新型コロナウイルス特設ページトップに戻る

気分不良

妊娠中に新型コロナにかかるとどんな治療をするのですか?

妊婦さんは薬剤の使用方法が妊娠していない人と比べると違うので心配でしょうが、新型コロナウイルス感染症になっても軽症であれば回復するまで自宅で過ごせ、一般の人たちと同じですのでご安心ください。軽症とは、発熱や咳のような症状はあっても、息苦しくはない状態をさしています。
重い症状のある人や持病のある人は病院に行くことが必要になるかもしれません。入院する必要があれば、医師や看護師が赤ちゃんの体調もモニタリングしてくれます。
多くの医師が、新型コロナウイルス感染症の複数の治療法を調べているところです。医師が重症患者さんに効果のあった薬を使うように勧めることもありますし、治験に参加することを勧めるかもしれません。治験というのは新しい治療薬の効果を調べる科学的研究のことです。ただ、薬の中には妊婦さんには安全でないものもあるので注意が必要です。
新型コロナウイルス感染症にかかると熱が出ることがよくあります。妊娠中に熱が出たときの対処法については医師、看護師、助産師などにお尋ねください。 アセトアミノフェンは解熱に使えて、妊婦さんにとっても大体は安全な薬ですのでお飲みになって結構です。但し、アセトアミノフェンの解熱効果は切れ味良くはありませんが、辛い時に何も飲まないよりはいいと思います。
それでは、順番に妊娠中に新型コロナウイルスに感染してしまったらどういう治療管理をするのかを見ていきましょう。

妊娠中の新型コロナウイルス感染者の管理

無症状の妊婦患者の場合

新型コロナウイルス感染が確認された、またはその可能性のある無症状の妊娠中の患者ケアでは以下のことが重要です。

  • 重症化しそうかどうかというリスクを評価すること
  • 急速に発症する可能性がある呼吸器疾患をしっかりとモニタリングすること
  • 罹患期間中の感染制御と自己をしっかりと隔離すること
  • 予防措置の適切な中止のタイミングを見極めること

症状がない無症候性感染者が急激に悪化することもあるため、しっかりとモニタリングすることが必要です。重症化しやすい人は別ページに記載しています。

新型コロナウイルスに感染したことで何らかの症状のある症候性患者

何らかの症状のある症候性新型コロナウイルス感染妊婦患者の臨床ケアは、以下の因子で異なります。

どれくらい重症なのか
もともとなにか基礎疾患があるのか
妊娠合併症があるのか
おかれている社会的状況:セルフケアができるかなど

妊娠中の新型コロナウイルス感染症患者さんの重症化リスクを層別化するため、SMFMやACOGがフローチャートを作っています。

在宅ケア(外来でのケア)

日本では妊婦さんの場合は殆ど無症状でも入院管理しているようですが、病床がひっ迫するとそうはいかないかもしれません。
新型コロナウイルス感染症が明確に診断されたり、疑われた妊婦さんたちのほとんど(少なくとも86%)では、産科的な問題はなく、軽症(息切れがない)に終わります。
こうした軽症の新型コロナウイルス感染症の妊婦患者は、重症になりそうかどうかを注意深く観察し、感染管理、症状管理、産科的診療を新型コロナウイルス感染症の診断から2週間以内に少なくとも1回は受けたほうがいいでしょう。
新型コロナウイルス感染は重症化の危険因子がない患者であっても、どのような患者でも致死的な疾患を引き起こす可能性があることに注意することが重要なのです。大事なのは重症化しそうな症状(息切れ)を早期に発見して適切なタイミングで治療することです。
呼吸困難が悪化したり、アセトアミノフェンを適切に使用しているにもかかわらず39℃以上の発熱が持続する、経口水分摂取ができない、薬が飲めない、胸痛が続く、頭がぼーっとする、または産科合併症(例:早産、出血、破水)がある場合は速やかに医療機関に連絡する、もしくは救急医療を要請しましょう。但し、一般の救急車は新型コロナウイルス感染症を搬送できませんので、きちんと保健所から手配してもらいましょう。

在宅(外来)での治療は他の急性ウイルス性疾患と同じように、”症状に対して”行う支持療法と言われるものになります。水分をしっかりとる、十分な休息をとる、歩くなどの運動もする、早期離床によりアクティビティも保つことをお勧めします。

入院でのケア

入院治療したほうがいいのは以下のような新型コロナウイルス感染症妊婦患者となります。
1.入院を必要とする併存疾患(例えば、コントロール不良の高血圧または糖尿病、子癇前症、分娩前の膜破裂、子宮出血)。
2.アセトアミノフェンを使用しているのに、39℃を超える発熱(サイトカインストーム症候群が懸念されます)。
3.中等度または重度の症状:室内空気中および歩行中の酸素飽和度が95%未満、呼吸回数が1分間に30回以上 など
4.重篤な疾患-呼吸不全
5.適切な水分補給にもかかわらず低血圧
6.臓器機能障害:精神状態の変化、肝不全または腎不全、心機能障害 など

重篤な疾患を有する妊娠中の入院患者は、産科とICUを有する病院で多専門チームによるケアを受けるべきでしょう。

人工呼吸管理

新型コロナウイルス感染症重症患者は酸素補給のための人工呼吸管理が必要なことが多くなります。新型コロナウイルス感染症重症患者では急性呼吸窮迫症候群(ARDS)から重おい低酸素血症をおこす呼吸不全がよく見られます。新型コロナウイルス肺炎を有する重症患者の一般的な症状に対する治療(支持療法)、他の原因によるARDS患者さんとおなじです。

妊娠中は母体の末梢血酸素飽和度(SpO2)は、母体の酸素の必要量を上回る95%以上に維持されるべきと考えられています。SpO2が95%以下になると、酸素分圧(PaO2)を測定するために動脈から血液を採取して含まれている酸素や二酸化炭素といったガスの分量を調べる必要があります。胎盤の母体側から胎児側へとしっかりと酸素を受け渡すには、良好な酸素拡散勾配を維持する必要があります。水が高い方から低い方に流れるように、酸素も濃い方から薄い方に染みわたるように入っていくためです。母体の動脈血酸素飽和度PaO2が70mmHg以上であることが望ましいと考えられています。世界保健機関(WHO)は、患者が安定していれば、母体のSpO2を92~95%以上に維持してもよいと示唆しています。

新型コロナウイルス感染症関連急性呼吸促拍症候群ARDSの一般的な合併症には、急性腎障害、肝酵素の上昇、および心臓障害(例えば、心筋症、心膜炎、心嚢液貯留、不整脈、心臓突然死)があります。妊娠、運動能力の低下、および脱水がこのリスクに寄与する可能性があります。したがって、重度の新型コロナウイルス感染症で入院した妊娠中患者には、その使用に禁忌がない場合には予防用量の抗凝固療法が退院時まで推奨されています。
新型コロナウイルス感染症COVID-19で入院の必要性がない患者、または無症状または軽症でCOVID-19以外の理由で入院した患者は、抗凝固療法を必要としません。

デキサメタゾン(ステロイドホルモン)の使用

デキサメタゾン6mgを1日6回10日間、または退院まで投与することが、補助酸素または人工呼吸器サポートを受けている重症の非妊娠患者に推奨されています。
新型コロナウイルス感染症COVID-19の母体治療のためのグルココルチコイドの使用基準を満たし、胎児の成熟を誘導するための胎児用コルチコステロイドの使用基準も満たしている妊娠中の患者においては、胎児の成熟を誘導するために通常量のデキサメタゾン(6mgを12時間間隔で4回静脈内投与)を投与し、その後、6mgを毎日経口または静脈内投与で10日間、または退院までの間、どちらか短い方を継続投与します。

NSAIDs(非ステロイド消炎鎮痛薬)とアセトアミノフェンの使用

ACOG、WHO、欧州医薬品庁(EMA)は、医師の判断で指示された場合、COVID-19患者において非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を避けないことを推奨しています。最低限の有効量を使用し、理想的には48時間未満で、妊娠年齢に関連した潜在的な胎児毒性を考慮して決定されます。
NSAIDsは発熱や疼痛の治療に一般的に使用されているが、COVID-19の患者ではNSAIDsの副作用の可能性があるとの報告(エビデンスは薄い)があるため、このような不確実性を考慮して、可能であればアセトアミノフェンを好ましい解熱鎮痛剤として使用します。しかし、COVID-19に続発する肝機能障害を有する患者では、アセトアミノフェンには肝毒性があるため懸念されるのですが、1日あたり2グラム未満の投与量は、重度の肝疾患がない場合には安全であると考えられています。
妊娠中のアセトアミノフェンの使用は、早期から全体的に安全であることが示されており、発熱に関連する妊娠リスクを減少させると考えられています。COVID-19でみられる高熱は、第1期(12週まで)の器官形成期の発熱性疾患による母体の体温上昇が先天異常、特に神経管欠損や流産のリスクの増加と関連している可能性があるため、懸念されるのですがこれらの転帰の発生率の増加は実際のところ観察されていません。

抗ウイルス薬治療

COVID-19の治療にはいくつかの薬剤が使用され、評価されていますが妊婦を含む試験は非常に少ないものです。
【注意】日本で認可されている抗ウイルス薬は20201年1月18日現在、レムデシビルのみとなっていますのでレムデシビルについてのみ言及します。

レムデシビル

レムデシビルが使用可能な妊娠中の患者には、レムデシビルが推奨されます。
適応症については別のページをご用意いたしますのでご覧ください。
レムデシビルは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2、関連するその他のコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群SARSを引き起こすSARS-CoV-1、中東呼吸器症候群関連コロナウイルスMERS-CoVを含む)に対しても効果がある薬剤です。この薬はもともとエボラおよびマールブルグウイルス疾患の一部の妊婦において胎児毒性が報告されることなく使用されきたことから、重度の新型コロナウイルス感染症COVID-19を有する妊婦の治療に使用されています。COVID-19パンデミック時のこの薬剤のほぼすべての臨床試験では、妊娠中および授乳中の女性は除外されています。

新型コロナウイルス感染症COVID-19回復後のフォローアップ

母体のフォローアップ

新型コロナウイルス感染症COVID-19の患者は、退院後数日以内に外来フォローアップが必要でしょう。

胎児

胎児の成長が悪くなることが理論的に懸念されていますが、母体感染後の胎児の成長に関する新型コロナウイルス感染症COVID-19に特異的なデータは殆どありません。重要な胎盤の病理組織学的変化はずっと続くわけではないのですが、胎盤の機能不全が原因で胎児の成長が悪くなることは、母体の新型コロナウイルス感染症COVID-19が急性および慢性の絨毛の炎症や大きな胎児の血管の血栓を含む子宮胎盤の血管の問題による血流不全と関連していることが想定されています。これらの病変は、COVID-19関連の凝固障害、母体が新型コロナウイルス感染症中の胎盤の低酸素症、胎盤のウイルス感染、またはこれらの因子の組み合わせによって引き起こされる可能性があると考えられています。
しっかりとしたデータがない中で、感染が確認された第3三半期の妊婦は症状が消失してから少なくとも14日後に胎児の羊水量の超音波検査を少なくとも1回受けるべきであると考えられています。第1三半期または第2期三半期初期の感染者には、妊娠18~23週に詳細な胎児形態学的検査(超音波診断)を行うことも必要でしょう。

まとめ

妊娠中に新型コロナウイルスに感染してもほとんどの妊婦さんは無症状から軽症ですので、過剰に怖がらず、しかし甘く見ず、しっかりとマスクと手あらいを徹底してソーシャルディスタンスをとり、かからないように頑張りましょう。

ミネルバクリニックでは、出生前にあかちゃんの健康状態をみることができる「出生前診断」を行っており、また、院長が総合内科専門医であり、がん薬物療法専門医臨床遺伝専門医の資格ももっていることから、「コロナ大丈夫?」とか、「妊娠中に乳がんになったんだけど」とか出生前診断に特化した医師とは一味違う幅広い皆様の不安におこたえしております。

妊娠出産に関してご不安なみなさま、遠慮なく是非ご相談ください。

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

医師・仲田洋美の保有資格

医籍登録番号 第371210号
麻酔科標榜医 厚生労働省医政発第1017001号 麻 第26287号
日本内科学会 認定内科医 第19362号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本プライマリ・ケア連合学会 指導医 第2014-1243号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号
日本感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター ID3121号
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医 第J-535号

見ての通り、感染症専門医ではありませんが、感染症に関する二つの資格は一応持っているのと、「遺伝子検査」の専門医でもあります。
あと、この凝り性な性格でお勉強したので、通常の内科専門医よりは断然詳しいと思います。

間違っているところがあったらお知らせください。

プロフィールはこちら