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気管とは?簡単に説明

気管と気管支の模式図
気管(きかん、trachea)は、呼吸器系の重要な構造で、首の下部から胸部にかけて位置しています。この管状の器官は、空気が肺へと流れ込む道を提供し、呼吸時の空気の通路として機能します。

● 構造
気管は、長さ約10〜12センチメートルで、柔軟性と弾力性を持つ筋肉組織と、C字形の軟骨によって支えられています。このC字形の軟骨は、気管を開いた状態に保ちながら、食べ物を飲み込む時に食道が膨らむのを許容する空間を提供します。気管の内側は粘膜で覆われており、微細な繊毛と粘液を含む表面が、空気中の塵や異物を捕捉し、それらが肺に入るのを防ぎます。

● 機能
気管の主な機能は、吸い込んだ空気を肺へと効率的に導くことです。空気はまず鼻または口を通り、咽頭を経て気管に入ります。気管は胸部で二つの主要な分岐、左右の主気管支に分かれ、これがさらに細かな気管支へと分岐していき、最終的に肺胞に至ります。肺胞でガス交換が行われ、酸素は血液に取り込まれ、二酸化炭素が排出されます。

気管の繊毛と粘膜の作用によって、吸い込まれた空気が清浄化され、異物が肺に達することが防がれます。また、この清掃メカニズムは「繊毛運動」と呼ばれ、粘液とともに肺から異物を押し出すのに役立ちます。

疾患と問題
気管は、感染症、炎症、外傷、異物の吸引などによって影響を受けることがあります。例えば、気管支炎や気管炎は気管の粘膜が炎症を起こす病状で、呼吸困難や咳、痰の増加などの症状が現れます。重度の場合、気管の異常は呼吸不全を引き起こす可能性があり、緊急の医療介入が必要となることもあります。

このように、気管は呼吸器系の中心的な役割を果たしており、その健康が全身の酸素供給に直結しています。

気管の軟骨のない部分(膜様部)

気管は、一連のC字形の軟骨によって支えられていますが、軟骨で形成されていない部分が後方にあります。この部分は気管の背面、つまり食道に面した側です。

● 軟骨のない部分の特徴
気管の軟骨のない部分は、軟骨環の開いた側を形成する膜状の組織、**気管膜(trachealis muscle)**で構成されています。この膜状の組織は、滑らかな筋肉と結合組織からなり、気管の径を調整する機能を持ちます。気管膜は、気管が食物の通過時に食道が拡張するのを許容するために重要な役割を果たし、また、咳やその他の強い呼吸動作時に気管の幅を変えることができます。

● 機能
気管膜が筋肉組織でできていることにより、この部分は収縮可能であり、気管の内径を変化させることができます。これは、特に咳をするときなどに重要で、気道を通じて空気の流れを増やすために気管の径を狭めることが可能になります。この収縮によって、空気の流速が上がり、気道を通じて痰や異物が効果的に排出されるのを助けます。

● 臨床的重要性
気管のこの部分は、内視鏡検査や気管挿管の際に特に注意が必要です。軟骨に支えられていないため、外からの圧力により容易に形状が変化しやすいです。また、気管狭窄症などの気道疾患では、この部分が特に影響を受けることがあります。

このように、気管の軟骨のない部分は構造的にも機能的にも重要であり、呼吸器系の健康を維持するために欠かせない役割を果たしています。

生まれつき気管が狭い状態とは?

生まれつき気管が狭い状態を示す病態には、気管狭窄症や先天性気管形成不全などがあります。これらは比較的まれな状態ですが、新生児や小さな子供において重要な呼吸問題を引き起こすことがあります。

● 気管狭窄症(Congenital Tracheal Stenosis)
生まれつきの気管狭窄症は、気管の一部または全体が異常に狭い状態である先天的な異常です。この状態は、気管輪の発育不全や完全な形成不全によって引き起こされることが多いです。気管の軟骨が正常に発達しないため、気管が狭まり、呼吸が困難になることがあります。

● 先天性気管形成不全(Tracheomalacia)
先天性気管形成不全は、気管の壁が柔らかく、通常よりも弾力性が低い状態です。この病態では、呼吸時に気管壁が異常にたわむため、気管が狭くなり、呼吸困難を引き起こすことがあります。特に強く息を吸うとき、咳をするとき、または泣くときに気管が塞がれるため、呼吸音に変化が現れることが一般的です。

● 症状
生まれつきの気管が狭い場合、以下のような症状が現れることがあります:

– 高い音の呼吸音(喘鳴)
– 呼吸困難
– 呼吸時のゼーゼー、ヒューヒューという音
– 再発性の呼吸器感染症
– 頻繁な肺炎

● 診断
気管の狭窄や形成不全の診断には、通常、X線撮影、CTスキャン、内視鏡検査(気管支鏡検査)などの画像診断が用いられます。これにより、気管の狭窄の位置、程度、及び長さを詳細に評価することができます。

● 治療
治療法は、症状の重さと気管の狭窄の程度に依存します。軽度の場合は、症状の監視とサポートによる管理が行われることがありますが、重度の場合は外科的介入が必要になることがあります。外科的治療には、気管形成術やステントの挿入が含まれることがあり、これによって気管の通過部分が拡張され、呼吸が楽になります。

生まれつきの気管の狭窄や形成不全は、適切な診断と管理を行うことで、その影響を軽減し、生活の質を向上させることが可能です。

気管内異物

気管内異物は、気管内に何らかの外来物質が入り込む状態を指します。これは呼吸道への異物の誤嚥(ごえん)または吸引によって起こり、特に小さな子供たちにおいて一般的な緊急事態です。気管内異物が存在すると、重篤な呼吸困難、窒息、または他の深刻な合併症を引き起こす可能性があります。

● 原因
気管内異物の一般的な原因には以下のようなものがあります:
– 食べ物の小片(特に硬いものや丸いもの、例えばナッツやキャンディ)
– 小さな玩具の部品
– 歯科材料
– その他の小さな物体

● 症状
気管内異物がある場合に観察される症状には以下のようなものがあります:
– 突然の呼吸困難
– 咳き込み、特に食べ物を飲み込んだり、特定の物を口に入れた直後に発生する咳
– 声のかすれ
– 顔色の青白さ
– 呼吸時の異音(喘鳴やガスピング)
– 意識レベルの低下
– 完全な気道閉塞による窒息症状

● 診断
気管内異物の診断は、通常、患者の症状、身体検査、および医療画像(X線やCTスキャン)に基づいて行われます。特に子供の場合、異物の吸引は無声で起こることがあるため、親や保護者が子供を注意深く観察することが重要です。

● 治療
気管内異物の治療は、異物を速やかに取り除くことが必要です。治療方法は異物の種類、位置、及び患者の症状の重さによって異なりますが、以下の手段が一般的です:
– 背部叩打(バックブロー):小さな子供に対しては、大人が子供を膝にうつぶせにして、背中の中央部を数回軽くたたくことで異物を取り除くことが推奨されます。
– 腹部突き上げ法(ハイムリック法):大人や大きな子供には、腹部に圧力をかけて異物を押し出すハイムリック法が用いられます。
– 気管支鏡:気道内を直接視覚的に確認し、特殊な器具を使用して異物を取り除く方法です。

気管内異物は深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、症状が見られたらすぐに医療機関での診断と治療を受けることが非常に重要です。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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