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前期破水の原因は感染症?絨毛膜羊膜炎の後遺症や胎児へのリスクを解説

皆さんは、陣痛前に破水してしまう「前期破水」をご存知ですか?

前期破水になる原因の中でも、特に注意が必要なのが感染症によって引き起こされるものです。

妊娠中は免疫力が下がりやすい傾向にあるため、感染症を発症してしまうと、出産だけではなく胎児へのリスクも考えられます。

今回は、前期破水の原因ともなる感染症の中でも「絨毛膜羊膜炎」について詳しく解説するとともに、お腹の中の胎児へのリスクや後遺症、感染症のサインについても解説します。

前期破水の原因の1つは感染症だった!

ビタミンの丸薬を食べる妊婦を閉じる

破水は時期や位置によって種類を分けられますが、特に気をつけたいのが「前期破水」です。

出産間近に起こると思われる方が多いのですけど、実は、妊娠期間内の中でも初期から破水する可能性があります。

通常の出産は、胎児が成長し出産の準備が整った妊娠37週以降に、「陣痛→子宮口全開→破水→出産」といった流れになりますが、前期破水の場合は陣痛が来る前に破水が起こります。

前期破水であっても妊娠37週以降であれば、破水から24時間以内で陣痛が起きる場合が多く、お腹の中の胎児も十分に成長しているため、出産への影響や胎児へのリスクは特にありません。

しかし、妊娠34週未満で前期破水を起こすと、胎児の肺機能などの成長がまだ十分でない可能性も考えられます。もし出産をしても、胎児が外の世界で耐えられないので破水したらすぐに出産するのが望ましくないケースもあります。

お腹の中の胎児は妊娠中、卵膜の中で羊水に包まれることで細菌などから身を守っていますが、破水することで外の世界とお腹の中が繋がり、胎児が感染症などに感染するリスクが高まります。

そのため、前期破水は胎児が外に出てきても耐えられる体に成長していれば問題ないのですが、妊娠週数がまだ浅く胎児の成長が十分ではない時に起こっきてしまうと、母体や胎児へのリスクが高まり、早産になるか、最悪の場合、妊娠を継続できないことも考えられるのです。

前期破水の2つの原因

前期破水の原因としては、大きく分けて下記の2つに分けられます。

  • 急にお腹に負荷がかかることで一気に子宮内圧が高まり、卵膜が破裂する場合
  • 卵膜に炎症が起き、卵膜がもろくなることで破れる場合

この2つの中でも特に注意が必要なのは、卵膜の炎症による前期破水です。

卵膜の炎症による前期破水は、膣から子宮内に細菌が侵入し子宮内感染を引き起こしていることが多いため、出産や胎児へのリスクも考えられます。

そして、前期破水を引き起こす感染症として、一番注意したいのが「絨毛膜羊膜炎」です。

絨毛膜羊膜炎とは

絨毛膜羊膜炎は、妊娠中期から多く見られる感染症の1つで、早産の原因としても有名な疾患です。

通常の膣内では、善玉菌である常在菌が細菌の増殖を防いでおり、特に、妊娠中はこの常在菌の数が増えることで腟内を浄化して、細菌感染を起こさないように守っています。

しかし、免疫力の低下などにより腟内環境のバランスが崩れ、常在菌の浄化作用が低下して細菌が増殖すると腟内に炎症が起こります。

その細菌が膣から頸管を通り卵膜まで達すると、「絨毛膜羊膜炎」を発症してしまうのです。

絨毛膜羊膜炎になると、まず、炎症を起こす「サイトカイン」が「プロスタグランジン」という子宮を収縮させる物質を作ります。

このプロスタグランジンは、子宮を収縮させるだけではなく頸管熟化する作用も含んでおり、頸管を出産に近い状態に作り上げてしまうのです。

また、炎症を起こした組織の中には、卵膜を溶かす作用がある「エラスターゼ」という酵素を放ちます。

子宮が収縮され、卵膜が溶かされることで、お腹の中の胎児がまだ成長途中の段階で出産には早い状態であっても、絨毛膜羊膜炎による影響で破水が起きてしまうのです。

絨毛膜羊膜炎によって前期破水を起こした時に、妊娠週数が浅かったりまだ胎児の成長が十分でなかったりする場合は、抗菌薬や子宮収縮抑制薬を使用し、なるべく長くお腹の中に胎児が留まれるように調整をします。

しかし、胎児への影響が懸念されている状況で、なおかつ、妊娠24週を超えており、出産する病院に新生児集中治療室などの環境が備わっている場合は、帝王切開で出産予定日よりも早めに出産させることもあります。

絨毛膜羊膜炎による後遺症や胎児へのリスクとは

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前項でも解説した通り、絨毛膜羊膜炎は早産の原因にもなると言われていますが、発症すると考えられるリスクは他にどのようなものがあるのでしょうか。

絨毛膜羊膜炎になると、下記のようなリスクを引き起こす可能性があります。

  • 早産
  • 緊急帝王切開になる可能性が高まる
  • 胎児の脳や肺などの臓器に影響が出る
  • 常位胎盤早期剥離になる

絨毛膜羊膜炎の原因となる菌は、口の中や皮膚、腸などに存在しているありふれた菌であるため、絨毛膜羊膜炎を引き起こしていたとしても、症状がなくて気がつかない場合があります。

絨毛膜羊膜炎は発症すると、膣から頸管、そして卵膜、羊水から臍帯、最後に胎児の順で進行していきます。

万が一、胎児にまで進行していたとしても症状がないので気づけずにいると、胎児の脳や肺、腸といった全身の障害に繋がるのです。

そのため、胎児に感染してしまう可能性がある場合は、緊急で帝王切開を行い早めに胎児を外に出すことも考えられます。

そして、絨毛膜羊膜炎によるリスクの中でも、特に気をつけたいのが「常位胎盤早期剥離」です。

常位胎盤早期剥離とは

常位胎盤早期剥離とは、その名の通り、胎盤が通常よりも早い時期に剥がれ落ちてしまう病気です。

胎盤は、へその緒を介して母体から胎児へ酸素や栄養を供給しており、胎児の命や成長に欠かせません。

胎盤は通常、胎児が子宮を脱した後に剥がれ落ちますが、常位胎盤早期剥離は子宮にまだ胎児がいる時に剥がれてしまうので、胎盤により酸素や栄養をもらっている胎児にとって、胎盤が剥がれてしまうことは命が危険な状況になってしまいます。

また、胎児だけではなく、常位胎盤早期剥離は母体へも影響を及ぼします。

胎盤が剥がれ落ち始めた箇所は出血し、出血量が多いとショック状態になったり、播種性血管内凝固症候群という、血液が固まりにくくなる合併症を引き起こしてしまったりする可能性があります。

最悪の場合、常位胎盤早期剥離は死産や母体が亡くなってしまう危険性もあるほど、気をつけなければならない病気なのです。

常位胎盤早期剥離を発症するのは、妊娠している方の約1%未満であると言われていますが、絨毛膜羊膜炎であると常位胎盤早期剥離を引き起こすリスクも高くなるので、注意しなければなりません。

妊娠中に見逃してはいけない感染症のサイン

自宅のソファに横になって気分が悪い妊婦

ここまで、妊娠中に起こる感染症、特に、絨毛膜羊膜炎について解説しましたが、症状が出ない可能性があるとはいえ、どのようなことに注意すれば感染症を重症化させずに済ませられるのでしょうか。

妊娠中に、下記のような症状があった場合は、注意が必要です。

  • 普段とは違うおりものの色や異臭
  • 母体の発熱
  • 子宮周辺が圧迫されるような痛み
  • 白血球の増加

感染症が進行すると出やすい症状が、おりものの異常です。

妊娠中に限らず、普段の生活の中でも免疫力が下がっている時などに、おりものの色や臭いに異変を感じる方も多いと思います。

万が一、妊娠中に絨毛膜羊膜炎に感染した場合のおりものは、魚臭いような異臭で色も灰色がかっていることが多いです。

おりものが普段と違った色や臭いがきつい時には、絨毛膜羊膜炎に限らず他の感染症やおりものが変化する何かしらの原因があるので、おりものの異常に気がついたら早めに病院を受診しましょう。

また、おりものだけではなく38度以上の発熱や子宮、腹部に痛みを伴っている場合は、特に注意しなければなりません。

そして、一番の予防としては必ず検診を受け、異変を感じたらかかりつけ医にすぐに相談することです。

特に、絨毛膜羊膜炎の場合は血液検査を行うと、白血球の数値が増加するため症状が軽くても発症していても気づけます。

妊娠中のセックスは要注意!

妊娠中に、絨毛膜羊膜炎のような感染症を必ず予防する方法はありませんが、免疫力を下げないように十分な睡眠やバランスの良い食事、ストレスをためないことが腟内のバランスを保つことに繋がります。

特に、妊娠中のセックスは、挿入時の刺激や精液が腟内のバランスを崩しやすく、膣の浄化作用が失われ細菌感染しやすい環境を作ります。

コンドームの装着はもちろんですが、母体の体調などによっては医師の判断に従いましょう。

まとめ

今回は、妊娠中の感染症の中でも絨毛膜羊膜炎について、胎児へのリスクなども含めて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

妊娠中は、免疫力が下がりやすく普段よりも腟内のバランスを崩しやすいため、感染症を引き起こす可能性が高くなります。

早期の段階で発見できれば薬での治療で特に問題なく出産を迎えられることが多いですが、万が一、病状が進行してしまった場合、お腹の中の胎児にまで影響が出てしまう場合があります。

絨毛膜羊膜炎は症状が出ないこともあるのですが、普段の体調やおりものなどの変化を少しでも感じたら、早めにかかりつけ医を受診し検査してみることで、早期発見につなげられます。

胎児だけではなく、母体にまで影響が出る可能性も考えられるので、この記事を参考にしていただき、妊娠中の感染症へのリスクの知識を深めることで、リスク回避ができるように気をつけましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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