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破水はなぜ起こる?尿漏れとの違いや受診の目安について

「朝起きると布団がびしょびしょで、破水かと病院へ駆け込んだら尿漏れで恥ずかしい思いをした」「くしゃみで尿漏れをしたと思っていたら破水していた」など、破水と尿漏れの違いがわからず困った経験をされたママも多いようです。

「破水と尿漏れの違いくらいすぐにわかるでしょう」と思われている方もいるかもしれませんが、破水の仕方や流れ出る羊水の量によっては、破水なのか尿漏れなのか医師や看護師ですら判断に迷うこともあります。

つまり、膣から出ている水分の見た目や雰囲気だけでは正確に判断できないのが破水であるため、妊婦さんが間違ってしまってもなんら不思議ではないのです。

この記事では、破水と尿漏れの違いや妊娠中に尿漏れしやすい原因、受診の目安についてご紹介します。いざというときのために心の準備ができるよう、出産間近の方もまだ出産予定日まで時間があるという方も、ぜひ最後まで読んでみてください。

破水はいつ起こる?

寝そべる妊婦

そもそも破水とは、胎児を包んでいる卵膜が破れ、羊水が体外へ流れ出ることです。通常は陣痛がピークに達し、子宮口が全開大になる頃に破水する(適時破水)ことが多いですが、陣痛がくる前に破水(前期破水)したり、陣痛はきているものの子宮口が全開大になる前に破水(早期破水)したりすることもあります。

赤ちゃんがお腹の中で十分に育っていれば、破水が先に起こっても問題ありません。しかし、妊娠34週未満での前期破水は、胎児が危険にさらされる可能性もあるため、可能な限り妊娠を継続させる処置を行うことになるでしょう。

破水と尿漏れの違いとは?

不安を感じる妊婦

ママも赤ちゃんも、これまでさまざまな苦難を乗り越えてきました。

やっと臨月に突入し、もうすぐ出産のとき。万が一破水に気づかないまま放置してしまうと、細菌感染や羊水過少、常位胎盤早期剥離(分娩前に胎盤が剥がれてしまうこと)の可能性もあるため、注意して最後まで順調に過ごしたいものです。

とはいえ、「もしも破水と尿漏れを勘違いしたら‥」と不安なママもたくさんおられることでしょう。そこでここでは、破水と尿漏れの違いについてご紹介します。

破水して流れ出る羊水の色は、ほとんどの場合無色透明か淡く黄みがかった透明です。中には、出血が混ざって薄いピンク色になるケースや黄緑っぽい色になるケースもあります。

一方、尿漏れの場合は尿の濃さにもよりますが、尿独特の濃い、もしくは薄い黄色になります。

におい

次は、においの違いです。羊水のにおいは、よく生臭いと表現されます。他にも、甘酸っぱいにおいや無臭のケースもあるようです。先輩ママの中には、羊水のにおいを精液やハイターと例える方もいます。

一方の尿漏れは、尿独特のアンモニア臭が特徴です。羊水との違いを知りたいときは、においは重要な材料となるでしょう。

流れ出す感覚

破水で羊水が流れ出ている場合、自分の意思でそれを止めることはできません。尿漏れの場合は、肛門付近に力を入れると止まります。

また、尿漏れはくしゃみや咳、椅子から立ち上がるなどお腹に力が入るような行動をしたときに起こることが多いです。羊水は、歩いたり起き上がったりして体を動かすとさらに流れ出てしまう恐れがあるので、病院に到着するまでできるだけ体を動かさないことが大切です。

高位破水はわかりにくいので要注意

ここまで破水と尿漏れの違いを色やにおい、流れ出す感覚でご紹介してきましたが、高位破水(子宮口から離れた位置での破水)だと羊水が流れ出る量も少なく、破水だと気づかないケースが多いです。

先輩ママの中には、出産予定日を過ぎてからの健診で内診を行った際、医師から破水していると言われてそのまま入院になった方も。ママ自身は「立つたびにジワっと尿漏れして困るな‥」くらいにしか思っていないなど、まったく気づかないこともあるようなので注意が必要です。

妊娠中に尿漏れしやすい原因

陣痛

「妊娠したら尿漏れするようになった」「妊娠後期になるにつれて尿漏れする回数が増えた」など、妊娠すると尿漏れにお悩みの方が増えます。妊娠する前から尿漏れにお困りの方はあまりいないので、はじめて尿漏れを体験したときのショックは大きかったことでしょう。

では、なぜ妊娠中は尿漏れを起こしやすくなるのでしょうか。ここでは、その原因についてご紹介します。

子宮に膀胱が圧迫されるから

妊娠中に尿漏れが起こる原因でもっとも多いのは、子宮に膀胱が圧迫されることによるものです。

妊娠週数が進むにつれ赤ちゃんは成長し、徐々にお腹も大きくなっていくことで子宮が膀胱を圧迫します。

とくにくしゃみや咳、起き上がる、立ち上がるなど日常的な動作によってお腹に力が入ったり、赤ちゃんがお腹の中で動いて膀胱が刺激されたりすると尿漏れしやすくなります。

プロゲステロンの作用で骨盤底筋がやわらかくなるから

妊娠すると、さまざまな女性ホルモンの分泌量が増えることで、身体に大きな変化が現れます。

その中でも、プロゲステロン黄体ホルモン)は妊娠中の排卵抑制作用に加え、妊娠を維持する作用や、妊娠末期に骨盤や頸管をやわらかくして分娩に備える作用があります。

さらに、プロゲステロンには骨盤や頸管とともに「骨盤底筋」もやわらかくする作用も。

骨盤底筋とは、骨盤の底に位置する筋肉の総称です。骨盤内にある膀胱や子宮、直腸などの臓器を正しい位置に保つ役割を担うほか、尿道を締めて尿漏れしないようにする役割も果たしています。

そのため、プロゲステロンの作用によって骨盤底筋が緩んでしまうと、子宮などの内臓が下がって膀胱が圧迫されたり、尿道が緩んで尿漏れしやすくなったりします。

妊娠すると腎機能が高まるから

妊娠すると、女性は体内の血液量を出産時の出血に備えて妊娠前の1.4倍ほどにまで大幅に増加させます。具体的には、約4000mlから約5500mlになり、約1500mlも増加するのです。

しかも、妊娠中の血液は成分の割合も普段と異なり、血液中の水分は妊娠前の1.5倍になりますが、赤血球の量は約1.2倍になります。つまり、妊娠中の血液は水っぽいのです。

これにより、体内は常に水分過多な状態になります。すると、余分な水分を体外へ排出しようと腎臓の機能が活発になって尿が大量に作られることから、尿漏れしやすくなるのです。

尿漏れが気になるときは専用パッドなどで対処

上記でご紹介したように、妊娠すると尿漏れしやすくなるのは、身体の変化によるものです。臨月になると、約半数の妊婦さんが尿漏れを経験するといわれているため、「自分だけではないか」と思い悩むことはありません。

しかし、外出先で突然尿漏れして服が濡れてしまったり、自宅でもソファやベッドなどを汚してしまったりするのはできるだけ避けたいものです。

そのようなときは、生理用ナプキンを当てて対処するのもよいですが、においが気になる方は、専用の尿漏れパッドを利用するとよいでしょう。

破水と尿漏れの違いは胎動でわかる?受診の目安について

診察を受ける妊婦 産婦人科 レディースクリニック

破水すると胎動は感じなくなると思っている妊婦さんも多いようですが、破水をしても胎動がなくなることはないため、尿漏れとの違いを胎動で見分けることはできません。

実際に、分娩台に移動するまで胎動があった方や分娩台の上でも胎動を感じた方など、先輩ママの多くは出産直前まで胎動を感じています。

子宮内は、破水するまでは無菌状態を保っていますが、破水して外界とつながると膣から細菌が侵入して細菌感染を起こす可能性もあります。

羊水には殺菌作用があるため、すぐに母体と胎児に危険が及ぶことはありません。しかし、6〜12時間経過しても陣痛がはじまらない場合は感染リスクが上昇するため、適切な処置を受けながら今後の方針を決める必要が出てきます。

ママと赤ちゃんの身体を守るためにも、破水か尿漏れか判断に迷うときやいつもと違うと感じたときは、ためらわずにかかりつけの病院へ連絡し、受診するようにしましょう。

まとめ

破水と尿漏れの違いや妊娠中に尿漏れしやすい原因、受診の目安についてご紹介しました。

破水と尿漏れの違いは、色やにおい、流れ出す感覚などでわかります。尿の特徴は、日常生活の中で誰しもわかっているものですが、状況によっては、医師や看護師でも見分けがつきにくいことも。

破水している場合は、必ず入院管理が必要となります。破水後は自然と陣痛がくるのを待ちますが、なかなかこない場合は感染予防の抗菌剤の使用や、さらに時間が経過した場合は陣痛促進剤の使用などの対応が必要です。

尿なのか破水なのかわからない場合は、間違っていても構いませんので、すぐにかかりつけの産婦人科を受診することをオススメします。また、いつ破水してお産がはじまっても慌てないよう、正しい知識を知ってから心の準備と入院の準備をするようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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