InstagramInstagram

核内ホルモン受容体スーパーファミリー

核内受容体スーパーファミリーとは何ですか?

核内受容体(nuclear receptor; NR)は、細胞内の重要な転写因子であり、多様な生理現象の調節に関与しています。この受容体群は、様々な低分子リガンドと結合することで活性化され、遺伝子の発現を調節することにより、細胞の代謝、成長、分化などのプロセスを制御します。以下に、核内受容体の基本的な特性と機能について簡潔にまとめてみました。

● 核内受容体の特徴と機能

1. 多様な生理機能の制御:
– 核内受容体は、脂質代謝、生殖、炎症反応、サーカディアンリズムなど、広範囲にわたる生体機能を調節します。

2. リガンド依存的な活性化:
– これらの受容体は、脂溶性の低分子リガンド(例えばホルモンやビタミンなど)によって活性化され、標的遺伝子の転写を促進または抑制します。

3. 遺伝子発現の調節:
– 活性化された核内受容体は、DNAの特定の配列(応答元素)に結合し、転写共役因子との複合体を形成することで、標的遺伝子の転写を直接調節します。

4. 病態の調節と治療標的:
– 核内受容体の異常は、がん、代謝異常、炎症性疾患など、多くの健康問題を引き起こすことがあります。これらの受容体は、そのために病気の治療や予防の貴重な標的となっています。

5. ヒトゲノムにおける核内受容体:
– ゲノム解析により、ヒトゲノムには少なくとも48個の核内受容体が存在することが確認されています。これには、エストロゲン受容体やアンドロゲン受容体などの古典的なステロイドホルモン受容体や、甲状腺ホルモン受容体、レチノール酸受容体(RXR)、PPARsなどの「採用された孤児受容体」が含まれます。

核内受容体はその複合的な役割と広範な影響力により、現代医学において非常に重要な研究対象となっています。これらの受容体のさらなる研究により、新たな薬剤の開発や疾患治療法の改善が期待されています。

● 主要な核内受容体の例
– エストロゲン受容体(ER)
– アンドロゲン受容体(AR)
– グルココルチコイド受容体(GR)
– 甲状腺ホルモン受容体(TR)
– レチノイド受容体(RARおよびRXR)
– ビタミンD受容体(VDR)

これらの受容体は、代謝、発達、細胞増殖および分化といった生理的過程を広範囲にわたって制御しています。異常な核内受容体の活性は、がん、代謝疾患、心血管疾患など多くの病気の原因と関連があります。そのため、これらの受容体は薬剤のターゲットとしても重要であり、様々なホルモン療法や抗がん剤などで利用されています。

核内ホルモン受容体スーパーファミリー研究の最近の進歩

核内ホルモン受容体スーパーファミリーに関する最近の研究進歩は、これらの受容体がステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、レチノイン酸、ビタミンDなどの脂溶性低分子リガンドに対応することを明確にしています。これらの受容体は、生物の内分泌調節系の主要な部分を担っており、多細胞生物の発達、代謝、生殖などの基本的な生理機能を調節する役割を果たしています[2][4][5].

● 核内受容体の機能とリガンド

核内受容体は、リガンドが結合することで活性化され、遺伝子の発現を調節することにより、細胞の機能に直接影響を及ぼします。これにより、細胞の成長、分化、代謝の調節が行われます。例えば、ステロイドホルモンの受容体は、特定のホルモンが結合することで核内で遺伝子の転写を促進または抑制し、細胞応答を調節します[4][5].

● 研究の進展

最近の研究では、これらの受容体に対する新しいリガンドの同定や、受容体の異常が引き起こす疾患の理解が進んでいます。また、ハロゲン原子を含む新世代のビスフェノールがERβ(エストロゲン受容体ベータ)に対して示すユニークな活性特性の研究も進められており、これらの化学物質が人体に与える影響の詳細が明らかになりつつあります[1].

● 未来の展望

核内受容体の研究は、疾患治療における新たな薬剤の開発に寄与する可能性があります。特に、がんや自己免疫疾患、代謝疾患などの治療において、これらの受容体を標的とする新しい治療戦略が期待されています。さらに、環境化学物質による内分泌撹乱作用の詳細な解析を通じて、公衆衛生の向上にも寄与することができるでしょう[2][3].

これらの進歩は、核内受容体スーパーファミリーの機能とその生理的および病理的役割に関する我々の理解を深め、より効果的な治療法の開発に繋がることが期待されます。

核内受容体ファミリーと相互作用する化学物質が生体に与える影響

核内受容体ファミリーを介する化学物質の生体影響に関する研究は、これらの受容体が様々な生理活性物質や環境化学物質と相互作用し、重要な生物学的プロセスに影響を与えることを示しています。以下に、最近の研究成果をまとめます。

● 核内受容体とは

核内受容体は、リガンド依存性の転写因子であり、ステロイドホルモン、ビタミン、脂溶性ホルモンなどの低分子リガンドに応答して、遺伝子の発現を調節します。これらの受容体は、細胞の成長、発達、代謝、および病態の調節に関与しています[4][10].

● 化学物質の影響

1. 内分泌かく乱化学物質: これらの化学物質は、ホルモン様作用を持ち、内分泌系の機能に変化を与えることが知られています。例えば、ビスフェノールAは低用量での問題が指摘されており、核内受容体と結合してその機能を変化させることが報告されています[1][8].

2. 代謝酵素の誘導: 核内受容体は、薬物代謝酵素の発現を誘導することがあり、これにより薬物の代謝速度や効果が変わる可能性があります。特に、アリル炭化水素受容体(AhR)、構成的アンドロスタン受容体(CAR)、プレグナンX受容体(PXR)などが関与しています[2].

3. 疾患のリスク: 核内受容体の異常な活性化は、がんや代謝疾患、内分泌疾患などのリスクを高めることが示されています。これらの受容体は、病態の発生において重要な役割を果たしており、創薬の標的となることが多いです[10][14].

● 研究の方向性

核内受容体を介した化学物質の影響を理解するためには、これらの受容体とリガンドの相互作用を詳細に解析することが重要です。また、これらの知見を基に、安全な化学物質の設計や、疾患治療のための新しい薬剤の開発が進められています[7][9].

このように、核内受容体ファミリーを介する化学物質の生体影響は多岐にわたり、これらの受容体が生物体の健康と病態に与える影響の理解は、公衆衛生の向上と疾患治療の進展に寄与すると考えられます。

核内受容体スーパーファミリーの分類

核内受容体は7つのサブファミリーに分類される。受容体、サブファミリー、リガンドの一覧を下表に示します。

Family Common name Abbreviation Gene name Ligand
0B Dosage-sensitive sex reversal-adrenal
hypoplasia congenital critical region on the X
chromosome, Gene 1
DAX1 NR0B1 Orphan
Short heterodimeric partner SHP NR0B2
1A Thyroid hormone receptor-α TRα THRA Thyroid hormones
Thyroid hormone receptor-β TRβ THRB
1B Retinoic acid receptor-α RARα RARA Retinoic acids
Retinoic acid receptor-β RARβ RARB
Retinoic acid receptor-γ RARγ RARG
1C Peroxisome proliferator-activated receptor-α PPARα PPARA Fatty acids
Peroxisome proliferator-activated receptor-β PPARβ PPARB
Peroxisome proliferator-activated receptor-γ PPARγ PPARG
1D Reverse-Erb-α REV-ERBα NR1D1 Heme
Reverse-Erb-β REV-ERBβ NR1D2
1F Retinoic acid-related orphan-α RORα RORA Sterols
Retinoic acid-related orphan-β RORβ RORB
Retinoic acid-related orphan-γ RORγ RORG
1H Farnesoid X receptor FXRα NR1H4 Bile Acids
Farnesoid X receptor-β FXRβ NR1H5P Orphan
Liver X receptor-α LXRα NR1H3 Oxysterols
Liver X receptor-β LXRβ NR1H2
1I Vitamin D receptor VDR VDR 1α,25-dihydroxyvitamin D3
Pregnane X receptor PXR NR1I2 Endobiotics and xenobiotics
Constitutive androstane receptor NR1I3 Xenobiotics
2A Hepatocyte nuclear Factor-4-α HNF4α HNF4A Fatty acids
Hepatocyte nuclear Factor-4-γ HNF4γ HNF4G
2B Retinoid X receptor-α RXRα RORA Sterols
Retinoid X receptor-β RXRβ RORB
Retinoid X receptor-γ RXRγ RORG
2C Testicular Receptor 2 TR2 NR2C1 Orphan
Testicular Receptor 4 TR4 NR2C2
2E Tailless homolog orphan receptor TLX NR2E1 Orphan
Photoreceptor-cell-specific nuclear receptor PNR NR2E3
2F Chicken ovalbumin upstream promoter-transcription factor α COUP-TFα NR2F1 Orphan
Chicken ovalbumin upstream promoter-transcription factor β COUP-TFβ NR2F2
Chicken ovalbumin upstream promoter-transcription factor γ COUP-TFγ NR2F6
3A Estrogen receptor-α ERα ESR1 Estrogens
Estrogen receptor-β ERβ ESR2
3B Estrogen-related receptor-α ERRα ESRRA Orphan
Estrogen-related receptor-β ERRβ ESRRB
Estrogen-related receptor-γ ERRγ ESRRG
3C Androgen receptor AR AR Androgens
Glucocorticoid receptor GR NR3C1 Glucocorticoids
Mineralocorticoid receptor MR NR3C2 Mineralocorticoids and glucocorticoids
4A Nerve growth Factor 1B NGF1-B NR4A1 Orphan
Nurr-related Factor 1 NURR1 NR4A2 Unsaturated fatty acids
Neuron-derived orphan Receptor 1 NOR-1 NR4A3 Orphan
5A Steroidogenic Factor 1 SF-1 NR5A1 Phospholipids
Liver receptor Homolog-1 LRH-1 NR5A2
6A Germ cell nuclear factor GCNF NR6A1 Orphan

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

お電話での受付可能
診療時間
午前 10:00~14:00
(最終受付13:30)
午後 16:00~20:00
(最終受付19:30)
休診 火曜・水曜

休診日・不定休について

クレジットカードのご利用について

publicブログバナー
 
medicalブログバナー
 
NIPTトップページへ遷移