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「CLIA(クリア)」という言葉には、実はまったく異なる2つの意味があります。ひとつは米国臨床検査室改善法(Clinical Laboratory Improvement Amendments of 1988)という、臨床検査の質を国が保証するための連邦法・制度。もうひとつは、血液検査の測定方法である化学発光免疫測定法(Chemiluminescence Immunoassay)です。NIPT(新型出生前診断)やがんゲノム検査を調べていると「米国CLIA認証を取得したラボで検査」といった表現を目にすることがありますが、これは前者(制度)の意味です。この記事では主に制度としてのCLIAを、臨床遺伝専門医の視点から、その仕組み・対象・日本との違い・そして検査結果を読むうえでの限界まで整理します。後半のFAQで、血液検査の測定法としてのCLIAにも簡潔に触れます。
Q. CLIAとは何ですか?まず結論だけ知りたいです
A. CLIAには2つの意味があります。①米国臨床検査室改善法(Clinical Laboratory Improvement Amendments of 1988)=人体由来の検体を扱う臨床検査の質を、米国が全国一律の基準で保証する連邦法・制度。②化学発光免疫測定法=血液検査などで使われる測定方法。この記事の主題は①の制度です。①はCMS・FDA・CDCの3つの連邦機関が分担して運営し、米国内で人体検体を検査するほぼすべての検査室が対象となります。日本にはCLIAと同一の、臨床検査室を全国一律に証明書制度で規制する仕組みはありません。ただし、検体検査の精度確保については医療法・臨床検査技師等に関する法律などに基づく基準があります。
- ➤2つの意味 → 制度としてのCLIA法/血液検査の測定法(化学発光免疫測定法)
- ➤運営する機関 → CMS・FDA・CDCの3連邦機関(CMS単独ではない)
- ➤対象 → 人体検体を扱う全米の臨床検査室。検査は複雑度で3段階に分類
- ➤日本では → CLIAと同一の証明書制度はないが、医療法等に基づく検体検査の精度管理基準があり、ISO 15189は任意の第三者認定として利用される
- ➤大切な限界 → CLIAは「分析の質」を保証するが、結果の「臨床的な意味」までは保証しない
🏛 CLIA(米国臨床検査室改善法)の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 読み方・別名 | CLIA(一般に「シー・エル・アイ・エー」)/CLIA法/臨床検査室改善法/CLIA’88。同じ綴りで「化学発光免疫測定法」を指す別の使い方もある |
| 正式名称 | Clinical Laboratory Improvement Amendments of 1988(1988年臨床検査室改善法)[1] |
| 法的根拠 | 法律:42 U.S.C. 263a/施行規則:42 CFR Part 493[1][2] |
| 制定・施行 | 1988年に制定。最終規則は1992年に公布され、1994年まで段階的に施行[3] |
| 運営機関 | CMS・FDA・CDCの3連邦機関が役割を分担[2][3] |
| 対象 | 人体由来の検体を、診断・予防・治療・健康評価の目的で検査する全米の施設(一部例外あり)[3] |
| 有効期間 | すべてのCLIA証明書は発行から2年間有効(更新制)[4] |
※本記事は一般の方と検査・遺伝診療に関わる方の両方に向けた用語解説です。特定の検査を勧めるものではありません。

CLIAには、米国の臨床検査室の品質基準を定める制度と、抗原抗体反応を化学発光で測定する免疫測定法という異なる2つの意味があります。本記事では主に制度としてのCLIAを解説します。
1. CLIAとは ─ 「制度」と「測定法」の2つの意味
最初に、この記事でいちばん大切な点をはっきりさせておきます。CLIAという略語は、文脈によって2つのまったく別のものを指します。
💡 CLIAの2つの意味
①米国臨床検査室改善法(本記事の主題):Clinical Laboratory Improvement Amendments of 1988。米国内の臨床検査室が守るべき品質基準を定めた連邦法・制度です。
②化学発光免疫測定法:Chemiluminescence Immunoassay。血液検査などで抗原・抗体の量を測る「測定方法」の名前です。健康診断や検査結果の紙で「CLIA」「CLIA法」と書かれている場合は、多くがこちらの測定法を指します(詳しくはFAQで解説します)。
この2つは、名前が同じだけで、内容はまったく別物です。以下ではまず、制度としてのCLIAを見ていきます。制度としてのCLIAをひとことで言うと、「人体から採取した検体(血液・尿・組織など)を扱う臨床検査室が、正確で信頼できる結果を出せるよう、米国が全国一律の品質基準を法律で定めた仕組み」です。1988年に連邦法として成立し、その施行規則は連邦規則集の42 CFR Part 493にまとめられています[1]。米国内で人体検体を検査する検査室は、原則としてこの制度に基づく証明書(CLIA certificate)を取得してからでなければ、検体を受け付けて検査を行うことができません[2]。
なぜこの制度が重要なのでしょうか。検査結果は、医師が病気を見つけたり、治療方針を決めたりするための土台になります。もし検査室ごとに精度がばらばらであれば、同じ検体でも結果が食い違い、患者さんの不利益に直結します。CLIAは、こうした事態を防ぐために、検査室の設備・人員の資格・精度管理・技能試験(外部評価)といった条件を全国で標準化しました。日本のクリニックや検査会社の案内で「米国CLIA認証ラボ」という表現が使われるのは、この米国の品質基準を満たしていることを示すためです。
2. CLIA法の基礎 ─ いつ・何のために・誰が運営しているのか
結論から言うと、CLIAは1988年に制定された米国の連邦法で、目的は臨床検査の質の保証、そして運営はCMS・FDA・CDCの3つの連邦機関が分担しています。ここは、日本語の解説記事でしばしば誤解される部分なので、順に整理します。
制定の経緯 ─ CLIA’67からCLIA’88へ
米国では1967年に前身となる臨床検査規制(しばしばCLIA’67と呼ばれます)がありましたが、対象が限られていました。1988年、これを大きく拡張し、人体検体を扱うほぼすべての臨床検査室を対象とする法律として成立したのが、現在のCLIA(CLIA’88)です。法律そのものは公衆衛生法(Public Health Service Act)の改正として位置づけられ、具体的な基準を定めた最終規則は1992年に公布され、1994年まで段階的に施行されました。その後も1993年・1995年・2003年などに改正が重ねられ、直近では2023年12月に費用に関する規則が更新されています[3][6]。「CLIA’88」という呼び名は、この1988年の法律に由来する正式な通称です。
目的 ─ 検査の質と、公費支払いの条件
CLIAの目的は2つの側面から理解できます。ひとつは検査の質そのものの保証で、正確・信頼できる・適時な検査結果を確保することです。もうひとつは公費(メディケア・メディケイド)支払いの条件としての側面です。米国の公的医療保険で検査費用を請求するには、適切なCLIA証明書を保有していることが前提になります。有効な証明書なしに人体検体を検査することは連邦法違反にあたり、罰則や公的保険からの除外の対象になり得ます[4]。
運営 ─ CMS・FDA・CDCの3機関分担
⚠️ よくある誤解:CLIAはCMS「だけ」が運営している?
「CLIAはCMSが管理している」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。CLIAプログラムは、CMS・FDA・CDCの3つの連邦機関が役割を分担して運営しています[2]。CMSが中心的な事務局であることは確かですが、検査の複雑度分類や科学的支援は別の機関が担っています。
3機関の役割は次のとおりです。CMS(メディケア・メディケイドサービスセンター)は、証明書の発行、料金の徴収、査察(inspection)と法令遵守の執行、民間の認定機関や州の適用除外の承認、技能試験(Proficiency Testing)の監督、規則・ガイダンスの公布を担います。FDA(食品医薬品局)は、個々の検査を複雑度(waived/moderate/high)に分類し、CLIA適用除外(waiver)の申請を審査します。CDC(疾病対策センター)は、研究・技術支援、技術基準やガイドラインの策定、そしてCLIAC(臨床検査改善諮問委員会)の運営を担います[2][3]。1つの制度を3機関が分担しているという構造を押さえておくと、CLIAをめぐる情報が整理しやすくなります。
3. 対象と検査の複雑度分類 ─ Waived/Moderate/High
CLIAの対象は、人体由来の検体を、診断・予防・治療・健康評価の目的で検査する全米の施設・拠点です。血液・尿・組織・体液などを扱う臨床検査室、病院検査室、開業医の院内検査、参照ラボ、緊急診療施設などが幅広く含まれます[3]。
ただし、いくつかの例外があります。CDCは、①SAMHSA(薬物乱用・精神衛生管理庁)認証機関による雇用関連の薬物検査、②法医学(犯罪捜査)目的の検査、③患者個別の結果を報告しない研究・サーベイランス検査(結果が診断・治療の判断に使われない場合)などをCLIAの適用対象外として挙げています[3]。元の記事にあった「一部の検査を除く」という表現は、具体的にはこうした例外を指します。
検査の複雑度は3段階に分けられる
CLIAでは、検査そのものを複雑度(complexity)によって3段階に分類し、複雑度が高いほど厳しい要件を課します。この分類はFDAが個々の検査ごとに割り当てます[2]。
🔬 検査の複雑度3分類
| 複雑度 | 内容の目安 |
|---|---|
| Waived (免除) |
手順が単純で、製造元の説明どおりに行えば正確な結果が得られると判断された検査。簡易な検査キットなどが該当 |
| Moderate complexity (中複雑度) |
一定の手技・判断を要する検査。医師等が行う特定の顕微鏡検査(PPM)もこの区分に含まれる |
| High complexity (高複雑度) |
高度な手技・判断・精度管理を要する検査。遺伝子関連検査の多くがここに分類される |
※複雑度が上がるほど、検査室の人員資格・精度管理・技能試験などの要件が厳しくなります。
遺伝子関連検査はほとんどがhigh complexity
臨床遺伝の立場から特に重要なのは、遺伝子関連検査の多くがhigh complexity(高複雑度)に分類されるという点です。高複雑度検査には、知識・訓練・経験、試薬や材料の準備、精度管理や技能試験の構成、結果の解釈と判断など、42 CFR Part 493が定める厳しい要件が課されます。
この「高複雑度」という位置づけは、専門性の要求という形でも現れます。高複雑度検査を統括する検査室長(laboratory director)の資格要件では、化学・物理・生物・臨床検査科学の博士号に加え、HHS(米国保健福祉省)が承認する専門委員会の認定が求められます。その承認委員会のなかには、ABMGG(米国医学遺伝・ゲノム学委員会)も含まれています[5]。遺伝子検査が、制度のうえでも高度な専門性を要する領域として扱われていることの一例です。
4. CLIA証明書の種類と取得の流れ
検査室は、行う検査の複雑度に応じて証明書(CLIA certificate)を取得します。証明書には主に次の種類があります[4]。
📄 CLIA証明書の主な種類
| 証明書 | 対象 |
|---|---|
| Certificate of Waiver(CoW) | 免除(waived)検査のみを行う検査室 |
| PPM(医師実施顕微鏡検査) | 医師等が診察時に行う特定の顕微鏡検査(中複雑度の一部) |
| Certificate of Compliance(CoC) | 査察で適合が確認された検査室(中・高複雑度を含む) |
| Certificate of Accreditation(CoA) | CMS承認の認定機関(CAP・The Joint Commission・COLA等)の認定を受けた検査室 |
| Certificate of Registration(CoR) | 初回査察までの暫定証明書。CoC/CoAを目指す検査室が、査察前に検査を行うために交付される |
※CMSの案内では主要な4種類(CoW・PPM・CoC・CoA)として整理されることが多く、CoRは初回査察までの暫定的な位置づけです。
中・高複雑度の検査を行う検査室の取得の流れは、おおむね次のようになります。まず申請書(CMS-116)を提出し、査察までの暫定として登録証明書(CoR)が交付されます。査察で適合が確認されると、正式なCoC(またはCoA)が交付され、以後は2年ごとに更新していきます[4]。
証明書はすべて発行から2年間有効で、更新のたびに証明書料や適合(査察)料を支払います。費用は証明書の種類や検査の数・専門分野によって幅があり(たとえば免除証明書は数百ドル規模、高複雑度の検査室ではより高額)、年や州によっても変動します[4]。金額の詳細は、CMSや州機関の最新の料金表で確認する必要があります。
5. CLIA・CAP・ISO 15189の違い
検査室の品質をめぐっては、CLIAのほかにCAPやISO 15189という言葉もよく登場します。これらは性格が異なるため、整理しておきましょう。結論を先に言うと、CLIAは連邦法(強制)、CAPは学会による認定(任意)、ISO 15189は国際規格です。
⚖️ CLIA・CAP・ISO 15189の比較
| 項目 | CLIA | CAP | ISO 15189 |
|---|---|---|---|
| 性格 | 米国連邦法・制度 | 学会による認定プログラム | 臨床検査室の国際規格 |
| 主体 | CMS・FDA・CDC | 米国病理学会(College of American Pathologists) | ISO(各国の認定機関が審査) |
| 強制/任意 | 強制(米国内で検査するには必須) | 任意 | 任意 |
| 関係 | 基本の枠組み | CMS承認の認定機関。CAP認定でCoAが得られる | 国際的な質の指標。国により推進 |
重要なのは、CAPはCLIAと対立するものではなく、CLIAの枠組みの中で機能しているという点です。CMSは、CAP・The Joint Commission・COLAといった民間の認定機関(Accreditation Organization)を承認しており、これらの認定を受けた検査室にはCoA(Certificate of Accreditation)が交付されます[4]。つまり、CAPの認定を通じてCLIAの要件を満たす、という関係です。一方、ISO 15189は臨床検査室の能力に関する国際規格で、米国のCLIAとは別の体系ですが、世界的な質の指標として各国で活用されています。
6. 日本におけるCLIA ─ 相当する法律はあるか
結論から言うと、日本には、米国CLIAと同一の、臨床検査室を全国一律の証明書制度で規制する仕組みはありません。ただし、日本に検体検査の精度管理に関する法的規制がないという意味ではありません。2018年施行の改正医療法等により、医療機関や衛生検査所等における検体検査について、精度の確保に係る責任者、標準作業書、作業日誌・台帳、遺伝子関連・染色体検査における内部精度管理や外部精度管理等の基準が整備されています[8]。CLIAは米国の連邦制度ですが、米国外の検査室でも、米国から紹介された人体検体を検査して結果を米国へ返すなど一定の条件を満たす国際検査室はCLIA認証の対象となり得ます[4]。
日本では、法令に基づく検体検査の精度管理基準に加えて、ISO 15189による第三者認定も検査室の品質・能力を示す仕組みとして利用されています。日本適合性認定協会(JAB)はISO 15189に基づく臨床検査室認定を行っています。したがって、CLIAとISO 15189は単純な「米国版/日本版」の関係ではなく、法的な位置づけや認定の仕組みが異なります。
💡 混同しやすい点:JABはCLIAを認定しているわけではない
日本適合性認定協会(JAB)が行っているのはISO 15189の認定であって、米国のCLIA認証そのものではありません。「日本適合性認定協会が審査・認定を行っている」という説明を、CLIAの認定と読み替えないよう注意が必要です。CLIAの証明書を発行するのは、あくまで米国のCMS(およびCMS承認の認定機関)です。
近年は、日本のゲノム医療に関わる検査ラボが、国際的な品質水準を示すためにCLIAの登録やCAPの認定を任意で取得する動きもみられます。これは、全ゲノム解析などで国際共同研究にも対応できる、均一で高品質なデータを求める流れと関係しています。ただし、どの検査室がどの認定を保有しているかは各機関の公表情報で個別に確認する必要があり、この記事で特定の施設名を断定的に挙げることはしません。
7. CLIA認証の利点と限界
CLIAという制度には明確な利点がありますが、同時に、見落とされがちな重要な限界もあります。ここは、検査結果を正しく受け止めるうえで最も大切な部分です。
利点 ─ 質の底上げと信頼の担保
CLIAの利点は、全国一律の品質基準による検査結果の信頼性向上にあります。設備・人員資格・精度管理・技能試験(外部評価)といった条件を標準化することで、検査室ごとのばらつきを抑え、患者や医療提供者が結果を安心して使えるようにします。また、CLIA認証は検査室が連邦基準に準拠していることの公的な裏づけとなり、国際的にも品質の指標として認識されています。「米国CLIA認証ラボ」という表現に一定の信頼が置かれるのは、こうした背景があるためです。
限界 ─ 「分析の質」と「臨床的な意味」は別
⚠️ 最も重要な注意点
CLIAが保証するのは、主に分析的妥当性(analytical validity)=「測定が正確に行われているか」です。臨床的妥当性(clinical validity)=「その結果が病気の有無をどれだけ言い当てるか」や、臨床的有用性=「結果が実際の診療にどれだけ役立つか」までを、CLIAが十分に担保しているわけではありません。
検査の評価には、一般に「分析的妥当性・臨床的妥当性・臨床的有用性・倫理的/法的/社会的課題(ACCEと呼ばれる枠組み)」という複数の観点があります。CLIAは主に分析的な側面を規制するもので、とくに新しい検査や発症前の検査では、臨床的妥当性を裏づけるデータが検査の開発後もしばらく不十分なことがある、という論点が以前から議論されてきました。米国のSACGHS(遺伝子検査の監督のあり方を検討した諮問委員会)の報告などでも、この点は課題として取り上げられています。これは「確立した結論」ではなく現在も議論が続くテーマですが、CLIA認証があることと、その検査結果が個々の患者にとってどんな意味を持つかは、分けて考える必要がある、という点は押さえておく価値があります。
8. CLIA認証と遺伝子検査・NIPT ─ 患者にとっての意味
NIPTやがんゲノム検査を検討していると、「米国CLIA認証を取得したラボで解析」という説明を見かけることがあります。ここまでの内容を踏まえると、この表現が意味するのは「その検査室が、米国の品質基準に基づいて分析の質を管理している」ということです。海外の検査会社に解析を委託するNIPTなどでは、検査室の質を示す指標としてCLIA認証やCAP認定が挙げられることがあります。
ただし、前章の限界がここでも当てはまります。CLIA認証は「測定が正確に行われる」ことの裏づけであって、「結果が確実」「結果の意味が一義的に決まる」ことを保証するものではありません。たとえばNIPTは非確定的検査であり、感度・特異度が高くても、陽性的中率は対象集団の有病率などによって変わります。集団全体のデータから、そのまま個人のリスクを断定することはできません。検査室の品質と、結果をどう解釈しどう行動するかは、別々に考える必要があります。
🩺 院長コラム【「認証がある」と「結果の意味がわかる」は違う】
医学的には、検査室の品質保証と、結果の臨床的な解釈は、別々の段階として理解することが重要です。CLIA認証は「その検査室が正確に測定できる体制を持っている」ことを示す、いわば土台の部分です。しかし、出てきた数値や判定が、その人にとって何を意味するのか──どのくらいの確からしさなのか、次にどんな選択肢があるのか──は、検査そのものの認証だけでは決まりません。
この結果を解釈するときに大切なのは、検査で何が分かり、何が分からないのかを、対象となる方の状況に合わせて丁寧に確認することです。遺伝医学では、この橋渡しを担うのが遺伝カウンセリングです。認証という「質の担保」の先に、結果の意味を一緒に考える段階がある、という順序を知っておくと、検査情報に振り回されにくくなります。
当院では、遺伝子や染色体に関わる検査の前後で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行っています。話し合う内容は、検査で何が分かり何が分からないのか、見つかった結果がご本人やご家族にとってどういう意味を持つのか、そしてどのような選択肢があるのか、といった点です。検査を受けるかどうかを含め、決めるのはご本人であり、私たちは中立の立場で判断材料を整理する役割を担います。
🧬 遺伝子検査・出生前検査についてのご相談
遺伝子検査や出生前検査そのものについて相談したい方は、
臨床遺伝専門医が在籍するミネルバクリニックの各ページをご覧ください。
まとめ ─ CLIAは「質の土台」、意味づけは別の段階
CLIAという略語には、米国臨床検査室改善法(制度)と化学発光免疫測定法(測定法)という2つの意味があります。この記事の主題である制度としてのCLIAは、1988年に成立した米国の連邦法で、人体検体を扱う臨床検査の質を全国一律の基準で保証する仕組みです。運営はCMS・FDA・CDCの3機関が分担し、検査は複雑度で3段階に分けられ、遺伝子関連検査の多くは高複雑度に分類されます。証明書は2年ごとに更新され、CAPやISO 15189とは強制/任意・主体の点で性格が異なります。日本にはCLIAと同一の証明書制度はありませんが、医療法等に基づく検体検査の精度管理基準があり、ISO 15189による第三者認定も利用されています。
そして最も大切なのは、CLIAが保証するのは主に「分析の質」であり、結果の「臨床的な意味」までを保証するものではないという点です。「米国CLIA認証ラボ」という表現は検査室の質を示す有用な情報ですが、それだけで結果が確実になるわけではありません。認証という土台の先に、結果の意味を一人ひとりの状況に合わせて考える段階がある──この順序を知っておくことが、検査情報と上手に付き合う第一歩になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. CLIAとは何ですか?
CLIAには2つの意味があります。①米国臨床検査室改善法(Clinical Laboratory Improvement Amendments of 1988)=人体由来の検体を扱う臨床検査の質を、米国が全国一律の基準で保証する連邦法・制度。②化学発光免疫測定法=血液検査などで使われる測定方法。一般に「CLIA法とは」「CLIA認証」と語られる場合の多くは①の制度を指します。①は1988年に制定され、CMS・FDA・CDCの3機関が運営し、米国内で人体検体を検査するほぼすべての検査室が対象です。
Q2. CLIA法とCLIA認証は同じですか?
ほぼ同じ文脈で使われますが、厳密には少し異なります。「CLIA法(CLIA)」は制度・法律そのものを指し、「CLIA認証(CLIA certificate)」は、その制度のもとで個々の検査室が取得する証明書を指します。つまり「CLIAという法律の枠組みの中で、検査室がCLIA認証(証明書)を受ける」という関係です。証明書には複雑度に応じた種類があり、いずれも2年ごとの更新制です。
Q3. CLIAとCAPの違いは何ですか?
CLIAは米国の連邦法(強制)で、米国内で人体検体を検査するには必須です。一方CAP(米国病理学会)は学会による認定プログラム(任意)です。両者は対立するものではなく、CAPはCMSが承認した認定機関のひとつで、CAPの認定を受けた検査室にはCLIAのCertificate of Accreditation(CoA)が交付されます。つまりCAP認定を通じてCLIAの要件を満たす、という関係です。ISO 15189はこれらとは別の国際規格です。
Q4. 日本にCLIAはありますか?
日本には、米国CLIAと同一の、臨床検査室を全国一律の証明書制度で規制する仕組みはありません。ただし、日本では医療法・臨床検査技師等に関する法律などに基づき、医療機関や衛生検査所等の検体検査について精度管理の基準が定められています。これに加えて、ISO 15189による第三者認定も検査室の品質・能力を示す仕組みとして利用されています。JABが行うのはISO 15189の認定であり、CLIA認証そのものではありません。
Q5. 血液検査の結果で見る「CLIA」とは何ですか?
健康診断や検査結果で「CLIA」「CLIA法」と書かれている場合、多くは制度ではなく化学発光免疫測定法(Chemiluminescence Immunoassay)という測定方法を指します。抗原と抗体の反応を利用し、発光の強さから物質の量を測る方法です。よく似た名前にCLEIA(化学発光酵素免疫測定法:酵素標識と発光基質を使う)やECLIA(電気化学発光免疫測定法:ルテニウム錯体を電気で発光させる)があり、標識や発光のさせ方が異なります。CLIAやECLIAはELISAより高感度で測定時間が短いのが特徴です。これは制度としてのCLIA法とはまったく別のものです。なお、CEAやBNPなど個別の検査項目の基準値は検査項目ごとに異なるため、結果の見方は検査を受けた医療機関にご確認ください。
Q6. CLIA認証があれば検査結果は正確・確実ですか?
CLIA認証は、その検査室が正確に測定できる体制(分析的妥当性)を持っていることの裏づけです。しかし、結果が病気をどれだけ言い当てるか(臨床的妥当性)や、結果の意味までを保証するものではありません。たとえばNIPTのような非確定的検査では、感度・特異度が高くても陽性的中率は対象集団によって変わり、集団のデータから個人のリスクを断定することはできません。検査室の品質と、結果の解釈は別々に考える必要があり、結果の意味づけには遺伝カウンセリングなどの専門的な確認が役立ちます。
参考文献
- [1] eCFR. 42 CFR Part 493 — Laboratory Requirements. Office of the Federal Register. [eCFR]
- [2] U.S. Food and Drug Administration (FDA). Clinical Laboratory Improvement Amendments (CLIA). [FDA]
- [3] Centers for Disease Control and Prevention (CDC). About CLIA. [CDC]
- [4] Centers for Medicare & Medicaid Services (CMS). Apply for a CLIA Certificate. [CMS PDF]
- [5] Centers for Medicare & Medicaid Services (CMS). CLIA Accreditation, Exemptions and Testing(高複雑度検査室長のHHS承認委員会にABMGGを含む). [CMS]
- [6] Federal Register. Clinical Laboratory Improvement Amendments of 1988 (CLIA) Fees; … Final Rule. 2023-12-28. [Federal Register]
- [7] Electrochemiluminescence Method. StatPearls(NCBI Bookshelf).(化学発光免疫測定法・ECLIAの原理) [StatPearls NBK594228]
- [8] 厚生労働省. 検体検査について(改正医療法〔検体検査関連〕、検体検査の精度の確保に係る基準). [厚生労働省]



