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妊娠中は、赤ちゃんが生まれた後の未来を想像して幸せな気持ちで胸がいっぱいになる瞬間がありますが、不幸にも赤ちゃんを流産で亡くしてしまうこともあります。妊婦さんが恐れる流産は誰にもそのリスクが生じるため、予備知識をしっかり頭に入れておかなければなりません。流産になってしまった場合は、その後の経過によって流産手術が必要になります。
この記事では、流産手術が必要になるケースと具体的な手術内容、そして知っておきたい3つの基礎知識をご紹介していきます。
自分の赤ちゃんを流産で亡くすことを想像したくないと思いますが、もしものことがあった時のために必要な情報を得ておきましょう。
流産になる原因とは
妊婦さんが健康であっても流産は起こり得るものであり、妊娠をした時点で流産に対する必要な知識を身につけておく必要があります。
流産は、妊娠22週以前に何らかの原因で妊娠が終わることを指します。
その頻度は妊娠の15%程度といわれており、過去に妊娠を経験した女性の約40%が流産を経験しているという報告もあります。
妊娠12週以前の流産の原因は、主に胎児の染色体異常といわれています。受精した瞬間から流産の有無がほぼ決まってしまうため、妊婦さんが意識して避けられるものではありません。
一部では「転倒や精神的ショックが流産に繋がるのでは?」と囁かれていましたが、実際は流産に繋がらないとされています。
妊娠中期以降は、以下のようなことが流産の原因になる可能性があると考えられています。
- 飲酒・喫煙
- 危険薬物
- 重症(怪我)
- 感染症
- 子宮筋腫
- 子宮頸管無力症
- 重複子宮
- 甲状腺機能異常(重度)
- 糖尿病(重度)
- 高血圧
- 全身性エリテマトーデス
- 慢性腎臓病(無治療)
- RH式血液型不適合の一部
また、流産を一度経験すると次の妊娠でも流産の確率が上がる傾向にあります。流産を繰り返す「不育症」という疾患もあるため、不安な方は早い段階で医師に相談することをおすすめします。
流産手術が必要になるケースとは?
大切な赤ちゃんを失ってしまう流産は、子宮内の胎児の状態によって手術が必要になることがあります。
妊娠12週以前に流産が起こることを「初期流産」と呼びます。
初期流産になってしまった場合は経過を観察して「自然排出」を待つか「流産手術」を行うかという選択肢に絞られていきます。
自然排出について
流産の後に出血がみられる場合があります。これは妊娠によってつくられた組織が体外に排出されている合図の可能性があり、出血がみられた妊婦さんの大体7割くらいが何事も問題なく子宮内容物の自然排出を済ませることができます。
出血が始まってから子宮内容物の排出が終わるまでは1日〜1週間かかり、個人差はありますが排出の際に生理痛と似た痛みが生じる場合もあります。
気をつけなければならないのが、大量の出血がみられた場合や陣痛が起こった場合です。
これらが起こった場合は緊急入院や緊急手術に繋がることもあり、程度によっては輸血が必要になります。子宮筋腫、または内膜症を持っておられる方は出血時のリスクが高まるので注意しましょう。
出血が起こるまで排出が始まるタイミングは分からないため、事前にスケジューリングすることはできず、妊婦さんは常に経過を観察しながら過ごさなければなりません。
手術が必要な「不全流産」とは?
出血をきっかけに自然排出が始まりますが、子宮内容物が体外に全て排出されることもあれば、体内に残ってしまうこともあります。
全て排出された「完全流産」では徐々に子宮の状態が回復していくため、妊婦さんは安静にしながら月経を待つことになります。
一方で、体内に子宮内容物が残ってしまった場合は「不全流産」とされて、子宮収縮薬、または抗菌剤で排出を促進させる必要があります。それでも排出されなかった場合に、流産手術を行う流れとなります。
手術が必要な「稽留流産」とは?
胎児が妊婦さんのお腹の中で力尽きてしまった場合に、胎児がそのまま子宮内に留まっている状態を「稽留流産」と呼び、手術が必要となります。
この場合、自然排出にみられるような出血や痛みが現れないため、妊娠健診をするまで妊婦さんは流産に気づかないケースが多くあります。
自覚症状がない状態で突然流産を告げられてとても大きなショックを受けてしまいますが、妊婦さんに責任はありませんので自分を責めないようにしましょう。
流産手術の内容
手術は子宮内に専用の器具を挿入して、絨毛成分や胎児成分などの組織を摘出する内容となります。
初期に行われる流産手術では、主に「掻把法(そうはほう)」と「吸引法」が用いられています。
掻把法は、リアルタイムで胎盤の摘出状況を確認することができ、過去に帝王切開を行っていた場合でも子宮破裂のリスクを回避することができる方法です。しかし、手技が難しく不用意に子宮を傷つけてしまう可能性もあります。
吸引法は、母体への負担が少ないMVA法(手動真空吸引法)がWHO(世界保健機構)にも推奨されています。やわらかいカニューレという器具を使うため痛みが少ないというメリットがあり、子宮を傷つけるリスクもほぼありません。
手術が怖いという方はたくさんいますが、麻酔を打って眠った状態で手術が行われるため、起きたときには手術も終わっているのでご安心ください。
流産手術に関して知っておきたい基礎知識
全ての妊娠において流産に至る可能性はあるため、今後、流産手術に関する知識が役立つ日がくる可能性はあります。
ここからは、知っておきたい基礎知識を3つピックアップしてご紹介していきます。
流産手術に関する合併症
手術を受ける前に必ず把握しておきたいのが複数の合併症が伴うリスクがあるということです。流産手術を受けた妊婦さんには、以下のような合併症を伴う可能性があります。
- 少量〜大量の出血
- 子宮内感染
- 数時間にわたる陣痛
- 子宮に穴が空く子宮穿孔
- 子宮内容物が残留する子宮内容遺残
子宮内感染や陣痛に関しては抗生物質や鎮痛剤の内服で対策を行うことができますが、子宮穿孔に関しては程度によって内視鏡や開腹手術を行うケースもあります。
麻酔を打つため手術の痛みはありませんが、このようなリスクが伴うことを理解した上で手術に臨みましょう。
流産手術にかかる費用
妊娠中は検査やさまざまな準備において費用が必要になり、家計を悩まされることもあります。
流産手術にかかる費用は医療施設によって異なりますが、保険が適用された場合の相場は大体15,000円〜35,000円になります。
医療費はできる限り抑えたいという方は多いですが、流産手術は全てが公的医療保険が適用されるわけではないので注意しましょう。
公的医療保険が適用されるのは、不全流産、または稽留流産で手術が必要になった場合です。
では、公的医療保険対象外となるのはどのようなケースなのか?
それは、母体保護を目的とした人工流産手術を受ける場合になります。つまり、中絶をした場合は保険適用外になるということです。
また、稽留流産手術の場合は1泊することになり、入院費もかかることを覚えておきましょう。
染色体異常を検査する方法
流産の原因となる染色体異常の有無は、妊娠初期から受けられる出生前診断で調べることができます。
以下は、検査が直接流産に繋がる可能性がないスクリーニング検査とその特徴です。
出生前診断 | 特徴 |
---|---|
超音波検査 | 超音波機器を用いて、胎児の発育状況や染色体異常を調べる。 |
NIPT | 母体採血を行って母体血漿中のDNA断片を分析し、染色体異常の有無を調べる。 |
母体血清マーカー検査 | 母体採血を行って、3種類、または4種類の成分を分析して染色体異常の有無を調べる。 |
コンバインド検査 | 超音波検査と母体血清マーカー検査をかけ合わせて、染色体異常の有無を調べる。 |
出生前診断の中で最もおすすめしたいのがNIPTです。
NIPTは、感度99%・特異度99%という非常に高い検査精度を誇り、ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミーといった症候群を検査することができます。
一般的に妊娠10週以降に実施されていますが、施設によっては35歳以上が対象という年齢制限があります。
35歳未満の妊婦さんは、NIPTの無認可施設であれば受検することが可能です。その際は、臨床遺伝専門医・または認定遺伝カウンセラーが在籍する医療環境が充実した施設を選ぶことをおすすめします。
まとめ
流産になった場合、子宮内容物が体外に排出されるかどうかで手術の有無も決まります。
自然排出されて子宮内容物が完全流産となった場合は手術の必要はありませんが、子宮内容物が残留した状態の不全流産や、胎児が子宮内で亡くなった状態の稽留流産の場合は流産手術が必要とされます。
流産手術は麻酔を打って行われるため、妊婦さんは寝ているだけで手術を終えることができます。ただし、術後は出血や痛みが伴う場合もあるため安静と観察を要します。
流産になる主な原因は染色体異常とされており、妊娠初期から受けられる出生前診断で染色体異常の有無を調べることができます。
東京の「ミネルバクリニック」では、どこよりも早い妊娠9週目からNIPTを実施しております。
大学病院レベルの臨床遺伝専門医による検査とカウンセリングを、年齢制限なしで受けていただくことができます。
流産になる原因となる染色体異常を検査したい方は、この機会に是非「ミネルバクリニック」までお問い合わせください。