新型コロナウイルス特設ページトップに戻る

SARS-CoV-2感染症であるCOVID-19では嗅覚消失が特徴的であると報告されました.

COVID-19患者の嗅覚および味覚機能障害

 

Lancetに2020年4月15日に報告されました.

www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30293-0/fulltext

こちらの報告を見ていきましょう.

事例が複数あることは証拠とはならないが,味覚異常の有無にかかわらず,嗅覚消失が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染に頻繁に関連する症状であることを,耳鼻科医および第一線の他の医療従事者から報告が蓄積されつつある.American Academy of Otolaryngology-Head and Neck SurgeryおよびBritish Association of Otoroniolaryは現在,これらの症状をCOVID-19の一次スクリーニング症状のリストに追加するよう推奨している.

嗅覚系を標的とする神経向性または神経毒性のウイルス感染に起因する嗅覚または味覚の能力の欠如または低下に関する我々の理解は断片的である.

第1脳神経(嗅神経)の臨床評価は,病歴聴取および身体診察からは除外されているため,忘れられた脳神経と呼ばれることが多い.
さらに問題を複雑にするのは,嗅覚機能障害が自覚されるのは,典型的には最も重度の症例でのみ存在するか,または潜伏期間が長くなった後にのみである.

急性期の進行した症例の神経画像検査の不足,組織病理学的組織標本の入手の困難さ,および感染した嗅神経上皮のウイルス培養の欠如が,この現象の研究の困難さを複雑にしている.
さらに,匂い物質分子の正常な経鼻的気流(すなわち,鼻孔または嗅裂における浮腫がない),および鼻腔内疾患(例,感染性副鼻腔炎,アレルギー性または血管運動性鼻炎,またはポリポーシス)がない状況では,これまで,感覚神経性ウイルス性嗅覚消失患者は,一般の耳鼻咽喉科診療ではほとんど診察されておらず-毎年約1~2人の新規発症患者のオーダーで診察されている.そこで,コロナウイルス病2019(COVID-19)のパンデミックまで,社会全体での感覚神経性ウイルス性嗅覚消失の低有病率は,臨床研究を困難にしてきた.

現在のパンデミックの緊急性と致死性を考慮すると,COVID-19の患者を現在管理・モニタリングしている第一線の耳鼻咽喉科医,および嗅覚・鼻科学の臨床経験を有する者から得られた知見は,介護者に移送する際に大きな価値を持つであろう.

現在COVID-19に感染しており,嗅覚消失および味覚異常を経験している1名の耳鼻咽喉科医を含む我々多国籍グループは,特に開存性鼻気道(すなわち,非伝導性喪失)との関連において,急性発症の嗅覚または味覚消失患者を評価する医師は,SARS-CoV-2感染の併発を強く疑うべきであることを示唆している.

他の上気道感染症(例,ライノウイルス,インフルエンザ,およびアデノウイルス)でみられるような伝統的な鼻腔症状は,COVID-19の患者では一般的にみられないことが観察されている.

著者らはまた,SARS-CoV-2が臨床的に重要な鼻閉または鼻漏–すなわち,赤色,水様,詰まった,かゆみのある鼻–を生じないと思われることを観察した.この観察は,嗅覚系に部位特異的な神経向性ウイルスを示唆している.呼吸器ウイルスと標識されているが,コロナウイルスは神経向性で神経侵襲性であることが知られている.

味覚異常の有無にかかわらず,嗅覚消失が疾患過程の早期または全身症状が軽度または全くない患者のいずれかで発現することが観察されている.
しかしながら,COVID-19の理解において,これらの症状の発生率,ならびに全スペクトルの臨床的有用性を明確に確立するにはまだ時期尚早である.

もう1本別の報告を見てみましょう

今度は2020年4月8日のJAMAです.

jamanetwork.com/journals/jamaotolaryngology/fullarticle/2764417

COVID-19の可能性の高い症状としての突然かつ完全な嗅覚消失機能

重症呼吸器シンドロームコロナウィルス2(SARS-CoV-2)による新規コロナウィルス病2019(COVD-19)はヒト呼吸器系上皮細胞に感染する.
SARS-CoV-2に感染した患者の臨床的特徴は,発熱,乾性咳嗽,呼吸困難を伴う下気道感染であった.
対照的に,上気道症状はあまり一般的ではないことから,ウイルスが標的とする細胞は下気道に局在しうることが示唆される.
本稿では,SARS-CoV-2に感染した患者が発現した主な症状が,鼻閉を伴わない嗅覚機能の突然かつ完全な喪失であった症例を提示する.

症例報告
40歳代の女性が鼻閉を伴わない嗅覚機能の急性消失を呈した.
患者が塩味,甘味,酸味,苦味の変化を報告しなかったため,味覚異常はなかった.
発症数日前より,頭痛,筋痛を伴う乾性咳嗽も出現した.
発熱や鼻漏はなかった.
耳鏡検査および前鼻鏡検査の結果(内視鏡検査なし)は正常であった.
ヒトの嗅覚検査に一般的に使用されている5種類の匂い物質:フェニルエチルアルコール(花バラ),シクロテン(カラメル),イソ吉草酸(ヤギチーズ),ウンデカラクトン(果物),スカトール(糞尿)を用いて,匂い物質の検出および同定能を推定した.
課題は,各臭気物質を検出し,同定しようとすることであった.
これらの匂い物質のどれも,患者によって同定または検出されなかった.
患者は,鼻腔の磁気共鳴画像法(MRI)で確認された嗅裂の両側性炎症性閉塞を示す,鼻腔のコンピュータ断層撮影スキャン(図1)を受けた(図2).
きゅう球,きゅう覚路に異常はなかった.
夫もSARS-CoV-2感染が疑われたため,SARS-CoV-2のreal-time polymerase chain reaction (RT-PCR)を施行したところ,陽性結果が得られた.
図1.冠状断の鼻腔コンピュータ断層画像
LargeDownload の表示
鼻腔の残りの部分に閉塞を伴わない嗅裂(黄色矢頭)の両側性閉塞.
図2.磁気共鳴画像
cdn.jamanetwork.com/ama/content_public/journal/otol/0/olo200003f2.png?Expires=2147483647&Signature=N8fs5Yhc~SlPR0szMDBL8RENcButyg~wf31~8PoKXfueYZLVF5RUlBUHUOSajO6DeRMohmEnPqpksUMgWifnI8SDJMYEGggJR6yz1xRGbnSE2BhcLQYTkTCPIpPaUCJxtuGD-8tv88KEOj3uj8YK4KZi-nLHyApUWz3U3DGFHUhAWJ-3dQ8ctHsDEb0LBjkBgGZQ1t-A-HoeDZVogEVc6aA5uvO87ZNfQUhTsvjT9D7ekKRjtl7McvunHlciG2SBVuBDMQatfAu5JKOeL2LOFSN40kIzIGKdGKXgHMa11TFsXjn01IGrF80o8vP-Hsjf5HtrvcBfHn93k-5bn76X5w__&Key-Pair-Id=APKAIE5G5CRDK6RD3PGA
(A)2次元T2強調,(B)3次元T2強調シーケンス上の嗅裂と球根の冠状断.
嗅球(青矢頭)は正常であるが,嗅裂の両側性の炎症性閉塞(黄色矢頭)が観察される.
右上顎腔粘膜の軽度肥厚がある.

考察
上気道感染は,嗅覚消失の最も一般的に同定される原因の1つであり,症例の22%~36%を占める.
本稿では,画像上嗅裂の両側性閉塞性炎症を呈し,嗅上皮への匂い物質分子の到達を妨げることによって嗅覚機能を重度に障害したCOVID-19の患者について報告する.
この閉塞の起源は不明のままであり,重度の上咽頭感染後の患者で報告されている.
しかし,この患者では,鼻閉または鼻漏に気づかれなかった.
Trotierらは3,抗生物質に関連した吸入コルチコステロイドまたは経口コルチコイド治療にもかかわらず,症状が持続することを報告している.
さらに,SARS-CoV-2に感染した患者では,コルチコステロイドは避けるべきである.
ほとんどのコロナウイルスは類似した構造と感染経路を共有しているため,SARS-CoV-2に対する同様の感染機構が期待でき,コロナウイルスは嗅球および嗅上皮に近い篩板を介して脳に侵入する可能性がある.
本症例では認められなかった嗅球の構造的変化が若干予想できた.
しかし,この段階では,嗅球の容積を評価することは重要であり,MRIの結果で検出するにはあまりにも微妙である.
さらに,Yaoらは,感染後嗅覚消失患者では嗅球の容積が減少し,嗅覚消失の持続時間と逆相関することを報告している.
近年,Ligget et alは,中枢皮質ニューロン,血管平滑筋,上下気道上皮における嗅覚受容体ファミリーの発現について報告した.
SARS-CoV-2はアンジオテンシン変換酵素2受容体の障害を介してヒト呼吸上皮細胞に感染することから,この嗅覚受容体ファミリーも選択的に障害されうると考える.
我々の知る限り,これは,本質的に嗅覚機能喪失を示すCOVID−19を有する患者の最初の報告である.
フランス耳鼻咽喉科学会(https://www.snorl.org/category-acces-libre/alerte-anosmie-covid-19-20-mars-2020/)によって報告されているように,咳嗽や発熱などの他の症状を呈する患者において,鼻閉を伴わない突然かつ完全な嗅覚機能喪失の関連性は,SARS-CoV-2感染を疑うよう臨床医に警告すべきであると考える.

いかがでしたか?

米国ではすでに,医療施設への入所前および入所時のスクリーニングとして
COVID-19と一致する臨床症状(例、発熱、咳、筋肉痛、咽頭痛、呼吸困難、嗅覚消失/嗅覚減退)について患者をスクリーニングすべきである,とされています.

医療職,介護職の皆さん,参考にしてください.

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

医師・仲田洋美の保有資格

医籍登録番号 第371210号
麻酔科標榜医 厚生労働省医政発第1017001号 麻 第26287号
日本内科学会 認定内科医 第19362号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本プライマリ・ケア連合学会 指導医 第2014-1243号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号
日本感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター ID3121号
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医 第J-535号

見ての通り、感染症専門医ではありませんが、感染症に関する二つの資格は一応持っているのと、「遺伝子検査」の専門医でもあります。
あと、この凝り性な性格でお勉強したので、通常の内科専門医よりは断然詳しいと思います。

間違っているところがあったらお知らせください。

プロフィールはこちら