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何故NIPTは非確定的検査なのか?:陽性的中率とは

Chapter5-5 cffDNAベースの出生前検査(NIPT)の精度更新日05/27/2019

5.cffDNAベースの出生前検査(NIPT)の精度

cffDNAベースの出生前検査に関するメタアナリシス

トリソミー21 18トリソミー 13トリソミー モノソミーX
N 148,344 146,940 134,691 6,712
感度(%,95%CI) 99.4 (98.3-99.8) 97.7 (95.2-98.8) 90.6 (82.3-95.8) 92.9 (74.1-98.4)
特異度(%,95%CI) 99.9 (99.9-100.0) 99.9 (99.8-100.0) 100.0 (99.9-100.0) 99.9 (99.5-99.9)

現在までに,cffDNAベースの出生前検査に関するメタアナリシス
いくつか発表されています.【1-5】

上の表は,13,18,21トリソミーおよびモノソミーX(ターナー症候群(モノソミーX))に対する

cffDNAベースの出生前検査の感度および特異度です.

ご覧の通り.トリソミー21では100%に近くなっています.

感度を見てみましょう.
トリソミー21が最も高く,18トリソミー,モノソミーX,13トリソミーで低下する.cffDNA NIPT(全ゲノムまたは標的配列決定; qPCRまたはマイクロアレイデータは含みません)

および被験集団の事前リスク(高リスクvs低リスク)

のいずれも試験特性に影響はありませんでした.

個々の研究で言及された誤った結果の理由は,
あらかじめ定義されたカットオフ値未満の胎児分画
限局性胎盤モザイク現象(CPM),
および母体のコピー数変異(CNV)
が最も一般的な説明でした.【2】

85%を超える症例の臨床転帰を報告した研究のみだけを対象とすると
21トリソミーで99.7%,
18トリソミーで97.9%,
13トリソミーで99%,
Xモノソミーで95.8%
とわずかに高い検出率となりました.【4】

パフォーマンス測定基準

パフォーマンス測定基準をさらに説明するために,
0.5%のトリソミー21有病率を有する10万人の患者の仮想的な一般産科集団を
仮定してみましょう.

この集団では500人の妊婦さんの胎児にT21があることになり,
メタアナリシスによると99.4%の感度ですので
497人が同定されるのですが,
3人は見逃されることになります.

わたしにもわかりにくいので,ちょっと表にしてみましょう.

疾患陽性 疾患陰性
検査陽性 497 3
検査陰性 100 99400


21トリソミーを伴わない99,500の妊婦さんは,

特異度メタアナリシスから99.9%ですので
99500×0.001=99.5
となり,100人が偽陽性結果を受けることになります.

陽性適中率(PPV)はこれらの値で計算でき,
21トリソミー陽性cffDNA NIPTの妊婦さんの胎児が21トリソミーである率は有病率が0.5%であるとすれば,PPVは83.2%となります.(497/497+100)

これに対し,21トリソミーの有病率が3%の高リスク集団を仮定すると,
 

疾患陽性 疾患陰性
検査陽性 2982 18
検査陰性 97 96903

10万人中3000人の妊婦の胎児が21トリソミーであることになり
2982人のトリソミー21症例が検出されるが,
18人が見逃されます.
また,陰性の97,000人の妊婦さんでは,97人が偽陽性結果を受け取ることになります.

陽性的中率はこうなる

そうすると,陽性的中率PPVは96.8%となります.(2982/2982+97)

これらの仮説にもとづく計算は,
陽性的中率PPVが疾患有病率に依存すること,
およびもともと知られているリスクが個々の患者に対するNIPT結果の意義に影響することを示しています.

トリソミー陰性の妊娠は常に妊娠集団において大部分を占めるため

高い非疾患有病率を示し,cffDNAに基づくNIPTの特異度メタアナリシスでは,
検査した染色体とは無関係にほぼ100%に達し,陰性適中率(NPV)は,高リスク集団および低リスク集団のいずれにおいても常に
100%に近いものとなるのです.

[1] Gil M, Accurti V, Santacruz B, Plana M, Nicolaides K. Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening for aneuploidies: updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol 2017;50(3):302-14.
[2] Mackie F, Hemming K, Allen S, Morris R, Kilby M. The accuracy of cell-free fetal DNA-based non-invasive prenatal testing in singleton pregnancies: a systematic review and bivariate meta-analysis. BIOG 2017;124:32-46.
[3] Badeau M, Lindsay C, Blais J, Nshimyumukiza L, Takwoingi Y, Langlois S, et al. Genomics-based noninvasive prenatal testing for detection of fetal chromosomal aneuploidy in pregnant women. Cochrane Database Syst Rev 2017.
[4] Gil MM, Akolekar R, Quezada MS, Bregant B, Nicolaides KH. Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening for aneuploidies: meta-analysis. Fetal Diagn Tuer 2014;35:156-73.
[5] Taylor-Phillips S, Freeman K, Geppert J, Agbebiyi A, Uthman OA, Madan J, et al. Accuracy of non-invasive prenatal testing using cell-free DNA for detection of Down, Edwards and Patau syndromes: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open 2016;6:e010002.

 

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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