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Bromodomain containing(ブロモドメインを含む遺伝子)

“Bromodomain containing”は、アセチル化リジン残基を認識する約110アミノ酸のタンパク質ドメイン、ブロモドメインを含むタンパク質を指します。ブロモドメインは、ヒストンのN末端テールなどに存在するアセチル化リジン残基を認識することで知られています。これらのドメインは、アセチル化リジン残基によって運ばれるシグナルを変換し、様々な正常または異常な表現型に翻訳する「リーダー」として機能します。特に、複数のアセチル化サイトが近接して存在する領域に対しては、より高い親和性を示します。この認識は、しばしばタンパク質-ヒストンの関連付けやクロマチンのリモデリングの前提条件となります[1]。

ブロモドメインを含むタンパク質は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性やクロマチンリモデリングから、転写の仲介や共活性化まで、多岐にわたる機能を持ちます。2015年時点で知られている43種類のブロモドメインを含むタンパク質のうち、11種類が2つのブロモドメインを持ち、1種類のタンパク質が6つのブロモドメインを持っていることが報告されています[1]。

ブロモドメインとエクストラターミナルドメイン(BET)ファミリーは、ブロモドメインファミリーの中でもよく知られた例で、BRD2、BRD3、BRD4、BRDTなどのメンバーが含まれます。これらのタンパク質の機能不全は、人間の扁平上皮細胞癌やその他の形態の癌などの疾患と関連しています[1]。

ブロモドメインを含むタンパク質は、クロマチン生物学や遺伝子の調節において重要な役割を果たしており、その構造や機能の詳細な理解は、がんや炎症、多発性硬化症などの疾患の治療に向けた新たな治療薬の開発につながる可能性があります[1][2][3][4][5]。

[1] en.wikipedia.org/wiki/Bromodomain
[2] www.frontiersin.org/articles/10.3389/fbinf.2022.835892/full
[3] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2921942/
[4] en.wikipedia.org/wiki/BRD4
[5] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6984398/

ブロモドメインの構造

ブロモドメインは、アセチル化されたリジン残基を認識する約110アミノ酸からなるタンパク質ドメインです。このドメインは、ヒストンのN末端テールなどに存在するアセチル化リジン残基を認識し、これらの修飾を読み取る「リーダー」として機能します。ブロモドメインは、特に複数のアセチル化サイトが近接して存在する領域に対して高い親和性を示します。この認識機能は、タンパク質-ヒストンの関連付けやクロマチンのリモデリングの前提条件となります[1]。

構造的に、ブロモドメインは全αヘリックスのタンパク質折りたたみ構造を採用しており、4つのαヘリックスがそれぞれ可変長のループ領域によって分離され、アセチルリジンを認識する疎水性ポケットを形成します[1]。このドメインは、ジョン・W・タムクンとその同僚によって、ショウジョウバエの遺伝子Brahma/brmを研究している中で、転写活性化に関与する遺伝子との配列類似性から新しい構造モチーフとして同定されました。ブロモドメインという名前は、このドメインがBrahmaと関連していることに由来し、化学元素の臭素(bromine)とは関係ありません[1]。

ブロモドメインを含むタンパク質は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性やクロマチンリモデリングから、転写の仲介や共活性化まで、多岐にわたる機能を持ちます。2015年時点で知られている43種類のブロモドメインを含むタンパク質のうち、11種類が2つのブロモドメインを持ち、1種類のタンパク質が6つのブロモドメインを持っていることが報告されています[1]。

ブロモドメインの構造と機能の詳細な理解は、クロマチン生物学や遺伝子の調節において重要な役割を果たしており、がんや炎症、多発性硬化症などの疾患の治療に向けた新たな治療薬の開発につながる可能性があります[1][2][3][4][5]。

[1] en.wikipedia.org/wiki/Bromodomain
[2] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5325140/
[3] www.nature.com/articles/s41594-019-0309-8
[4] www.nature.com/articles/1210618
[5] www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006295215007601


上図の説明:ブロモドメインの構造概要とブロモドメイン阻害剤の結合様式。(a)BRD4の最初のBRDのリボン図。主な構造要素とアセチルリジン結合部位残基がラベルされている。(b)ジアセチル化BET基質ペプチドと阻害剤JQ1の重ね合わせ。阻害剤分子とペプチド分子は棒状で示され、原子の種類によって色分けされている。(c)JQ1とBRD4のブロモドメインとの結合。活性部位の保存された水分子はハイライトされ、水素結合は破線で示されている。(d)イスケミンとCREBBPの複合体。

ブロモドメインを含むタンパク質の働き

ブロモドメインを含むタンパク質は、エピジェネティクスの制御に関わる重要な役割を果たしています。具体的には、ブロモドメインはアセチル化されたヒストンと結合することで、クロマチンの構造や遺伝子発現を制御する機能を持っています[1][2]。ヒストン中のアセチル化修飾を受けたリジン残基に結合することにより、遺伝子のアクセス可能性を変化させ、転写の活性化または抑制を調節します。

ブロモドメインを持つタンパク質は、細胞増殖、細胞周期、シグナル伝達、アポトーシスの制御など、細胞の様々なプロセスに関与しています[1]。また、BET(bromodomain and extra-terminal)ファミリーとして知られるBRD2、BRD3、BRD4、BRDTなどのタンパク質は、炎症関連遺伝子の発現や細胞分裂、ウイルス/宿主相互作用などの細胞プロセスにおいて重要な役割を果たしているとされています[2]。

特に、BRD4はアセチル化されたヒストンに結合することで、MYCやBCL2、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体などの癌関連遺伝子の転写を促進する他、癌の転移に関わるWnt5aやTwistの発現や、免疫回避機構に関わるPD-L1の発現を促進することから、抗癌剤の標的としての注目度が高いです[2]。

さらに、ブロモドメインを含むタンパク質は、抗癌剤の標的としても研究されており、BETファミリータンパク質を阻害する薬剤は、がん細胞の増殖を妨げる可能性があるため、抗癌剤としての臨床試験が実施されています[2][6]。また、BETファミリータンパク質は高アセチル化ヒストンへの結合を介してがん化に関わり、この結合を阻害する薬剤をがん細胞に投与すると、遺伝子の発現が変化し、がん細胞の増殖や生存に影響を与えることが示されています[3]。

これらの機能により、ブロモドメインを含むタンパク質は、細胞の正常な機能維持だけでなく、疾患の発生や進行にも深く関与しており、新たな治療薬の開発において重要なターゲットとなっています。

[1] www.funakoshi.co.jp/contents/6372
[2] bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011900001/18/04/05/00170/
[3] www.riken.jp/press/2018/20180808_2/
[6] www.tcichemicals.com/JP/ja/product/tci-topics/ProductHighlights_20191111

ブロモドメイン含有遺伝子の機能不全

ブロモドメイン含有遺伝子の機能不全は、多くの疾患の発生や進行に関与していると考えられています。ブロモドメインは、アセチル化されたリジン残基に結合することで、クロマチンの構造や遺伝子発現を調節する役割を持っています。したがって、ブロモドメインを含むタンパク質の機能不全は、これらの過程に影響を与え、様々な生物学的異常を引き起こす可能性があります[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20]。

例えば、BET(Bromodomain and Extra-Terminal domain)ファミリーのタンパク質であるBRD2、BRD3、BRD4、BRDTは、炎症関連遺伝子の発現や細胞分裂、ウイルス/宿主相互作用などの細胞プロセスにおいて重要な役割を果たしています。BRD2のハプロ不全はニューロンの欠損及び癲癇に関連しているとされ、BRD4は遺伝子転写と増殖の制御において中心的役割を果たすことが知られています[13][15][20]。

また、BRD4はがん細胞の増殖や生存に影響を与える遺伝子の発現を促進することが示されており、BRD4の機能不全はがんの発生や進行に関与する可能性があります。BRD4の阻害剤は、がん細胞の増殖を抑制する効果があることから、抗がん剤としての研究開発が進められています[2][6][10][11][12]。

さらに、BRD2はカポジ肉腫関連ヘルペスウィルス(KSHV)のLANA-1タンパク質と結合することが判明しており、この相互作用はウイルスの潜伏感染状態の維持に関与している可能性があります[6]。

ブロモドメイン含有遺伝子の機能不全は、神経発達障害や心血管疾患、免疫系の異常など、多様な疾患の病態に影響を及ぼすことが示唆されています。例えば、BRD2の遺伝子破壊やBET阻害剤JQ1はマウスマクロファージの炎症反応を障害することが報告されており、炎症遺伝子の直接的な制御に関与していることが示されています[13]。

これらの知見は、ブロモドメイン含有遺伝子の機能不全が、正常な細胞機能の維持に必要なエピジェネティックな調節機構を乱すことにより、疾患の発生に寄与する可能性があることを示しています。そのため、ブロモドメインを標的とした治療薬の開発は、これらの疾患の治療において重要な意味を持つと考えられます。

[1] www.mdpi.com/2218-273X/13/7/1135
[2] jneurodevdisorders.biomedcentral.com/articles/10.1186/1866-1955-5-4
[3] pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19301389/
[4] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3177561/
[5] www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2023.1212770/full
[6] patents.google.com/patent/JP2008156311A/ja
[7] www.yokohama-cu.ac.jp/res-portal/news/2023/20231017konumatsuyoshi.html
[8] patents.google.com/patent/JP2016519672A/ja
[9] grj.umin.jp/grj/CdLS.htm
[10] kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K07214/
[11] www.riken.jp/press/2023/20231017_1/index.html
[12] patents.google.com/patent/JP2019535682A/ja
[13] bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/23420887
[14] jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902222753252503
[15] patents.google.com/patent/JP2019052178A/ja
[16] ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%A2%E3%83%89%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3
[17] kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-17K07214/17K072142017hokoku/
[18] kyoto-phu.repo.nii.ac.jp/record/352/files/219_2.pdf
[19] repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/2007099/files/A38352_summary.pdf
[20] jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202102255163105147

ブロモドメイン含有たんぱくをターゲットとした研究開発

ブロモドメインは、アセチル化されたリジン残基に結合するタンパク質ドメインであり、エピジェネティクスの制御に関わる重要な役割を果たしています。ブロモドメインを含むタンパク質は、クロマチン構造や遺伝子発現を調節し、細胞の様々なプロセスに関与しています。このため、ブロモドメインはがんや炎症、加齢性疾患などの治療薬の開発における標的として注目されています[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20]。

特に、BET(bromodomain and extraterminal domain)ファミリーのタンパク質であるBRD2、BRD3、BRD4、BRDTは、炎症関連遺伝子の発現や細胞分裂、ウイルス/宿主相互作用などの細胞プロセスにおいて重要な役割を果たしており、BET阻害剤はがん細胞の増殖を妨げる可能性があることから、抗がん剤の標的として研究されています[10][15]。

例えば、BRD9と急性骨髄性白血病などのがん疾患との関連が注目されており、BRD9阻害物質のBI 7273が創製されました。さらに、この化合物をPROTAC(Proteolysis Targeting Chimera)に変換し、BRD9を選択的に分解するアプローチが研究されています[13]。

また、老化細胞を選択的に死滅させるセノリティクドラッグとして、BET阻害剤のARV825が注目されています。ARV825は、BETファミリータンパク質を選択的かつ効果的に分解できる化合物であり、老化細胞の細胞死を引き起こすことが示されています[12]。

さらに、AI創薬による次世代BET阻害剤の開発も進められており、東京理科大学と株式会社インテージヘルスケアが共同で研究を行っています。この研究では、AI技術を活用して新たな構造のリード化合物の創出を目指しています[11][17]。

これらの研究開発は、BETブロモドメインを標的としたエピジェネティクス制御による新しい治療法の開発に向けたものであり、がん治療をはじめとする様々な疾患の治療に革新をもたらす可能性があります。

[1] www.fbri-kobe.org/upload/view.php?news_id=1250&type=main
[2] patents.google.com/patent/JP2008156311A/ja
[3] www.funakoshi.co.jp/contents/6055
[4] www.tcichemicals.com/JP/ja/product/tci-topics/ProductHighlights_20191111
[5] patents.google.com/patent/JP2019535682A/ja
[6] www.nature.com/articles/s41392-020-00384-4
[7] oncolo.jp/news/180516y02
[8] pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33462181/
[9] www.cellsignal.jp/learn-and-support/protein-domains-and-interactions/bromo-protein-domain
[10] bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011900001/18/04/05/00170/
[11] www.tus.ac.jp/ura/ihc-press/
[12] www.biken.osaka-u.ac.jp/achievement/research/2020/140
[13] www.funakoshi.co.jp/contents/64959
[14] www.jstage.jst.go.jp/article/medchem/27/4/27_213/_pdf/-char/ja
[15] ja.wikipedia.org/wiki/BET%E9%98%BB%E5%AE%B3%E5%89%A4
[16] kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790126/
[17] www.intage-healthcare.co.jp/news/release/d20230427/
[18] kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K07214/
[19] www.pieronline.jp/content/article/0039-2359/266110/846
[20] bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/26137204?click_by=p_ref

Bromodomain containing遺伝子43

Approved symbol
ATAD2
ATAD2B
BAZ1A
BAZ1B
BAZ2A
BAZ2B
BPTF
BRDT
BRD1
BRD2
BRD3
BRD4
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KAT2B
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SP100
SP110
SP140
SP140L
TAF1
TAF1L
TRIM24
TRIM28
TRIM33
TRIM66
ZMYND8
ZMYND11

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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