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不妊症の原因|診断から治療までの流れを解説?

不妊に悩む夫婦は3組に1組と言われています。また、実際に不妊治療を受けている夫婦の割合は、国立社会保障・人口問題研究所の調査によると18.2%です。さまざまな理由で治療を受けていますが、決して他人事とは言えません。今は良くても数年経ったら不妊症で悩む夫婦もいるのが現状です。

今回は現在不妊症で悩むご夫婦だけではなく、もしかしたら自分たちも?とお考えの方にも役立ててほしいという思いから今回の記事を公開しました。治療を受ける前に一読して参考にしてください。

不妊症の原因

一般的に結婚を考える年齢で避妊をしなければ、半年で7割、1年で9割、2年で10割が妊娠すると言われています。避妊をしないだけでこれほどまで妊娠する確率が上がるのです。一方で「結婚して3年たちますが」「5年過ぎました」と産婦人科に不妊症の検査を受けていいのか悩みを相談しに来る女性、またはご夫婦がいます。実は日本産科婦人科学会では「避妊をせずに1年たっても子供ができなければ不妊症」と定義しています。もしその条件に当てはまるのであれば残念ながら検査は不要です。

不妊症は女性が悪いかのように言われがちですが、原因は一概には言えません。WHO(世界保健機関)が発表した不妊症原因の統計で不妊症の原因は41%が女性側、24%が女性男性ともにあり、24%が男性側、11%が原因不明となっています。

女性の不妊症

落ち込む女性
日本生殖器学会によると子どもが欲しくてもできないのは10組に1組と言われています。世界中の過去の調査を2007年にまとめた報告では、不妊症の比率は、調査された時代や国により1.3%から26.4%に分布し、全体では約9%と推定されています。

また、女性の加齢と不妊は密接に関係しており、20歳代前半までは5%以下と低くなっていますが、20代後半になると9%まで上昇します。30歳代前半で15%、30歳代後半で30%、40歳以降では約64%が自然妊娠できなくなると推定されています。

不妊症の原因

先述したように原因はさまざまです。これという原因がないのが不妊症の難しさといえます。ただ、いくつかの理由が考えられますので記載しておきます。

  1. ・排卵因子
  2. ・卵管因子
  3. ・頸管因子
  4. ・免疫因子
  5. ・子宮因子

女性側が原因として挙げられるのが子宮や卵子の不調や疾患によるものです。他には卵管閉塞、無排卵症といった病気が原因の場合は医師による治療介入が必要となります。

不妊症の検査方法

不妊の原因を調べる検査がいくつかあります。女性男性双方とも検査を受ける必要がありますが、この章では女性が受ける検査について紹介をします。
一般的な検査は下記の6つです。

  • 1.基礎体温測定
  • 2.超音波検査
  • 3.内分泌検査(各ホルモン検査)
  • 4.クラミジア抗体検査あるいは抗原(核酸同定)
  • 5.卵管疎通性検査(卵管通気法、子宮卵管造影法、超音波下卵管通水法)
  • 6.頸管因子検査

上記の検査に加えて卵管因子(卵や精子を運んでくれるか)と子宮因子(受精卵を着床できるか)について調べる必要があれば、腹腔鏡検査・子宮鏡検査、MRI検査を実施することがあります。

時間は自宅で体温を測る基礎体温測定を除いておおよそ30分前後で終わります。費用も超音波検査(エコー)、子宮卵管造影法、ホルモン検査が保険適用となっており、おおよそ1500円程度で受検が可能です。子宮卵管造影法のみ4790円と少し高めになります。自治体によっては補助金が受けられるので負担を軽くしたいのならチェックして受給申請をしておきましょう。

症状改善のためにできること

少しでも早く妊活を終わらせるためにはクリニックでの診療以外にできることがあります。この章では女性の側でできることを紹介しますので是非参考にしてください。

1.ストレスを溜め込まない
ストレスは女性ホルモンの天敵です。脳の視床下部や脳下垂体はストレスに非常に弱いと言われています。そのため、なるべくリラックスして過ごすよう心がけましょう。
2.適度な運動をして新陳代謝を良くする
適度な運動は、血液の循環を良くなります。女性の場合は骨盤内の血流の滞りが解消され、生殖器官の働きがよくなり、妊娠しやすい体質に変わっていきます。どのような運動をするかは、自分の体力に合わせて選ぶとよいでしょう。散歩やジョギング、ヨガなどがおすすめですが、適度な運動を毎日続けて行うことが大切です。
3.冷え症対策をする
冷え性は妊娠しやすい体づくりの大敵です。血行が悪いと卵巣に酸素や栄養が十分に届かず、卵巣機能の低下を招いてしまいます。食事や日常生活を見直して冷え性を改善し、妊娠しやすい体づくりをしてください。
4.バランスの良い食事をとる
適切な栄養をとったことで良好な受精卵が多かったなどの報告があります。そのため妊娠に必要な栄養素であるたんぱく質、ビタミンA,B,E、鉄、亜鉛、カルシウム、コレステロールを積極的にとることが勧められています。過度のダイエットは、視床下部からのホルモン分泌を障害して、難治性の排卵障害の原因となるため食事を抜くのは逆効果です。

たばこや飲酒は、妊娠中はもちろん妊活中も厳禁です。禁煙禁酒をして体質を改善していきましょう。

不妊症の治療

不妊症は病気ではありません。原因がつかめない可能性もあるため「この薬を飲めばいい」「この手術を受けたら改善する」といった特定の治療法がないのです。

ただ、治療の流れとしては、基本検査をします。そして基本検査で異常が見つからなければ、排卵と射精のタイミングをより正確に合わせるタイミング療法(週に2回程度(週末とそれ以外の日 など)に夫婦生活を行う)を実施します。半年経っても結果が出なければ次のステップとして排卵誘発(卵巣を刺激して卵胞を多く 成熟させる)を行います。

それでも結果が出なければ、人工授精(精子を子宮に入れる)、体外受精(卵子に精子をふりかける)、顕微授精(卵子の中に精子を入れる)へと手段を変えて処置をします。

男性の不妊症

落ち込む男性
実は、不妊の初期検査をしてみると、そのうちの約半数が男性が原因といわれています。見た目での違いというのは特にありません。生活習慣での違いとなるとサウナに良く入る人、ブリーフを履いている人、意外な話だとパソコンを膝に置いて仕事をする人などが精子を温めてしまうため不妊症になりやすいと言われています。

不妊症の原因

先述したように精子を暖めてしまうと運動率は下がってしまうため妊娠しにくくなります。他にも以下の要因が考えられます。

  1. ・ストレス
  2. ・アルコール
  3. ・喫煙
  4. ・肥満・糖尿病
  5. ・病気や薬の影響
  6. ・精巣の損傷もしくは機能障害
  7. ・精子の産出

また先天性の遺伝要因として、様々な遺伝的要因や発育段階で受けた影響等で性機能不全もあります。性機能不全とは性的欲求や性的興奮とその最高潮などが、減退・欠如する状態です。勃起障害(ED、勃起の状態や持続時間が不十分で性行為が行えない又は不十分な状態)、早漏(射精が早期に生じ、性行為に満足を得られない)、オルガスムス障害・遅漏(オルガスムスに達ない、又は時間がかかりすぎ、射精困難で満足が得られない)等が挙げられます。

不妊症の検査方法

男性の場合、精液検査が基本です。精液量や精子の数、運動率など、不妊治療を進めるうえで重要な情報を得ることができます。2~5日間程度禁欲をしてから自宅で採取して持ち込むか病院で採取するかどちらかで時間は変わってきます。持ち込みの場合は30分から1時間程度です。女性と比べて痛みもなく負担もかかりません。

費用は医院によって変わってきますがおおよそ5000円くらいです。女性の検査同様、自治体によって補助金が出るので申請をしておくと費用負担が軽くなります。

結果については院内に検査機器があれば当日にわかる医院もありますが、後日改めて検査結果を伝える医院もあるので受検前に確認をしておいてください。

症状改善のためにできること

男性の場合も女性同様、生活習慣の中で体質を改善していく方法があります。以下の予防法を取り入れることで精子の量が増えたり動きが良くなったりします。

  • 1.ウォーキングなどの軽めの運動(メタボ対策)
  • 2.1日3食、バランスのとれた食事(亜鉛が含まれる牡蠣やピーナッツ、ビタミンC、ビタミンEなど抗酸化物質)
  • 3.1日7時間程度の長さで、決まった時間に就寝、起床する睡眠
  • 4.長風呂をせず、長時間のサウナも避ける
  • 5.自転車、バイクに長時間乗らない
  • 6.深酒しない
  • 7.禁煙

 
ホルモン環境を整えるのには、きちんとした栄養分と十分な睡眠が必要です。精巣は温めると精子を作る力が落ちます。飲酒、喫煙は精子を作る力を落とすと言われています。

不妊症の治療

基本的には食事と生活習慣の改善が治療法です。ただ、薬物治療や手術治療をする場合があります。

例えば、精索静脈瘤(精巣周辺の陰嚢部に発達した静脈瘤(静脈の拡張したこぶ))だと、手術で精液所見の改善が期待できますし、閉塞性無精子症では、精子の通り道を再建して精液中に精子が出現することもあります。

精子を形成するために必要なホルモン(FSH、LHなど)が不足していれば、薬で補充をします。また、漢方薬やビタミン、抗酸化剤などを用いた治療法もあるのです。

原因不明の不妊症

上述したようにWHO(世界保健機関)の発表によると11%、つまり10組に1組が不妊症の原因がわかっていません。現在の医療では、妊娠成立の仕組みがすべて解明されていないため診断不能に陥っているのです。ただし、医学の進歩によって数字は下がってきています。

ただ、高齢になると精子あるいは卵子そのものの機能(正常な児として成長する力)が低下している、あるいはなくなっている場合があり、女性は37歳から44歳の間のどこかでなくなってしまいます。そのためそうなる前に治療を開始することが唯一の対処法です。

まとめ

医師と夫婦
不妊治療は夫婦がお互いに協力しあうのが不可欠です。ところが、男性側が最初に検査をしなかったために、「何度も病院へ通ってついに人工受精となったところではじめて旦那さんが検査に応じ、実は男性由来だとわかった……」というケースがあります。そこに至るまで女性側の負担は計り知れません。

不必要な負担をさせないためにも男性側から検査を受けておくのも一つの方法といえるでしょう。それには男性も不妊の当事者であると認識させるのが先決ですので夫婦でしっかりと話し合ってください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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