHC(HLA)の適合性が非常に重要です[3].

MHCがどのように免疫反応に関与するのか教えてください

MHC(主要組織適合性複合体)は免疫反応において中心的な役割を果たします。具体的には、MHC分子は体内で生成されたペプチド抗原を細胞表面に提示することで、T細胞による免疫応答を誘導します[1][2][3][4][5][6][7][8].

● MHCの基本的な機能

1. 抗原提示: MHC分子は、細胞内で生成されたペプチド抗原を細胞表面に提示します。これにより、T細胞はこれらの抗原を認識し、適切な免疫応答を開始することができます[1][2][3][4][5][6][7][8].

2. 自己と非自己の識別: MHC分子は、自己由来のペプチドと非自己由来のペプチド(例えば、ウイルスや細菌のタンパク質由来)を区別して提示します。これにより、免疫系は正常な細胞と感染細胞や異常細胞を識別することができます[1][2][3][4][5][6][7][8].

● MHCのクラスとその役割

– MHCクラスI分子: すべての有核細胞に存在し、主に細胞内で生成されたペプチドを提示します。これにより、CD8+ T細胞(サイトトキシックT細胞)が活性化され、感染細胞やがん細胞を攻撃することができます[1][2][3][4][5][6][7][8].

– MHCクラスII分子: 主に免疫系の細胞(例えば樹状細胞、マクロファージ、B細胞など)に存在し、これらの細胞が摂取した外来の抗原を提示します。これにより、CD4+ T細胞(ヘルパーT細胞)が活性化され、抗体産生や他の免疫応答を促進します[1][2][3][4][5][6][7][8].

● 免疫応答の調節

MHC分子は、免疫応答の調節にも関与しています。例えば、制御性T細胞(Treg)は、免疫応答を抑制するサイトカインを産生し、過剰な免疫反応や自己免疫反応を防ぐ役割を果たします[5].

● 疾患との関連

MHCの多型性は、自己免疫疾患の感受性に影響を与えることが知られています。特定のMHC遺伝子型は、特定の疾患に対する感受性や抵抗性を高める可能性があります[2].

以上のように、MHCは免疫系の様々な側面に深く関与しており、免疫応答の効率と精度を高めるために不可欠な役割を果たしています。

MHCクラスI分子とクラII分子の違いは何ですか?

MHCクラスI分子とクラスII分子の主な違いは、それらがどのような細胞に発現しているか、どのような抗原を提示するか、そしてどの種類のT細胞に抗原を提示するかにあります[1][2][3][4][5][6][7].

● MHCクラスI分子

– 発現細胞: MHCクラスI分子は赤血球を除くほぼ全ての有核細胞に発現しています[3][4][6][7].
– 抗原提示: 細胞内で生成されたペプチド抗原(内因性抗原)を提示します。これには通常、自己タンパク質のペプチドが含まれますが、ウイルス感染などで異物由来のペプチドも含まれることがあります[3][4][6][7].
– 対象T細胞: CD8+ T細胞(サイトトキシックT細胞)に抗原を提示します。これにより、感染細胞やがん細胞などの異常細胞を識別し、攻撃することができます[3][4][6][7].

● MHCクラスII分子

– 発現細胞: MHCクラスII分子は主に抗原提示細胞(マクロファージ、樹状細胞、B細胞など)にのみ発現しています[1][2][3][4][5][6][7].
– 抗原提示: 細胞外から取り込まれた抗原(外因性抗原)を処理し、そのペプチド抗原を提示します。これには食作用によって取り込まれた病原体由来のペプチドが含まれます[1][2][3][4][5][6][7].
– 対象T細胞: CD4+ T細胞(ヘルパーT細胞)に抗原を提示します。これにより、抗体産生や他の免疫応答を促進することができます[1][2][3][4][5][6][7].

さらに、MHCクラスII分子は、自己のミスフォールドタンパク質を細胞外へ輸送し、これが自己免疫疾患の自己抗体の標的分子であることが明らかにされています。この機能は、MHCクラスII分子の自己免疫疾患感受性と高い相関を示しており、自己免疫疾患の発症に関わっていることが示されています[1].

主要組織適合性(MHC)クラスIの役割

Cytotoxic T cell。T細胞は、免疫反応を制御し、パーフォリンやグランザイムを放出して、感染細胞やがん細胞を攻撃する。パーフォリンの働きにより、グランザイムは細胞質に入る 主要組織適合性(MHC)クラスI抗原提示経路は、ウイルスに感染した細胞に対する免疫系の警告に重要な役割を果たしています。MHCクラスI分子は、すべての有核細胞の細胞表面に発現しており、細胞内のタンパク質に由来するペプチド断片を提示する。感染した細胞はその表面にウイルスの断片をエピトープとして提示し、これをT細胞が認識して感染した細胞を殺すのです。

主要組織適合性複合体(MHC)クラスIIの役割

T細胞に対する免疫反応の活性化/阻害: B7-1 (オレンジ)、CTLA-4 (紫色)、MHC-II (赤)、CD4 (明るい青)、T細胞受容体(青)、CD-28 (暗い青)、PD-L1 (黄色)、PD-1 (紫色)

主要組織適合性複合体(MHC)クラスIIの主な機能は、主に外因性の抗原を処理したものをCD4+Tリンパ球に提示することです。MHCクラスII分子は、抗原特異的な免疫反応の開始に重要な役割を果たしています。この図の上側が抗原提示細胞APC、下側がT細胞です。

B細胞白血球の活性化:リンパ芽球,活性化,記憶性B白血球,ウイルス,血漿細胞,抗体,抗原,およびナイーブリンパ球

この図は抗体をつくるB細胞の活性化過程を表していますが、ウイルスが侵入し、健康な細胞に感染すると、感染細胞の表面にMHCクラスIとともにウイルスの破片(エピトープ)が抗原として提示されます。提示された細胞表面の抗原を認識することで、B細胞が幼弱な状態から分化をはじめ、抗体を産生する形質細胞(plasma cell)になって行くのですが、一部は記憶細胞(memory cell)となります。こうして形質細胞からどんどん抗体がつくられるようになり、抗体と結合した抗原を認識して貪食細胞が飲み込んで消化するなどの過程が順番に起こって免疫系が働くようになります。

MHCと臓器移植

MHC(主要組織適合性複合体)は、臓器移植において非常に重要な役割を果たします。MHCは、個体の免疫系が自己と非自己を識別するための主要なメカニズムであり、移植された臓器が拒絶されるかどうかに大きく影響します[1][3][7].

● MHCと臓器移植の関連性

1. 拒絶反応の原因: 移植された臓器に含まれる異なるMHC分子がレシピエント(受け取る側)の免疫系によって異物と認識されると、拒絶反応が引き起こされます。この反応は、移植された臓器の細胞が破壊されることによって特徴づけられます[1][3][7].

2. MHCの一致: ドナー(提供者)とレシピエントのMHCが一致している場合、拒絶反応のリスクは大幅に低減されます。そのため、移植前にはドナーとレシピエントのMHCタイピングが行われ、できるだけ一致する組み合わせが選ばれます[1][3][6][7].

3. 免疫抑制: MHCの不一致が避けられない場合、免疫抑制薬を使用して拒絶反応を管理します。これにより、移植後の生存率と臓器の機能が改善されますが、免疫抑制には感染症のリスク増加などの副作用も伴います[1][3][12].

4. MHCの多様性: MHCは非常に多様であり、特にヒトではHLA(ヒト白血球抗原)として知られています。この多様性は、個体間で免疫反応の差異を生じさせ、移植の際に一致するドナーを見つけることを困難にします[1][3][7].

5. 研究と進歩: MHCの一致が移植成功の鍵であるため、科学者たちはMHCの遺伝子型を詳細に分析し、より効果的な移植戦略を開発するための研究を進めています。例えば、iPS細胞技術を利用してMHCが一致する細胞を作製する研究が行われています[6].

● 結論

MHCは、臓器移植の成否に直接的に影響を与えるため、移植医療において非常に重要な要素です。MHCの一致が良好な場合、拒絶反応のリスクが低減され、移植後の予後が改善される可能性が高まります。そのため、MHCの適合性を高めるための研究と技術の進展は、移植医療の将来において重要な役割を果たしています[1][3][6][7][12].

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

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