共優性とは、両方の対立遺伝子の寄与が表現型に現れることをいう。
例えば、ヒトの血液型はA型とB型が共優性であるが、O型はA型とB型に対して劣性である。ABO式血液型では、血液細胞の表面に存在する糖タンパク質(H抗原)の化学修飾が3つの対立遺伝子によって制御されているが、そのうちの2つは互いに共優性であり(IA、IB)、ABO遺伝子座の劣性のiに対して優性である。IAとIBの対立遺伝子は異なる修飾をもたらす。IAの酵素は、膜に結合したH抗原にN-アセチルガラクトサミンを付加する。IBの酵素はガラクトースを付加する。i対立遺伝子は修飾を受けない。IAとIBの対立遺伝子はそれぞれiに対して優性であるが(IAとIAiはともにA型の血液を持ち、IBとIBiはともにB型の血液を持つ)、IAIBは両方の修飾を血球上に持ち、したがってAB型の血液を持つので、IAとIBの対立遺伝子は共優性であると言われる。
また、ヘモグロビンのβグロビン成分の遺伝子座では、HbA/HbA、HbA/HbS、HbS/HbSの3つの分子表現型がタンパク質の電気泳動によって区別されている。(ヘテロ接合の遺伝子型によって生じる医学的状態は鎌状赤血球形質と呼ばれ、鎌状赤血球症と区別できる軽度の状態であり、したがって、対立遺伝子は貧血に関して不完全優勢を示す。分子レベルでは、ほとんどの遺伝子座では、両方の対立遺伝子がRNAに転写されるため、両方の対立遺伝子が共優勢に発現する。