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CD分子の全貌: 基礎から応用まで

この記事では、CD分子の基本的な特性、分類方法、および生物学的な機能について詳しく解説します。免疫系の抗原識別、細胞間通信、細胞の分化と発達における役割を通じて、CD分子がいかに生命科学のさまざまな分野で重要な役割を果たしているかを探ります。

第1章 CD分子とは

CD分子の定義と概要

CD分子、またはクラスター・オブ・ディファレンティエーション(Cluster of Differentiation)は、細胞表面に存在する分子(表面抗原)に結合するモノクローナル抗体を反応特異性に基づいて国際的に分類整理したものです[17]。これらの分子は、主にヒトの白血球を含むさまざまな細胞表面に存在し、免疫系細胞に発現する細胞表面分子として、免疫細胞間のコミュニケーション、微小環境の感知、獲得免疫に重要な役割を果たします[9]。CD分子は、細胞の種類、成熟段階、機能状態を識別するために用いられ、フローサイトメトリーによるイムノフェノタイピングで広く使用されています。

CD分子の歴史は、1982年にパリで開催された初のヒト白血球分化抗原に関する国際ワークショップ(HLDA)に遡ります。このワークショップでは、WHO(世界保健機構)の監修のもと、造血系細胞に対するモノクローナル抗体を反応特異性に基づくクラスターに分類し、それぞれにCD(Cluster Designation)番号を付与しました[10]。この分類は、当初は白血球とその前駆細胞の細胞表面抗原に限定されていましたが、現在では血小板、赤血球、血管内皮細胞などの分化抗原にも拡大されています。また、細胞内の抗原にも適用され始めています[10]。

CD分類の目的は、細胞表面や細胞内抗原(分子)に対するモノクローナル抗体を反応特異性に基づいて国際的に分類整理することで、複数の名前を持つ種々の分化抗原を分子レベルで規定するためのコード番号表として機能します[18]。これにより、免疫系の研究や臨床診断において、細胞の特定や機能の解析が容易になりました。

[9] www.cosmobio.co.jp/product/detail/cd-cluster-of-differentiation-cell-surface-markers-abd.asp?entry_id=39689
[10] www.beckman.jp/resources/techniques-and-methods/cytometrydotcom/data/cytoinfo/cdchart-des
[17] webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1543102947
[18] www.jstage.jst.go.jp/article/jjph1987/20/3/20_3_150/_pdf/-char/ja

CD分子の分類と命名法

CD分子、または分化抗原(Cluster of Differentiation)は、主にヒトの白血球を含む様々な細胞表面に存在する分子であり、モノクローナル抗体が結合する表面抗原に対して国際的に統一された分類法です[10]. CD分類は、免疫系細胞の識別、分類、研究において重要な役割を果たしています[7].

● CD分類の原理とシステム

CD分類の原理は、細胞表面に発現する特定の分子に対して、2つ以上のモノクローナル抗体が認識することを基準にしています. これらの分子は、免疫細胞間のコミュニケーションや微小環境の感知、獲得免疫などに重要な役割を果たしており、リンパ球の成熟過程で様々なCD抗原を発現し、一部は失われ、他は抗原提示細胞(APC)や免疫系の他の細胞との相互作用によって獲得されます[7].

CD分類のシステムは、国際会議HLDA(Human Leukocyte Differentiation Antigens)で評価された結果に基づいており、世界共通のナンバリングが行われています[2]. CD番号は、細胞表面分子を認識するモノクローナル抗体グループと分子自体の両方を示しています[7].

● 主要なCD分子の例とその機能

– CD3: T細胞に特異的なマーカーであり、T細胞受容体(TCR)と共に発現し、T細胞の活性化に関与します[2].
– CD4: ヘルパーT細胞に発現し、免疫応答の調節に重要な役割を果たします. CD4はHIVの主要な受容体としても知られています[2].
– CD8: 細胞傷害性T細胞に発現し、感染細胞や腫瘍細胞の除去に関与します[2].
– CD19: B細胞に特異的で、B細胞の発達と活性化に関与しています[2].
– CD34: 造血幹細胞に発現し、細胞の未分化状態を示すマーカーとして用いられます[2].
– CD45: 白血球共通抗原として知られ、細胞の活性化状態やサブセットの識別に用いられます[12].

これらのCD分子は、フローサイトメトリーによるイムノフェノタイピングで広く用いられ、白血球集団、亜集団、分化段階の同定や特徴付けに不可欠です[7]. また、CD分子は疾患の診断や治療のモニタリング、新しい治療法の開発においても重要な役割を担っています.

[2] www.beckman.jp/resources/techniques-and-methods/cytometrydotcom/fcm
[7] www.cosmobio.co.jp/product/detail/cd-cluster-of-differentiation-cell-surface-markers-abd.asp?entry_id=39689
[10] ja.wikipedia.org/wiki/CD%E5%88%86%E9%A1%9E
[12] www.jstage.jst.go.jp/article/jsci1978/15/1/15_1_1/_pdf

第2章 CD分子の生物学的機能

免疫系における役割

● 抗原提示と免疫応答の調節

免疫系において、抗原提示は免疫応答の開始点となります。抗原提示細胞(APC)は、体内に侵入した病原体から抗原を取り込み、それを加工して自己の細胞表面に提示します。この過程で、主に樹状細胞やマクロファージが関与しています。提示された抗原は、T細胞受容体(TCR)を持つT細胞によって認識され、T細胞の活性化を引き起こします[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20]。

T細胞は、その機能によってヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、キラーT細胞などに分類されます。ヘルパーT細胞は、免疫応答を促進する役割を持ち、サイトカインの産生を通じてB細胞の抗体産生を促したり、他の免疫細胞を活性化させたりします。キラーT細胞は、病原体に感染した細胞やがん細胞を直接殺す役割を担います。サプレッサーT細胞(現在では主に制御性T細胞と呼ばれる)は、免疫反応を抑制し、自己免疫疾患などの過剰な免疫反応を防ぐ役割を果たします[20]。

● T細胞とB細胞の識別

T細胞とB細胞は、それぞれ異なるメカニズムで抗原を認識します。T細胞は、抗原提示細胞が提示するMHC分子に結合した抗原ペプチドをTCRを介して認識します。この過程では、抗原はMHC分子とセットで認識されるため、T細胞は抗原を間接的に認識します[19]。

一方、B細胞は、B細胞受容体(BCR)を介して抗原を直接認識します。B細胞が抗原に特異的な抗体を産生するためには、通常、ヘルパーT細胞の助けが必要です。ヘルパーT細胞が活性化されると、サイトカインを産生し、B細胞に抗体産生を促す刺激を与えます。この相互作用により、B細胞は特定の抗原に対する抗体を産生し、体液性免疫応答を担います[13][14][15][16][17][18][19]。

抗原提示とT細胞、B細胞の活性化は、免疫応答の調節において中心的な役割を果たします。これにより、免疫系は特定の病原体に対して特異的かつ効果的な応答を行うことができます。また、免疫応答の適切な調節は、自己組織への攻撃を防ぎ、自己免疫疾患の発症を抑制するためにも重要です[20]。

[1] www.jst.go.jp/crest/immunesystem/result/03.html
[2] www.ifrec.osaka-u.ac.jp/jpn/research/upload_img/%E6%96%89%E8%97%A4%E3%83%BB%E6%A8%AA%E9%A0%88%E8%B3%80_JEM%E8%A7%A3%E8%AA%AC.pdf
[3] www.pharm.okayama-u.ac.jp/lab/bunsei/research/dc/
[4] www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/12-%E5%85%8D%E7%96%AB%E5%AD%A6%EF%BC%9B%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%B3%BB%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6/%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%B3%BB%E3%82%92%E6%A7%8B%E6%88%90%E3%81%99%E3%82%8B%E7%B4%B0%E8%83%9E
[5] ruo.mbl.co.jp/bio/product/allergy-Immunology/article/Natural-immunity-Acquid-immunity.html
[6] www.med.keio.ac.jp/features/2021/8/8-81824/index.html
[7] www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/karada/karada023.html
[8] www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/15-%E5%85%8D%E7%96%AB%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%B3%BB%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6/%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%B3%BB%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81
[9] www.amed.go.jp/news/release_20210224.html
[10] www.jbpo.or.jp/med/jb_square/autoimmune/immunology/im06/01.php
[11] immunotherapy-uth.jp/tumor_immunity/index01/
[12] www.jst.go.jp/seika/bt29-30.html
[13] www.jst.go.jp/crest/immunesystem/result/02.html
[14] www.hemapedia.jp/hemapedia/basic-immunity-course/season1-lesson03
[15] www.nhk.or.jp/kokokoza/seibutsukiso/assets/memo/memo_0000008781.pdf
[16] kibou-mori.jp/myblog/%E7%8D%B2%E5%BE%97%E5%85%8D%E7%96%AB%E3%81%AE%E4%B8%BB%E5%BD%B9%EF%BC%9At%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
[17] www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/antibody/antibodyp03.html
[18] kawamoto.frontier.kyoto-u.ac.jp/public/public_007.html
[19] kawamoto.frontier.kyoto-u.ac.jp/public/public_003.html
[20] jata.or.jp/rit/rj/sugawara.htm

細胞間通信とシグナル伝達

細胞間通信は、生物体内の細胞が情報を共有し、協調して機能するための基本的なプロセスです。このプロセスは、細胞外のシグナル分子が細胞表面の受容体に結合し、細胞内のシグナル伝達経路を活性化することによって行われます。CD分子(クラスター・オブ・ディファレンシエーション分子)は、細胞表面に存在する分子の一群であり、細胞間相互作用において重要な役割を果たします。これらの分子は、免疫応答、細胞の識別、細胞接着、およびシグナル伝達に関与しています。

● CD分子を介した細胞間相互作用

CD分子は、特定の細胞タイプや細胞の活性化状態を識別するために用いられます。例えば、CD4分子は主にヘルパーT細胞の表面に、CD8分子は細胞傷害性T細胞の表面に存在します。これらの分子は、細胞間相互作用において重要な役割を果たし、免疫応答の調節に関与しています[15]。

● シグナル伝達経路への影響

細胞間通信において、CD分子を介した相互作用は、細胞内のシグナル伝達経路の活性化につながります。例えば、CD40分子とそのリガンドであるCD154の相互作用は、T細胞とB細胞間の通信において重要であり、B細胞の活性化と抗体産生を促進します[15]。また、CD44分子は細胞外マトリックスとの相互作用に関与し、細胞の運動性や細胞接着に影響を与えることが示されています[17]。

細胞シグナル伝達は、細胞外のシグナルが細胞内での変化に翻訳されるプロセスであり、細胞間通信において中心的な役割を果たします。このプロセスには、様々なシグナル伝達経路が関与しており、細胞の成長、分化、アポトーシスなどの重要な細胞プロセスを制御します[14][16]。

細胞間通信とシグナル伝達の研究は、免疫応答、がんの進行、および多くの疾患の理解と治療において重要です。CD分子を介した細胞間相互作用とシグナル伝達経路の詳細な解明は、新たな治療標的の同定や効果的な治療法の開発に寄与する可能性があります。

[14] www.sigmaaldrich.com/US/en/applications/research-disease-areas/cell-signaling
[15] www.jstage.jst.go.jp/article/jat1973/25/1-2/25_1-2_53/_pdf/-char/ja
[16] jp.sinobiological.com/research/signal-transduction
[17] kumadai.repo.nii.ac.jp/record/17022/files/22-1489.pdf

第3章 CD分子の分類と特徴

主要なCD分子の群

● CD4

CD4は主にヘルパーT細胞の表面に発現する糖タンパク質で、免疫系の重要な役割を果たします。CD4分子は、ヘルパーT細胞が抗原提示細胞から提示される抗原を認識する際に、MHCクラスII分子と相互作用することで、T細胞受容体(TCR)のシグナル伝達を補助します[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20]。CD4+ T細胞は、サイトカインの産生を通じて他の免疫細胞を活性化し、免疫応答を調節する役割を担います。また、CD4はHIVの主要な受容体としても知られており、HIVがT細胞に侵入する際のターゲットとなります[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20]。

● CD8

CD8は主にサイトトキシックT細胞(CTL)の表面に発現する糖タンパク質で、CD4と同様にTCRのシグナル伝達を補助しますが、MHCクラスI分子と相互作用します[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20]。CD8+ T細胞は、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を直接攻撃し、細胞傷害性免疫応答を担います。CD8分子は、感染細胞や異常細胞を認識し、これらを排除するために重要な役割を果たします[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20]。

● CD19

CD19はB細胞の発達と活性化に関与する表面分子で、B細胞特有のマーカーとして知られています[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20]。CD19はB細胞受容体(BCR)と共にシグナル伝達複合体を形成し、B細胞の抗原に対する感受性を高めることで、B細胞の成熟と抗体産生を促進します。CD19は、B細胞が抗体を産生し、体液性免疫応答を行う上で中心的な役割を担います[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20]。

これらのCD分子は、免疫応答の調節、病原体の排除、および免疫記憶の形成において、それぞれ独自の役割を果たします。また、これらの分子は、免疫不全症、自己免疫疾患、感染症、およびがんなどの疾患の診断と治療においても重要なバイオマーカーとして利用されています[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20]。

[1] www.jstage.jst.go.jp/article/naika/97/7/97_1553/_pdf
[2] www.bc-cytometry.com/PDF/DataSheet/6607013.pdf
[3] media.beckman.com/-/media/japan-team/pdfs/app-note/a_ap_flow_standard_jp.pdf?country=US
[4] www.okayama-u.ac.jp/user/kensa/kensa/smeneki/tb.htm
[5] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8607033/
[6] www.liankebio.com/lymphocyte-detection-1880.html
[7] www.bdbiosciences.com/zh-cn/learn/research/immunology
[8] www.bdbiosciences.com/zh-cn/learn/research/immunology/t-cells
[9] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10408852/
[10] www.ensuiko.co.jp/product/cd/cd02.html
[11] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2816716/
[12] www.nisshoku.co.jp/product/study-cd.html
[13] www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/7/100_1807/_pdf
[14] www.cosmobio.co.jp/product/detail/cd-cluster-of-differentiation-cell-surface-markers-abd.asp?entry_id=39689
[15] www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/harada/jp/research/001-1.html
[16] www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/cell-analysis/cell-analysis-learning-center/immunology-at-work/natural-killer-cell-overview.html
[17] webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.18888/sh.0000002865
[18] cn.sinobiological.com/research/cd-antigens
[19] ja.wikipedia.org/wiki/CD%E5%88%86%E9%A1%9E
[20] www.jstage.jst.go.jp/article/jjph1987/20/3/20_3_150/_pdf/-char/ja

CD分子の超分子複合体の形成と機能

超分子複合体は、複数の分子が非共有結合的な相互作用によって形成される大きな構造体です。これらの複合体は、分子認識、ゲスト分子の取り込み、そして特定の機能の発現において重要な役割を果たします。CD分子、すなわちシクロデキストリン(Cyclodextrin)は、その疎水性の空洞を利用して様々なゲスト分子を取り込み、超分子複合体を形成することが知られています[3][5][16][19][20]。

● 形成メカニズム

シクロデキストリンは、グルコピラノース単位がα-1,4結合によって環状に結合した構造を持ち、α-CD、β-CD、γ-CDといった異なるサイズの環状オリゴ糖が存在します。これらのCD分子は、外部が親水性でありながら内部に疎水性の空洞を持つため、水中で疎水性化合物を包接し、包接錯体を形成します。この包接錯体形成は、疎水作用、ファンデルワールス力、イオン-イオン相互作用、双極子相互作用などによって促進されます[3][5]。

● 機能と応用

シクロデキストリンの超分子複合体は、医薬品への応用(難水溶性医薬品への応用)、食品や化粧品への応用(香気物質の安定化、変質抑制、呈味性の改善)など、幅広い分野で利用されています。また、物理化学的な研究から応用分野まで、CDの研究は多岐にわたって行われています[3][5]。

● 免疫応答における意義

免疫応答においては、超分子複合体が抗原提示や細胞間のシグナル伝達に関与することがあります。例えば、T細胞受容体(TCR)と主要組織適合遺伝子複合体(MHC)との相互作用は、超分子複合体の形成を伴い、T細胞の活性化に至る重要なプロセスです[12][13][14][15]。また、抗体と抗原の結合による免疫複合体の形成は、免疫系における分子認識の一例であり、これも超分子複合体の一種と考えられます[11]。

シクロデキストリンを含む超分子複合体は、免疫系においても機能を発揮する可能性があります。例えば、シクロデキストリンを用いた超分子ネックレスの多機能性が注目されており、低分子系あるいは高分子系製剤素材よりも優れた超分子製剤素材としての可能性が発見されています[1]。これらの超分子複合体は、医薬品の安定化や効果の向上、さらには免疫応答の調節に寄与することが期待されています。

総じて、CD分子の超分子複合体は、その形成メカニズムと多様な機能により、免疫応答を含む多くの生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たす可能性があります。

[3] www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/harada/jp/research/01.html
[5] www.chem-station.com/yukitopics/cyclodextrin.htm
[11] www.cosmobio.co.jp/support/technology/milk-protein/tech_milk_k_02_20050131.asp
[12] jaci.jp/patient/immune-cell/immune-cell-04/
[13] www.hemapedia.jp/hemapedia/basic-immunity-course/season1-lesson03
[14] www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/20171026-2.pdf
[15] jata.or.jp/rit/rj/sugawara.htm

第4章 CD分子の研究と応用

CD分子の超分子複合体の形成と機能

超分子複合体は、複数の分子が非共有結合的な相互作用によって形成される大きな構造体です。これらの複合体は、分子認識、ゲスト分子の包接、および機能性材料の設計など、多岐にわたる分野で研究されています。CD分子、すなわちシクロデキストリン(Cyclodextrin, CD)は、その空洞に様々なゲスト分子を取り込み、包接錯体を形成することで知られています[3][5][6]。

● 形成メカニズム

シクロデキストリンは、グルコピラノース単位からなる環状オリゴ糖であり、α-CD、β-CD、γ-CDといった異なるサイズの空洞を持つ分子が存在します。これらの空洞は外部が親水性でありながら内部は疎水的であるため、水中で疎水性化合物を包接することができます。この包接錯体形成は、疎水作用、ファンデルワールス力、イオン-イオン相互作用、双極子相互作用などによって促進されます[3]。

● 機能と応用

シクロデキストリンの超分子複合体は、医薬品への応用(難水溶性医薬品への応用)、食品および化粧品への応用(香気物質などの揮散し易い成分の安定化、変質抑制、呈味性の改善など)に利用されています[3][5][6]。また、シクロデキストリンは医薬分野で製剤添加剤やDDS(Drug Delivery System)担体としての地位を築いており、その応用範囲は経口投与製剤から注射剤や経皮、経粘膜適用剤などの非経口投与製剤へと拡大しています[1]。

● 免疫応答における意義

免疫応答においては、超分子複合体が重要な役割を果たすことがあります。例えば、抗体と抗原の結合による超分子構造の形成は、免疫系において特異的な抗原認識と応答を引き起こす基本的なメカニズムです[12]。また、CD分子を用いた超分子ネックレスの多機能性に着目されており、従来の低分子系あるいは高分子系製剤素材よりも優れた超分子製剤素材としての可能性が発見されています[1]。

免疫応答における超分子複合体の意義は、特に細胞性免疫において顕著です。T細胞やB細胞は、抗原提示細胞によって提示される抗原との複合体を認識し、それに応じて活性化されます。この過程では、MHC分子とT細胞受容体(TCR)との結合を介した主刺激シグナルと共刺激シグナルが必要であり、これらのシグナルは超分子複合体の形成によって伝達されます[14][15]。

さらに、シクロデキストリンを基盤としたマテリアルの創製は、医薬への応用においても重要です。例えば、疎水性薬物との包接複合体を形成することで、製剤特性の改善や薬物送達の効率化が期待されています[1]。

総じて、CD分子の超分子複合体は、その形成メカニズムと多様な機能により、免疫応答を含む多くの生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たしており、医薬品開発や材料科学などの分野での応用が進められています。

[1] www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/23/7/23_359/_pdf
[3] www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/harada/jp/research/01.html
[5] www.chem-station.com/yukitopics/cyclodextrin.htm
[6] www.ph.sojo-u.ac.jp/~dio/research/
[12] www.cosmobio.co.jp/support/technology/milk-protein/tech_milk_k_02_20050131.asp
[14] www.hemapedia.jp/hemapedia/basic-immunity-course/season1-lesson03
[15] www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/20171026-2.pdf

生化学と分子生物学におけるCD分子の研究

● CD分子の構造解析

CD分子、特にシクロデキストリン(CD)は、グルコピラノース単位がα-1,4結合で繋がれた環状オリゴ糖であり、α-CD、β-CD、γ-CDといった種類が存在します。これらのCD分子は、外部が親水性でありながら内部が疎水的であるため、水中で疎水性化合物を包接する能力を持ちます。この包接能力は、CDの空孔サイズに応じた基質特異性を示し、ホスト-ゲスト化学において重要な役割を果たします[9]。

X線結晶構造解析によると、未修飾CDは比較的対称性の高い構造をしており、広い口側の二級水酸基が分子内で水素結合を形成し、CDの構造を安定化しています。この高い対称性と安定性は、CDをホスト分子として利用する際の大きな利点となります[9][18]。

● CD分子の機能研究

CD分子は、その特異的な包接能力を利用して、医薬品の溶解性向上、食品や化粧品への応用(香気物質の安定化や呈味性の改善など)に広く用いられています。また、生化学や分子生物学の研究においても、CDを用いた超分子合成や、生体内での分子間相互作用の解析に利用されています[9]。

● 遺伝子工学によるCD分子の操作

遺伝子工学技術を用いて、CD分子の構造や機能を操作する研究も進められています。例えば、特定のゲノム遺伝子の発現を光によって制御する技術では、遺伝子工学によって導入されたCD分子が重要な役割を果たします。この技術により、青色光によるDNA組換え反応の制御が可能となり、生体外から非侵襲的に遺伝子発現を誘導することができます[12]。

また、円二色性(CD)スペクトル測定は、タンパク質やペプチドの二次構造解析に広く用いられており、CDスペクトルによる二次構造解析は、タンパク質の構造や機能研究において重要な手法となっています[13][16]。

● 結論

生化学と分子生物学におけるCD分子の研究は、その構造解析から機能研究、さらには遺伝子工学による操作に至るまで、幅広い分野に及んでいます。CD分子の独特な特性を活かした研究は、医薬品開発や生命科学の基礎研究など、多岐にわたる応用が期待されています。

[9] www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/harada/jp/research/01.html
[12] www.kanto.co.jp/dcms_media/other/CT_251_all.pdf
[13] www.chem.kindai.ac.jp/laboratory/phys/class/biophys/CD.htm
[16] www.jasco.co.jp/jpn/technique/applicationdata/CD/210-CD-0018.html
[18] www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/harada/jp/research/01-1.html

第5章 CD分子と疾患治療

CD分子を標的とした治療法

CD分子を標的とした治療法は、がん細胞の特定の表面分子(CD分子)に対して特異的に結合し、がん細胞を攻撃するモノクローナル抗体を用いた治療戦略です。このアプローチは、がん細胞の増殖や生存に重要な役割を果たす特定の分子を標的とすることで、正常細胞への影響を最小限に抑えつつ、がん細胞のみを効果的に攻撃することを目指します。

モノクローナル抗体による治療

モノクローナル抗体は、特定の抗原に対して高い特異性を持つ抗体で、がん治療において重要な役割を果たしています。これらの抗体は、がん細胞の表面に存在する特定のCD分子(分化抗原)に結合し、がん細胞の成長を阻害したり、免疫系を活性化してがん細胞を攻撃したりすることで治療効果を発揮します[12]。

● CD20を標的とした治療

リツキシマブは、CD20というB細胞表面の分化抗原を標的とするモノクローナル抗体で、非ホジキンリンパ腫などのB細胞性のがん治療に用いられます。リツキシマブは、CD20陽性のB細胞に結合し、補体依存性細胞障害(CDC)や抗体依存性細胞介在性細胞障害(ADCC)を介してがん細胞を破壊します[8][11]。

● CD19を標的とした治療

CD19は、B細胞の発達と機能に重要な役割を果たす別の分化抗原です。CD19を標的とするモノクローナル抗体や、CD19を標的とするCAR-T細胞療法は、特に難治性のB細胞性白血病やリンパ腫の治療において有望な成果を示しています。

● CD分子を標的としたその他の治療

CD分子を標的とした治療法は、CD20やCD19以外にも多岐にわたります。例えば、CD30を標的とするブレンツキシマブベドチンは、ホジキンリンパ腫の治療に用いられ、CD38を標的とするダラツムマブは、多発性骨髄腫の治療に用いられます。これらの治療法は、特定のCD分子を高い特異性で標的とすることで、がん細胞を効果的に攻撃し、治療成績の向上を目指しています。

● 結論

CD分子を標的とした治療法は、がん治療において重要な役割を果たしています。モノクローナル抗体を用いた治療は、特定のCD分子に対する高い特異性を持ち、がん細胞を効果的に攻撃することができます。これらの治療法は、がんの種類や患者の状態に応じて選択され、がん治療の選択肢を広げることに貢献しています。

[8] medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/564ebde85595b3d50b796733.html
[11] oncolo.jp/drug/rituxan
[12] www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/antibody/antibodyp11.html

CD分子関連の研究動向

CD分子(Cluster of Differentiation)は、細胞表面に存在する分子であり、細胞の種類や機能を特定するために用いられます。これらの分子は、特に免疫系の細胞において重要な役割を果たし、免疫応答の調節や細胞間のコミュニケーションに関与しています。近年、新たなCD分子の同定とそれらの潜在的な応用に関する研究が進展しており、特に免疫療法の分野で注目されています。

● 新たなCD分子の同定

CD分子の同定は、免疫系の理解を深める上で重要です。これまでに300以上のCD分子が同定されており、それぞれが異なる細胞の種類や機能を表しています[19]。例えば、CD4はヘルパーT細胞に、CD8はキラーT細胞に特異的に発現しています。新たなCD分子の同定は、これらの細胞の機能や免疫応答のメカニズムを解明する上で不可欠です。

● 免疫療法における最新の進展

免疫療法は、がん治療における最新の支柱として急速に発展しています。特に、PD-1やCTLA-4などの免疫チェックポイントを標的とする治療法が成功を収めています[13][16]。これらの治療法は、がん細胞が免疫系から逃れるメカニズムを阻害し、患者自身の免疫系ががん細胞を攻撃できるようにすることを目的としています。

最近の研究では、新型CTLA-4抗体AGEN1181が、免疫原性の低いがんに対しても有効である可能性が示されています[18]。また、Globo Hを標的とする抗体OBI-888は、胰腺癌を含む複数のがん種に対して有望な結果を示しており、FDAから孤儿薬の指定を受けています[14]。

● まとめ

新たなCD分子の同定とそれらの潜在的な応用に関する研究は、免疫療法の分野において重要な進展をもたらしています。これらの研究成果は、がん治療の新たな選択肢を提供し、患者の生存率向上に貢献する可能性があります。今後も、新たなCD分子の同定や免疫療法に関する研究の進展が期待されます。

[13] www.pharmacodia.com/yaodu/html/v1/approve/7da806583e4f640363135db349c1a18f.html
[14] www.shsmu.edu.cn/lib/info/1063/1756.htm
[16] sohu.com/a/733223145_100094544/?pvid=000115_3w_a
[18] www.hkhgg.com/news/6155.html
[19] minerva-clinic.or.jp/academic/terminololgyofmedicalgenetics/c/cd-molecules/

CD moleculesに属する遺伝子394

CD1A
CD1B
CD1C
CD1D
CD1E
CD2
CD3D
CD3E
CD3G
CD4
CD5
CD6
CD7
CD8A
CD8B
CD9
MME
ITGAL
ITGAM
ITGAX
ITGAD
ANPEP
CD14
FUT4
FCGR3A
FCGR3B
ITGB2
CD19
MS4A1
CR2
CD22
FCER2
CD24
IL2RA
DPP4
CD27
CD28
ITGB1
TNFRSF8
PECAM1
FCGR2A
FCGR2B
FCGR2C
CD33
CD34
CR1
CD36
CD37
CD38
ENTPD1
CD40
ITGA2B
GP9
GP1BA
GP1BB
GP5
SPN
CD44
PTPRC
CD46
CD47
CD48
ITGA1
ITGA2
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ITGA4
ITGA5
ITGA6
ICAM3
ITGAV
CD52
CD53
ICAM1
CD55
NCAM1
B3GAT1
CD58
CD59
ITGB3
SELE
SELL
SELP
CD63
FCGR1A
CEACAM1
CEACAM8
CEACAM6
CEACAM3
CEACAM5
PSG1
CD68
CD69
CD70
TFRC
CD72
NT5E
CD74
CD79A
CD79B
CD80
CD81
CD82
CD83
CD84
LILRB3
LILRA6
LILRB5
LILRB2
LILRA3
LILRA5
LILRA4
LILRA2
LILRA1
LILRB1
LILRB4
LILRP1
LILRP2
CD86
PLAUR
C5AR1
FCAR
THY1
LRP1
SLC44A1
CD93
KLRD1
FAS
CD96
ADGRE5
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CD99
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ENG
VCAM1
LAMP1
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CD109
MPL
NECTIN1
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NECTIN3
CSF3R
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CSF2RA
KIT
LIFR
IFNGR1
TNFRSF1A
TNFRSF1B
IL1R1
IL1R2
IL2RB
IL3RA
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IL5RA
IL6R
IL7R
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IL6ST
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PROM1
TNFRSF4
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SDC1
PDGFRA
PDGFRB
THBD
F3
ACE
CDH5
MCAM
BSG
PTPRJ
SLAMF1
CD151
CTLA4
TNFSF8
CD40LG
PVR
ADAM8
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ADAM10
BST1
KIR2DL1
KIR2DL2
KIR2DL3
KIR3DP1
KIR2DL4
KIR3DL1
KIR2DL5A
KIR2DS5
KIR2DS1
KIR2DS4
KIR2DS2
KIR3DL2
KIR3DL3
KLRC1
KLRC2
CD160
KLRB1
SELPLG
CD163
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ALCAM
DDR1
HMMR
SIGLEC1
SIGLEC5
L1CAM
SIRPA
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FUT3
CD177
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CD180
CXCR1
CXCR2
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CCR1
CCR2
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CCR4
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CCR6
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CD200
PROCR
TEK
ENPP3
MSR1
LY75
MRC1
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IL10RB
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GYPA
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KEL
BCAM
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TNFSF4
TNFSF10
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TNFRSF10A
TNFRSF10B
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NGFR
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PDCD1LG2
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CD276
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ICOS
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LEPR
ART1
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EVI2B
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PI16
HAVCR1
CLEC4A
CLEC4D
CLEC7A
CLEC9A
CLEC12A

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

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