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交差免疫

交差免疫とは、過去に特定の病原体に感染した経験があることで、その病原体に似た別の病原体に対しても免疫反応が働く現象を指します[6]。この免疫反応は、過去の感染によって体が作り出した抗体やT細胞が、構造的に似ている異なる病原体にも反応することによって生じます[5]。

例えば、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して、過去に流行した他のコロナウイルスに感染した経験がある人々において、交差免疫が働く可能性があるとされています[1][3][5]。これは、新型コロナウイルスと構造的に似たエピトープ(ウイルスの一部の分子)に対して、過去に形成された記憶免疫細胞が反応するためです[1]。

また、交差免疫はワクチンの効果にも関連しており、異なるが近縁のウイルスに対するワクチンが、別のウイルスにも一定の保護効果を提供することがあります。例えば、天然痘ワクチンがサル痘に対しても有効であるという事例があります[4]。

交差免疫は、免疫系が良い方向に作用する場合もあれば、アレルギーのように不利益をもたらす交差反応を引き起こす場合もあります[5]。新型コロナウイルスに関しては、交差免疫が感染予防や重症化予防に役立つ可能性がある一方で、抗体増強反応という免疫系の暴走を引き起こすリスクも指摘されています[5]。

研究によっては、日本人の新型コロナウイルス感染者数や死亡者数が欧米に比べて低いことについて、日本人に多い特定の白血球型「HLA-A24」が関与している可能性が示唆されており、これが交差免疫の一形態である可能性があるとされています[1]。

抗体と抗原

抗体は上図のようにの形をしています.
さきっぽのほうに抗原(エピトープ)がくっつく場所があって,通常は抗原に特異的に働きますが
似たような分子構造だと交差反応をするということなのです.

交差免疫が発生する条件は何か

交差免疫が発生する条件は、異なる病原体間で共通の抗原性を持つエピトープが存在する場合です。この共通エピトープに対して、免疫系が以前に形成した記憶免疫細胞(抗体やT細胞)が反応することで、交差免疫が生じます[5][6]。

交差免疫は、以下のような条件下で発生する可能性があります:

1. 構造的類似性:異なる病原体が構造的に似たエピトープを持つ場合、免疫系はこれらを同一と認識し、交差免疫を引き起こすことがあります[5][6]。

2. 以前の感染経験:個体が過去に感染した病原体に対して形成された免疫応答が、新たな病原体にも反応することで交差免疫が起こります[5][6]。

3. ワクチン接種:ある病原体に対するワクチンが、別の病原体にも一定の保護効果を提供する場合があります。これはワクチンに含まれる抗原が、他の病原体のエピトープと類似しているためです[4]。

4. 免疫系のクロスリアクティビティ:免疫系は、特定のエピトープに対して高度に特異的ですが、類似したエピトープにも反応する能力(クロスリアクティビティ)を持っています。このため、異なる病原体が類似したエピトープを持つ場合、免疫系はこれらに対して交差免疫を示すことがあります[5][6]。

5. 遺伝的要因:個体の遺伝的背景によって、特定の病原体に対する免疫応答が他の病原体にも効果的に働くことがあります。例えば、特定のHLA型を持つ個体が、異なる病原体に対して交差免疫を示すことがあります[1]。

交差免疫は、病原体の特定のエピトープに対する免疫応答が、他の病原体にも有効であるという点で、感染症の予防や治療において有益な現象となることがあります。しかし、交差免疫が必ずしも有益であるとは限らず、場合によってはアレルギーや自己免疫疾患などの不利益な免疫反応を引き起こす可能性もあります[5][6]。

交差免疫が発生することでどのような影響があるか

交差免疫が発生することによる影響は、主に以下のようなものがあります:

1. 感染症の予防や軽減:
– 交差免疫は、過去に感染した病原体と類似した新たな病原体に対しても免疫反応を提供することができます。これにより、感染が防がれたり、症状が軽減される可能性があります[1][3][5]。例えば、新型コロナウイルスに対して、過去のコロナウイルス感染がある人々において、交差免疫が働くことが示唆されています[1][3]。

2. ワクチンの効果の拡大:
– 交差免疫は、ワクチンが特定の病原体に対して開発された場合でも、類似の他の病原体に対しても一定の保護効果を提供することがあります。例えば、天然痘ワクチンがサル痘に対しても有効であるという事例があります[8]。

3. 免疫系の暴走:
– 交差免疫が原因で、抗体増強反応などの免疫系の暴走が起こることがあります。これは、抗体が病原体を効果的に中和するのではなく、逆に病原体の感染を助けてしまう現象です[7]。新型コロナウイルスにおいても、このようなリスクが懸念されています。

4. アレルギー反応の誘発:
– 交差免疫は、アレルギー反応の形で不利益をもたらすこともあります。例えば、ある物質に対するアレルギーが、構造的に似た別の物質にも反応してしまう「交差反応」がこれに該当します[7]。

5. 疾病の重症化の防止:
– 交差免疫により、特定の病原体に対する免疫応答が他の病原体にも有効に働くことで、疾病の重症化を防ぐ効果が期待されます。これは、免疫系が既に病原体に対する反応メカニズムを持っているため、迅速に反応できるからです[1][3][5]。

これらの影響は、交差免疫がどの程度の強さで発生するか、どの病原体が関与しているかによって異なります。また、個々の人の免疫状態や遺伝的要因も影響を与えるため、交差免疫の効果は個人差が大きいです[1][3][5][7][8]。

交差免疫が発生することで、どのような病気に対して有効なのか

交差免疫が発生することで有効に働く可能性がある病気には、以下のようなものがあります:

1. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19):
– 過去に流行した他のコロナウイルスに感染した経験がある人々において、交差免疫が新型コロナウイルスに対しても働く可能性があるとされています。これは、新型コロナウイルスと構造的に似たエピトープに対して、過去に形成された記憶免疫細胞が反応するためです[1][4][5]。

2. サル痘:
– サル痘ウイルスと天然痘ウイルスは近縁であり、天然痘ワクチンがサル痘に対しても有効であるとされています。これは、両ウイルスが共通する部分への免疫によってワクチンが効果を発揮するためで、この現象を「交差免疫」と呼びます[2][6]。

3. インフルエンザ:
– 交差抗体はインフルエンザウイルスの抗原変異に対して有効な対抗手段であり、異なるインフルエンザウイルス株間で交差免疫が働くことがあります。ただし、現行のワクチン接種では交差抗体が誘導されにくいという問題があります[7]。

これらの病気に対する交差免疫の効果は、病原体の特定のエピトープに対する免疫応答が他の病原体にも有効であるという点で、感染症の予防や治療において有益な現象となることがあります。しかし、交差免疫が必ずしも有益であるとは限らず、場合によってはアレルギーや自己免疫疾患などの不利益な免疫反応を引き起こす可能性もあります[4][6]。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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