クラインフェルター症候群(Kleinfelter症候群)とは?寿命・症状・特徴・治療など解説

クラインフェルター(くらいんふぇるたー)症候群は生きていくうえで大きく問題になることはないため、不妊治療で突然夫がクラインフェルター症候群と言われてびっくりするというパターンが診断契機としては最も多くなっています。
一般の方にイメージしやすいように順に解説したいと思います。

クラインフェルター症候群の有名人

ご自分がクラインフェルター症候群と宣言した有名人はいないのですが、インターネットではフィギアスケートの羽生結弦選手がクラインフェルター症候群ではないかという憶測がたくさん書かれているようです。どうしてそういううわさが出るかというと、やはり日本人離れした背の高さ、手足の長さという素晴らしいスタイルゆえでしょう。しかし、後述する通り、クラインフェルター症候群の男性は運動が苦手な方が多いので、羽生選手のように運動に秀でた方がクラインフェルター症候群だというのは、確率的には低いと考えます。

クラインフェルター症候群の男性の画像

クラインフェルター症候群
画像からお分かりのように、クラインフェルター症候群の男性の見た目の特徴は、平均よりも背が高く、手足が長いという体型と、精巣が小さく無精子症であるということです。また、男性は46,XYという染色体核型ですが、男性なのにX染色体が1本多くなっていて47,XXYですので、画像の通り女性化乳房など見られますが、これについては後述します。

クラインフェルター症候群の男性の寿命

寿命が短くなるような重大な臓器の重大な症状は起こさないので、クラインフェルター症候群は生殖能力に一番大きな問題が出る程度で、寿命が他の人と比べて短くなったりすることはありません。

クラインフェルター症候群の症状

クラインフェルター症候群は、表現型(症状を呈する)の男性に2つ以上のX染色体があるために起こる症候群です。クラインフェルター症候群は、身体的および知的発達に影響を及ぼす可能性のある、男性(少年)の染色体異常です。しかし、クラインフェルター症候群の徴候と症状は、クラインフェルター症候群の患者さん個々人よって異なります。思春期または成人期になるまでクラインフェルター症候群と診断されないほど軽度なケースも多く、クラインフェルター症候群罹患者の男性(少年)の75%くらいは生涯にわたり診断されません。この事実は出生前診断の対象にクラインフェルター症候群を入れていいですかという問いを投げかけ続けています

クラインフェルター症候群の患者の身長

クラインフェルター症候群の患者さんの身長は平均よりも高くなっています。クラインフェルター症候群患者のほとんどは、身長が高く、四肢が長く、上部/下部の比率が低くなっています。

クラインフェルター症候群と男性不妊

最も一般的なクラインフェルター症候群の症状は、小さな精巣と男性ホルモン生産が少ない結果として、罹患した男性は基本的な症状は不妊となります。つまり患者さんは、父親になることは出来ないという男性不妊をおこすのですが、ここ最近の生殖医療の進歩でお子さんを持つことができるケースも増えてきました。これについては治療の項目で詳細に述べます。

クラインフェルター症候群と染色体異常

クラインフェルター症候群の臨床的表現型(症状)は、男性なら本来XYであるところ、過剰なX染色体が1本あるXXYだという遺伝的病因に起因しています。クラインフェルター症候群における余分なX染色体は、精巣の硝子化、線維化および精巣の機能低下を引き起こし、生殖器の異常、通常は性腺機能低下症および不妊症を引き起こします。

クラインフェルター症候群と女性化乳房

クラインフェルター症候群の男性は、通常、テストステロン(男性ホルモン)の産生量が少ない小さな精巣を持つというのが大きな特徴です。テストステロン(男性ホルモン)は、出生前と思春期の間に男性の性的発達を指示するホルモンですので、クラインフェルター症候群ではホルモンを補充するなどの治療しなければ、テストステロン(男性ホルモン)の不足により、陰毛、腋毛などの二次性徴の遅延または不完全な発現、胸の拡大(女性化乳房)、筋肉量の減少、骨密度の低下、顔や体毛の減少といった女性のような体型を来す症状を来す可能性があります。

クラインフェルター症候群と停留睾丸

クラインフェルター症候群の一部の患者さんでは、精巣が下降していない()、尿道が陰茎(いんけい)の先端(亀頭 きとう)まで形成されずに、陰茎の腹側(本人から見ると陰茎の裏側)におしっこの出る口(外尿道口)がある尿道下裂の症状を呈したり、または、陰茎が平均サイズより著しく小さい又は小さくなる小陰茎症などの性器の症状が見られることがあります。

クラインフェルター症候群と発達障害

クラインフェルター症候群の小児にみられる症状には、筋緊張が低下(低緊張)、協調性に問題があり、座る、立つ、歩くなどの運動技能の発達が遅れるという発達障害などがあります。クラインフェルター症候群の男児は症状として学習障害を呈することが多く、その結果、発話や言語の発達に軽度の遅れが生じたり、読解に問題が生じたりします。クラインフェルター症候群の少年および男性は、表現的言語能力(語彙および発話の生成)よりも受容的言語能力(発話を理解する能力)の方が優れている傾向があり、コミュニケーションおよび自己表現が困難だという症状もみうけられます。

クラインフェルター症候群の人にみられる症状には、不安、抑うつ、社会性の欠如、感情の未熟さや衝動性などの行動問題、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、問題解決能力(実行機能)の制限などがあります。クラインフェルター症候群の少年と男性の約10%が自閉症スペクトラム障害の症状を持っています。
症状のひとつとして広範囲の知能指数(IQ)が記述されています。しかしながら、平均フルスケールIQは85~90の間です。言語および聴覚処理の問題により、言語IQはパフォーマンスよりも高くなっています。未熟性、不安定性、内気、判断力の低下、意味のある仲間関係の形成などの行動上の困難が症状としてみうけられることがある。その他の症状としてクラインフェルター症候群患者の20~50%に何かしようと思ったときに手の震えがみられるという企図振戦がみられます。

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クラインフェルター症候群と合併症

クラインフェルター症候群の男性の半数近くに認められる症状としては、2型糖尿病、高血圧(高血圧)、お腹の脂肪の増加、血中のコレステロールや中性脂肪などの脂質代謝異常を含むメタボリックシンドロームがあります。また、クランフェルター症候群の成人は、無症状の男性と比較して、不随意運動(震え)、乳がん(女性化乳房が発症した場合)、骨の菲薄化・弱化(骨粗鬆症)、全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどの自己免疫疾患の発症リスクが高くなるという症状もきたします。

クラインフェルター症候群の頻度

クラインフェルター症候群は、新生児の男の子約500~1000人に1人が罹患しています。性染色体(X染色体とY染色体)の数の変化(異数性)によって引き起こされる疾患で、最も多くなっています。

クラインフェルター症候群の治療

クラインフェルター症候群の発達障害に対する治療

クラインフェルター症候群 (しばしば子宮内)の早期診断により、早期の発達評価および神経心理学的発達を支援する介入サービスが可能になってきました。クラインフェルター症候群では発話言語遅延および運動技能遅延は症例の50%~75%に認められるため、これらの遅延をスクリーニングし対処するための積極的な手段が推奨されます。対処されていない発話の遅れは、欲求不満に対する自己表現や衝撃耐性を制限し、問題行動につながる可能性があります。多動、扁平足、外反膝を伴う低緊張は、書字やセルフケアを含む運動発達に影響を及ぼす可能性があるため、理学療法、作業療法、矯正器具などの適応治療が必要となることがあります。

クラインフェルター症候群の男性ホルモン不足に対する治療は生まれる前から始まる

小児内分泌専門医の管理下でのクラインフェルター症候群に対するテストステロン補充治療は、「古典的クラインフェルター症候群表現型」の身体症状の一部を予防する可能性があり、クラインフェルター症候群における性腺機能低下症は胎児の早期に始まることがあり、性器の発達不良、停留精巣、胚細胞数の減少、精巣のサイズの小ささなどの症状を和らげる役割を果たします。

クラインフェルター症候群の男性不妊に対する治療

クラインフェルター症候群の患者さんには以前はお子さんを持つのはあきらめてくださいと言っていたのですが、最近では、生殖補助技術の恩恵を受けてお子さんをもてるようになってきました。無精子症の方の中には、射精する精液中には精子を認めなくても、精巣内の一部分で精子が造られていることがあります。 クラインフェルター症候群の方でも顕微鏡を使って精巣中の精細管を観察し、精子が造られていそうな精細管を狙って回収する手術(顕微鏡下精巣内精子回収術)で50%くらいの患者さんが精子を得られています通常の無精子症と比べて成績が良いくらいです。

クラインフェルター症候群のその他の合併症に対する治療

長期的には、クラインフェルター症候群の男性は、末梢血管疾患や血栓塞栓性疾患だけでなく、2型糖尿病、脂質異常症、脂肪肝疾患などのインスリン抵抗性に関連する障害を発症しやすくなっていますので、これらに対する慎重なスクリーニングと積極的な予防措置が推奨されています。また、骨塩量が悪影響を受けることもあり、性腺機能低下症に関連している可能性が高いため、骨の健康への注意が重要となります。自己免疫疾患の割合が高いことを立証した研究もありますので自己免疫性疾患に対する経過観察も必要でしょう。また、特定の悪性腫瘍のリスクが高くなります。これらには、乳がん、性腺外胚細胞腫瘍、および非ホジキンリンパ腫があるのですが、全体的な頻度はまだ非常に低く、ルーチンのスクリーニングは正当化されていません。疑わしい症状についてはチェックすべきでしょう。

クラインフェルター症候群の遺伝

クラインフェルター症候群は遺伝性ではありません。ご両親のいずれかの生殖細胞(卵または精子)が形成される際に分配のまちがいでX染色体が余分にあるということが起こります。
クラインフェルター症候群の男性が不妊治療で父親になる際には、XXYの染色体の分配のされ方として 
1.X と XY
2.XX と Y
があるのですが、XYになってしまった精子では、お子さんはお母さんからはX染色体を通常1本もらいますので、同じくXXY、つまり、クラインフェルター症候群となることとなります。
一昔前はクラインフェルター症候群は遺伝性がないと言われていたのですが、これは女性を妊娠させることができなくてお子さんを持てなかったためです。

 

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この記事の筆者:仲田洋美(医師)

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