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発達障害の種類|子どもの成長具合が心配な親が今すべき全ての行動を解説

目次

育児をしているとどうしても他の子どもと比較をしてしまいます。

「よその子はできるのに、なぜうちの子どもはできないの?」
「周りの子どもに比べて、うちの子どもは少し変わっている?」

そんな心配から「自分の子どもは発達障害ではないか?」と心配する親も少なくありません。

そこでこの記事では、発達障害の種類について以下の内容をお伝えします。

  • ・発達障害の種類・特徴・原因・症状
  • ・発達障害を疑った時の対応方法
  • ・相談先や社会的なサポート体制

この記事を最後まで読むことで今すべきことが明確になるので、ぜひご覧ください。

発達障害とは?原因や特徴を解説

発達障害とは、生まれつき脳機能の成熟に偏りがあることが原因で発症する精神遅滞障害のことです。

周りの子どもより「言葉や知能に遅れがある」「友達の輪に入るのが苦手でいつも1人で行動している」などが見られたら、発達障害の可能性もあります。

というのも発達障害の子どもは、周りとの人間関係作りやコミュニケーションが苦手な傾向があり、時には日常・社会生活を送るのが難しいケースもあるからです。また、周りから見ても変わり者として扱われたり、「空気が読めない」と言われたりすることもしばしばあります。

一方で個人のキャラクターや特徴としてポジティブに捉える動きもあり、むしろ分野によっては特性を発揮するなど障害が功を奏すこともあるのです。これらの背景には近年、発達障害に関する研究が進み、社会的な理解が高まったことが関係しています。

では次章以降で、具体的な発達障害の種類に分けて詳しく解説します。

発達障害の5つの種類

発達障害

発達障害の種類は、以下の5つです。

  • 種類①:自閉症スペクトラム障害ASD
  • 種類②:注意欠如・多動性障害(ADHD
  • 種類③:学習障害(LD)
  • 種類④:チック症(トゥレット症候群
  • 種類⑤:吃音症

それぞれの障害によって症状が全く異なるため、混ざらないように違いについて正しく理解しておきましょう。

種類①:自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」の総称です。

2013年にアメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)により「自閉症」という呼び方は廃止されて「自閉症スペクトラム」or「自閉スペクトラム症」という障害名に統一されました。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の主な特徴は、以下の通りです。

  • ・言葉や表情などコミュニケーションが苦手
  • ・相手の気持ちや考えをイメージできない
  • ・特定のことだけに強いこだわりや興味を示す
  • ・「過敏症」or「鈍感症」

学生時代は個性やキャラクターとして周りから受け入れられていたものの、社会に出ると障害による症状が目立つケースがあります。

※参考資料:厚生労働省/知ることから始めよう みんなのメンタルヘルス

種類②:注意欠如・多動性障害(ADHD)

注意欠如・多動性障害(ADHD)とはその名前の通り「集中力が低く」「じっとしていられない」障害のことです。

注意欠如・多動性障害(ADHD)は、以下の3タイプに分けられます。

  • ・不注意優勢型:多動・衝動行動よりも不注意が目立つタイプ
  • ・多動性–衝動性優勢型:不注意よりも多動・衝動行動が目立つタイプ
  • ・混合型:上記の2つのタイプが混合しているタイプ

厚生労働省のデータによると2歳頃から発症して、学齢期の子ども全体の「約3〜7%」がADHDであることが分かります。つまり、学校の30人クラスに1人はADHDの子どもがいる計算です。

そのように考えると、ADHDは珍しい障害ではないのです。

ADHDについて詳しく知りたい方は「子どものADHDは見た目で分かる?診断と検査・治療法や相談先について解説」の記事が参考になるため、ぜひご覧ください。

※参考資料:厚生労働省 e-ヘルスネット/ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療

種類③:学習障害(LD)

学習障害(LD)とは、全般的な知的発達に遅れはないにも関わらず、「読む」「書く」「計算する」など特定の学習行為だけが極端にできない障害のことです。

難しいと感じる行為によって、以下の表現がされます。

  • ・ディスレクシア(読字障害)
  • ・ディスグラフィア(書字障害)
  • ・ディスカリキュリア(算数障害)

本格的に学習が始まる小学校(学童期)にならないと障害に気づきにくく、低学年の間は「勉強不足」「努力が足りない」などと言われて、見過ごされるケースも少なくありません。支援や介入までに時間がかかり、その間にも自己肯定感が下がる原因になります。

また、学習到達度は通常の子どもよりも1〜2学年下になる傾向があります。自分の子どもだけ勉強についていけていないなら、「なぜ学習が遅れているのか?」という視点で子どもを観察すると良いでしょう。

2013年以降は精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)により「限局性学習症/限局性学習障害(Specific Learning Disorder)」に名称を変更されていますが、学習障害(LD)の呼び名が浸透しているのが現状です。

※参考資料:厚生労働省/知ることから始めよう みんなのメンタルヘルス

種類④:チック症(トゥレット症候群)

チック症とは、運動や発声が本人の意思とは無関係に行われる障害のことです。「1000人に3〜8人」の割合で発症し、女性より男性の方が「約2〜4倍」も多いと分かっています。

チック症(トゥレット症候群)では、以下の症状が有名です。

  • ・まばたき
  • ・咳払い
  • ・鼻水も出ていないのにすする
  • ・声を出すなど

徐々に症状が悪化する傾向にあり。一度発症すると1年以上も症状が改善しないこともあります。

日常生活に支障をきたすレベルになると、一般的に「トゥレット症候群」と呼ばれます。典型的なトゥレット症候群は「4〜6歳」に発症して「10〜12歳」をピークに徐々に症状が軽くなります。

チック症やトゥレット症候群は、本人の体質や脳機能の働きにより発症するものであり、ストレスや育児環境が原因ではありませんので、ご安心ください。

※参考資料:NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター/チック症・トゥレット症

種類⑤:吃音症

吃音症とは、発語の際に以下の症状が出る障害のことです。

  • ・言葉が出ない
  • ・上手く発音できない
  • ・特定の行(サ行など)が言えない
  • ・言葉を伸ばして発音できない
  • ・言葉に詰まって繰り返し発音をする

言葉が出なかったり、詰まったりするため周囲と円滑なコミュニケーションが難しいと感じて障害に気づきます。学童期には障害が原因でからかわれたり、笑われたりすることもあるため、周りで見守る大人の理解と配慮が必要になるでしょう。

吃音症の特徴は一般的に「どもる」と表現されます。ほとんどは「発達性吃音」という幼児・児童期に出始めるものであり、成人期に向かうにつれて徐々に軽くなっていきます。

一方で「獲得性吃音」という神経学的疾患や脳損傷・ストレスが原因で引き起こされる吃音症もあります。この場合は、過度なストレスがかかっていないかを確認してあげることも必要でしょう。

※参考資料:国立障害者リハビリテーションセンター研究所/吃音について

【障害別】発達障害の症状|サインに気づいて早めの対応を

育児に疲れた母親

発達障害の種類により症状の現れ方は違います。

そこでこの章では、以下の3つの障害の症状をそれぞれお伝えします。

  • ・自閉症スペクトラム障害(ASD)
  • ・注意欠如・多動性障害(ADHD)
  • ・学習障害(LD)

また、発達障害と一口に言ってもこれらの障害が併存(2つ以上あること)していること、お子様の障害の程度や性格にも左右されます。

そのため、絶対的な症状はないという前提を踏まえて、ご覧いただけると幸いです。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の症状

自閉症スペクトラム障害(ASD)の代表的な症状は、以下の通りです。

  • ・集団行動は苦手
  • ・視線が合わない
  • ・ほほえみや笑みに対する反応に乏しい
  • ・指さしなど他への関心は少ない
  • ・模倣が少ない
  • ・言語発達が遅い
  • ・語彙が広がらない
  • ・特定のことだけに強いこだわりを示す
  • ・過敏症・鈍感症

知的能力障害(知的障害)や言語発達の遅れが伴わない自閉症スペクトラムの場合、会社で働くようになって初めて診断されるケースも稀ではありません。というのも、幼少期は個性やキャラクターとして成立していても、社会では協調性が求められるからです。

一方で、特定のジャンルに対しては強いこだわりや興味を示し、周りの子どもとは一線を画した存在として一目置かれることもあります。自閉症スペクトラムによる障害の程度は人それぞれであるため、身をおく環境が非常に重要になるでしょう。

※参考資料:NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター/自閉スペクトラム症(ASD)

注意欠如・多動性障害(ADHD)の症状

注意欠如・多動性障害(ADHD)の代表的な症状は、以下の通りです。

  • ・落ち着きがない
  • ・待てない
  • ・行動抑制できない(自制心がない)
  • ・計画性がない(衝動性がある)

これらの障害により学童期以降は集団行動が難しくなり、クラスメイトや周りの人との関係性が崩れてしまいます。ADHDの子ども自身は「なぜ周りと上手くできないのか」理解できず、1人で悩んでいる可能性もあるため、周りの大人が注意して見てあげましょう。

学童期の子どもの「3〜7%」がADHDであり、女の子より男性の方が「3〜5倍」も多いと言われています。成人期になると全体の「2.5%」で、男女比は「1:1」です。

※参考資料:NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター/ADHD(注意欠如・多動症)

学習障害(LD)の症状

学習障害(LD)の方は以下の行動を苦手と感じています。

  • ・聞く
  • ・話す
  • ・読む
  • ・書く
  • ・計算
  • ・推論

学習過程における特定の行動が困難になる特徴があり、人によって症状の程度は異なります。幼少〜学童期では、周りよりも数字や文字を覚えるのが遅いことがあげられます。また見本や答えを見ながら学習しても、それ通りに再現できません。

小学生高学年になると学習遅れが目立ち、不登校や引きこもりなどの原因になることもあります。そのため、親や学校の先生が注意深く見守ってあげないと、取り返しのつかないことになりかねません。

社会人になるとマニュアルの理解に苦しんだり、多重タスクをこなせなかったりして、仕事をする上で様々な支障が目立つようになります。また、自分で考えて行動する力が求められる社会では苦痛に感じることもあるでしょう。

学習障害も脳機能の問題により発症すると考えられています。しかし、今のところ脳のどの部分に問題があるか特定はされていないのが現状です。

発達障害を疑ったらどうする?受診機関・検査

ADHD

お子さんの発達障害を疑ったなら、以下の診療科がある病院を受診すると良いでしょう。

  • ・小児科
  • ・児童精神科
  • ・小児神経科
  • ・発達外来

本の一例であり、病院やクリニックごとに診療科の名前が多少違います。また、大学や総合病院など規模の大きい病院だと、診断結果によって追加の精密検査もできるでしょう。

診断には「発達検査」と「知能検査」が行われます。

発達検査とは、その子の発達の状況や困難に感じることなどを検査します。一方の知能検査とは、知的能力の状況を把握するために行う検査です。これらの検査から子どもが日常・社会生活を送る上で難しい・辛いと感じていることを明らかにして、治療方針を立てます。

発達障害の子どもへの3つの治療法

仲良しの子どもたち

発達障害は生まれつきの脳機能の偏りが原因で発症します。そのため、治療により完治することはありません。しかし、症状や二次的な障害については、治療でコントロールしたり、軽くしたりができます。

この章では、発達障害の子どもの治療法について、以下の3つを解説します。

  • ・治療法①:薬物療法
  • ・治療法②:療育(発達支援)・カウンセリング
  • ・治療法③:SST(ソーシャルスキルトレーニング)

お子様の障害の程度に合わせて、最も必要な治療を受けるための参考にしていただけると幸いです。

治療法①:薬物療法

障害の原因である脳機能や脳内の伝達物質のコントロールをする薬物療法があります。注意点としては、根治的な治療ではなく、あくまで対症療法がメインであることです。そして、対象となるのは、日常生活に支障が出るほどの症状がある場合です。

また、処方についても副作用による影響を考えて、原則6歳以上が対象となります。

処方される薬の中には副作用が強いものもあるため、医師の説明をしっかりと理解した上で始めましょう。

薬物療法の目標は、日常生活に支障のない程度に症状を落ち着かせること、そしてそのために必要な最低量の薬剤を使用することです。過剰・過小投与を避けるために長期的な経過観察が必要なので、自己判断で治療を中断しないようにしましょう。

治療法②:療育(発達支援)・カウンセリング

療育(発達支援)とは、個人の障害の程度や困難に感じている課題を明確にして、個別性にあった支援をすることです。

発達障害の種類や程度は人によって違うため、本人のペースに合わせた関わりが求められます。療育を通して自立支援(できることを増やす)や本人も気づいていない隠れた能力を引き出します。

そして、社会に出ても自立して自主的に成長できる支援が行われます。

また、カウンセリングは本人・ご家族が対象です。育児や生活で難しいと感じている課題を明確にして、解決するためのアドバイスや指導をしてもらえるでしょう。

治療法③:SST(ソーシャルスキルトレーニング)

薬物療法で症状が落ち着くと、SST(ソーシャルスキルトレーニング)治療が始まります。SSTとは、対人関係を構築していくために必要な生活・社会的な技能トレーニングのことです。

発達障害であると、対人コミュニケーションから学ぶべき態度や振る舞いを身につけられない可能性があります。そこで、SSTを通して集団の中で良い人間関係を保ちつつ生きていくためのスキルを学びます。

例えば、グループゲームを活用したSSTがあります。ゲームはある一定のルールを守って行わなければいけません。対戦相手に勝つためには、チーム内で協力する必要があります。ゲームを通して、社会で必要なスキルを学ぶことができるのです。

発達障害の子どもの育児に悩む方の相談先

発達障害の文字とブロック

発達障害の育児の悩みを相談できる相手がおらず、どのように向き合えば良いかが分からない方もいます。

相談できる相手がいるだけでも心の支えになりますが、多くの方は「誰に相談すれば良いか」が分からず、結果1人で悩み苦しむこととなります。

そこでこの章では、発達障害の育児に悩む方の相談先について、以下の3つを紹介します。

  • 相談先①:専門病院
  • 相談先②:発達障害者支援センター
  • 相談先③:自助会

それぞれの相談先のメリットやどのような時に利用すべきかについて解説していますので、参考にしていただけると幸いです。

相談先①:専門病院

確定診断を含めて発達障害について相談したいなら、専門病院を受診しましょう。小児科や小児精神科などの診療科がある病院が候補になります。

受診すると以下の検査が行われます。

  • スクリーニング検査
  • ・認知機能検査

これらの検査から以下の内容が分かります。

  • ・日常・社会生活での支障の程度
  • ・本人が困難に感じていること
  • ・症状の特徴や傾向

上記検査に加えて、アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)を基準とした問診を行い、発達障害の有無について総合的に診断します。

また、専門病院を受診すると医師以外の専門家にも相談できます。例えば、育児によるストレスが強い方であれば臨床心理士のカウンセリングが効果的でしょう。障害や症状に対する対策なら看護師に相談すると具体的な提案をしてもらえます。

専門的な知識に基づいたアドバイスを受けられるため、今抱えている課題を早期に解決できるかもしれません。

相談先②:発達障害者支援センター

発達障害者支援センターとは、厚生労働省により各都道府県・指定都市に設置された本人・ご家族に対して「相談・発達・就労支援」や「情報提供」を行う施設のことです。

発達障害の方の保健・医療福祉・教育・就労などの関係機関と連携して、障害者本人やその家族の相談やアドバイス、指導などを行うことを目的としています。また、これらの連携を通して、地域で障害者を支えるネットワーク作りをしています。

「専門病院に相談するのはハードルが高い」「ちょっとした相談に乗ってほしい」などの方は、発達障害者支援センターを利用すると良いでしょう。相談内容によっては、各専門機関を紹介してもらうことも可能です。

各都道府県における発達障害者支援センターは、国立障害者リハビリテーションセンターのページでご確認ください。

※参考資料
厚生労働省/発達障害者支援施策の概要
国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター/発達障害者支援センターとは
国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター/発達障害者支援センター・一覧

相談先③:自助会

発達障害の子どもの育児や関わり方など日常生活で困ったことがあるなら、自助会を活用することをおすすめします。

自助会は実際に発達障害の子どもの育児をしたことがある親や現在悩んでいる方の集まりです。そのため、日常生活におけるリアルな悩みや具体的な解決策を教えてもらえるでしょう。

また、実際に経験した人でないと共感できない悩みや課題もあるため、より親近感を持った相談相手を作るといった意味でも利用する価値はあります。

最近だとオンライン対応やメルマガなどの購読形式のものもあり、利用するハードルは低くなりました。発達障害の子どもの育児には、絶対的な正解やゴールはなく、1人で悩み続けても解決することはありません。

自助会などを通して、様々な視点や考えを養い、お子さんに最適な育児方法や関わり方を考えられるようになりましょう。

※参考資料
一般社団法人 日本発達障害ネットワーク
特定非営利活動法人 アスペ・エルデの会

発達障害の子どもと関わる際の5つのポイント

ダウン症、笑顔、幸せな赤ちゃんは、ベッドでリラックスして楽しんだり、おもちゃで遊んだり、家で幸せを楽しんだりします。 寝室での幼児の知的障害、精神障害、子供の発達

発達障害の子どもとの関わり方に絶対的な正解はありません。

そこでこの章では、発達障害の子どもと関わる際のポイントを5つ紹介します。

  • ・ポイント①:得意を伸ばし、できないことは温かく見守る
  • ・ポイント②:説明する時は視覚的な情報を取り入れる
  • ・ポイント③:短い文章で具体的に伝える
  • ・ポイント④:急なスケジュール変更は避ける
  • ・ポイント⑤:明確なルールを設ける

これから解説する5つのポイントを押さえて関わるだけでも、関係性やお互いのストレスなどを大幅に下げられるでしょう。また発達障害による症状の悪化予防にもなる関わり方もあるため、参考にしていただけると幸いです。

ポイント①:できないことは温かく見守る

できないことは温かく見守り、得意なことを伸ばして、子どもの自己肯定感を高める関わりをしましょう。

発達障害の子どもも「なぜできないの?」と本人なりに悩み、苦しんでいます。そして、できていないことを頭ごなしに言われると自己肯定感が下がり、自分の殻に引きこもる原因になります。

一方で「得意」や「できる」を伸ばす関わりをすると、思わぬ才能を発揮することもあります。

例えば、筆者の友人で重度のアスペルガーを診断された方がいます。彼は会社に馴染めず退職をした一方で、絵を描くのが得意であったためイラストレーターを目指しました。結果、才能を発揮して今ではプロとして独立して活躍しています。

発達障害があっても得意を伸ばす関わりをすることで、社会でも活躍することは十分可能です。

ポイント②:説明する時は視覚的な情報を取り入れる

説明する時は視覚的な情報を取り入れると、こちらの意図した内容がより伝わりやすくなります。

発達障害の子どもは言葉からイメージしたり、頭の中で組み立てたりするのが苦手だからです。そのため、図解やイラストがあるとイメージや理解が深まりやすくなります。

理解や納得ができないと正しい行動は取れません。結果、こちら側がしてほしかったこととは違うことをする原因になります。

例えば、買い物をする際の手順を以下のようなイラスト手順で伝えると、理解してもらいやすくなります。

発達障害

J-stage/わかるように伝えるために~自閉症スペクトラム・知的障害のある人に~ P546より画像引用)

伝わらないと悩むのではなく、発達障害の特徴を理解した上で伝わりやすい方法を考える必要がありそうです。

※参考資料:J-stage/わかるように伝えるために~自閉症スペクトラム・知的障害のある人に~ P546

ポイント③:短い文章で具体的に伝える

短い文章で具体的に伝えると、その後の行動を促しやすくなります。

というのも、発達障害の子どもには以下の特徴があるからです。

  • ・一度に大量の情報をまとめたり、整理したりできない
  • ・集中して長時間話を聞けない
  • ・具体的なイメージができないと行動に移せない

また、伝える側のご両親にとっても以下のメリットがあります。

  • ・子どもの特徴を考慮して短い文章で伝えられるようになる
  • ・伝えるストレスを減らせる
  • ・行動に移してもらいやすいためコミュニケーション意欲になる

頑張って伝えたのに何一つ伝わっていないと悲しいですよね。伝わっていないのに行動を促されても発達障害の子どものストレスにもなります。お互いが正しく理解して、納得した上で行動してもらえるように、具体的かつ短い文章で伝えるようにしましょう。

ポイント④:急なスケジュール変更は避ける

急なスケジュール変更は発達障害の子どもにとって過度なストレスやパニックを引き起こす原因になります。そのため、スケジュール通りに進められる配慮がいるでしょう。

例えば、毎日行う行動は時間割でスケジュール化したり、いつもと違うことをしなければいけない時は事前に伝えたりするなどの工夫が必要です。

また、急遽スケジュールを変更せざるをえない時はスケジュールや計画を伝えて、具体的なイメージができるようにすると発達障害の子どもも安心できます。私たちでも急なスケジュール変更には身構え、不安になります。それは発達障害の子どもも同じなのです。

ポイント⑤:明確なルールを設ける

明確なルールを設けてイレギュラーが発生しづらくすることも、発達障害の子どもと関わる上で非常に重要な関わりです。

明確なルールがないと「間違ったことをしてしまったらどうしよう…」と不安にさせてしまいかねません。不安が強いと萎縮したり、最悪の場合パニックや思考停止になったりすることもあります。

一方で明確なルールがあれば何事にも安心して参加でき、積極的に挑戦するきっかけにもなるでしょう。また、物事を順序立てて進めたり、決断したりするのが苦手な発達障害の方にとって、明確なルールがあればとっさの判断に迷うこともありません。

※参考資料:厚生労働省/発達障害の理解

発達障害の子どもへの社会的な4つのサポート体制

失語症の娘の世話をする母親

発達障害の子どもが受けられる社会的なサービスがあることをご存知でしょうか?

サポートを受ける・受けないでは日常・社会生活のしやすさが随分と違ってきます。

そこでこの章では、以下の4つについてお伝えします。

  • サポート①:障害者手帳
  • サポート②:障害福祉サービス
  • サポート③:障害年金
  • サポート④:法律の整備

簡単に申請手続きができて様々なサービスやサポートを受けられるため、利用しない手はありません。申請先や具体的なサポート・サービスの内容について詳しく解説するため、ぜひご活用ください。

サポート①:障害者手帳

障害者手帳の申請で経済的な負担を減らしたり、社会的なサービスを受けたりできます。

申請できる障害者手帳は、以下の通りです。

  • ・療育手帳
  • ・精神障害者保健福祉手帳

療育手帳とは、児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)へ申請して、知的障害が認められた方へ交付される手帳のことです。取得することで「障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス」や「各自治体や民間事業者のサービス」を受けられます。

一方の精神障害者保健福祉手帳とは、基準以上の精神障害(発達障害を含む)があると認められた方に交付される手帳のことです。

これらの手帳を交付されることで受けられる具体的なサービスは、以下の通りです。

  • ・入園を優先的に受けられる
  • ・特別支援学校への入学
  • ・就労支援
  • ・各種税金の減税・控除・非課税
  • ・公共交通機関の割引
  • ・障害者医療費の助成制度(条件による)

教育や就労、税金に至るまで様々な負担を減らせます。

障害を抱える子どもを育てていると、思うように仕事ができず経済的に苦しい状況になるケースも少なくありません。そこで療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を申請して経済的な負担を減らしましょう。

※参考資料
厚生労働省/障害者手帳
厚生労働省/精神障害者保健福祉手帳

サポート②:障害福祉サービス

障害福祉サービスとは、障害の程度に応じて「障害者総合支援法」「児童福祉法」に基づいて提供されるサービスのことです。身体・知的障害をはじめ、発達障害などの精神障害もサービスの対象となります。

種類は、以下の2つです。

  • ・介護給付
  • ・訓練等給付

介護給付とは、日常生活援助やショートステイ(短期入所)・施設入所支援などのサービスのことで、介護負担を減らすことが目的になります。この他にも入浴や通院の介助、生活等に関する相談及び助言など様々なサービスを受けられます。

一方の訓練等給付とは、障害のある方が自立した日常・社会生活を送るのに必要な訓練を行うサービスのことです。自立生活・共同生活支援や定職につくための就労支援などのサービスでサポートしてくれます。

サポート③:障害年金

場合によっては、発達障害により障害年金を受け取れるかもしれません。

というのも、日本年金機構によると障害年金は「病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金」と定義されているからです。

そして、発達障害は生まれつき脳機能の発達や成長に偏りが生じた結果発症する障害と考えられています。障害によって日常生活に支障が出たり、営むことが難しかったりするなら、障害年金の対象になり得ます。

障害年金には、以下の2種類があります。

  • ・障害基礎年金
  • ・障害厚生年金

障害基礎年金とは、障害等級の1級・2級の障害があり、日本在住の20〜60歳の方が対象です。一方の障害厚生年金とは、障害基礎年金に上乗せされる障害年金のことです。いずれも障害の程度により審査されます。

また、障害年金の対象外になっても「障害手当金」という一時金を受け取れるので、申請してみる価値はあります。

※引用資料:日本年金機構/障害年金

 

サポート④:法律の整備

障害のある方の人権保障をするために法律が整備されている背景もあります。

例えば「障害者差別解消法 (正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」では、行政・学校・企業などの事業者に対して障害のない方と同じ人権を保障する「合理的配慮」が求められるようになりました。

また、この法律の整備により発達障害に対する社会的な認知が向上し、近年障害者に対する理解が高まってきました。

具体的な配慮の例は、内閣府のパンフレットをご覧ください。

合理的配慮
合理的配慮2⃣

内閣府より画像引用)

このように政府を上げて発達障害に対する配慮ある社会作りも行われているのです。

※参考資料
内閣府
国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター/発達障害のある人への合理的配慮

まとめ: 柔軟に育児ができるよう発達障害への理解を深めよう

2 番目の女性と伴侶犬を持つ精神障害のある女性

以上、発達障害の種類について詳しく解説しました。重要なポイントを以下にまとめます。

  • ・ASD・ADHD・LDなど発達障害には様々な種類・症状がある
  • ・子どもの発達障害を疑ったらまずは小児科・小児精神科のある病院を受診する
  • ・治療の基本は「療育」、日常生活に支障が出るなら「薬物療法」も検討される
  • ・発達障害の育児に悩んだ時の相談先を作ることが重要
  • ・親子でストレスのない関係作りができる関わりが大切
  • ・社会的なサポートを活用して経済的な負担を減らせる

発達障害の子どもの育児に正解はありません。育児をする両親は時に悩み、苦しいこともあるでしょう。そんな時は1人で悩まず、誰かに相談しても良いのです。例えば、この記事で紹介した「発達障害支援センター」もその一つです。

また、良い関係作りができるように発達障害の特性を理解した関わりをすることが重要です。得意なことは積極的にできるようサポートしたり、伝える時は図解やイラストを活用したりするなどの工夫が必要でしたね。

関わりに悩んだ時は、この記事を読み返して活用していただけると嬉しいです。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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