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免疫グロブリンの多様なクラスと構造を理解する: 基礎から応用まで

この記事では、免疫グロブリンの各クラスとその構造について詳しく解説します。種類や血漿製剤の特徴、基本的な理解を深めるための情報を提供します。

第1章 免疫グロブリンの概要

免疫グロブリンは、抗体としても知られており、形質細胞(白血球の一種)によって産生される糖タンパク質分子です。これらは細菌やウイルスなどの特定の抗原を特異的に認識し、結合することで、体内から病原体を排除する重要な役割を果たします[6]。免疫グロブリンは、血液や体液中に存在し、病原体から体を守るための重要な働きを担っています[3]。

免疫グロブリンには、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5つの主要なクラスがあります。これらのクラスは、分子内の重鎖のタイプによって区別されます[11]。各クラスは、生体内での分布状況や機能が異なり、特定の抗原に対する体の防御機構において独自の役割を果たします[8]。

– IgGは血液中に最も多く分布する抗体で、細菌や毒素と結合する力が高く、生体防御の役割を担っています。また、抗体の中で唯一胎盤を通過できるため、母親から胎児に移行して新生児を守ります[8]。
– IgMは基本のY字構造が5つ結合した形状で、主に血液中に分布し、病原体が侵入すると最初にB細胞から産生され、感染の初期に働いて生体防御の働きをします[8]。
– IgAは血液中では主に単量体で存在し、腸管や鼻汁、唾液などの分泌物中では二量体で存在し、粘膜から細菌が侵入するのを防ぎます。また、母乳中にも存在し、新生児の消化管を細菌などから守っています[8]。
– IgDはB細胞の表面に存在し、抗体産生誘導や呼吸器感染防御に関与するという報告があります[8]。
– IgEは本来は、寄生虫に対する免疫反応に関与していると考えられています。また、肥満細胞と結合することで、花粉症などのアレルギー反応に関与するとされています[8]。

これらの免疫グロブリンは、体内での免疫応答において重要な役割を果たし、病原体から体を守るために不可欠な存在です。

第2章 免疫グロブリンの構造

基本的な構造と特徴

抗体および免疫グロブリンの種類
免疫グロブリン(Ig)、または抗体は、Y字型の構造をしており、2つの同一の軽鎖(Lチェーン)と2つの同一の重鎖(Hチェーン)から構成されています[1][3][4][5][10][16][19]. これらのチェーンは、互いにジスルフィド結合によって結合されています[4][15][17]. 各チェーンは変数(V)領域と定数(C)領域に分けられ、V領域は抗原結合に関与し、C領域はエフェクター機能を担います[2][4].

軽鎖は、N末端の変数領域(VL)とC末端の定数領域(CL)を持ち、重鎖は変数領域(VH)と3つまたは4つの定数領域(CH1、CH2、CH3またはCH4)を持ちます[2][16]. 重鎖の定数領域は、Igのクラスを決定する役割を持ち、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5つの主要なクラスに分類されます[12][18]. これらのクラスは、生体内での分布や機能が異なります.

免疫グロブリンの可変領域は、遺伝子の複雑な再編成によって作られ、抗原に曝露された後には体細胞超変異を受けて親和性成熟を行います[2][3]. 可変領域は、抗原結合部位を形成するために、軽鎖と重鎖の3つの補完性決定領域(CDR)が組み合わさっています[2].

免疫グロブリンの柔軟性は、ヒンジ領域によって提供され、これにより分子は一定の可動性を持ち、様々なサイズの抗原と結合することができます[4][8]. また、免疫グロブリンは、細胞表面の受容体としても機能し、細胞シグナリングと活性化を可能にするとともに、可溶性のエフェクター分子としても機能します[2].

免疫グロブリンの重鎖定数領域には、糖鎖が結合しており、これによって分子の安定性やエフェクター機能が調節されます[4][15]. さらに、IgGとIgMのFc領域は、マクロファージなどの免疫調節細胞の表面受容体に結合し、免疫応答を調節するサイトカインの放出を刺激することができます[15].

免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ型とラムダ型の2種類があり、これらはすべての免疫グロブリンクラスに共通しています[15]. 人間では、カッパ型が約67%、ラムダ型が約33%の割合で見られます[15].

以上の特徴により、免疫グロブリンは非常に多様な抗原に対して特異的に結合する能力を持ち、同時に限られた数のエフェクター分子や細胞と相互作用することができる、高度に特化した分子です.

参考文献・出典
[1] www.jacksonimmuno.com/secondary-antibody-resource/trending-topics/immunoglobulin-structure-and-function/
[2] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3670108/
[3] www.leinco.com/immunoglobulins/
[4] www.microbiologybook.org/mobile/m.immuno-4.htm
[5] byjus.com/biology/antibodies-role-of-antibodies/
[6] www.youtube.com/watch?v=Qlh0g6-VIyY
[7] www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/59/10/59_10_1046/_pdf
[8] www.ketsukyo.or.jp/plasma/globulin/glo_03.html
[9] m-hub.jp/biology/1008/structure-and-subclasses-of-antibody
[10] www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/antibody/antibodyp06.html
[11] www.ketsukyo.or.jp/plasma/globulin/glo_02.html
[12] www.kyowakirin.co.jp/antibody/basics/isotypes.html
[13] www.thermofisher.com/us/en/home/life-science/antibodies/antibodies-learning-center/antibodies-resource-library/antibody-methods/introduction-immunoglobulins.html
[14] www.jstage.jst.go.jp/article/biophys1961/19/2/19_2_93/_pdf
[15] www.sigmaaldrich.com/US/en/technical-documents/technical-article/protein-biology/western-blotting/antibody-basics
[16] www.thermofisher.com/us/en/home/life-science/antibodies/antibodies-learning-center/antibodies-resource-library/antibody-methods/immunoglobulin-structure-classes.html
[17] www.sciencedirect.com/topics/immunology-and-microbiology/immunoglobulin-structure
[18] www.thermofisher.com/jp/en/home/life-science/antibodies/antibodies-learning-center/antibodies-resource-library/antibody-methods/immunoglobulin-structure-classes.html
[19] www.sinobiological.com/resource/antibody-technical/antibody-structure-function
[20] www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK27144/

IgG, IgA, IgM, IgE, IgDの違い

免疫グロブリン(Immunoglobulin、Ig)は、体内の免疫応答において重要な役割を果たすタンパク質であり、異物や病原体と特異的に結合して体を守ります。免疫グロブリンはその構造と機能によって、IgG, IgA, IgM, IgE, IgDの5つのクラスに分類されます。これらのクラスは、それぞれ異なる役割を持ち、体内での分布や産生される細胞、分子量、半減期に違いがあります。

● IgG
IgGの構造
– 分子量: 約150,000ダルトン
– 産生細胞: 形質細胞
– 分布: 血液中に最も多く存在し、組織間液にも分布
– 機能: 二次免疫応答において主要な役割を果たし、細菌やウイルスの中和、オプソニン化、補体活性化に関与
– 半減期: 7〜23日

● IgA

– 分子量: 分泌型で約320,000ダルトン
– 産生細胞: 形質細胞
– 分布: 主に粘膜の表面や分泌液(唾液、涙、母乳など)に存在
– 機能: 粘膜免疫において重要で、病原体の粘膜への侵入を防ぐ
– 半減期: 約5日

● IgM

– 分子量: 約900,000ダルトン(ペンタマー形態)
– 産生細胞: B細胞
– 分布: 血液中に存在し、初期免疫応答に関与
– 機能: 抗原との結合能力が高く、補体系の活性化に寄与
– 半減期: 約5日

● IgE

– 分子量: 約200,000ダルトン
– 産生細胞: 形質細胞
– 分布: ほとんどが組織細胞や好塩基球に結合して存在
– 機能: アレルギー反応や寄生虫感染に対する防御に関与
– 半減期: 約2日

● IgD

– 分子量: 約180,000ダルトン
– 産生細胞: B細胞
– 分布: 主にB細胞の表面に存在
– 機能: 具体的な機能はまだ完全には解明されていないが、B細胞の活性化に関与する可能性がある
– 半減期: 約3日

これらの免疫グロブリンは、それぞれ特有の構造を持ち、体内での役割や機能、分布に大きな違いがあります。これにより、体は多様な病原体や異物に対して効果的に対応することができます。

第3章 免疫グロブリンのクラスとサブクラス

各クラスの特性と用途

免疫グロブリン(Immunoglobulin、Ig)は、B細胞によって産生される抗体の一種であり、体内の免疫応答において重要な役割を果たします。免疫グロブリンは、その構造と機能に基づいて、主に5つのクラス(IgG、IgM、IgA、IgE、IgD)に分類されます。これらのクラスは、それぞれ異なる特性と用途を持ち、体内での役割や疾患治療における応用が異なります。

● IgG

IgGは、血液中で最も豊富に存在する免疫グロブリンクラスで、全免疫グロブリンの約75%を占めます。IgGは、感染症に対する二次免疫応答において主要な役割を果たし、長期間体内に留まることができます。また、IgGは唯一胎盤を通過できる免疫グロブリンであり、母体から胎児への受動免疫を提供します。IgGは、4つのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)に分けられ、それぞれ異なる機能を持ちます[1][3][4]。

● IgM

IgMは、B細胞が成熟する過程で最初に産生される免疫グロブリンであり、主に血液中に存在します。IgMは、ペンタマー構造を持ち、10個の抗原結合部位を有するため、抗原との結合能力が非常に高いです。新たな感染に対する初期免疫応答において重要な役割を果たします[1]。

● IgA

IgAは、主に体の粘膜表面に存在し、呼吸器や消化器などの粘膜を通過する病原体から体を守る役割を持ちます。IgAは、血液中では主にモノマー形態で存在し、分泌物(唾液、涙、母乳など)ではジマー形態で見られます。IgAには2つのサブクラス(IgA1、IgA2)があります[1][5]。

● IgE

IgEは、体内で最も少ない免疫グロブリンクラスであり、主にアレルギー反応や寄生虫感染に対する防御に関与します。IgEは、マスト細胞や好塩基球に結合し、これらの細胞からヒスタミンなどの炎症誘発物質の放出を促します[1]。

● IgD

IgDは、B細胞の表面に存在し、B細胞の活性化に関与することが知られていますが、その他の機能についてはまだ完全には理解されていません[1]。

これらの免疫グロブリンクラスとサブクラスは、それぞれ特有の特性と用途を持ち、体内の免疫応答や疾患治療において重要な役割を果たします。

クラススイッチのメカニズム

免疫グロブリン(Ig)は、B細胞が産生する抗体であり、そのクラスとサブクラスによって異なる機能を持ちます。ヒトでは主にIgM、IgD、IgG、IgA、IgEの5つのクラスが存在し、これらはH鎖の種類によって決定されます[7]。クラススイッチとは、B細胞が最初に産生するIgMまたはIgDから、他のクラスのIg(IgG、IgA、IgE)へと抗体のクラスを変更する過程を指します[4][7][10]。

クラススイッチは、B細胞が特定の抗原に遭遇し、活性化された後に起こります。活性化されたB細胞は、T細胞からのシグナルやサイトカインの影響を受けて、異なるクラスの抗体を産生するようになります[7][10]。この過程では、B細胞の免疫グロブリン遺伝子の定常領域が変化し、異なるクラスの抗体が産生されるようになります[4]。

クラススイッチの具体的なメカニズムには、AID(Activation Induced Cytidine Deaminase)という酵素が関与しています。AIDは、B細胞のDNAに変異を導入し、クラススイッチに必要な遺伝子のリアレンジメント(再構成)を促進します[3]。この過程で、B細胞はIgMとIgD以外の異なるアイソタイプの抗体を産生するようになり、「抗体のクラススイッチ」と呼ばれます[7]。

クラススイッチの方向性は、B細胞が置かれている環境やT細胞が分泌するサイトカインによって影響を受けます。例えば、インターロイキン4(IL-4)はIgM・IgDからIgG1やIgEへのクラススイッチを促進し、インターロイキン5(IL-5)はIgM・IgDからIgAへのクラススイッチを促進します[7]。

クラススイッチは、免疫応答の適応性を高めるために重要な役割を果たします。異なるクラスの抗体は、感染症からの防御、アレルギー反応、自己免疫疾患など、様々な免疫応答において特有の機能を持っています[7][8]。例えば、IgGは血液中で最も多い抗体であり、感染微生物に対する防御に重要な役割を果たします。IgAは粘膜の免疫に関与し、IgEはアレルギー反応や寄生虫感染に対する応答に関わります[7]。

クラススイッチの異常は、免疫不全症や自己免疫疾患などの病態に関与することがあります。例えば、特定のIgGサブクラスの欠乏症は、感染症に対する抵抗力の低下を引き起こす可能性があります[9]。また、IgG4関連疾患は、IgG4サブクラスの異常な増加によって特徴づけられる疾患群です[13]。

クラススイッチの研究は、免疫療法やワクチン開発など、免疫学の多くの分野において重要な意味を持ちます。免疫グロブリンのクラスとサブクラスの理解を深めることで、より効果的な治療法や予防法の開発につながることが期待されています。

第4章 免疫グロブリンの血漿製剤

製剤の種類と特徴

免疫グロブリン製剤は、血漿から分離・精製された医薬品で、様々な抗体を含んでいます。これらの製剤は、免疫系の機能を補助し、感染症の治療や免疫関連疾患の治療に広く使用されています[9][10][15]. 免疫グロブリン製剤は、特に神経内科での使用が多く、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)などの治療に用いられています[19][20].

● 医療現場での利用

免疫グロブリン製剤は、医療現場で重要な役割を果たしています。これらの製剤は、免疫系の機能不全や特定の免疫関連疾患の治療に不可欠であり、特に以下のような病状に使用されます[5][10][15][17]:

– 重症感染症の治療
– 免疫機能が低下した患者の治療
– 特定の自己免疫疾患の治療
– 血小板減少症や川崎病などの治療
– 神経内科でのCIDPやギラン・バレー症候群(GBS)の治療

● 患者への影響

免疫グロブリン製剤の使用は、患者にとって多くの利益をもたらしますが、副作用や感染リスクも伴います[8][12][17]. 主な副作用には以下のようなものがあります:

– アレルギー反応や蕁麻疹
– 発熱
– 血栓塞栓症[16]
– ショック状態や血圧低下

また、製造過程でウイルスの除去が行われているものの、パルボウイルスB19や変異型クロイツフェルト・ヤコブ病など、除去できない病原体による感染リスクは完全には排除できません[17]. そのため、輸血や血漿分画製剤の使用後は定期的な健康チェックが推奨されています[17].

免疫グロブリン製剤の使用量は年々増加しており、特に大規模医療機関での1病床当たりの使用量が増加傾向にあります[20]. この増加は、新たな適応症の追加や医療技術の進歩によるものと考えられます[1].

● まとめ

免疫グロブリン製剤は、医療現場で広範囲にわたる疾患の治療に使用されており、患者の免疫機能を支える重要な役割を担っています。しかし、副作用や感染リスクの管理も重要であり、医療提供者は適正使用と患者の安全を確保するために注意深い管理が求められます。

医療現場での利用と患者への影響

免疫グロブリン製剤は、血漿から分離・精製された医薬品で、様々な抗体を含んでいます。これらの製剤は、免疫系の機能を補助し、感染症の治療や免疫関連疾患の治療に広く使用されています[9][10][15]. 免疫グロブリン製剤は、特に神経内科での使用が多く、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)などの治療に用いられています[19][20].

● 医療現場での利用

免疫グロブリン製剤は、医療現場で重要な役割を果たしています。これらの製剤は、免疫系の機能不全や特定の免疫関連疾患の治療に不可欠であり、特に以下のような病状に使用されます[5][10][15][17]:

– 重症感染症の治療
– 免疫機能が低下した患者の治療
– 特定の自己免疫疾患の治療
– 血小板減少症や川崎病などの治療
– 神経内科でのCIDPやギラン・バレー症候群(GBS)の治療

● 患者への影響

免疫グロブリン製剤の使用は、患者にとって多くの利益をもたらしますが、副作用や感染リスクも伴います[8][12][17]. 主な副作用には以下のようなものがあります:

– アレルギー反応や蕁麻疹
– 発熱
– 血栓塞栓症[16]
– ショック状態や血圧低下

また、製造過程でウイルスの除去が行われているものの、パルボウイルスB19や変異型クロイツフェルト・ヤコブ病など、除去できない病原体による感染リスクは完全には排除できません[17]. そのため、輸血や血漿分画製剤の使用後は定期的な健康チェックが推奨されています[17].

免疫グロブリン製剤の使用量は年々増加しており、特に大規模医療機関での1病床当たりの使用量が増加傾向にあります[20]. この増加は、新たな適応症の追加や医療技術の進歩によるものと考えられます[1].

● まとめ

免疫グロブリン製剤は、医療現場で広範囲にわたる疾患の治療に使用されており、患者の免疫機能を支える重要な役割を担っています。しかし、副作用や感染リスクの管理も重要であり、医療提供者は適正使用と患者の安全を確保するために注意深い管理が求められます。

第5章 免疫グロブリンの研究と応用

最新の研究トレンドと未来の可能性

免疫グロブリンは、人間の免疫系において重要な役割を果たすタンパク質であり、その応用範囲は医療分野において広がり続けています。最新の研究トレンドと将来の可能性について、以下に概説します。

● 最新の研究トレンド

1. 神経変性疾患への応用
– 免疫グロブリンは、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患における治療薬としての可能性が研究されています。これらの疾患においては、特定のターゲット抗原や効果細胞タイプに焦点を当てた免疫グロブリンの機能的役割が注目されています[4]。

2. COVID-19治療への応用
– COVID-19パンデミックにおいて、免疫グロブリンが有効な治療法として研究されています。特に、重症患者における免疫グロブリンの使用が肯定的な影響を与える可能性があるとされています[20]。

3. 皮下注射製剤の開発
– 免疫グロブリンの皮下注射製剤の開発が進んでおり、2週間に1回の投与が可能な製剤が承認されるなど、患者の負担軽減とQOLの向上に寄与しています[16]。

● 未来の可能性

1. 個別化医療への応用
– 免疫グロブリンの応用においては、個々の患者の免疫状態に合わせた治療が可能になることが期待されています。特に、遺伝子解析技術の進歩により、患者特有の免疫応答を理解し、最適な免疫グロブリン治療を提供することが将来的には可能になるでしょう。

2. 新たな治療領域への拡大
– 免疫グロブリンの応用範囲は、現在の感染症や自己免疫疾患、神経変性疾患に留まらず、がん治療や希少疾患治療へと拡大する可能性があります。特に、がん細胞特異的な抗原を標的とした免疫グロブリンの開発が進められています。

3. 治療効果の最適化
– 免疫グロブリンの治療効果を最適化するための研究が進んでいます。これには、投与方法の改善や、免疫グロブリンの分子構造を変更することによる効果の向上が含まれます。また、副作用の低減も重要な研究テーマです。

免疫グロブリンの研究と応用は、医療分野において重要な進展を遂げており、今後もその可能性は広がり続けるでしょう。特に、個別化医療の実現や新たな治療領域への応用は、多くの患者にとって希望をもたらすものと期待されます。

治療薬としての応用例

免疫グロブリン製剤は、その多様な免疫調節作用により、さまざまな疾患の治療に応用されています。これらの製剤は、主に重症感染症、自己免疫疾患、および一部の血液疾患の治療に使用されます。以下に、治療薬としての免疫グロブリンの応用例を紹介します。

● 重症感染症

免疫グロブリン製剤は、抗生物質単独で治療した場合に比べ、免疫グロブリン製剤と抗生物質を併用した場合により優れた治療効果を示すことが報告されています。特に、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの抗生物質に耐性を持つ細菌による重症感染症に対して有効性が認められています[18]。

● 自己免疫疾患

免疫グロブリン製剤は、自己免疫疾患の治療にも広く用いられています。例えば、ギラン・バレー症候群(GBS)や慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)などの神経疾患に対して、免疫グロブリン400mg/kg/日、5日間連日点滴静注する治療法が第一選択される治療法として用いられています[20]。また、重症筋無力症(MG)や多発性筋炎(PM/DM)などの筋疾患に対しても効果が報告されています[7]。

● 血液疾患

免疫グロブリン製剤は、特定の血液疾患の治療にも応用されています。例えば、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)において、免疫グロブリン製剤の投与が血小板数の増加を促し、出血傾向の改善に寄与します[17]。

● その他の応用

免疫グロブリン製剤は、川崎病や特定の感染症に対する予防や治療にも使用されます。また、原発性免疫不全症における感染予防や、がん治療後の感染症予防にも応用されています[6][17]。

免疫グロブリン製剤の応用は、その免疫調節作用に基づくものであり、疾患の種類や患者の状態に応じて適切な治療法が選択されます。これらの製剤は、多くの患者にとって重要な治療選択肢となっており、今後もその応用範囲は広がっていくことが期待されます。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

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