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血清と血漿の違いは、フィブリノゲンなどの凝固因子が残っているかどうかです。血漿(けっしょう)は、固まらないように抗凝固剤を入れた血液から血球を除いた液体で、凝固因子を含みます。血清(けっせい)は、血液をいったん固まらせてから取り出した上澄みで、固まる反応で凝固因子が使われているため、血清=血漿から凝固因子を除いたものと覚えると簡単です。この記事では、全血・血漿・血清の関係、検査での使い分け、カリウムや血糖値が変わる理由、そして遺伝子検査やNIPTで血清ではなく血漿を使う理由まで、表を使ってわかりやすく解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🩸 Q. 血清と血漿の違いは?
血漿は抗凝固剤を入れて固まらせずに取り出した液体で、凝固因子を含みます。血清は血液を固まらせてから取り出した上澄みで、凝固因子がほとんど残っていません。
🧪 Q. 血清は血漿から何を除いたもの?
血液が固まるときに使われるフィブリノゲンなどの凝固因子です。式にすると「全血-血球=血漿」「血漿-凝固因子=血清」です。
🧬 Q. なぜ検査で使い分けるの?
固まる過程で、血小板や白血球からカリウムやDNAなどが出てくるためです。凝固の検査は血漿、多くの生化学・免疫の検査は血清、母体の血液でDNAを調べるNIPTは血漿を使います。
血清と血漿の違いとは
結論:血漿は「固まらせずに」、血清は「固まらせてから」取り出した血液の液体部分です。違いは、凝固因子(とくにフィブリノゲン)が残っているかどうかにあります。
血漿は、採血管にEDTAやヘパリンなどの抗凝固剤を入れて血液が固まらないようにし、遠心分離で血球を沈めて取り出した液体です。一方、血清は、抗凝固剤を入れずに血液を固まらせ、凝固でできたフィブリンの塊(血餅)を遠心分離で取り除いた液体です[1]。
📊 血漿と血清の違い(一覧表)
| 項目 | 血漿(けっしょう) | 血清(けっせい) |
|---|---|---|
| 英語 | plasma | serum |
| つくり方 | 抗凝固剤(EDTA・ヘパリン・クエン酸ナトリウムなど)を入れた採血管で採り、遠心分離して上澄みを取る | 抗凝固剤を入れずに採り、血液が固まってから遠心分離して上澄みを取る |
| 凝固因子(フィブリノゲンなど) | 含む | 固まる反応で使われ、ほとんど残らない |
| 固まる過程の影響 | 受けにくい(体の中を流れていたときに近い) | 受ける(血小板や白血球からカリウム・DNAなどが出てくる) |
| 主な用途の例 | 凝固の検査、血糖、遺伝子検査・NIPT(cfDNA) | 多くの生化学検査、抗体・感染症などの免疫の検査 |
どちらの検体を使うかは、検査項目や使う試薬・採血管によって決まります。実際の検体の種類は、検査を行う施設の指定に従います。
血漿とは:血液から血球を除いた液体
血漿は、血液から赤血球・白血球・血小板といった血球成分を除いた液体です。水のほかに、アルブミン、免疫グロブリン(抗体)、凝固因子などのタンパク質や、ブドウ糖、脂質、電解質、ホルモンなどが溶けています。血液の中で、栄養やホルモンを運ぶ役割を担っているのが血漿です。
血清とは:血液が固まったあとの上澄み
採った血液をそのまま置いておくと、体の中で血が止まるときと同じ反応が進み、血液は固まります。このとき、血漿に溶けていたフィブリノゲンがフィブリンという網になり、血球をからめとって血餅(けっぺい)になります。この血餅を除いた黄色く澄んだ上澄みが血清です。フィブリノゲンなどの凝固因子は、固まる反応で使われて血餅のほうへ移るため、血清にはほとんど残りません。
全血・血漿・血清・血餅の関係(簡単な覚え方)
全血は、採ったままの血液(血球+血漿)です。全血-血球=血漿、血漿-凝固因子=血清という2つの式で覚えると、迷わなくなります。血球の数を調べる検査(血算)では、血球そのものを数えるため、血漿や血清ではなく全血を使います。
💡 用語解説:凝固因子とフィブリノゲン
凝固因子は、血液を固める反応を順番に進めるタンパク質のグループです。フィブリノゲンはその最後の段階で使われるタンパク質で、フィブリンに変わって血の塊の骨組みになります。凝固因子が生まれつき少ない・働かない病気には、血友病や、フィブリノゲンがない・少ない無フィブリノゲン血症・低フィブリノゲン血症などがあります。
血清と血漿の使い分け
結論:固まる反応そのものを調べるなら血漿、固まる反応の影響を受けにくい項目なら血清、というのが基本の考え方です。血清は、固まる過程で凝固因子が使われるだけでなく、血小板や白血球から中身が出てくるため、成分が少し変わります。
🧪 検査と検体の主な組み合わせ
| 検査 | 主に使う検体 | 理由 |
|---|---|---|
| 凝固の検査(PT・APTTなど) | クエン酸ナトリウム入りの採血管の血漿 | 凝固因子が残っていないと測れない |
| 多くの生化学検査・免疫の検査 | 血清(項目によってはヘパリン血漿) | 凝固因子がなく、測定中に固まる心配がない |
| 血糖(グルコース) | 解糖を止める薬の入った採血管の血漿 | 置いておくと血球がブドウ糖を使ってしまう |
| 血球数(血算) | 全血 | 血球そのものを数える |
| 遺伝子検査のcfDNA・NIPT | 血漿 | 固まるときに白血球のDNAが混ざるのを避ける |
一般的な組み合わせの例です。施設や試薬によって指定が異なることがあります。
血清と血漿で検査値が変わる項目(カリウムなど)
代表的なのがカリウムです。血液が固まるときに血小板からカリウムが出てくるため、健康な人でも血清のカリウムは血漿より高めに出ます。血小板がとても多い人では差が大きくなり、体の中のカリウムは正常なのに、血清では高く出る「偽性高カリウム血症」の原因になります[2]。
カリウム以外にも差は出ます。血漿と血清の122種類の代謝物を比べた研究では、そのうち104種類が血清のほうが高く、アルギニンなどは、固まるときに血小板から出てくることが理由の一つと考えられています[1]。同じ人の血液でも、血清で測るか血漿で測るかで値が少し変わることがあるため、検査値は「どの検体で測った値か」を合わせて比べることが大切です。
遺伝子検査やNIPTで「血漿」を使う理由
血液の中には、細胞の外に出たDNAの断片であるセルフリーDNA(cfDNA)が漂っています。血液を固まらせると、その過程で白血球から出たDNAが混ざり込みます。乳腺の病気の研究で健康な人の血液を比べたところ、血清のDNAの量は血漿の約10倍で、著者らはその原因を、固まる過程で白血球から出たDNAと説明しています[5]。
妊娠中のお母さんの血液には、主に胎盤から出た赤ちゃん側のcfDNAが含まれています。その割合は、血漿のDNA全体のうち妊娠初期で平均3.4%、妊娠後期で平均6.2%と報告されており(香港の妊婦さんを対象にした1998年の研究)[6]、もともとわずかです。そこに母体の白血球のDNAが大量に混ざると、赤ちゃん側のDNAの割合がさらに下がってしまいます。そのため、NIPT(新型出生前診断)では血清ではなく血漿を使います。母体の血液で胎児のDNAが見つかった経緯は【NIPT】母体血清中の胎児DNA:はじめにで解説しています。
「血漿と血清の違い」は、検査を受ける側にとっても無関係ではありません。NIPTは、お母さんの血漿の中の赤ちゃん側のDNAから、赤ちゃんの染色体の数の変化などを調べる検査です。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。どんな検査かはNIPTとはでまとめています。同じ血漿のcfDNAは、がんの細胞から出たDNAを調べるリキッドバイオプシーにも使われています。
血清と血漿とヘパリン
結論:ヘパリンは血漿をとるための抗凝固剤で、血清をとるときには使いません。ヘパリン入りの採血管で採った血液は固まらないので、すぐに遠心分離して「ヘパリン血漿」を得られます[1]。血清のように固まるのを待つ時間がいらないのが利点です。
抗凝固剤の種類と主な使い道
血漿をとるための抗凝固剤は1種類ではなく、検査によって使い分けます。EDTAやヘパリンは血漿をとるための代表的な抗凝固剤です[1]。凝固の検査には3.2%クエン酸ナトリウムの採血管が使われます[4]。血糖には、解糖を止める薬(フッ化ナトリウムやクエン酸の緩衝液)の入った採血管が使われます[3]。逆に血清をとるときは抗凝固剤を入れずに採り、固まるのを待ちます。
💡 採血管のヘパリンと、注射のヘパリンは別の話
この節のヘパリンは、採った血液を固まらせないために採血管に入っているものです。妊娠中に不育症などでヘパリン注射を受けている方がNIPTを受けるときの注意は、ヘパリン注射とNIPT|不育症治療中でも検査可能?で解説しています。
血清と血漿とグルコース
結論:血糖値で差を生むのは「血清か血漿か」よりも、「血球からどれだけ早く分けたか」です。採った血液を遠心分離せずに置いておくと、赤血球などの血球がブドウ糖を使い続け(解糖)、1時間に5〜7%ほどブドウ糖が下がると報告されています[3]。
血清は、固まるのを待つあいだも血球と一緒に置かれるため、そのぶん解糖が進みやすくなります。一方、よく使われてきたフッ化ナトリウムは、解糖を止める効果が出るまでに採血から2〜3時間かかることがわかっています[3]。そのため米国糖尿病学会などの推奨では、採血管をすぐ氷水で冷やして30分以内に血漿を分けるか、それができない場合は、すばやく解糖を止めるクエン酸の緩衝液入りの採血管を使うことが勧められています[3]。
ただし、血漿と血清の成分を大規模に比べた研究では、血清のブドウ糖(ヘキソース)が血漿よりわずかに高かったという報告もあります[1]。「血漿のほうが必ず高い」「血清は必ず低い」というわけではなく、採血から分離までの時間と採血管の種類が結果を左右します。
血清と血漿と遠心分離
結論:どちらも遠心分離で上澄みを取りますが、血漿は「固まらせずにすぐ」、血清は「固まるのを待ってから」遠心分離します。
血漿は、抗凝固剤の入った採血管で採った血液を遠心分離し、底に沈んだ血球の上の液体を取ります。血清は、抗凝固剤を入れずに採った血液が固まって血餅ができてから遠心分離し、上澄みを取ります[1]。遠心分離の速さや時間は採血管の種類によって違うため、実際には採血管の添付文書の条件に従います。
🩺 院長コラム【検査の結果は「どの検体で測ったか」とセットで読む】
血清と血漿は、見た目はどちらも黄色く澄んだ液体です。けれども、固まる過程を通ったかどうかで、カリウムやブドウ糖、そしてDNAの量まで変わります。検査値を読むときは、数字だけでなく「何の検体で、どう扱った値か」を一緒に見ることが、結果を正しく解釈する第一歩だと考えています。
遺伝子の検査では、この違いがとくに大きく効いてきます。母体の血液に含まれる赤ちゃん側のDNAはわずかなので、白血球のDNAが混ざらない血漿を使い、採血から処理までの扱いをそろえることが、検査の精度を支えています。
🧬 血液の検査・遺伝子の検査で気になることがある方へ
遺伝カウンセリング外来では、紹介状なしで臨床遺伝専門医に相談でき、オンラインでも受けられます。NIPTは陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。
まだ決めていない方は:当院の遺伝子検査の一覧 | NIPTとは(わかること・限界)
よくある質問(FAQ)
Q1. 血清は血漿から何を除いたものですか?
フィブリノゲンなどの凝固因子です。血液が固まるときに凝固因子が使われて血餅になり、その上澄みが血清になります。「全血-血球=血漿」「血漿-凝固因子=血清」と覚えると簡単です。
Q2. 血漿に含まれて、血清に含まれないものは何ですか?
代表的なものはフィブリノゲンです。フィブリノゲンは固まる反応でフィブリンに変わり、血餅として取り除かれるため、血清にはほとんど残りません。血漿と血清で最も違いがある成分として、よくフィブリノゲンが挙げられるのはこのためです。
Q3. 全血・血漿・血清の違いは何ですか?
全血は採ったままの血液(血球+血漿)です。血漿は、固まらないようにした血液から血球を除いた液体です。血清は、血液を固まらせてから血餅を除いた上澄みで、凝固因子がほとんどありません。血球の数を調べる検査は全血、凝固の検査は血漿、多くの生化学検査は血清を使います。
Q4. 血糖値は血漿と血清のどちらで測りますか?
解糖を止める薬の入った採血管で採った血漿で測ることが多いです。採った血液を置いておくと血球がブドウ糖を使い、1時間に5〜7%ほど下がると報告されています。差を生むのは、血清か血漿かよりも、採血から血球を分けるまでの時間と採血管の種類です。
Q5. 血漿と血清は英語で何といいますか?読み方は?
血漿は英語でplasma(プラズマ)、読み方は「けっしょう」です。血清は英語でserum(セラム)、読み方は「けっせい」です。血餅は「けっぺい」と読み、英語ではclotといいます。
Q6. 血漿と血小板の違いは何ですか?
血小板は、赤血球・白血球と並ぶ血球成分の一つで、血を止める働きをもつ細胞のかけらです。血漿は、こうした血球を除いた液体の部分です。血清をとるときに血液が固まる過程では、血小板からカリウムなどが出てくるため、血清のカリウムは血漿より高めに出ます。
Q7. NIPTは血漿と血清のどちらを使いますか?
血漿を使います。血液を固まらせると白血球から出たDNAが混ざり、血清のDNAの量は血漿の約10倍になったという報告があります。お母さんの血液に含まれる赤ちゃん側のDNAはもともとわずかなので、白血球のDNAが混ざりにくい血漿で調べます。
関連記事
参考文献
- [1] Yu Z, Kastenmüller G, He Y, et al. Differences between human plasma and serum metabolite profiles. PLoS One. 2011;6(7):e21230. [DOI 10.1371/journal.pone.0021230]
- [2] Šálek T. Pseudohyperkalemia – potassium released from cells due to clotting and centrifugation – a case report. Biochem Med (Zagreb). 2018;28(1):011002. [DOI 10.11613/BM.2018.011002]
- [3] Bonetti G, Carta M, Montagnana M, et al. Effectiveness of citrate buffer-fluoride mixture in Terumo tubes as an inhibitor of in vitro glycolysis. Biochem Med (Zagreb). 2016;26(1):68-76. [DOI 10.11613/BM.2016.006]
- [4] Salvagno GL, Demonte D, Gelati M, et al. Thrombin generation in different commercial sodium citrate blood tubes. J Med Biochem. 2020;39(1):19-24. [DOI 10.2478/jomb-2019-0016]
- [5] Zanetti-Dällenbach R, Wight E, Fan AX, et al. Positive correlation of cell-free DNA in plasma/serum in patients with malignant and benign breast disease. Anticancer Res. 2008;28(2A):921-925. [Anticancer Research]
- [6] Lo YMD, Tein MSC, Lau TK, et al. Quantitative analysis of fetal DNA in maternal plasma and serum: implications for noninvasive prenatal diagnosis. Am J Hum Genet. 1998;62(4):768-775. [DOI 10.1086/301800]
※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。



