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NTとは|エコー写真でわかる胎児の首のうしろのむくみ(後頚部浮腫)|ダウン症などとの関連

胎児ドック(精密超音波検査 )や産婦人科の妊婦検診(妊婦健診)でエコー検査をして突然、「NTが厚いです。ダウン症21トリソミー)の疑いがあります。」と言われ、びっくりしてパニックになる妊婦さんたちも多いのではないでしょうか?

そこで、このページではそうなってからでも慌てないために知っておきたいことをまとめてみたいと思います。

胎児の後頚部浮腫(首の後ろのむくみ)NTとは?

胎児NT
NTとは後頸部透亮像nuchal translucency (NT)の略です。妊娠初期の妊婦健診で胎児の超音波検査のエコー写真でみえる、後頸部(首のうしろ)に存在する低エコー域という黒く抜けて見えるところになります。NTは、一時的なリンパの流れが悪くなって赤ちゃんの首の皮下にあるリンパ管がむくんだり拡張したりしておこるものです。

上の画像はNTが厚い胎児の超音波エコー写真ですが、矢印の黒く抜けているところが頸部浮腫ともいわれるNT肥厚です。米国産科婦人科学会ではNT肥厚があればNIPT新型出生前診断)を受けるよう推奨しています。

胎児の後頚部浮腫(首の後ろのむくみ)NTが肥厚することでリスクが高まる赤ちゃんの病気とは?

胎児の後頚部浮腫(首の後ろのむくみ)NTが厚いと赤ちゃんの染色体異常の可能性があります。NTが厚くなっていると心血管系の問題があると疑われるからです。染色体異常は心血管系の発育に障害をもたらすことがあり、ダウン症候群(21トリソミー)、パタウ症候群13トリソミーパトー症候群)、エドワーズ症候群(18トリソミー)などの胎児の染色体異常が疑われます。

ただし、NT自体は成長の中ですべての胎児に認められ、これがあること自体は正常なことです。リスクが増す、つまりNTと染色体異常などの関係があるだけで、NTが厚くなっていればすなわち赤ちゃんは染色体異常だと決まるわけではありません。NTが肥厚(ひこう)していても、健康にうまれてくるお子さんはいます。基準としては、肥厚が3.5㎜なら93%が正常に生まれてきます。つまり、NTとは厚くてもなにか決定的にこれが異常だと決められるものでもないのです。

しかし、エコー写真でNTが通常の胎児より厚くなっているときには染色体異常や心臓の異常などの可能性が高くなるのです。似たような首の後ろに浮腫(透亮像)があり、NTと混同されがちな嚢胞性ヒグローマでは染色体異常の可能性が約70%と非常に高い確率です。NTが厚くても正常なお子さんの場合もあることにご注意ください。
胎児の後頚部浮腫(首の後ろのむくみ)NTの肥厚を認めた場合、赤ちゃんには染色体異常またはその他のさまざまな形態異常(見てわかる形の異常)、特に心奇形のリスクが増加します。(Simpson. 2007) 。

1.ダウン症候群(21トリソミー)

全体として最も多い染色体異常はダウン症候群(21トリソミー)(トリソミー21)です。ダウン症候群(21トリソミー)のリスクは母体年齢とともに上昇し、25歳以下の妊娠では1400人に1人、35歳では350人に1人、40歳では200人に1人となります。

ダウン症候群(21トリソミー)は、NT肥厚に関連する染色体異常として2番目に多いとされています。妊娠11~14週目の胎児における母体年齢とNTの厚さの組み合わせによるダウン症候群(21トリソミー)のスクリーニングは、1990年代に導入されました。この方法では、ダウン症候群(21トリソミー)に罹患した胎児の約75%を特定することができます。12週目にNT肥厚陽性と判定を受けた後の自然流産率は約30%となっています。

関連記事:ダウン症(ダウン症候群・21トリソミー)とは?身体的特徴や症状、原因、寿命、確率などを解説します

2.ターナー症候群(モノソミーX)

NT肥厚を来す最も多い疾患はターナー症候群モノソミーX)となっています。

その他の疾患

  1. 18トリソミー
  2. 13トリソミー
  3. 三倍体(染色体のセットが3つある)
  4. 正常な核型を持っているがその他の異常がある

正常な染色体数の胎児でNT肥厚がある場合、その他の胎児異常や遺伝性症候群がある可能性があります。

関連記事:18トリソミー(エドワーズ症候群)とは?原因・リスク・治療法など解説
【医師執筆】パトウ症候群(13トリソミー)|症状・原因・エコー・治療法・妊娠中の出生前診断

NTが厚いと産婦人科で言われました、どうすればいいですか?

NTは、それ自体で赤ちゃんが何の疾患なのかを決定できるものではありません。しかし、NTが少なくとも3mmまたは99パーセンタイルを超えるようであれば遺伝カウンセリングを受け、また心臓も含めた精査超音波も受けるべきでしょう。
さらに、NT(後頚部透亮像・首のうしろのむくみ(浮腫・肥厚)頸部浮腫)肥厚が陽性の場合はNIPT(新型出生前診断)および診断的検査を提供されるべきだと米国産科婦人科学会では推奨されています(ACOG、2016c) 。

胎児浮腫(NT)が自然に消える可能性はどれくらいあるの?

NTとは実は染色体異常の有無とは関係なく妊娠中期の妊娠l6~18週に消える場合がほとんどです。なぜなら14週を過ぎると胎盤のリンパ系が余分な流体を排出するために十分な発達をするからです。胎盤の循環動態の変化は、末梢血管の抵抗が低下していき、首のうしろにあるリンパの流れが良くなるとNTが消えると言われています。

ところがNTが自然消失したからと言って染色体異常の可能性が否定されるわけではありません。必要と判断されたら羊水検査絨毛検査などを受けることになります。先述したようにその前にスクリーニング検査としてNIPT(新型出生前診断)を米国産婦人科学会が推奨していることはお伝えした通りです。

羊水検査や絨毛検査は出生前診断検査の中でも確定的検査といって診断に直結する検査なのですが、侵襲が大きいため、実際にそういう侵襲的な検査が必要かどうかを非確定的ではあるが非侵襲的な(侵襲のない)出生前診断検査であるNIPTでスクリーニングして、本当に必要があれば羊水検査などの侵襲的検査に進む、という考え方が主流になっています。どんどん変わっていくので情報はマメに自分自身でアップデートしないといけません。

NT値が正常でもダウン症のこともある

胎児の後頚部浮腫(首の後ろのむくみ)NTが消えたからと言って染色体異常疑いが消えるわけではありません。先述したように、NTとは14週すぎて赤ちゃんのリンパの流れがよくなると改善して16週あたりで自然に消失するものです。NT肥厚が消失したからといって、染色体異常の疑いがなくなったわけではありません。

また、もともとNT値が正常でもダウン症の可能性が否定されるものではないことも今までに述べた通りです。

NT(胎児後頚部浮腫)の正常値、異常値とは?

NTも妊娠の週数によって正常値の基準があり、下のとおりです。

  • ・妊娠11週の胎児のNT(後頚部浮腫)の正常値の範囲は1-2.8 mmです。
  • ・妊娠12週の胎児のNT(後頚部浮腫)の正常値の範囲は1.2-3.1 mmです。
  • ・妊娠13週の胎児のNT(後頚部浮腫)の正常値の範囲は1.6-2.4 mmです。

NT(胎児後頚部浮腫)の正常値、異常値の考え方

NT自体はお伝えしたように正常な赤ちゃんたちにも全員に認められるエコー所見です。しかしママさんの気持ちとしてはNTの正常値が気になりますよね?

実は、NTの正常値は赤ちゃんの頭殿長CRLの値により決まっています。NTが95パーセンタイル(95%の赤ちゃんが入っている値を95パーセンタイルといいます)を超える場合をNT増加(異常値)とし、頭殿長(頭からお尻までの長さ)にかかわらずNTが3.5mm以上であれば99パーセンタイルを越えたとして扱います。NTが増加と判断されなければ、正常値ということです。

しかし、NTの正常値を超えたからといって直ちにお子さんに異常があるわけではありません。NTが6mmにまで肥厚した場合であっても、染色体疾患異常である可能性は50%です。しかも正常の赤ちゃんの可能性も30%あります。

つまり、NTが肥厚しているからと言って、お子さんが染色体異常の可能性が100%に近づくのではありません。

NTでは3mm以上の肥厚が認められたら母体血清マーカー検査は正常となりにくいと報告されています(Comstock,2006)。NTがもっとも大きな群(6.5mm以上)ではその65%に染色体異常があり、流産死産といった胎児の致死率は約20%となります。

だからこそ、しつこいですが、NT肥厚が陽性の場合はNIPT(新型出生前診断)をおすすめしているのです。

NT値とCRL(胎児頭殿長)と染色体異常の可能性の関係

Increased nuchal translucency with normal karyotype
NT肥厚

この図の見方
胎児の頭臀長が45㎜ならば以下のようになります。この図から読み取れることは、NT値が正常値だと93%の赤ちゃんが健常で出産に至るということであり、ダウン症などの染色体異常がない事を意味するものではありません。

頭臀長 mmNT mm染色体異常の可能性%
451-1.90.2
2-3.43.5
3.5-4.420
4.5~5.433
5.5~6.450
6.5以上65

こうしてみていくのですが、別の表にしましょう。

NT値の頭殿長による正常値、異常値

下の表は、赤ちゃんの頭殿長(とうでんちょうと読みます)(crown-rump length;CRL)とそれに見合った週数とNTの正常値、異常値を表したものです。

妊娠週数胎児の頭殿長CRL(mm)胎児後頚部浮腫の期待値
25%タイル(正常値)50%タイル(正常値)95%タイル(異常値)
妊娠11週0日40㎜0.31㎜1.22㎜2.14㎜
妊娠11週3日45㎜0.40㎜1.32㎜2.24㎜
妊娠11週6日50㎜0.50㎜1.42㎜2.34㎜
妊娠12週3日55㎜0.60㎜1.52㎜2.44㎜
妊娠12週6日60㎜0.70㎜1.62㎜2.54㎜
妊娠13週2日65㎜0.80㎜1.72㎜2.64㎜
 70㎜0.90㎜1.82㎜2.73㎜
 75㎜0.99㎜1.91㎜2.83㎜
 80㎜1.09㎜2.01㎜2.93㎜
 85㎜1.19㎜2.11㎜3.03㎜

※頭殿長(CRL)を妊娠週数計算のパラメーターにする場合、信頼できる精度は頭殿長CRLが10~50mmの範囲ですので、あくまでも妊娠週数ではなく赤ちゃんのCRLに注目してこの表をご覧ください。

妊娠12週でNT値2mmは正常?

上の表から、妊娠12週でNT値2.0mmは正常だとわかると思います。妊娠11週、頭殿長(CRL)45㎜の赤ちゃんでもNTの異常値は2.14㎜ですので、2.0㎜はそれより小さいことになります。そのため妊娠12週だと正常値になるのです。

NTの計測はどれくらい正確なのでしょうか?精度は?

NT肥厚があると、胎児の染色体異常、先天性心疾患、または子宮内胎児死亡となる確率が高くなりますが、一般的に、染色体異常のスクリーニング検査としては、NTだけでは不十分です。
カットオフ値についても、単一のカットオフ値(2.5mmまたは3.0mmなど)を使用することは不適切です。 なぜなら、NTは通常、10~13週目から妊娠週あたり約15%~20%増加する、つまり妊娠週数とともに増加することが知られているからです。

妊娠12週目では、NT値の平均は2.18mmとなっています。しかし、染色体が正常な胎児の約13%が2.5mmを超えるNTを呈するのです。
染色体異数性を正確に検出するためにはNT(後頚部透亮像・むくみ(浮腫・肥厚))を高い精度で描出して計測しなければならないりません。これによりアメリカでは標準化された訓練検定、継続した復習プログラムが実現しています。

したがって、NT測定の精度を最も左右するのは、超音波検査をする医師の技術力だと言えます。下手な医師にかかると、斜めに測定してしまい、NTが高く出る傾向があります。

NT(後頚部透亮像・むくみ(浮腫・肥厚))を単一マーカーとして使用する場合

NTの値だけでダウン症の胎児を探し出そうとした場合、NTは偽陽性率5%、ダウン症候群の2/3を検出可能(感度62%)です。
しかし一般的にNT(後頚部透亮像・むくみ(浮腫・肥厚))は、血清スクリーニングで精度が低いまたは結果を出せないとされる多胎においてのみ単独で使用されます。

NTを測定するときに何か決まりはあるものでしょうか?

NT測定は以下のガイドラインを厳密に守って行います。

  1. ・NTの縁は正確にキャリパーがおけるように明瞭でなければならない
  2. ・胎児は正中矢状断でなければならない
  3. ・胎児の頭部、頸部,上部胸郭が全体をみたすようにするため、画面を拡大する
  4. ・胎児の頸部は屈曲や伸展をしていないニュートラルな位置であること
  5. ・羊膜がNTのラインと分離して描出されなければならない
  6. ・計測には検査機器のキャリパーを用いること
  7. ・+キャリパーは後頸部のスペースの境界線内側に置きキャリパーの水平方向の横棒自体はこのスペースにはみ出ないようにする
  8. ・キャリパーは胎児の長軸と垂直に置く
  9. ・NTの測定は幅が最も大きい部位で測定する

このエコー写真は実際にNTが厚いという写真です。当院症例をお出ししています。
NT陽性

胎児の後頚部浮腫(首の後ろのむくみ)NTを計測するのに適した時期は?

お伝えしたように、NT自体は妊娠週数が進むと自然になくなります。NTを計測するのに適した時期は自然に小さくなるまでの14週までで、赤ちゃんの頭殿長CRLが45~84mm(およそ妊娠11週0日~13週6日) と定められています。

いまどき妊婦健診でNTを測らないってあるのでしょうか?

先生によっては「測らない」という方針の人もいるかもしれません。なぜならNT計測自体は、染色体異常の可能性と密接に結びついており「出生前診断」の一部をなすからです。

しかしながら、最近の妊婦健診でNT測らないほうが珍しいと思います。ところが、「NT測りましたよ」とちゃんと医師が説明するかどうかは別の話です。

ミネルバクリニックでも、医師が「NT?」と書き、翌週来るよう言われて来たけどカルテに「正常」とだけ書いて何も説明してくれなかった。だから不安でたまらない、といってNIPTを受けた28歳が18トリソミーだった、という症例があります。NTは染色体異常の可能性をチェックするものですが、正常だからと言って染色体異常の可能性がないというわけではありませんので注意が必要です。

NT計測の精度高めるために:NTを計測するための産婦人科医の資格

NT計測はダウン症候群(21トリソミー)などの可能性を示す超音波マーカーであり、これもまた出生前診断の要素を持つということを重くみて、欧米では行うにあたり質を担保するために、資格を創設しています。また、NT測定を行うための専門的資格認定を受けた後も、更新を受けるために症例を報告して審査を受けることが義務付けられていて、日本とは全く異なる体制と質で行われています。
その資格を付与しているFMFという団体のHPがこちらです。

The Medicine Foundation

日本にはこうした資格はありません。つまり、日本ではNTを計測する医師たちの質が担保されていないので、技術力に大きなばらつきがあるのです。
こうした事象一つをとっても、日本の医療制度の問題点が浮き彫りになっています。

まとめ

妊婦健診で初めてNTと聞いて戸惑う妊婦さんがいるお気持ちがわかります。医師から説明されても知識もないので曖昧だから不安になるのは当然です。しかし、NTだからといって染色体異常になると決まったわけではないのだけでも覚えておいてください。日本では、この検査をどのように妊婦さんに提供してゆくべきか、日本国内でははっきりとした基準はありません。

したがって、もしNT肥厚(ひこう)が認められたならば、NIPT(新型出生前診断)を受検するのがいいでしょう。ただし、医院選びは重要です。日本医師会と日本産婦人科学会から認定を受けていない無認可のクリニックでは遺伝カウンセリングを実施しているところはほとんどありません。なぜなら遺伝子に関する専門知識を持つ医師がいないからです。認可施設の場合、遺伝カウンセリングが義務化されていますが、日時が決まっている病院が多く、日程調整するのが大変です。

しかし、ミネルバクリニックは無認可施設ではありますが、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを実施しており、平日は20時まで土日祝日も診療しているのでご都合に合わせてご来院いただけます。しかもオンライン診療を実施しているのでご自宅に居ながらにして専門的な知識を医師とのカウンセリングが可能です。

もしお腹の中にいる赤ちゃんのNTについて不安をお持ちであればお気軽にお問い合わせください。

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この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号