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コロナウイルスの増殖スピード

インフルエンザウイルスは感染して6時間で増殖を終えて、108/mL程度の感染性ウイルスを産生します。
SARSコロナウイルスは6時間程度で増殖し,1056/mL程度のウイルスを産生します。
この事実から、気道上皮細胞からのコロナウイルス放出はインフルエンザの約100分の1程度と推測されています。

journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1006195

この辺が、インフルエンザと違ってウイルスそのものが検出されにくい原因の可能性があります。

詳しい話をする前に、ウイルスってなあに?というそもそもの話をしましょう。
やっぱそれなりに知識がないと読んでもわからないからです。

わたしは 感染症専門医 ではありません。
普通の 総合内科専門医 です。

しかし。今と違って私たちが取得したころの内科専門医というのは、各サブスペシャルティ専門医(がん薬物療法専門医とか循環器専門医とか感染症専門医とか)を総合的に束ねる専門医ということで、認定医⇒サブスぺ専門医⇒内科専門医、という位置づけだったんですよね。内科学会では。
今は総合内科専門医は3万人以上いますが、わたしの専門医番号は7900です。
古き良き厳しかった時代の内科専門医として、意地になってお勉強しております!!
なので、皆さんも私と一緒にお勉強して、正しい知識をもって、落ち着いて過ごせるようになりましょう。

ウイルス学総論

分類は前回触れましたので、それ以外のところを順番にやりたいと思います。

ウイルスの形態

感染性があり、構造の完全なウイルスを形態構造的にはビリオンvirionと呼びます。

出典:微生物学 文光堂 第1版

カプシド

ウイルス粒子はカプシド(殻)に包まれています。DNAウイルスはほとんどは2本鎖DNA、大部分の
RNAウイルスは1本鎖RNAです。例外としてDNAウイルスではパルポウイルスが1本鎖DNAで,RNAウイルスではレオウイルスが2本鎖RNAです。
ウイルス内部の核酸とカプシドが結合したものをヌクレオカプシドnucleocapsidと呼びます。
ウイルスの種類によってはヌクレオカプシドの外側にリポタンパクからなるエンベロープenvelopeをもっています。

エンベロープenvelope

エンベロープは、二重膜が基本を構造としています。
この膜の中にウイルス由来のタンパク(ペプロマー、peplomer)が埋め込まれています。

感染するとき、細胞表面への吸着を果たすのがエンべロープです。
エンベロープを脂溶剤で処理すると、破壊されてウイルスの感染性は失われます。

このペプロマーから各ウイルスに特異的な糖タンパクが突き出ています。

この糖タンパクは10-15nmでその表面に突起spikeがあります。

ウイルスはどうやって増殖するのか?

ウイルスの増殖、複製様式はウイルス科ごとに異なっています。
ウイルスの感染できる生物を【宿主】といい、決まった宿主にしか感染できません。

ウイルス増殖機構を解析する方法

ウイルスをその宿主細胞へ1細胞あたり5~40個感染ウイルスの割合で感染させます。

すべての細胞が感染を受ける条件をつくるため感染の多重度multiplicity of infection(MOI)を高くして感染させてから、未吸着ウイルスを洗浄して取り除き、その後の経時的ウイルス産生状況を測定します。

感染細胞内に感染ウイルスが証明されるまでを暗黒期eclipse period、感染後、細胞外にウイルス粒子が証明される期間を潜伏期latent period、急速なウイルス量の増加が起こる時間を増殖期growth periodといいます。

ウイルスの増殖過程

ウイルス粒子が宿主細胞にくっつく(吸着adosorption)

侵入penetration

脱殻

ウイルス核酸が細胞内で増殖部位に移行

ウイルス初期mRNA初期タンパクの合成

ウイルス遺伝子複製

後期RNA、後期タンパクの合成

ウイルス素材の集合assemblyによりウイルス粒子が形成

ウイルス粒子の細胞外への遊離(放出)release
ウイルスの感染

吸着adsorption

ウイルスはどうやって感染細胞表面上に吸着するのでしょうか??

実は、ウイルスはレセプターreceptorといわれる分子と特異的に結合します。
ウイルスのレセプター数はウイルスや細胞により異なります。

それゆえ、ウイルスレセプターのない細胞にはウイルスは吸着することができません。

レセプターヘの吸着には粒子表面に存在するタンパクが認識される必要があるのですが、そのタンパクの機能が遺伝的に欠損したらウイルスは吸着できません。

寄り道:HIVウイルスが感染しない人がいます!!
HIVはCD4+T細胞の表面に存在するCCR5という受容体を通して細胞内に侵入するのですが、CCR5の遺伝子に異常があり、正常なCCR5受容体を作れない人がいて、変異しているのでHIVはCD4+T細胞に侵入できず、増殖することができません。
ですので、こういう人たちは感染性のある濃度のHIVにさらされても感染しないんです。
CCR5受容体遺伝子変異は、北欧の白人約16%が持っています。
WHOが絶滅宣言した天然痘ウイルスもCCR5受容体を介してCD4+T細胞に侵入いたします。欧州のように昔、天然痘が大流行した地域にこのCCR5受容体変異を持つ人が多くなっています。

細胞への侵入、アンコーティングuncoating

エンベロープをもたないウイルスエンドサイトーシスendocytosis(飲み込まれるって感じです)により、また、エンベロープをもつウイルス粒子は主として細胞膜と融合し、カプシドのみが内部に取り込まれます。

アンコーティングによりウイルスゲノムは必ずしも完全に裸の状態になるのでなく、通常は細胞やウイルスタンパクと結合した状態で細胞内に存在しています。

ウイルスタンパクは核酸合成(複製)に先立って感染直後につくられるので初期タンパクと呼ばれ、機能タンパクとも呼ばれる感染後期につくられる粒子構築のための構造タンパクと区別されます。

アンコーティングの細胞内場所は細胞質、核酸、リソソームなどでありウイルスによりその場所は異なります

子ウイルスが出現するまで感染細胞内ではさまざまな合成過程があるのですが、DNAウイルスとRNAウイルスではその過程が異なります。

親ウイルス遺伝子から子ウイルス遺伝子が合成されます(複製)。

DNAウイルスの大部分は核内で増殖しますが、ボックスウイルス科とイリドウイルス科のウイルスは細胞質で増殖します。個体内に長時間とどまり潜伏し短期間に大流行を起こすことはありません。
パルポウイルス科を除くすべてのDNAウイルスは宿主細胞のDNA合成を促進し腫瘍原性をしめします。

これに対して、RNAウイルスは多くは細胞質で短期間に増殖を繰り返し、細胞を破壊して急性感染症を起こします。変異が起こりやすく多様化が進みインフルエンザウイルスのように遺伝子組み換えなどによって新型ウイルスが出現して大流行を起こすことがある。レトロウイルスはRNAウイルスですが、宿主のDNA逆転写され、宿主染色体に組み込まれて自らを複製します。

そして、DNAとして核内で宿主遺伝子と組み換えを起こして、潜伏または持続感染をします。そのため悪性腫瘍(成人T細胞白血病)を誘発したり、AIDSのような慢性疾患をもたらすこととなります。

ウイルス粒子の形成assembly

合成された核酸、タンパクが集合してウイルス粒子を形成するのですが、これは核酸の複製、タンパクの合成と密接に関係しています。

放出release

形成されたウイルス粒子は細胞外に放出されます。
1.細胞内でウイルス粒子が完成したのち細胞膜の破壊が起こりウイルス粒子が細胞外に放出される。この場合、粒子は短時間に細胞外に放出されます。
2.ウイルス粒子の形成が細胞膜を通過する際に完成するようなウイルスでは、細胞膜は破壊されず、ウイルス粒子の放出も長時間にわたって続きます。このようなウイルス粒子は細胞内には完成したウイルス粒子としては存在しません。

欠陥ウイルスdefective virus

感染力のない不完全なウイルス粒子を不全粒子といいます。
宿主細胞によってはウイルス増殖がさまざまな段階で中断してしまい、いわゆる不全感染abortive infetionを起こすことがあります。
不全感染を起こす宿主細胞を非許容細胞nonpermissive cellといい、ウイルス増殖を許す許容細胞permissive cellではウイルス増殖の結果、細胞を殺す崩壊感染と、殺さずに共生状態を保ち分裂する持続感染を起こすと場合がある。

また、成熟ウイルスと同じ構造を示しても、ウイルスゲノムの一部に欠損、置換、逆位がみられる場合は感染性を示さないことがあり、この粒子を欠陥ウイルスといい、細胞に多数のウイルスを感染させたときに多くつくられます。
感染細胞内にはウイルスゲノムをもたない中空粒子もみられます。
ウイルスによって増殖サイクルの時間的経過は異なり、同じへルペスウイルス科でも単純へルペスウイルスは細胞に感染後5~10時間以内に感染粒子が形成されるのに対し、ヒトのサイトメガロウイルスは感染粒子形成には数日以上かかります。

新興感染症とは?

ヒトの集団に新しく出現したウイルスまたは、ある地域から他の地域へ急速に広がって疾病を流行させつつあるウイルスを新興ウイルスといい、それによって起こされる疾患を新興感染症といいます。
RNAウイルスによる疾患が多く、AIDS,新型インフルエンザウイルスなどは有名ですよね。

これに対して、かつて出現したウイルスがいったん姿をかくした後に再び出現した場合を再興感染と呼び、これによる疾患を再興感染症といいます。
エボラ出血熱(EBL)、インフルエンザなどがその例として挙げられます。

エマージングウイルスの勃興の原因として挙げられるのは
変異ウイルスの出現
他の動物のウイルスがヒト集団への導入(人蓄共通伝染病)
特定地域の小集団に生棲していたウイルスのヒト社会への急速
広範な拡散
一次産業の開発に伴う野生動物との接触
都市への人口流入とスラム化
性的混乱
温暖化などによる生息環境の変化
交通機関の発達によるウイルスを拡散する人の移動の増加
などがあります。

新興感染症は人間がまねいたものであり、ウイルスに国境はありません。

大変危険であり、緊急な対策を要するものなのです。
(のですがWHOは最初パンデミックにならないと言い張りました。(*`Д´)ノ!!!)

この記事の筆者

医師・仲田洋美の保有資格

医籍登録番号 第371210号
麻酔科標榜医 厚生労働省医政発第1017001号 麻 第26287号
日本内科学会 認定内科医 第19362号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本プライマリ・ケア連合学会 指導医 第2014-1243号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号
日本感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター ID3121号
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医 第J-535号

見ての通り、感染症専門医ではありませんが、感染症に関する二つの資格は一応持っているのと、「遺伝子検査」の専門医でもあります。
あと、この凝り性な性格でお勉強したので、通常の内科専門医よりは断然詳しいと思います。

間違っているところがあったらお知らせください。

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