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Fc領域・Fc受容体(Fcレセプター)とは?Fcγ受容体の種類と働き、胎盤で抗体を運ぶFcRn、医療での意味をわかりやすく解説

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

Fc受容体(エフシーじゅようたい、Fcレセプター)とは、抗体の根元にあたる「Fc領域」に結合する受容体の総称です。抗体は先端の2本の腕(Fab)で病原体などの抗原をつかみ、根元のFc領域で免疫細胞のFc受容体とつながることで、細胞に「この相手を攻撃・処理する」という合図を伝えます。医療の文脈で「Fc」と書かれていれば、多くはこの抗体のFc領域のことです。なかでもFcRn(新生児Fc受容体)は、IgGを分解から守り、妊娠中にお母さんのIgGを胎盤から赤ちゃんへ運ぶ受容体です。この記事では、Fc領域とFc受容体の基本、Fcγ受容体の種類、FcRnのしくみ、そしてFc受容体の遺伝子の違いと病気・薬の関係を解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. Fc受容体とは何ですか?

抗体の根元(Fc領域)に結合する受容体の総称です。抗体が抗原をつかんだという情報を、免疫細胞の働き(攻撃・貪食・アレルギー反応など)に結びつける「橋渡し役」で、結合する抗体の種類によってFcγ受容体(IgG)、FcεRI(IgE)、FcαRI(IgA)などに分かれます。

🧬 Q. 医療で使う「Fc」とは何のことですか?

抗体のFc領域のことです。Fcは fragment crystallizable(結晶化する断片)の略で、抗原をつかむFab(抗原結合断片)と対になる言葉です。薬の説明に出てくる「Fc融合タンパク質」も、このFc領域を別のタンパク質につないだものです。

🧬 Q. Fcγ受容体にはどんな種類がありますか?

FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32a)、FcγRIIB(CD32b)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)などがあります。FcγRIIBは代表的な抑制型で、FcγRI・FcγRIIA・FcγRIIIAなどは活性化型です。FcγRIIIBはGPIアンカー型で、ほかの受容体と協調して働きます。

🧬 Q. FcRn(新生児Fc受容体)とは何ですか?

IgGとアルブミンを細胞の中での分解から救い出して血液に戻す受容体で、IgGの半減期がおよそ19〜21日と長いのはFcRnの働きによるものです。胎盤ではお母さんのIgGを赤ちゃんへ運び、その赤ちゃんのIgGは生まれるころにはお母さんの濃度を上回ります。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🧬 Fc領域・Fc受容体・FcγR・FcRn
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤Fc領域 → 抗体のY字の根元。重鎖のCH2・CH3ドメインでできていて、Fc受容体やFcRnが結合する
  • ➤Fc受容体 → Fc領域に結合する受容体。抗体の種類と細胞ごとに多くの種類がある
  • ➤FcRn → IgGを分解から守り、胎盤でお母さんのIgGを赤ちゃんへ運ぶ。止める薬も使われている
  • ➤遺伝子の違い → FCGR2B・FCGR2A・FCGR3Aの多型が、自己免疫の病気やマラリアへのかかりやすさと関連すると報告されている

Fc領域・Fc受容体(Fcレセプター)とはを解説するアイキャッチ画像

1. Fc領域とは?抗体のFabとFcの違い

Fc領域とは、抗体(免疫グロブリン)のY字形の根元にあたる部分で、抗原をつかむ2本の腕(Fab)と対になる部分です。抗体の「腕」が相手を見分ける役目を受け持つのに対し、「根元」のFc領域は、見分けた相手をどう処理するかを体の細胞に伝える役目を受け持っています。Fc受容体を理解するには、まずこの抗体の形を押さえておくと話がつながります。

抗体はFab(腕)2本とFc(根元)1本でできている

抗体は2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)からなるY字形のタンパク質で、2本の腕がFab、根元がFcです。IgGの場合、50 kDaの重鎖2本と25 kDaの軽鎖2本でできていて、軽鎖が重鎖の先端側(VH・CH1ドメイン)と組んでFabの腕をつくります。腕と根元のあいだにはヒンジ(蝶番)と呼ばれるしなやかなつなぎ目があり、根元のFcはヒンジの下部と重鎖のCH2・CH3ドメインでできています[2]。

この形を明らかにしたのが、1972年のノーベル生理学・医学賞を受けたポーターとエーデルマンの研究です。ポーターは、タンパク質を切る酵素パパインで抗体を処理すると、抗原と結合する力を保ったよく似た小さな断片2つと、その力をもたない大きな断片1つの、計3つに分かれることを見つけました。ポーターは抗体をアルファベットのYの形と考え、2本の枝は軽鎖1本と重鎖の前半、幹は重鎖の残りでできており、各鎖は硫黄どうしの結合(ジスルフィド結合)でつながっていると説明しました[1]。抗原と結合する小さな断片がFab(fragment antigen-binding)、大きな断片がFcです。

IgG抗体の模式図。Y字の2本の腕がFab(重鎖のVH・CH1と軽鎖のVL・CLからなる抗原結合アーム)、腕の先端が抗原結合部位、腕と根元のあいだがヒンジ(ジスルフィド結合)、根元が重鎖のCH2・CH3からなるFcで、Fc受容体とFcRnが結合する部分と示している

※模式図。IgGの例で、青と紫が重鎖、緑が軽鎖、オレンジの線がジスルフィド結合を示します。図中の英語:antigen-binding sites=抗原結合部位、antigen-binding arm=抗原と結合する腕、Hinge=ヒンジ、binds Fc receptors / FcRn=Fc受容体・FcRnが結合する。

Fc領域には、どの抗体でもほぼ同じ形をした「定常領域」だけが含まれます。抗原ごとに形が違う「可変領域」はFabの先端にあります。つまり、抗原の種類が違っても同じクラスの抗体であればFcの形はほぼ共通で、だからこそ免疫細胞は1種類のFc受容体で、どんな抗原に結合した抗体でも見分けることができます。さらにIgGのFcには、297番目のアスパラギン(N297)に糖鎖が付いていて、この糖鎖はFcγ受容体との結合にも直接関わっています[2](糖鎖については糖鎖修飾(グリコシル化)で解説しています)。

医療で「Fc」と書かれていたら何のこと?

医療・薬の説明で出てくる「Fc」は、ほとんどの場合、この抗体のFc領域を指します。Fcは fragment crystallizable(結晶化する断片)の略で、「fragment crystalline」と書かれることもあります[2]。日本語では「Fc領域」「Fc部分」「Fc部位」などと呼ばれ、どれも同じものです。

薬の説明でよく見かけるのが「Fc融合タンパク質」です。これは抗体のFc領域を別のペプチドやタンパク質に直接つないだ薬で、エタネルセプトやアバタセプトがその例です。Fcをつなぐと血液中での半減期が大きく延び、その主なしくみは後で説明するFcRnとの結合です[7]。また「Fc受容体」「FcRn」「Fc改変」といった言葉も、すべてこのFc領域を中心にした用語です。

📘 「Fc」に関係する主な用語

用語 意味
Fab(抗原結合断片) 抗体のY字の腕。先端で抗原をつかむ
Fc(Fc領域) 抗体のY字の根元。fragment crystallizable の略。Fc受容体やFcRnが結合する
ヒンジ FabとFcをつなぐしなやかな部分
Fc受容体(FcR、Fcレセプター) Fc領域に結合する受容体の総称。免疫細胞などに発現する
FcRn(新生児Fc受容体・胎児性Fc受容体) IgGとアルブミンを分解から守り、胎盤でIgGを赤ちゃんへ運ぶ受容体
Fc融合タンパク質 Fc領域を別のタンパク質につないだ薬。血液中に長くとどまる

※出典:Vidarsson ら[2]、Ben Mkaddem ら[3]、Pyzik ら[4]、Czajkowsky ら[7]。

2. Fc受容体(Fcレセプター)とは?種類と、どの細胞にあるか

Fc受容体(FcR)とは、抗体のFc領域に結合して、抗体がとらえた情報を細胞の反応に変える受容体の総称です。抗体そのものは相手に結合するだけで、相手を壊したり食べたりする力はもっていません。抗体が結合した病原体や細胞を、Fc受容体をもつ免疫細胞が見つけて処理することで、はじめて抗体の働きが目に見える形になります。受容体という言葉の基本はリンク先で解説しています。

Fc受容体は、結合する抗体のクラスによって名前が決まっています。IgG(ガンマ、γ)に結合するのがFcγ受容体(FcγR)、IgE(イプシロン、ε)がFcε受容体、IgA(アルファ、α)がFcα受容体、IgM(ミュー、μ)がFcμ受容体です。さらに、IgGとアルブミンを運ぶFcRn(新生児Fc受容体)、粘膜で二量体のIgAを上皮細胞の向こう側へ運ぶ多量体免疫グロブリン受容体(pIgR)も、Fcに関わる受容体として並べて扱われます[3]。

Fc受容体の種類と働き・発現する細胞(一覧表)

主なFc受容体は、結合する抗体、細胞を活性化するか抑えるか、どの細胞にあるかで整理できます。Fc受容体をもつ細胞は、単球・マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞(肥満細胞)、好塩基球、NK細胞、B細胞などで、多くの細胞が複数の種類を同時にもっています[3]。

🧬 ヒトの主なFc受容体

受容体(別名) 結合する抗体 主にある細胞 主な働き
FcγRI(CD64) IgG1・IgG3・IgG4 単球・マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞 活性化型
FcγRIIA(CD32a) IgG 単球・マクロファージ、好中球、樹状細胞、好塩基球、マスト細胞、好酸球 活性化型(ITAMをもつ)
FcγRIIB(CD32b) IgG B細胞、樹状細胞、マスト細胞、好塩基球 抑制型(ITIMをもつ唯一のFc受容体)
FcγRIIIA(CD16a) IgG NK細胞、単球・マクロファージ 活性化型。ADCCの中心
FcγRIIIB(CD16b) IgG 好中球、好酸球、好塩基球 細胞膜にGPIアンカーでつなぎ留められている
FcεRI IgE マスト細胞、好塩基球 高親和性。アレルギー反応に関わる
FcεRII(CD23) IgE B細胞、マクロファージ C型レクチン型で、ほかのFc受容体とは構造の系統が違う
FcαRI(CD89) IgA 単球・マクロファージ、好中球、樹状細胞、クッパー細胞 活性化にも抑制にも働く
FcμR IgM B細胞、T細胞 B細胞の応答に関わる
FcRn IgG(アルブミンにも結合) 腸の上皮、胎盤、血管内皮 IgGの再利用(分解から守る)と、胎盤での輸送

※Ben Mkaddem ら(2019)の表と本文[3]をもとに作成。FcRnの性質は Pyzik ら[4]による。発現する細胞は主なものを挙げています。

Fcγ受容体(FcγR):活性化型と抑制型がある

Fcγ受容体はIgGに結合するFc受容体で、細胞を活性化するタイプと、抑えるタイプのFcγRIIBがあります。活性化型の多くは、細胞の内側にITAM(免疫受容体チロシン活性化モチーフ)と呼ばれる配列をもち、抗体の集まり(免疫複合体)が結合すると、この配列を足場に信号が流れて細胞が動き出します。FcγRIIAでは、ITAMの中の2つのチロシンが炎症の信号を出すのに必要だと示されています[3]。

これに対しFcγRIIBは、細胞内にITIM(免疫受容体チロシン抑制モチーフ)をもつ抑制型Fcγ受容体で、免疫の行き過ぎを止める大事なブレーキ役です。B細胞受容体や活性化型受容体との共架橋などによって抑制性シグナルを伝え、細胞の活性化を弱めます[3]。このブレーキが弱いと自己免疫の病気が起こりやすくなることが、第5章で説明する遺伝子の違いの話につながります。

また、IgGには4つのサブクラスがあり、血液中に多い順にIgG1(約60%)、IgG2(約32%)、IgG3(約4%)、IgG4(約4%)です[2]。サブクラスによってFcの形が少しずつ違うため、Fcγ受容体との結合の強さも変わります。IgGそのものの性質はIgG(免疫グロブリンG)で詳しく解説しています。

FcεRI・FcαRIなど、IgE・IgAの受容体

FcεRIは、IgEに強く結合する受容体で、マスト細胞と好塩基球にあり、アレルギーの病気で重要な役割を果たします。花粉などに対するIgEがFcεRIに結合した状態で、再び同じ抗原が入ってくると、IgEどうしが抗原で橋渡しされ、細胞が活性化してヒスタミンなどを放出します。これがアレルギー症状の出発点です(アレルギーの解説へ)。IgEのもう1つの受容体であるCD23(FcεRII)はC型レクチンという別の系統に属し、構造の上ではほかのFc受容体の仲間ではありません[3]。

IgAの受容体FcαRI(CD89)は、単球・マクロファージ・好中球などにあります。FcαRIのように親和性の低い受容体は、結合のしかたによって細胞を活性化することも、反対に抑えることもあると報告されています[3]。粘膜で働く二量体のIgAは、別の受容体であるpIgRによって上皮細胞を通り抜けて粘膜の表面へ運ばれます[3]。

3. Fc受容体の働きは?ADCC・貪食・アレルギー

Fc受容体の働きは、抗体が目印をつけた相手を、免疫細胞が壊す・食べる・反応するという形で処理させることです。同じ「抗体が結合した」という情報でも、どの細胞のどのFc受容体が受け取るかで、起きることが変わります。

1つ目は、NK細胞などが抗体の付いた細胞を壊すしくみで、これを抗体依存性細胞傷害(ADCC)といいます。NK細胞のFcγRIIIA(CD16a)が、標的の細胞に結合したIgGのFcをつかむことで起こります。仕組みとADCC・CDC・ADCPの違いはADCC(抗体依存性細胞傷害)で詳しく解説しています。2つ目は、マクロファージや好中球がFcγ受容体を使って、抗体の付いた細菌などを取り込む「貪食」です。抗体が付くことで食べられやすくなる現象をオプソニン化といいます。3つ目が、前の章で説明したFcεRIを介したアレルギー反応です。

抗体医薬では、Fc受容体との結合の強さを変える工夫が行われています。IgGのFcに付いた糖鎖から「コアフコース」という糖を除くと、FcγRIIIAへの結合が大きく強まり、NK細胞などによるADCCが増強します。貪食への影響は、関与する細胞やFcγ受容体の種類によって異なります[2]。モノクローナル抗体の効き方を考えるうえで、Fc領域はFabと同じくらい大事な部分です。抗体が働くしくみには、Fc受容体を介するもののほかに補体を介するものもあり、リンク先で解説しています。

4. FcRn(新生児Fc受容体)とは?IgGを守り、胎盤で赤ちゃんへ運ぶ受容体

FcRn(新生児Fc受容体)とは、IgGとアルブミンを細胞の中での分解から救い出して血液に戻し、胎盤ではお母さんのIgGを赤ちゃんへ運ぶ受容体です。構造は、移植の型(HLA)で知られるMHCクラスI分子に似ていて、重鎖がβ2ミクログロブリンという小さなタンパク質と組んでいます[4]。日本薬学会の用語解説では「胎児性Fc受容体」という名前で紹介されています[5]。

「新生児(neonatal)」という名前は、生まれたばかりのラットの小腸から見つかったことに由来します。ところがその後、大人になってからも腸の上皮や血管の内皮などで働き続けていることが分かり、総説では「名前が実態を表していない(misnomer)」と言われるほどです[4]。ほかのFc受容体が「免疫細胞を動かす」受容体であるのに対し、FcRnは「抗体を守って運ぶ」受容体だと考えると、違いがつかみやすくなります。

FcRnがIgGの寿命を延ばすしくみ

FcRnは、弱い酸性(pH 5.0〜6.5)ではIgGとアルブミンに強く結合し、中性の血液中ではほとんど結合しないという性質をもっています。この性質のおかげで、細胞が液体ごと取り込んだIgGは、酸性のエンドソームの中でFcRnにつかまり、分解の場であるリソソームへ送られずに細胞の表面へ戻され、中性の血液に触れたところで離れて血液中に戻ります[4][5]。

細胞がIgGを取り込む液体ごと飲み込む(エンドサイトーシス)
▶
酸性のエンドソームでFcRnに結合pH 5.0〜6.5
▶
細胞の表面へ戻るリソソームでの分解を逃れる
▶
中性の血液中で離れるIgGが血液に戻る

※FcRnに結合しなかったIgGはリソソームへ運ばれて分解されます。Pyzik ら[4]、日本薬学会[5]をもとに作成。

この再利用のしくみによって、ヒトのIgGとアルブミンの半減期はおよそ19〜21日と、ほかの多くの血液中のタンパク質より長くなっています[4]。IgGのサブクラスでみると、IgG1・IgG2・IgG4の半減期は約21日、IgG3はアロタイプ(個人ごとの型の違い)によって約7日のものと約21日のものがあります[2]。FcRnが結合するのは、Fc領域のCH2ドメインとCH3ドメインの境目の部分です[2]。

妊娠中、お母さんのIgGはいつから赤ちゃんに移る?

お母さんの抗体のうち、胎盤を通って赤ちゃんに移るのはIgGだけで、その輸送を担うのが胎盤の合胞体栄養膜細胞にあるFcRnです。能動的な輸送は妊娠13週ごろに始まり、赤ちゃんのIgGは妊娠32週ごろにお母さんの濃度の50%に達し、生まれる時にはお母さんの濃度を上回ります。とくに妊娠後期に多くのIgGが運ばれます[6]。

サブクラスによって運ばれやすさが違い、いちばん速いのがIgG1、いちばん遅いのがIgG2で、生まれた時点の赤ちゃんの血液中ではIgG1がIgG2の7倍あったと報告されています[6]。こうしてお母さんから受け取ったIgGは、自分で抗体を十分につくれない生まれたばかりの時期の赤ちゃんを感染から守ります。一方で、早く生まれた赤ちゃんは妊娠後期の輸送を十分に受けられないことになります。胎盤そのものの働きは胎盤の基礎で解説しています。

🤰 胎盤を通るお母さんのIgGの移り方

時期 赤ちゃんのIgG
妊娠13週ごろ 胎盤を通る能動的な輸送が始まる
妊娠32週ごろ お母さんの濃度の50%に達する
出生時 お母さんの濃度を上回る

※Ciobanu ら(2020)の総説[6]による。胎盤を通る抗体はIgGだけです。

FcRnを利用する薬・止める薬(FcRn阻害薬)

FcRnのしくみは、薬を長持ちさせる方向にも、反対に有害なIgGを減らす方向にも使われています。長持ちさせる方向では、抗体のFc領域の特定のアミノ酸を置き換えてFcRnとの結合を強める改変があり、MST変異と呼ばれる改変では、ヒトとサルでIgGが体内にとどまる期間が最大5倍に延びたと報告されています[4]。前の章で触れたFc融合タンパク質が長持ちするのも、FcRnとの結合によるものです[7]。

反対に、FcRnを止める薬(FcRn阻害薬)は、IgGの再利用を妨げて血液中のIgGを減らします。自分の体を攻撃するIgG(自己抗体)が病気の中心にある自己免疫の病気が対象です。2019年の総説では、エフガルチギモド(efgartigimod)、ロザノリキシズマブ(rozanolixizumab)などが当時臨床開発中のFcRn阻害薬として紹介されています[4]。その後、これらの薬剤は全身型重症筋無力症に対する治療薬として承認され、臨床で使用されるようになりました[13]。エフガルチギモドは、自己抗体を減らすように改変したヒトIgG1のFc断片で、全身型重症筋無力症の第3相試験(ADAPT)では、アセチルコリン受容体抗体陽性の患者さんで治療に反応した人の割合が、エフガルチギモド群68%(65人中44人)、プラセボ群30%(64人中19人)でした[8]。

💡 用語解説:MHCクラスI分子とβ2ミクログロブリン

MHCクラスI分子は、ほぼすべての細胞の表面にあって、細胞の中でつくられたタンパク質の断片をT細胞に見せる分子で、ヒトではHLAクラスIと呼ばれます。β2ミクログロブリンは、このMHCクラスI分子と組んで働く小さなタンパク質です。FcRnはMHCクラスI分子と似た形をしていて、同じようにβ2ミクログロブリンと組んでいますが、タンパク質の断片を見せる働きはもたず、IgGとアルブミンを結合する役目を担っています[4]。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「Fc」は抗体の働きを決める部分】

抗体というと、ウイルスや細菌をつかむ先端の部分に目が向きがちです。けれども、つかんだあとに体がどう反応するかを決めているのは根元のFc領域で、Fc受容体とFcRnの性質を知ると、抗体医薬が効くしくみ、長く効くしくみ、そして薬によってはその性質を逆手にとるしくみまで、ひと続きの話として理解できます。

FcRnがお母さんのIgGを赤ちゃんに運ぶしくみは、生まれたばかりの赤ちゃんを守る大切な働きである一方、お母さんの体に赤ちゃんを攻撃する抗体があるときには、それも赤ちゃんに届けてしまいます。同じしくみが守りにも害にもなるという点は、妊娠と免疫を考えるうえで押さえておきたいところだと考えています。

5. 遺伝・医療とのつながり:お母さんの抗体、遺伝子の違い、薬の効き方

Fc受容体は、妊娠中にお母さんの抗体が赤ちゃんの病気を起こすしくみ、自己免疫の病気やマラリアへのかかりやすさ、抗体医薬の効き方の個人差という3つの点で、遺伝・医療と結びついています。ここでは、用語の解説だけでは見えにくいこのつながりを、臨床遺伝専門医の立場から整理します。

お母さんの抗体が赤ちゃんの病気を起こすとき

FcRnは抗原に対する特異性にかかわらずIgGのFc領域を認識するため、お母さんの体に赤ちゃんの細胞や組織に反応するIgGがあると、それも胎盤を通って赤ちゃんに届き、病気の原因になることがあります。ただし、IgGのサブクラスなどによって胎盤を通る効率には違いがあります。総説では、次のような病気が例として挙げられています[6]。

⚠️ お母さんのIgGが胎盤を通って起こる主な病気

病気 赤ちゃんに移る抗体と起こること
胎児・新生児溶血性疾患(HDFN) 赤ちゃんの赤血球に対するお母さんの抗体が、赤ちゃんの赤血球を壊す(溶血)
胎児・新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT) 赤ちゃんの血小板の抗原(HPA-1a・HPA-5bなど)に対するお母さんの抗体による
新生児一過性重症筋無力症 重症筋無力症のお母さんから生まれた赤ちゃんの15%に起こりうるとされる
新生児ループス お母さんの自己抗体が胎盤を通ることで、赤ちゃんに受け身の形で起こる自己免疫の状態
バセドウ病(グレーブス病)のお母さんの赤ちゃんの甲状腺腫 お母さんの抗体が胎盤を通ることで、赤ちゃんに甲状腺腫が起こることがある

※Ciobanu ら(2020)の総説[6]による。

このしくみを逆に利用して、胎盤でのIgGの輸送そのものを止める治療も研究されています。FcRn阻害薬のニポカリマブ(nipocalimab)は、胎盤を通るIgGの輸送を妨げ、お母さんのIgGを下げる薬です。早い時期に重い胎児・新生児溶血性疾患が起こる危険の高い妊娠を対象にした研究では、子宮内での輸血をせずに妊娠32週以降で生まれた赤ちゃんが13件の妊娠のうち7件(54%)で、過去のデータから設定した基準(0%)と比べて、胎児の貧血や子宮内輸血を遅らせる、または防ぐ結果でした[9]。対象は少数の研究で、標準治療として確立したものではありません。

なお、妊娠中の検査としてよく知られるNIPT(新型出生前診断)は、HDFNやFNAITのような、お母さんの抗体による病気そのものを診断する検査ではありません。お母さんの血液に赤ちゃんに反応する抗体があるかどうか、どのくらいあるかは、お母さんの血液の抗体検査で調べます[12]。

ただし、お母さんの血液中に流れている赤ちゃん由来のDNA(セルフリーDNA)を調べて、赤ちゃんのRhD型を知ることはできます。RhD陰性のお母さんがRhD陽性の赤ちゃんを妊娠すると、お母さんの体が赤ちゃんの赤血球のD抗原に対する抗体(抗D抗体)をつくることがあり、この抗D抗体が胎盤を通ると胎児・新生児溶血性疾患の原因になります。英国国立医療技術評価機構(NICE)は、母体血中の赤ちゃん由来DNAで赤ちゃんのRHD遺伝子型を調べる検査を、妊娠中の抗D免疫グロブリンの予防投与を行うかどうかの判断に使う方法として推奨しています。英国の資料では、RhD陰性の妊婦さんの約40%は赤ちゃんもRhD陰性で、赤ちゃんがRhD陽性とわかった場合には、お母さんが抗D抗体で感作されているかどうかに応じて、抗D免疫グロブリンによる予防や胎児貧血の経過観察などが検討されます[12]。当院でも、お母さんの血液で赤ちゃんのRhD型を調べる検査を行っています。お母さんがRhD陰性のとき、赤ちゃんがRhD陽性か陰性かがわかることは、抗D抗体による溶血性疾患に備える手がかりになります。Rh型と妊娠・出産の注意点はRhマイナスの出産のリスクと予防で解説しています。

Fc受容体の遺伝子の違いと、自己免疫の病気・マラリア

Fc受容体の遺伝子には、人によって1か所だけ塩基が違う多型(SNP)があり、その一部は自己免疫の病気へのかかりやすさと関連すると報告されています。たとえば、抑制型の受容体をつくるFCGR2B遺伝子では、膜を貫く部分の232番目のアミノ酸がイソロイシンからトレオニンに変わる多型(I232T)があり、T232は全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫の病気へのかかりやすさと関連しています。FCGR2A遺伝子の131番目の多型(R131/H131)でR131をホモ接合でもつことは、SLE・免疫性血小板減少症(ITP)・IgA腎症と、FCGR3A遺伝子の158番目の多型のF158は、SLE・クローン病・ベーチェット病との関連が報告されています[3]。

興味深いのは、FCGR2Bの多型とマラリアの関係です。FcγRIIBの働きを失わせるこのSNPは、白人と東南アジアの人のどちらでもSLEへのかかりやすさと強く関連していました。その一方で、このSNPの少ないほうの型(マイナーアレル)は、マラリアの多い地域である東南アジアやアフリカの人で白人より多く、東アフリカの集団ではこの型をホモ接合でもつ人が重いマラリアにかかりにくい(オッズ比0.56)ことが示されました[10]。研究グループは、マラリアから身を守る利点がこの型を集団の中に多く残し、その結果としてアフリカや東南アジアの人でSLEが多いことにつながっている可能性を指摘しています[10]。

免疫のブレーキが弱いことは、感染症に対しては有利に、自己免疫に対しては不利に働きます。ある遺伝子の型が「よい」か「悪い」かは、その人が暮らす環境によって変わるという、遺伝学の基本的な考え方をよく表している例です。マラリアを起こす病原体については原虫で解説しています。

Fcγ受容体の多型で抗体医薬の効き方は変わる?

FCGR2A(H131R)やFCGR3A(V158F)の多型によって抗体医薬の効き方が違うという報告はありますが、研究によって結果が一致せず、今のところ治療を選ぶための検査としては使われていません。多くの抗体医薬はADCCを主な働きの1つとしていて、ADCCではFcγ受容体が欠かせません。そこで、受容体の結合の強さを変える多型が、薬の効き方の個人差を説明するのではないかと考えられてきました[11]。

FCGR3Aの158番目がV(バリン)のホモ接合(V/V)の人のNK細胞は、F(フェニルアラニン)のホモ接合の人よりIgG1を多く結合しました。しかし、がんの患者さんでの研究をまとめた総説は、IgG1の抗体医薬の効果に対するFcγ受容体の遺伝子型の影響は一貫していないと結論づけ、遺伝子型を理由に抗体医薬を使わないという判断は現時点では適切でないとしています[11]。薬の効き方と遺伝子の関係を調べる分野全体についてはファーマコゲノミクス(薬理ゲノミクス)で解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【1つの遺伝子の型で、病気や薬の効き方は決まらない】

Fc受容体の多型と病気・薬の関係は、「関連がある」という報告と「結果が一致しない」という報告が並んでいる分野です。オッズ比が1から離れていても、それは集団での傾向であって、その型をもつ一人ひとりが病気になる、あるいは薬が効かないという意味ではありません。

遺伝子の情報を医療に使うときには、関連の強さ、結果が別の集団でも再現されているか、その情報で実際の判断が変わるのかを分けて考える必要があると考えています。FCGR2Bとマラリアの例のように、同じ型が環境によって有利にも不利にも働くことも、遺伝子の型を単純に「よい」「悪い」で分けられない理由の1つです。

よくある質問(FAQ)

Q1. Fc受容体とは何ですか?

Fc受容体(Fcレセプター)は、抗体の根元にあるFc領域に結合する受容体の総称です。抗体が病原体などをつかんだという情報を、免疫細胞が相手を壊す・取り込む・アレルギー反応を起こすといった働きに結びつけます。結合する抗体の種類によって、Fcγ受容体(IgG)、FcεRI(IgE)、FcαRI(IgA)などに分かれます。

Q2. Fc受容体を持つ細胞は何ですか?

単球・マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞(肥満細胞)、好塩基球、好酸球、NK細胞、B細胞などです。多くの細胞が複数の種類のFc受容体を同時にもっています。たとえばNK細胞にはFcγRIIIA(CD16a)、マスト細胞と好塩基球にはIgEに結合するFcεRIがあります。

Q3. FabとFcの違いは何ですか?

Fabは抗体のY字の2本の腕で、先端で抗原をつかむ部分です。Fcは根元の部分で、抗原の種類にかかわらずほぼ同じ形をしており、Fc受容体やFcRnが結合します。抗体を酵素のパパインで切ると、抗原と結合するFab断片2つと、結合しないFc断片1つに分かれます。

Q4. 「新生児Fc受容体」と「胎児性Fc受容体」は同じものですか?

同じもので、どちらもFcRnを指します。生まれたばかりのラットの小腸で見つかったことから「新生児(neonatal)」の名前が付いていますが、実際には大人になっても働き続け、IgGとアルブミンを分解から守っています。胎盤ではお母さんのIgGを赤ちゃんへ運ぶ役目を担っています。

Q5. FcRn阻害薬とはどんな薬ですか?

FcRnの働きを止めて、IgGが分解から守られないようにし、血液中のIgGを減らす薬です。自分の体を攻撃するIgG(自己抗体)が原因となる病気が対象で、エフガルチギモドは全身型重症筋無力症の第3相試験で効果が示されました。胎盤を通るIgGの輸送を妨げる目的でも研究されています。

Q6. お母さんの抗体はいつごろから赤ちゃんに移りますか?

胎盤を通るのはIgGだけで、能動的な輸送は妊娠13週ごろに始まります。赤ちゃんのIgGは妊娠32週ごろにお母さんの濃度の50%に達し、生まれる時にはお母さんの濃度を上回ります。とくに妊娠後期に多く運ばれます。

Q7. Fc受容体の遺伝子の違いで抗体医薬の効き方は変わりますか?

FCGR2AやFCGR3Aの多型で抗体医薬の効き方が違うという報告はありますが、研究によって結果が一致していません。がんの患者さんでの研究をまとめた総説では、遺伝子型を理由に抗体医薬を使わないという判断は現時点では適切でないとされています。

まとめ

Fc受容体(Fcレセプター)は、抗体の根元にあるFc領域に結合する受容体の総称で、抗体がつかんだ相手を免疫細胞に処理させる橋渡し役です[3]。IgGに結合するFcγ受容体には活性化型と抑制型のFcγRIIBがあり、IgEのFcεRIはアレルギーに、IgAのFcαRIは粘膜の防御に関わります。

FcRn(新生児Fc受容体)は、IgGとアルブミンを分解から守ってIgGの半減期をおよそ19〜21日に保ち[4]、胎盤ではお母さんのIgGを赤ちゃんへ運びます[6]。この性質は、抗体医薬を長持ちさせる工夫にも、有害なIgGを減らすFcRn阻害薬にも使われています。Fc受容体の遺伝子の多型は、自己免疫の病気やマラリアへのかかりやすさとの関連が報告されていますが、抗体医薬の効き方を予測する検査としては、まだ使われていません[10][11]。

📘 この記事について

この記事は、抗体のFc領域とFc受容体についての用語解説です。個別の病気の診断や治療をご案内するものではありません。妊娠中の抗体や病気について気になることがある場合は、妊婦健診を受けている医療機関でご確認ください。遺伝学的な検査の結果が本人や血縁者にとってどういう意味をもつかを専門医と整理する場として、遺伝カウンセリングがあります。

参考文献

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  • [3] Ben Mkaddem S, Benhamou M, Monteiro RC. Understanding Fc receptor involvement in inflammatory diseases: from mechanisms to new therapeutic tools. Front Immunol. 2019;10:811. [DOI: 10.3389/fimmu.2019.00811]
  • [4] Pyzik M, Sand KMK, Hubbard JJ, Andersen JT, Sandlie I, Blumberg RS. The neonatal Fc receptor (FcRn): a misnomer? Front Immunol. 2019;10:1540. [DOI: 10.3389/fimmu.2019.01540]
  • [5] 公益社団法人日本薬学会 生物系薬学部会. 薬学用語解説「胎児性Fc受容体」. [日本薬学会]
  • [6] Ciobanu AM, Dumitru AE, Gica N, Botezatu R, Peltecu G, Panaitescu AM. Benefits and risks of IgG transplacental transfer. Diagnostics (Basel). 2020;10(8):583. [DOI: 10.3390/diagnostics10080583]
  • [7] Czajkowsky DM, Hu J, Shao Z, Pleass RJ. Fc-fusion proteins: new developments and future perspectives. EMBO Mol Med. 2012;4(10):1015-1028. [DOI: 10.1002/emmm.201201379]
  • [8] ADAPT Investigator Study Group. Safety, efficacy, and tolerability of efgartigimod in patients with generalised myasthenia gravis (ADAPT): a multicentre, randomised, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Neurol. 2021;20(7):526-536. [DOI: 10.1016/S1474-4422(21)00159-9]
  • [9] Moise KJ, Ling LE, Oepkes D, et al. Nipocalimab in early-onset severe hemolytic disease of the fetus and newborn. N Engl J Med. 2024;391(6):526-537. [DOI: 10.1056/NEJMoa2314466]
  • [10] Willcocks LC, Carr EJ, Niederer HA, et al. A defunctioning polymorphism in FCGR2B is associated with protection against malaria but susceptibility to systemic lupus erythematosus. Proc Natl Acad Sci U S A. 2010;107(17):7881-7885. [DOI: 10.1073/pnas.0915133107]
  • [11] Mellor JD, Brown MP, Irving HR, Zalcberg JR, Dobrovic A. A critical review of the role of Fc gamma receptor polymorphisms in the response to monoclonal antibodies in cancer. J Hematol Oncol. 2013;6:1. [DOI: 10.1186/1756-8722-6-1]
  • [12] National Institute for Health and Care Excellence. High-throughput non-invasive prenatal testing for fetal RHD genotype. Diagnostics guidance DG25. 2016. [NICE]
  • [13] 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA). 医療用医薬品 情報検索:エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)(2022年1月20日承認、全身型重症筋無力症)、ロザノリキシズマブ(遺伝子組換え)(2023年9月25日承認、全身型重症筋無力症). 2026年10月28日確認. [PMDA エフガルチギモド] [PMDA ロザノリキシズマブ]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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