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FKBP prolyl isomerases FKBPファミリーのプロリルイソメラーゼ

FKBP prolyl isomerases(FKBPファミリーのプロリルイソメラーゼ)は、タンパク質の折りたたみと機能の調節に重要な役割を果たす酵素の一群です。これらの酵素は、特にプロリン残基のcis-trans異性化を触媒し、この過程はタンパク質の正しい折りたたみや機能的な構造の形成に不可欠です。FKBPファミリーは、免疫抑制剤タクロリムス(FK506)やシロリムス(ラパマイシン)などの薬剤と結合することでも知られています。

シス-トランス異性体(または幾何異性体)は、有機化合物の立体異性体の一種で、特に二重結合を持つ炭化水素において見られます。この異性体は、二重結合が回転しにくいことによって生じます。シス型とトランス型の主な違いは、二重結合を持つ炭素原子に結合している原子や官能基の空間的な配置にあります。
シス型(cis型)では、二重結合を持つ炭素原子に結合している原子や官能基が同じ側に位置しています。一方、トランス型(trans型)では、これらの原子や官能基が二重結合を挟んで反対側に位置しています。

FKBP prolyl isomerasesには以下の特徴があります:

プロリン残基の異性化:プロリン残基のcis-trans異性化は、タンパク質がその正しい三次構造を獲得するための重要なステップです。

タンパク質の折りたたみ:これらの酵素は、タンパク質の折りたたみプロセスにおいて助けとなり、タンパク質が機能的な状態になるのを促進します。

シグナル伝達と免疫調節:FKBPファミリーは細胞のシグナル伝達経路や免疫応答の調節にも関与しており、特に免疫抑制剤との結合によってこれらのプロセスに影響を与えます。

疾患との関連:FKBPプロリルイソメラーゼの異常は、神経変性疾患、がん、および心血管疾患など、多くの病状に関連している可能性があります。

これらの酵素の研究は、タンパク質の機能的な理解と疾患治療法の開発に寄与する可能性があります。

プロリルイソメラーゼとは

プロリルイソメラーゼ(Prolyl isomerase)またはペプチジルプロリルイソメラーゼ(Peptidylprolyl isomerase、略称PPIase)は、プロリン残基を含むペプチド結合のシス型とトランス型の間での異性化反応を触媒する一群の酵素です。この異性化反応は、タンパク質のフォールディング(折りたたみ)プロセスにおいて重要な役割を果たします。プロリルイソメラーゼは、タンパク質が正しい3次元構造を取るのを助けることで、その機能を発揮することができるようにします。異性化反応は、プロリン残基の特異的な化学構造により、他のアミノ酸残基と比べて異性化が比較的遅いため、この酵素の活性が必要とされます。

プロリルイソメラーゼは、異性化酵素(イソメラーゼ)の一種で、全ての生物に存在し、タンパク質分子中のプロリン残基のシス・トランス異性化を触媒します。この酵素は、タンパク質の正確なフォールディングが必要な生物の個体や細胞等の主要な構成分子であるタンパク質が正しく機能するためには、タンパク質の正確なフォールディング(折り畳み)が必要であり、この結合のシス・トランス異性化に必要な活性化エネルギーは約20kcal/molと比較的高いので、この結合は自然には異性化しにくく、フォールディングにはプロリン残基の異性化が触媒される必要があります。プロリルイソメラーゼはここで働き、シャペロンの一つとしての役割も果たします。

プロリルイソメラーゼの例としては、真核生物のシクロフィリン、FKBP、Pin1、原核生物のパルブリン等があります。これらは異なるタンパク質に対しても活性があり、自己フォールディングを促進します。シクロフィリンとFKBPはそれぞれある種の免疫抑制剤の標的タンパク質でイムノフィリンと総称されます。これらは免疫系の調整で中心的な役割を果たすカルシニューリン等、シグナル伝達に関わるいくつかのタンパク質複合体の活性発現に必要ですが、免疫抑制剤と複合体を形成すると逆にこれらタンパク質複合体を阻害することもあります[4][7][19].

FKBPプロリルイソメラーゼとその他のプロリルイソメラーゼの違いとは

FKBPプロリルイソメラーゼ(FKBP)と他のプロリルイソメラーゼとの主な違いは、FKBPがFK506結合タンパク質としても知られ、特定の免疫抑制剤であるタクロリムス(FK506)と結合する能力を持つ点です[8]。FKBPはペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼ(PPIase)の3つのファミリーの一つであり、205アミノ酸残基から成るFKBP22のような特定のタンパク質も含まれています[6]。

一方で、シクロフィリンは、別の免疫抑制剤であるシクロスポリンと結合する能力を持つプロリルイソメラーゼのファミリーです[1][4]。シクロフィリンとFKBPは共にイムノフィリンと総称され、免疫系の調整に関わるカルシニューリンなどのシグナル伝達に関わるタンパク質複合体の活性発現に必要ですが、免疫抑制剤と複合体を形成することでこれらのタンパク質複合体を阻害することもあります[4]。

また、Pin1はプロリルイソメラーゼの中でも特に、リン酸化されたセリンまたはスレオニン残基の隣にあるプロリン残基のシス-トランス異性化を触媒することで知られています。これにより、Pin1は細胞周期の調節やシグナル伝達経路において重要な役割を果たします。

これらのプロリルイソメラーゼは、タンパク質のフォールディングを促進する共通の機能を持ちながらも、結合する免疫抑制剤や特定の生物学的プロセスにおける役割において異なります。さらに、これらの酵素は異なるタンパク質ファミリーに属しており、それぞれが異なる基質特異性や細胞内での局在、生物学的機能を持っています。

fkbpプロリルイソメラーゼがどのように機能するのか教えてください

FKBPプロリルイソメラーゼは、タンパク質の折りたたみと機能の調節に重要な役割を果たす酵素の一群です。これらの酵素は、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼ(PPIase)の活性を持ち、タンパク質分子中のプロリン残基のシス-トランス異性化を触媒します[6][8]。この異性化は、タンパク質が正しい3次元構造を取るために必要なプロセスであり、タンパク質の機能発現に不可欠です。

FKBPファミリーは、免疫抑制剤として有名なFK506(タクロリムス)に結合することが知られており、ヒトでは16種類の異なるFKBPが存在します[2]。FKBPファミリーの中でも、FKBP52は特に注目されており、エストロゲン受容体α(ERα)とBRCA1の結合を促進し、ERαを安定化させることが分かっています。これにより、乳がん細胞の増殖を促進する可能性があります。一方で、FKBP52と相同性が高いFKBP51は、FKBP52の機能とは逆にERαの分解を促進することが判明しています。FKBP52を阻害することで、ERαの発現量およびがん細胞の増殖を抑制できることが示されており、これは乳がん治療における新たな治療標的となる可能性があります[2]。

FKBPプロリルイソメラーゼは、シクロフィリンやパルブリンとともに、PPIaseの3つの主要なファミリーの一つに分類されます。これらの酵素は、プロリン残基N末端側にあるペプチド結合のシス-トランス異性化を触媒し、タンパク質の折りたたみと輸送を調節する機能を持ちます[3]。また、FKBPプロリルイソメラーゼは、プロリン残基を含むテトラペプチドだけでなく、プロリン異性化反応が律速であるRNase T1の折りたたみ反応も促進することが知られており、そのPPIase活性は非特異的であると考えられています[3]。

さらに、FKBPプロリルイソメラーゼは、低温でのみよく働くことが知られており、その活性は10℃で最大になり、20℃以上では急激に低下します。これは、プロリンの異性化反応がタンパク質折りたたみ反応の律速段階となることが知られており、その速度は低温では著しく低下するためです。したがって、低温に適応するためには、PPIase活性を持つFKBP22の生産量を増やすことが有効であるとされています[3]。

FKBP prolyl isomerasesに属する遺伝子

FKBPL
FKBP1A
FKBP1B
FKBP1C
FKBP2
FKBP3
FKBP4
FKBP5
FKBP6
FKBP7
FKBP8
FKBP9
FKBP10
FKBP11
FKBP14
FKBP15
AIP
AIPL1

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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