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トキソプラズマ|妊婦さんが気を付けるべき寄生虫感染症

寄生虫とは

原虫

寄生虫とは、他の生物の体内や体表に寄生し、その宿主から栄養を得て生活する生物のことです。寄生虫は、単細胞性の原虫類(protozoa)と多細胞性の蠕虫類(helminth)に大別されます。原虫は、赤血球に感染するマラリアやアフリカ睡眠病の病原体となるトリパノソーマなどの単細胞の真核細胞であり、細胞内寄生原虫と細胞外寄生原虫に分けられます[15]。蠕虫類には線虫、吸虫、条虫などが含まれ、これらは多細胞の寄生虫です。

寄生虫は宿主体内で自己の存亡をかけて免疫系の網をくぐり抜けながら寄生を続け、宿主に害を及ぼす場合があります。そのため、寄生虫は自身の抗原性の変化、嚢胞形成、宿主免疫応答の抑制など様々な手段を講じます。一方、宿主はそれに先んじた免疫の網を被せようとします[15]。

寄生虫による疾患は寄生虫症と呼ばれ、人間にとっては健康上の問題を引き起こすことがあります。例えば、アニサキス症はアニサキスと呼ばれる寄生虫が寄生した魚介類を生食した際に起こる病気で、胃壁や腸壁に潜り込むことにより激しい腹痛や吐き気を引き起こします[16]。また、クドア・セプテンプンクタータはヒラメやマグロなどの筋肉に寄生する寄生虫で、人が食べると激しい痛みや嘔吐などの症状を引き起こすことがあります[18]。

寄生虫は生態系においても重要な役割を果たしており、例えばハリガネムシはカマキリに寄生し、宿主の行動を操作して水場へと導いて溺れさせることができます[20]。このように寄生虫は宿主の行動に影響を与えることで生態系に影響を及ぼすことがあります。

トキソプラズマ

妊婦さんが特に注意すべき寄生虫感染症はトキソプラズマ症です。トキソプラズマ症は、トキソプラズマ原虫によって引き起こされる感染症で、特に妊娠中の女性が初めて感染すると、胎児に重大な影響を及ぼす可能性があります[1][2][3][4][5][6][7][8].

● トキソプラズマ症の感染経路と予防

トキソプラズマ症の主な感染経路には以下のものがあります:

1. 生肉や加熱不十分な肉の摂取: 特に生の肉やレアの肉にはトキソプラズマ原虫が含まれている可能性があります。妊婦は十分に加熱した肉を食べることが推奨されます[3][4][5][6].

2. ネコの糞による感染: ネコはトキソプラズマの終宿主であり、その糞には感染力のあるオーシストが含まれていることがあります。妊婦はネコの糞の処理時には特に注意が必要です[3][4][5].

3. 土壌や水の汚染: 感染したネコの糞から汚染された土壌や水を介して感染することもあります。ガーデニングや土いじりをする際は手袋を着用し、作業後は手をよく洗うことが重要です[3][4].

● 妊娠中のトキソプラズマ症のリスクと対策

妊娠中にトキソプラズマに感染すると、感染が胎盤を通じて胎児にも広がる可能性があります。これにより、胎児は先天性トキソプラズマ症を発症するリスクがあり、重度の場合は水頭症や脳の石灰化、視覚障害などを引き起こすことがあります[2][3][4][5][6].

妊娠中のトキソプラズマ感染を防ぐためには、以下の予防策が推奨されます:

– 生肉や半生の肉を避け、肉は十分に加熱してから食べる。
– 野菜や果物は調理前に十分に洗う。
– ネコの糞は特に注意して処理し、その後は手を洗う。
– 土いじり後は手を洗い、可能であれば手袋を使用する。

これらの予防策に加えて、妊娠中は定期的な健診を受け、必要に応じてトキソプラズマの抗体検査を行うことも重要です[3][4][5][6].

妊娠中にトキソプラズマに感染するとどうなるの

妊娠中にトキソプラズマに感染すると、いくつかのリスクが生じます。特に重要なのは、感染が胎盤を通じて胎児にも広がる可能性があることです。これにより、胎児は先天性トキソプラズマ症を発症するリスクがあります。

● 先天性トキソプラズマ症のリスク

1. 胎児への感染率: 妊娠中にトキソプラズマに感染した場合、胎児への感染率は妊娠の時期によって異なります。妊娠初期に感染すると胎児への感染率は低いですが、妊娠後期になると感染率は高くなります[6].

2. 発症の重篤性: 妊娠初期に感染した場合、胎児が感染する確率は低いものの、感染した場合の症状の重篤性は高くなります。逆に、妊娠後期に感染した場合は胎児への感染率は高いですが、症状の発現率は比較的低くなります[5][6].

● 先天性トキソプラズマ症の症状

先天性トキソプラズマ症を発症した赤ちゃんには、以下のような症状が起こることがあります:

– 運動発達の遅れ
– 精神発達の遅れ
– 脳性麻痺
– 視力障害
– 流産や死産のリスク[2][3][4][5].

トキソプラズマは、昔感染したことがあると、赤ちゃんに影響ないの?

トキソプラズマは、通常、妊娠中の新規感染がない場合、赤ちゃんに感染することはありません。妊娠前に感染した女性は、免疫機能が正常であれば、以前の感染が再活性化して胎児に感染するリスクは低いとされています[6][7]. しかし、HIV感染症などにより免疫機能が低下している場合は、再活性化による胎児への感染のリスクが存在します[7].

● 再活性化による胎児への感染リスク

– 免疫抑制状態: 免疫機能が低下している女性では、潜伏していたトキソプラズマが再活性化し、胎児に感染する可能性があります[7].
– 免疫正常な場合: 免疫機能が正常な女性では、以前の感染が再活性化しても胎児に感染するリスクは低いです[6][7].

したがって、妊娠中の新規感染がない場合、健康な妊婦においては再活性化による胎児への感染リスクは一般には考えられませんが、免疫機能が低下している場合には注意が必要です。

妊娠中のトキソプラズマ感染、いつまでだったら大丈夫?

妊娠中のトキソプラズマ感染において、「いつまでだったら大丈夫?」という問いに対する答えは複雑です。妊娠中にトキソプラズマに感染すると、感染時期によって胎児への感染リスクと症状の重篤性が異なります。妊娠初期に感染すると胎児への感染率は低いですが、感染した場合の症状は重度になる可能性があります。一方で、妊娠後期に感染すると胎児への感染率は高くなりますが、症状は軽度や不顕性が多くなる傾向があります[2][4][6][7][8].

具体的には、妊娠14週以前の感染では胎児感染率は10%以下ですが、感染した場合の症状は重症度が高くなります。妊娠15〜30週での感染では約20%の胎児感染率で、不顕性や軽度症状が多くなります。妊娠31週以降の感染では胎児感染率は60〜70%に達しますが、症状は不顕性が多く、顕性でも軽度です[2].

したがって、「大丈夫」とは言えないものの、妊娠初期に感染を避けることは、重篤な先天性トキソプラズマ症のリスクを低減する上で重要です。しかし、妊娠中はいつでも感染予防策を講じることが推奨されます[1][3][4][5][6][7][8].

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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