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SARS-cov-2の伝播について


SARS-cov-2伝播リスクの理解は現在なお不完全である.

アウトブレイクの初めに武漢で行われた疫学調査では,生きた動物を販売する魚介類市場との最初の関連性が確認され,ほとんどの患者が魚介市場で働いたり訪問したりしており,その後消毒のために閉鎖された.
このため,最初はヒト―ヒト感染があるのか不明であった.

アウトブレイクが進行するにつれて,ヒト-ヒト伝播が主な伝播様式となった.

ヒトーヒト感染

ヒト-ヒト伝播経路

直接的なヒト-ヒト伝播

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の主要な伝播経路である.主に呼吸器の飛沫を介した密接な接触によって起こると考えられる.
感染者の咳やくしゃみ,会話などを通じて呼吸器分泌物からウイルスが放出され,粘膜に直接接触することで感染が成立するし,感染した表面に触れた手で目,鼻,口などに触れた場合にも感染が起こる.
飛沫は典型的には6フィート(約2メートル)を超えて移動しない.

空気伝播

SARS-CoV-2が自然条件下で空気伝播経路(経時的および遠隔的に空気中に残存する小滴よりも小さな粒子を介して)を介して伝播できるかどうかについては,議論の余地がある.

1.組織培養で増殖させたSARS-CoV-2が実験的に生成したエアロゾル中で少なくとも3時間生存したままであったという研究報告がある

2.換気システムおよびCOVID-19患者の病室の空気サンプル中にウイルスRNAが同定されているが,これらの研究ではウイルスの培養は行われていないため,感染性の有無が問題となる.ウイルスは完全体でないと感染性がないが,RT-PCRはウイルスの一部しか検出しておらず,RT-PCRで陽性になることと細胞への感染性がある状態のウイルスなのかということは同一ではないからである. 

リファレンス1 2 3 

3.呼気を可視化するために特殊な画像を用いた他の研究では,呼吸性飛沫がエアロゾル化するか,ガス雲の中に運ばれ,話す,咳をする,またはくしゃみを伴う6フィート(2メートル)を超える水平方向の軌跡を有する可能性が示唆されている.
 リファレンス   

しかし,SARS-CoV-2の長期空気感染は明確には立証されなかった

  
リファレンス

接触予防策と飛沫予防策のみを用いている間に診断未確定の感染患者に曝露した医療従事者の報告では,空気感染予防策がないにもかかわらず二次感染は確認されなかった.

リファレンス  

伝播メカニズムが不確実なので

医療環境における空気感染予防策に関する勧告は場所によって異なり,エアロゾルを発生させる手技が実施される場合には空気感染予防策が推奨される.

COVID-19が疑われる患者または確認された患者

SARS-CoV-2は,便,血液,眼分泌物,精液などの呼吸器以外の検体から検出されているが,伝播におけるこれらの部位の役割は不明である.

☛上気道検体からウイルスRNAが検出できなくなった後でも,便検体からSARS-CoV-2 RNAが検出されたとする報告がある.

リファレンス 1 

☛便から生ウイルスが培養されたという報告もある.

リファレンス  

☛確認は困難と思われるが,便-口伝播は臨床報告に記載がなく,WHO-中国合同報告によると,感染拡大の重要な要因ではないと考えられている.

 リファレンス

☛血液中のSARS-CoV-2 RNAの検出も,一部の研究で報告されている.

リファレンス    

☛血液媒介性伝播(例,血液製剤または針刺しによる)の可能性は低いようである
呼吸器系ウイルスは一般に血液媒介性経路を介して伝播することはなく,SARS-CoV-2または関連するMERS-CoVまたはSARS-CoVについては輸血伝播性感染は報告されていない.

☛SARS-CoV-2が非粘膜部位(例,擦過皮膚)との接触を介して伝播しうるという証拠もない.

ウイルス排泄および感染性を有する期間について

罹患した個体が感染性(他人に感染させる能力がある)をもつ正確な期間はいまなお不明のままとなっている.

SARS-CoV-2は,症状の発現前および疾患の経過を通して,特に経過の初期に伝播しやすいようである.

しかしながら,この問題に関するデータは殆ど呼吸器および他の検体からのウイルスRNA検出を評価する研究から得られている.
ウイルスRNAの検出は,必ずしも感染性のある完全なウイルスの存在を示すわけではない(PCRはウイルスの断片を増幅して測定するため)ので,疾患治癒後のウイルスRNA検出の延長は,必ずしも感染性があることを示すわけではない.

間接的データはたくさん報告されており,感染者は感染の初期段階で感染力があることが示唆されている.

☛上気道検体からのウイルスRNA量は,発症後間もなく,疾患の後期と比較して高いらしい.

リファレンス     

☛軽度のCOVID-19患者9例を対象とした研究では,疾患経過の最初の8日間に鼻/口腔咽頭および喀痰検体から感染性ウイルスが分離されたが,これらの部位でウイルスRNAレベルが高いままであったにもかかわらず,この間隔を過ぎると感染性ウイルスは分離されなかった
リファレンス
   

☛中国の77の伝播ペア間の感染時期(各ペアの症状発現の平均連続間隔は5.8日)と潜伏期間に関する仮定に基づいて,感染力は症状発現の2.3日前に始まり,症状発現の0.7日前にピークに達し,7日以内に低下することが示唆されたが,ほとんどの患者は症状発現後に隔離されているため,感染力の有無を問わず疾患後期の伝播リスクは下がると考えられる.

リファレンス

☛台湾のCOVID-19患者100例の密接な接触者2500例以上を評価した研究.二次感染症例22例の全例が発症後6日以内に初めて初発症例に曝露しており,7日目以降の接触者850例には感染は認められなかった.
リファレンス

☛無症候性の個人(または潜伏期間内の個人)からのSARS-CoV-2の伝播も十分に立証されている.

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☛長期ケア施設におけるSARS-CoV-2のアウトブレイクの研究によって支持されており,この研究では,典型的な症状が発現する6日前という早い時期に,発症前および無症候性患者の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)陽性上気道検体から感染性ウイルスが培養された.
リファレンス

無症候性または発症前の伝播がどの程度起こるのか,また,それがどの程度パンデミックに寄与しているのかはいまだ不明となっている.

☛シンガポールにおける157例のCOVID-19症例の解析では,潜伏期間中の伝播が6.4%を占めると推定され,これらの症例では,曝露は症状発現の1~3日前に起こった.
リファレンス

☛患者がどのくらいの期間感染性を保っているかも不明であるが,入手可能なデータからは,症状消失後もウイルスRNA排泄は長く続くが,感染力が長く続くことと明確に関連していないことが示唆されている.ウイルスRNAの排泄期間は様々であるが,広範囲にわたるようであり,疾患の重症度に依存すると考えられる.

軽症(低酸素症なし)患者21例を対象とした研究では,90%が症状発現後10日までに鼻咽腔スワブでウイルスRNA検査陰性を繰り返しており重症度の高い患者では検査陽性期間が長かった.

集中治療を必要としない軽症から中等症の患者56例対象とした別の研究では,鼻腔または口腔咽頭検体からウイルスRNAが排出される期間の中央値は24日で,最も長かったのは42日であった.

☛検出可能なウイルスRNAは必ずしも感染性のあるウイルスの分離と相関するわけではなく,それ以下では感染性の可能性が低くなるウイルスRNAレベルの閾値が存在する可能性がある.

☛軽症COVID-19患者9例の検討では,ウイルスRNA量が106 copies/mL未満の場合,呼吸器検体から感染性ウイルスは検出されなかった.

☛別の研究では,ウイルスRNAが高濃度(サイクル閾値[Ct] <24)でRT-PCR陽性)であった保存呼吸器検体でのみ感染性ウイルスが検出された

☛患者が臨床的に回復後3日まで上気道検体から検出可能なウイルスRNAを保有し続ける場合,RNA濃度は一般的に複製能のあるウイルスが確実に分離できるレベル以下.さらに,発症後9日以上経過した上気道検体から感染性ウイルスが分離されたことはまだ立証されていない.

☛臨床的改善および初回ウイルスクリアランス後にRNA検査が再度陽性となった患者の呼吸器検体からも感染性ウイルスは分離されていない.

重篤なCOVID-19患者で症状発現から28日後に便から複製ウイルスが分離された一例が報告されているが,この所見の頻度と臨床的意義を理解するためには,さらなるデータが必要.

伝播リスク

SARS-CoV-2感染者からの伝播リスクは,暴露の種類と期間,予防手段の使用,個々の因子(例,呼吸器分泌物中のウイルス量)によって異なる.

二次感染

☛家庭内接触者,個人防護具が使用されていない集団または医療環境(病院および長期ケア施設を含む),閉鎖環境(例,クルーズ船)で報告されている.

☛様々な場所での流行の初期段階での接触者健診により,ほとんどの二次感染は家庭内接触者であり,二次感染率は最大15%であることが示唆されている.

環境汚染

汚染された表面に存在するウイルスは,感受性のある人がこれらの表面に触れた後,口,眼,鼻の粘膜に感染性ウイルスを伝播すると,感染源となることがある.
この種の伝播の頻度および相対的重要性は不明である.

重度のウイルス汚染がある状況(例,感染者の家庭や医療環境)では,潜在的な感染源となる可能性が高い.

☛SARS-CoV-2が表面にどのくらいの期間残存することができるかは不明である.
他のコロナウイルスで試験されており,消毒せずに最長6~9日間無生物表面に生存する可能性がある.室温でプラスチック表面上で乾燥させたウイルスの生存を評価した研究では,SARS-CoV(SARS-CoV-2と密接に関連するウイルス)を含む検体では,6日後に感染能が検出されたが,9日後には検出されなかった.

☛さまざまな消毒薬(62~71%の濃度のエタノールを含む)はSARS-CoV-2に関連する多くのコロナウイルスを1分以内に不活化する.また,実験条件下ではSARS-CoV-2を15~20分の経過で不活化し,紫外線B (UVB)光のレベルが高くなるほど不活化が速くなる.

☛他のコロナウイルスに関するデータに基づくと,ウイルスが表面に残存する期間は,環境温度,相対湿度,初回接種材料の大きさにも左右される可能性が高い.

動物接触

SARS-CoV-2はもともと動物宿主からヒトに伝播したと考えられているが,動物接触を介した伝播のリスクは不明である.動物(家畜を含む)がヒトの主要な感染源であることを示唆する証拠はない.
SARS-CoV-2感染は,自然環境および実験環境のいずれにおいても動物で報告されている.ヒトとのCOVID-19との密接な接触後にSARS-CoV-2感染(イヌにおける無症候性感染およびネコにおける症候性感染を含む)が認められた動物の報告はまれである.

無症候性で実験的に感染させた飼いネコは,SARS-CoV-2をケージに入れたネコに伝播する可能性がある.

感染のリスクは種によって異なる可能性がある.鼻腔内ウイルス接種後の動物における感染を評価した1件の研究では,SARS-CoV-2はフェレットやネコで効率よく複製し,イヌでもウイルス複製が検出されたが,全体的に実験感染に対する感受性は低いようであった.豚および家禽は感染に感受性がなかった.

この記事の筆者

医師・仲田洋美の保有資格

医籍登録番号 第371210号
麻酔科標榜医 厚生労働省医政発第1017001号 麻 第26287号
日本内科学会 認定内科医 第19362号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本プライマリ・ケア連合学会 指導医 第2014-1243号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号
日本感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター ID3121号
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医 第J-535号

見ての通り、感染症専門医ではありませんが、感染症に関する二つの資格は一応持っているのと、「遺伝子検査」の専門医でもあります。
あと、この凝り性な性格でお勉強したので、通常の内科専門医よりは断然詳しいと思います。

間違っているところがあったらお知らせください。

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